プレリュード・オブ・カリュドーン 5/7

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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【プレリュード・オブ・カリュドーン】5 / 7

2021-01-14 21:00:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヒートリー、コマキタネー……。アカチャン……。 1

2021-01-14 21:03:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

時刻は宵の入り。岸辺の広告音声が、ネオンライトを揺らめかせる水面を渡る。タマ・リバーをゆっくりと進行する屋形船は不気味に静まり返っていた。屋形船の瓦屋根の下、タタミ敷きの宴会広間は、死と沈黙と、そして色付きの霧で満たされている。 2

2021-01-14 21:06:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この屋形船でセッタイを行っていたゴウザメ社の第三営業チームとクルモコ・ファイナンスの支店長、ライブ・スシを握っていたイタマエ、白磁皿の上の活造りのバイオ鯛、全てが焼けただれ、死んで冷たくなっていた。 3

2021-01-14 21:09:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そう、船内の全ての生命体が……否。霧の中、死体の間を歩き回り、証拠写真を収めていくニンジャ・アサシンだけが生者であった。彼の右腕には、用いた凶器であるアシッドクラフト・ジツの名残が……凶悪な刺激臭を含んだ致死の霧がまとわりついていた。彼の名はアシッドフォージ。 4

2021-01-14 21:12:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

仕事を終えた彼はその時、不意に空気の変容を感じた。「……」振り返ったアシッドフォージの視線の先で、ニンジャがスシを食べていた。ライブ・スシで握られ、誰にも手をつけられないままになっていたサーモン・スシであった。「うん。まあ、食える。酢が入りすぎてしまったようだが……」 5

2021-01-14 21:15:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そのニンジャはアシッドフォージが瞬時に警戒と殺意とカラテを高める事にほとんど構わず、サーモンを味わっていた。「痛いぞ、空気が。お前のジツだな。まとめて殺したわけか」ニンジャが纏うPVCのレインコートにホロノイズが走り、煙が立ち昇る。酸の霧がその者を苛んでいたが……平然としている。 6

2021-01-14 21:18:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アシッドフォージは眉根を寄せた。「何者だ」「ネオサイタマは湿っていて暖かい。気に入ったぞ」「……何者だ」「俺か? 俺はな……」ニンジャはスシを咀嚼し終えると、オシボリで手を拭い、ゆっくりと立ち上がった。背の高い、秀でた体格のニンジャだった。「……ドーモ。アヴァリスです」 7

2021-01-14 21:21:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ。アシッドフォージです」アシッドフォージはこの者の意図とカラテを測る。彼のニンジャ第六感を一時的に欺くほどに練られたニンジャ野伏力。ふざけた大胆さは、裏を返せば実力のあらわれか。アシッドフォージの酸の霧の中でカラテを保てるニンジャはそう多くない。「どこのカイシャの者だ」8

2021-01-14 21:24:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺はカイシャの人間ではない」アヴァリスは微笑んだ。「お前の仕事に興味はない。お前に会いに来たのだ」「……私に何の用だ」「楽しげなジツの気配を感じた。お前のその……フフ……そのジツは、それなりに珍しいものだ。カトンやコリ・ジツのようには偏在していない。だから味を確かめたい……」 9

2021-01-14 21:27:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アヴァリスの恍惚が、恐るべき殺気に裏返った。アシッドフォージは仕掛けた!「イヤーッ!」酸の霧を瞬時に手元へ吸い寄せ、凝縮し、鼈甲色の刃で右腕を覆った。そしてアヴァリスに刺突を繰り出した!アヴァリスは両手を広げ……アシッドクラフト・ジツが生成した刃の刺突を、受けた!「グワーッ!」10

2021-01-14 21:30:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムサン、胴体貫通!「嗚呼……焼けるようだ!ハッハハハハ!」アヴァリスは笑った。アシッドフォージ優位の筈であった。致命傷の可能性もある。だがアシッドフォージは気圧され、この正体不明の敵から間合いを取らねばならないと感じていた。 11

2021-01-14 21:33:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アヴァリスの目が闇色に輝いた。そして……「イヤーッ!」アヴァリスの両手首が裂け、傷口から酸の霧が噴出し、それぞれの手に鼈甲色の刃を形成したのである!「嗚呼……これがアシッドクラフト・ジツか!不思議なものだ……!確かにニンジャを殺すならば霧では心もとない。刃か。よいジツだ」 12

2021-01-14 21:36:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イ……」アシッドフォージは笑うアヴァリスの胸から刃を引き抜いた。刃は彼の手からするりと抜け、かき消えた。新たな刃を生成する事もできぬ。封じられたのか?「イヤーッ!?」アシッドフォージはチョップを打つ。その手首、肘関節が、アヴァリスの二刀流斬撃を受けて切り裂かれ、吹き飛んだ。 13

2021-01-14 21:39:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

怯むアシッドフォージの眼前、アヴァリスは踊るように二刀流を構えた。「フフフハハハ、なかなか良いジツだ!」「イヤーッ!」ヤバレカバレ!アシッドフォージはもう一方の手で攻撃!「イヤーッ!」アヴァリスは身を沈めてチョップを躱し、下から上へ、竜巻めいて回転しながら斬り上げた! 14

2021-01-14 21:42:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバーッ!」アシッドフォージはバラバラに切断されて吹き飛んだ!アヴァリスは回転着地し、無残に切り裂かれたアシッドフォージを振り返った。「サヨナラ!」アシッドフォージは爆発四散!「……なんと」アヴァリスが浮かべた表情は会心の笑みではなく、不服の色だ。 15

2021-01-14 21:45:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「せっかちな奴だ。味わう暇もない」アヴァリスは酸の刃を回転させ、撒き散らされた鮮血を絡め取ると、無造作に放り捨てた。刃は「御無体千万」とショドーされた掛け軸に深々と突き刺さり、崩壊し、酸に戻って、掛け軸と壁を焼き焦がした。 16

2021-01-14 21:48:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

アヴァリスは肩をすくめると、サーモン・スシの残りを手に取り、舌鼓を打った。「まあ、食える。うん。しかし、イタマエを殺すとは、なんと罰当たりな。ははは……」そして彼は窓越しにネオサイタマの川岸の夜景を眺めた。「ニンジャスレイヤーの味はどうだ。食いごたえがあるだろうか?」 17

2021-01-14 21:51:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【プレリュード・オブ・カリュドーン】5 / 7 終 明日も新たな狩人を目撃せよ。

2021-01-14 21:54:00