【本当にあった追放もの】その男の名は「范雎」、今より2千数百年前、春秋戦国時代も終わり頃
- kagamisan1111
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まぁ昨今は「追放モノ」というのが流行りだそうですね。 すごく優秀なのに、集団から偏見で追い出され、その後他のところで立身出世し、元いた集団が自分がいなくなったことで危機となり、助けを求められるも「もう遅い!」と言って拒絶するというカタルシスが受けているんでしょうか。
2020-12-27 23:30:17「自分のすごさを認めなかった者たちが、自分がいなくなったことで苦境に立ち、自分にすがりつくが、それを袖にする」まさにザマァミロの局地です。 下手な麻薬よか気持ちいい瞬間でしょう。 こういうの「現実味がない」とも思われますが ところがどっこい歴史は深い。 最高クラスでやった人がいます。
2020-12-27 23:32:55その男の名は「范雎」、今より2千数百年前、春秋戦国時代も終わり頃の人です。 この人、戦国七雄の一つ「魏」の国の人で、頭がよく努力家で誠実な人物でしたが、いかんせん家が貧しく、そのため周りから舐められ、シュカという外交官の家来をしていました。
2020-12-27 23:37:22ある日シュカは隣国の「斉」の国に使者として向かい、范雎も同行します。そして斉王と謁見するのですが、この斉王は人を見る目があったので、范雎をひと目で気に入ります。 そして「キミのような優秀な人物を冷遇するとは」と、ウチの国に来なさいよと、ヘッドハンティングまでします。
2020-12-27 23:38:57ですが范雎は丁重に断ります。 冷遇はされているが、雇ってくれたシュカや魏の国を裏切れなかったのです。 「ならせめてこれを持ってきなさい」 と、高級肉と高級酒と財宝のセットを贈られますが、 「お気持ちだけで」 と、それすら断ります。 范雎は誠実な男なのです。 pic.twitter.com/6RZEzR3uTV
2020-12-27 23:41:10誠実な范雎は、そのことをちゃんと上司のシュカに報告しました。 ですがシュカ、「自分の頭越しに他所の国のトップに可愛がられるなんて!」と嫉妬します。 なので、「お前、それやべーよ、外交問題だよ、事後確認とかないわ―、報連相しろや!」と大事にし、自分の上司に報告すると言い出します。 pic.twitter.com/lFgCZPzATu
2020-12-27 23:43:08シュカの上司は、魏の太子でした。太子・・・つまり王子様ですね。シュカは小者です。善人ではないですが、悪人でもありません。せいぜい、魏太子にメチャクチャ怒られ、今後出世できなくなる・・・くらいと思い報告しました。 pic.twitter.com/NUE2jWvJaY
2020-12-27 23:46:38ところがこの魏太子、実は彼も以前「斉」の国に使者として赴いたものの、斉王から、「あ、こいつ小者だな」と看破され、塩対応をくらい、それがトラウマになってました。 その彼に、「自分の部下の部下が斉王からめっちゃ褒められた」の報告をしてしまったのです。 pic.twitter.com/7SJ2w3iX9V
2020-12-27 23:48:18「なんで王子の俺が塩対応で、貧乏人の小倅の范雎が肉と酒なんだよ!」と激怒します。 理由は簡単、無能と有能の違いです。 しかし認められない魏太子は、 「范雎は裏切って魏の国の情報を売ったからだ! それいがいにない!」と思い込みます。 斉王の人を見る目正しかった。 すごい小者だった。 pic.twitter.com/E2hWA3u0MS
2020-12-27 23:50:41魏太子に問い詰められる范雎。 しかし、誠実な范雎は、理路整然と返します。 「外交の立場で来ている以上、隣国の王の誘いは断れない」 「自分は一切情報を漏らしていない」 「贈り物も辞退した」 「そもそもそれを自分から報告した」 正論につぐ正論でした。 pic.twitter.com/TXjco1Thcr
2020-12-27 23:53:41しかし世の中、正論が通れば苦労はありません。 むしろ、感情に任せて他者を攻撃し、正論で反撃されたら、「傷つけられた!」と喚く人もいます。 昨今で言われる「ロジハラ」認定です。 「てめぇ默まって謝れば許すところを、逆らいやがったな、俺は傷ついたぞ!」と激怒する魏太子。 pic.twitter.com/p01XyqcnJl
2020-12-27 23:55:23怒りのあまり、クソ硬い樫の木の棒で殴りまくります。 骨を折り、歯を砕き、4/5くらい殺します。 それで終わること無く、簀巻きにして、厠に捨てます。 古代の中国の厠は、大きな穴を彫って木の板を渡し、隙間から用を足すスタイルです。 その穴の中に捨てました。 pic.twitter.com/0emOaWtSzm
2020-12-27 23:58:35ちなみに昔の中国は、その穴のなかに豚を飼い、排泄物を食わせて処理をさせていました。 こういう経緯があるので、かなりの時代まで、「豚は汚らしい生き物なので、高貴な者は食うべきではないとされていました。 pic.twitter.com/vy8KxVEkvo
2020-12-28 00:00:16まぁそんなこんなで、死んだと思われた范雎・・・そして数年後、そんなことも忘れた頃に、范雎の上司だったショカは、今度は「秦」の国に行きます。 そう「キングダム」でお馴染みの、あの「秦」です。 pic.twitter.com/CbmyXitUZN
2020-12-28 00:01:23当時「秦」の国は、あらたに宰相(国家の最高政治指導者)となった張禄の元、凄まじい勢いで政治改革が進められ、戦国七雄の最強国となっていました。 ショカはその秦と友好条約を結ぶために訪れたのです。 失敗すれば、魏の国の危機です。 pic.twitter.com/1ilP7STdH7
2020-12-28 00:03:48しかし、時の人張禄は忙しく、ショカは何日も待っているのに一向に謁見できません。ぶっちゃけ、秦国強すぎて、魏国は舐められていたのです。 「どないしたもんやろ」と困っていたショカは、ある日人混みの中に、見知った顔を見つけます。 そうです、范雎です。
2020-12-28 00:05:25死んだと思った范雎、実は九死に一生を得て生きていました。その後、秦に逃れ、「とある方の下働きをしております」とのことだった。 ショカ、小者ですから、善人ではないが悪人でもありません。なにげに罪悪感抱いていました。 「そっかーお前生きてたかぁ」と大喜びします。
2020-12-28 00:06:52范雎、みすぼらしい身なりで、お世辞にもいい暮らしをしているとは思えませんでした。 「あ~、こいつ、ここでも上手くやれてないんだな」と思ったショカ、憐れみの心を抱き、范雎に飯を食わせてやり、自分の古着をくれてやりました。 pic.twitter.com/exlOv9rMDy
2020-12-28 00:10:23ちなみにショカのような「相手が自分より立場が下で弱い」とかけてやる情けを、「婦人の情」と言います。 「考えなしの思慮分別のない脳筋」を表す「匹夫の勇」と対となる言葉ですが、昨今はほぼ死語となりましたな。まあ無理もありません。 pic.twitter.com/siBXper2k9
2020-12-28 00:13:05とはいえ范雎、ショカが困っていると聞いて、 「私の今の主が、宰相の張禄様と縁があるので、会えないか頼んでみましょうか?」と申し出ます。 大喜びするショカ、さっそく頼むと、次の日には迎えの馬車が来て、范雎も一緒に行くことになりました。 pic.twitter.com/TCZoab5roh
2020-12-28 00:15:53さて、秦の国の王城の正門に着いた馬車。 范雎は「準備ができたら呼びますね」と先に入ります。 しかし、それからどれだけ待っても、戻ってきません。 首をひねるショカ、門番に 「おい、さっき入った范雎ってやつを呼んできて」 と頼みます。 そしたら門番、不思議そうな顔をして答えました。
2020-12-28 00:17:31「なに言ってんだ。さっき入られた方は、この国の宰相、張禄様だぞ」と―― そう、ここまでくればわかりましたね。 范雎、死にかけの体で厠から逃げ出した後、秦の国に渡り、大出世しまくって、宰相になってたのです。 張禄とは、范雎の偽名だったのです。 pic.twitter.com/ODmawzHWFQ
2020-12-28 00:19:28それを見計らったかのように、入城の許可がおります。 ショカがガクガク震えながら入ると、上座にどかっと座る、宰相の衣と冠をまとった范雎がいます。 「なにか、言いたいことは?」 と告げる范雎に、ショカは全裸土下座して許しを乞います。 pic.twitter.com/Byl477NGwT
2020-12-28 00:23:33「ホントはお前を殺すつもりだった」 范雎はあの日の恨みを忘れていませんでした。 「だが、お前は貧しい身なりの俺を見て、メシを食わせ、服をくれた・・・その情けに免じ、殺すのは勘弁してやる」 しかし、范雎はそれでも、誠実な男でした。 彼は、受けた恩には必ず報いる人物だったのです。
2020-12-28 00:25:02「そうビビるな、今夜はお前のために各国要人を集めて、パーティー開いてやるよ」とまで言います。 涙を流して喜ぶショカ、そしてその日の夜。 要人や大物が集まる宴の中、ショカに与えらた席は、末席も末席、地べたでした。 しかも出された食事は・・・ pic.twitter.com/keD0V0hiFn
2020-12-28 00:27:25