ストレイトロード:ルート140(53周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」をベースに、毎日1作ずつ投稿している掌編という名の習作。 今回は2601~2650+おまけ。終盤のリクエスト回数以外の共通テーマは「濁点(濁音)を含む単語」。なお各話の内容につながりはありません。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2611。残業。

2020-11-13 19:27:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

街の片隅に車を止め、一通のメールを待つ。そろそろ連絡の期限として指定された時刻だが、藍の横顔には余裕さえ浮かぶ。「あと一時間は大丈夫よ」差出人の出張先を問われて思い出した。国境を越えているなら、もしや。「彼は時差を忘れている、と」「半日ズレてたら気づくでしょうけど、一時間はねえ」

2020-11-14 20:50:20
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2612。時差。

2020-11-14 20:50:20
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「ここまで厚い壁はそうそう造れないでしょう!我々には市民を守る義務がある!」地域では随一の防御と胸を張る声に覚えがある。藍につきまとう例の御曹司だ。怪物たちに別荘を荒らされた経験さえ自慢と商売の種にするとは。「また襲われたらどんな顔するかな」私の後ろに隠れた藍の一言は聞き流した。

2020-11-15 19:11:39
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2613。随一。

2020-11-15 19:11:39
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

広い宴会場を横断中、一瞬の隙に藍を見失った。会場入り直前に聞いた不穏な一言が頭をよぎる。「あの悪徳社長は、わざと屋外にした。わざとわたしを呼んだ。どっちだと思う?」彼女にとってこの空虚な宴は何かの前座なのか。無関係な人々の巻き添えだけでも防ぐべく、顔の見えない招待客の間を駆けた。

2020-11-16 18:47:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2614。前座。 派手な事件の数分前。

2020-11-16 18:47:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

倉庫に籠城していた子供達が一人残らず連れ出された後、藍は私だけを連れて現場に戻った。そして彼らを降参させた火事の原因は本の焼却だと断言した。「抗議か何かで」「逆よ。証拠隠滅」燃え残った紙片は雑誌の一部だった。彼らは親が嫌う俗悪なメディアを密かに集めてはここで楽しんでいたのだろう。

2020-11-17 19:02:03
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2615。俗悪。 禁じられるほど見てみたくなる、あれとかこれとか。

2020-11-17 19:02:03
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

人類は未知の生物でも保護し共存すべき。ある団体の熱心な活動に折れた街が配備された兵器を追い出したという。軍の人員は残ったものの、守りだけを固めた姿勢は街に思わぬ打撃をもたらした。「これは確かに近づきたくないわ」藍が車の窓を閉めて呟く。城壁の外で怪物がくつろぐ様子は動物園のようだ。

2020-11-18 18:56:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2616。打撃。

2020-11-18 18:56:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

怪物の動向を追う研究員の中に一人、変化に乏しい画面を見つめる人物がいた。地磁気を観測しているという。「まさか何か異変が?」「それが全然ないんだと」肩をすくめたウェンズが藍の視線に気づき、地磁気の説明を始めた。よく方位磁石が引き合いに出されるが彼は違った。「オーロラ見たことある?」

2020-11-19 18:57:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2617。地磁気。 太陽から来た粒子と地球を包む磁場があの色を生む。

2020-11-19 18:57:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

朝食の時間なのに藍の姿がない。ホテル全体を探すつもりでロビーへ行くと、テーブル一つを堂々と占拠する彼女を見つけた。一週間分の新聞を縦横に並べて何度もなぞっている。「これの意味わかる?」記事ではなく連載の漫画を指して問われた。続き物のはずなのに話題が途切れている点が気になるようだ。

2020-11-20 21:16:41
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2618。続き物。 『ストレイトロード』自体、本来は単発のつもりで書いていたのにいろいろあって続き物になっています。

2020-11-20 21:16:41
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

山道の脇で身を寄せ合い寒さに震える集団がいた。車を止めると怯えた視線が集まった。唯一言葉が通じた年長の男は手書きの雑な地図を握りしめ、ある街の名を繰り返した。そこへ出稼ぎに行くのだと。「この山越える必要ある?」藍の単純な疑問を肯定できない。危険を冒す指示は摘発逃れか、人の悪意か。

2020-11-21 19:48:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2619。出稼ぎ。 彼らの時代にも間違いなくいるだろう。 どんな手を使ってでも生き延びようとする人も、少しでも家族に楽をさせたいと願う人も。 そんな思いにつけ入る何かも。

2020-11-21 19:48:47
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

怪物の牙から逃れ避難生活を耐え忍ぶ間に、土壌の成分が大きく変化していた。「どうしてこんなことに」畑を調べた住民が目を疑い、あるいは嘆く。彼らの背中を見ていた藍に耳打ちされた。「何も作れないの?」不可能とは限らない。別の作物なら育つ可能性はあるが、従前と勝手が違うなら喪失と同じだ。

2020-11-22 19:20:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2620。土壌。 その土地に何が起きたかを示す手がかりでもあるけれど。

2020-11-22 19:20:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「身命をなげうつ覚悟まで求められたのか、あの小娘に」男が発した言葉にたじろいだ。彼は藍の父親によれば様々な裏工作の担い手だという。雪明かりを反射する青白い肌は幽霊のようだ。「貴様の話が事実なら、正攻法ではその夢に辿り着けまい」鋭い眼光が窓の外へ向けられた。庭に藍がいるのだろうか。

2020-11-23 19:12:04
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2621。擲つ(なげうつ)。 この人物は前にも一回だけ登場しています。何でも「叶える」人。 調べたらルート140の4巻(plag.me/p/textrevo_ex2…)にいました。気になる方は年末年始の #テキレボEX 2をチェック!

2020-11-23 19:12:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

駅前の賑わいが気になると言って藍が助手席側の窓を開けた。改札前にできた半円形の人だかりは恐らく誰かの到着を待っている。そよ風の偵察を受け、魔女は人々が持つ横断幕を読み上げた。私はアクセルを踏んだ。「急にどうしたの」「窓を閉めてください」頭領を出迎えた彼らは魔女狩りを始めるはずだ。

2020-11-24 18:46:22
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2622。賑わい。

2020-11-24 18:46:23
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「僕には荷が重すぎます」青年は平身低頭をやめない。この家の人々からは忠実な僕と聞いていたので、同じく使用人扱いの私から頼むのがまずかったかと一瞬疑った。だが彼は、藍の指示と承知の上で、重ねて辞退した。「お嬢様のダンスの練習相手など、素人にはとても務まりません」顔がひきつっている。

2020-11-25 19:09:43
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2623。僕(しもべ/ぼく)。 誰もが同じ素養を持つとは限らない。

2020-11-25 19:09:43
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