非物質経済での雇用促進
- ShinShinohara
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新しい経済が、GAFAやzoomのような、「非物質経済」に移行するだろうことは、多くの人が感じていることだと思う。課題は、非物質経済でお金の流れを握る人間が少数に止まるということ。 ictj-report.joho.or.jp/2007/sp01.html
2021-01-10 08:21:13実際にモノを作る経済(物質経済)では、雇用が生まれやすかった。たとえばパナソニックは、かつての松下電器時代の勢いはないにしても、27万人の雇用。他方、今をときめくアップルは13万7千人。 トヨタは約40万人、グーグルはわずか8万5千人。総資産は非物質経済が巨大なのに、雇用ちっちゃい。
2021-01-10 08:26:50物質経済は、中国や韓国などの新興国が技術的な追い上げを見せ、パソコンやスマホなどの最新機器も、どんどん安くなる「工業製品デフレ」状態。物質経済の企業は、簡単に人の首を切れないのに売上がどんどん小さくなり、雇用も給料も増やせないジレンマに陥っている。
2021-01-10 08:30:13他方、非物質経済は、iTunesだとかAmazonとかGoogle検索だとかFacebookだとか、みな、プログラム。プログラムを作成すれば自動的にサービスを提供できる。人はあまり要らない。プログラムを作成できるごく少数の人間だけが莫大な儲けを総どりできるシステム。
2021-01-10 08:32:57物質経済が縮んで、その中で雇われている人間は、わずかな儲けを分け合って汲々とする中、非物質経済はネットの普及とプログラムの自動的なシステムのおかげで、わずかな数のIT人材が泡銭を手にする、という構造。このままでは、貧富の格差は巨大化する。いや、すでにしている。
2021-01-10 08:35:43では、非物質経済が今後成長するとして、その世界で食べていける人材を育てればいいんだな、と考えたくなるが、話はそう単純にいかない。皆さんご存知の通り、非物質経済は「そんなに人が要らない」。アマゾンやFacebookは、自動システム。一度動き出したら勝手に稼いでくれる。人はあまり要らない。
2021-01-10 08:38:10しかも、検索ならGoogleだけで十分、というように、便利な非物質サービスは寡占化が進みやすい。しかも、グーグル検索やアマゾンのネットショップ、Facebookの交流サービスなどは、システム自体は消費者側には無料で利用できる。タダだからみんな利用する。後発はもう勝てない。
2021-01-10 08:41:29雇用を全然増やさないのに、売上がどんどん伸びていく非物質経済。売上が全然増えず、むしろ工業製品デフレに苦しむのに、雇用を減らすことは批判を浴びるから、なんとか踏みとどまらざるを得ない物質経済。不公正な競争条件だと言えるかもしれない。
2021-01-10 08:44:52では、非物質経済は雇用を増やせないのかというと、実はそんなことはない。なぜか?実は、古い経済である物質経済も、元はといえばそんなに「人は要らない」システムだったからだ。それがどうしたわけか、人を無理にでも雇用するようになった。その歴史的経緯を見れば、非物質経済も雇用が増やせる。
2021-01-10 08:48:07戦前、工業は人をなるべく雇わず、雇うとしてもなるべく安い賃金でこき使おうという産業だった。資本家は、安い労働力で売上の最大化を狙うのは当然のことと考えていた。だから工業に勤める労働者は、紡績工場が典型的だが、生活苦にあえぐことが多かった。チャップリンの「モダンタイムス」は典型。
2021-01-10 08:52:33そのあまりに過酷な労働環境に耐えかねて、マルクス主義が人気を得た。ソビエトが誕生すると、資本主義と自由の国であるアメリカでさえ共産主義が吹き荒れ、いつ共産化するか分からない状況に追いつめられた。
2021-01-10 08:55:31ここで、三人の人間が登場する。オウエン、フォード、ケインズ。この三人により、工業(物質経済)はなるべくたくさんの給料を払い、たくさんの雇用をする流れを作った。三人の流れができるまでは、なるべく人を雇わず、雇っても低賃金だった。それが逆転するようになった。
2021-01-10 08:58:44まずオウエン。それまでの工場は、安い賃金でこき使うのが常識だったのに、しっかりした給料、充実した福利厚生を用意した。当時の資本家が「そんなことしたら会社が潰れる!」と考えるような大改革。ところが、オウエンが引き受けた工場は世界一の品質の糸を紡ぐことに成功、大儲けした。
2021-01-10 09:02:25従業員に十分な給料を支払って報いる、という実例を、フォードが再現した。当時、金持ちしか持てない高嶺の花だった自動車。これを製造するのに、労働者に十分な給料を保証。しかも週休二日、1日労働時間八時間。当時の資本家が「そんなことしたら会社が潰れる」と思う大改革。
2021-01-10 09:05:48ところがフォードは、自動車の大量生産に成功。爆発的に会社は成長。自社の従業員は、高い給料で自動車を買い、乗り回すように。 フォードは、「労働者に給料で報いれば、お客さんになってくれる。経済がそれでさらによくなる」と考えた。そしてその考えを実現した。
2021-01-10 09:08:43しかしオウエンやフォードの取り組みだけでは、「変わり者」扱いで終わった。事実、オウエンやフォードのやり方は、当時の資本家たちから評判が悪かった。「そんなに労働者にお金を渡したら甘やかすことになり、サボるし、会社の利益は圧迫するし、商品価格は高くなるし、そもそも会社が潰れる」と。
2021-01-10 09:11:12しかし労働者を安くこき使う社会が産業革命以来長く続き、共産主義が欧米諸国で吹き荒れ、資本家たちは「このままだと国が共産化してしまう。そうなると我々金持ちは全財産没収されてしまう」と恐怖した。そうならない社会、共産主義とは違う資本主義のシステムを求めた。
2021-01-10 09:13:51そんな時代背景の中で登場したのがケインズ。ケインズはオウエンやフォードなどの「変わり者」の行為を、普遍化する経済理論を提唱した。労働者にはなるべく報酬を増やす。すると彼らは消費する。モノが売れる。工場儲かる。報酬が増え、消費が増え、経済が成長する、というモデル。
2021-01-10 09:16:46ケインズの理論では、資本家は利益を独占できない。労働者に分厚く配分しなければならず、不承不承であったろうが、共産化して全財産を失うよりマシ。 戦後は特に、アメリカでもドミノ理論が信じられ、世界はすべて共産化すると恐怖されていた。だから資本家はケインズ理論に飛びついた。
2021-01-10 09:19:03その結果、戦後社会では、モノ作り(物質経済)では、なるべくしっかりした給料を労働者に支払うようになった。そればかりではない。失業者が現れると共産化しかねない。だから政府は無理にでも人を雇うように企業に要請し、失業率の低下に努めた。
2021-01-10 09:21:27こうした、働く人に高い給料でなるべく手厚く報いる「修正資本主義」が、欧米諸国や日本で根付いた。これはソビエトなどの共産主義国より成功し、国民全体が比較的公平で、しかも豊かな社会を実現した。 物質経済が人をたくさん雇用したのは、「共産主義への恐怖」があったから。
2021-01-10 09:24:09歴史をこうして振り返ると、物質経済だって、そんなに人は要らなかったことが分かる。けれど共産化が恐かったから、資本家は労働者に利益を分配することを承諾し、高い給料と多めの雇用が実現した。オウエン、フォード、ケインズの三人がこの流れを作った。
2021-01-10 09:27:01では、非物質経済はどうか。GAFAに勤める、高いスキルをもつごく少数の従業員は、比較的高い給料をもらって報いられているようだ。しかしアマゾン倉庫で働く人、下請け企業、システムに従属せざるを得ない中小零細企業は、安い報酬に甘んじざるを得なくなっている。儲けの大きさを考えれば、不公正。
2021-01-10 09:29:53後は、GAFAなどの成功者に、雇用を増やすこと、末端まである程度の給料を出すことを承認させる、現代のケインズと、その理論を現実化する社会の動きさえあればよいことになる。物質経済が抱えきれなくなった雇用を吸収してもらう必要がある。
2021-01-10 09:32:24私は、グーグルやアマゾン、Facebook、アップルなどGAFAに雇用を義務づける代わりに、「有料化」を義務づけるのも一つ、と考えている。たとえばグーグル検索の月利用料を一人百円とか、有料化を義務づけ、それにより収益を保証する代わり、雇用を増やすよう強く求める。
2021-01-10 09:35:03