- motidukinoyoru
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悪い意味で話題になっているマンキューのMMT小論について、himaginaryさんが要約してくれている himaginary.hatenablog.com/entry/20200114… ので、検討しておくのに大変役に立つ。 藁人形論法的批判もあれば、興味深い論点もあり、私的に考察しておく。
2021-01-15 11:59:00まずはこの点。 要するに、国債金利であれ、準備預金付利であれ、累積的な利子がインフレをもたらすという問題意識。 実は”これこそ”、MMTerが強調するところで、ここから国債制度や金利政策に対する批判が出てくるし、古くはミンスキーも国債利払いによる不平等なインフレーションを懸念していた。 pic.twitter.com/Nc9uMUs2XI
2021-01-15 12:00:50参考: Money and Banking Part11: Inflation econintersect.com/a/blogs/blog1.… Functional Finance: A Comparison of the Evolution of the Positions of Hyman Minsky and Abba Lerner levyinstitute.org/publications/f… いずれもかなり重要なペーパーと個人的に思っている。
2021-01-15 12:03:11この意味で、マンキューの考えはある程度正鵠を射ている一方で、MMT批判どころかMMT同調的であり、あまりマンキューがMMTの文献を読み込んでいないことが分かる一節となっている。
2021-01-15 12:04:30次にこの点。 この点については、マンキューが外生的貨幣論者なので、現実の経済に近づけて考えようとすると色々意味不明になる。 検討するにあたって、マンキューがどういう風に貨幣経済を考えているだろうかという推測と、マンキューの考えと現実のギャップについて前もって論じておく → pic.twitter.com/Ldxa0nUzQh
2021-01-15 12:06:48要するにここでマンキューは、準備預金を"free money"と考え、利子がなければ又貸しされていくことになると考える(だから融資が増えるとかどうとかいう話になる)。 しかし実際には、準備預金は又貸しされない。信用創造において実際にコストとなるのは、発行する銀行負債に対して発生する利子の方。
2021-01-15 12:10:27実際には、準備預金拡張が短期金利をゼロに張り付かせても、銀行融資は刺激されなかったというのが史実である。 「それは流動性の罠 or 長期停滞だから」という言い逃れは一応出来るが、そもそも元が不況でないならMMT派ですら過大な財政赤字を許容しないので、批判が噛み合わないことになる。
2021-01-15 12:13:48続いてこちら。 これはCagan的なハイパーインフレーションモデルの話。 インフレーションに対して財政赤字による実物資源調達の水準を維持しようとする政策(インフレを追いかけてどんどん支出を増やす政策)はもちろんインフレを加速させるだろうが、そのような政策はMMTer的にも許容されないだろう。 pic.twitter.com/f1sM9KE5bl
2021-01-15 12:17:41HIのモデルについては、『ハイパーインフレーションの理論を非数学的に解説』 togetter.com/li/1031258 にて検討したので参考に。 インフレ下で実質購入を維持しようとどんどん財政赤字を増やそうとしたら高インフレに帰結するだろうが、そうした政策をMMTと安易に結びつけるのは藁人形の極みである。
2021-01-15 12:21:03次にこれ。 これはラインハート=ロゴフ本(This time is different, 邦題は「国家は破綻する」)の話で、政策失敗によって破綻した通貨体制は、デフォルトと通貨刷新によって対処される可能性もあるという話。 それはそうなんだが、これをMMT批判に紐づけるのは流石に軽率に過ぎるであろう。 pic.twitter.com/vKg0OYrwnX
2021-01-15 12:24:38ここは正直色々酷い。 要するにマンキューは旧来の「貨幣高→インフレ」の外生的貨幣供給論への執着を躊躇っていないし、これを発表することに躊躇がないというのは、学会の傾向を物語っているものにもなっていそうだ。 周知の通りと思うが、インフレは概ね物価上昇が(貨幣増加に対して)先行する。 pic.twitter.com/b6F5EbeAeH
2021-01-15 12:27:21物価上昇が(貨幣増加に対して)先行するということは、ジンバブエのハイパーインフレの件でも指摘したし togetter.com/li/1580184 、またリチャード・ヴァーグの記事『マネーサプライの急激な増加はインフレを引き起こさない』 econ101.jp/%e3%83%aa%e3%8… という記事も重要。
2021-01-15 12:31:40何故そうなるかというと、内生的貨幣供給理論と貨幣需要(貯蓄需要)変動の合わせ技によってなのだが、それに対しての反論が「インフレと貨幣の伸び率の相関」というのは、全然何の論拠にもなっていなくていかにも苦しい。
2021-01-15 12:36:39ここらへんは逆に重要な論点。 一般にオールドケインジアンとニューケインジアンが一貫して単純な総需要-総供給でインフレを考えるのに対して、ポストケインジアン(及びその周辺)は、マークアップのメカニズムを追加で考慮に入れる。この文脈の中で裁量的財政政策が批判されてJGが主張される。 pic.twitter.com/sUdm6yGSJ6
2021-01-15 12:45:19ここでマンキューは、PK的問題意識に理解を示しつつも、MMTの政策論を「価格統制」とレッテル貼りして批判するのだが、JGを価格統制と呼ぶのは普通に勇み足だし、医療費政策etcのように、国家的な介入で価格”調整”を試みることまで批判するとしたら、それこそ経済学的にすらサポートされないのでは?
2021-01-15 12:52:29以上が個人的雑感。 素直な感想としては「もう少し真面目にMMTerの先生方とディスカッションした方が良いのでは?」に尽きる。 (一瞬だけレイとミッチェルにメールを送りつけただけらしい) ミッチェルが激怒してマンキュー論文に長々と反論しているので、以下にリンクを貼っておく。
2021-01-15 12:55:44A response to Greg Mankiw – Part 1 bilbo.economicoutlook.net/blog/?p=43900 Part 2 bilbo.economicoutlook.net/blog/?p=43961 Part 3 bilbo.economicoutlook.net/blog/?p=43997 経済学101にて翻訳予定。 ?「出す・・・!出すが・・・今回まだその時と場所の指定まではしていない そのことをどうか諸君らも思い出していただき(以下略)」
2021-01-15 13:00:48ビル・ミッチェル「グレッグ・マンキューへの返答 – Part 1」(2019年12月23日) econ101.jp/%e3%83%93%e3%8…
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