「暗号通貨の本源的価値は人権」説の議論
まとめに入る前の基礎知識
話の発端はこうです。
日本の金融庁の「暗号資産(=仮想通貨、暗号資産)の本源的価値は観念しがたい」というコメントに対して、納得できない人々——特にイーサリアム界隈を主戦場として新規プロダクトの開発に取り組む起業家たち——が考えをめぐらせていました。
話の前段として、暗号通貨の特徴をまとめておきます。
ビットコイン(BTC)には、次のような特性があります。
(1) 国家権力を含む何者も、ビットコインのブロックチェーン上での個人による富の所有、移転を妨げることはできない。
(2) アルゴリズムで規定された貨幣発行の仕組みを提供する。国家による通貨発行とは異なり総発行量はあらかじめ規定されている。
イーサリアム(ETH)には、次の特性があります。
(1) はビットコインと同じ。
(2) 任意のプログラムを実行するプラットフォームとしての機能を備える。これをスマートコントラクトプラットフォームと呼ぶ。この機能を活用し、ブロックチェーンの機能を駆使した分権化かつ自己主権型アーキテクチャに基づくDAO(分権&自律型組織)が、かけ声だけでなく現実に実装が進んでいる。
このように、暗号通貨はきわめて特徴的な機能、概念を実装しており、その機能群とソフトウェアを組み合わせて新ビジネスをつくり出そうとするスタートアップ企業がいくつも登場しています。
次に、これも話の前段として「人権」についてまとめておきます。
人権(human rights)とは、現代の文脈では、第2次世界大戦の反省に基づき国際社会が作り上げた世界共通の普遍的な倫理規範であり国際法体系です。
1948年に国連が採択した「世界人権宣言」を基盤とし、各種の宣言、国際条約が整備されつつあります。
さて、暗号通貨スタートアップ「和らしべ」の井元氏にひらめいた言葉が「人権」でした。
井元氏に、言葉が降りてくる
@datushachikujin 昨日のやりとりを聞いていて、なんとなく水掛け論に近いものを感じました。ある程度は歩み寄りはできても、完全にわかりあえない感じですね。 もちろん、人それぞれ異なる経験をしているので、多様な観点から見返すいい機会ではありました。
2021-02-05 10:18:33@extreme_stretch そうなんですよね。どっちにもメリデリがあるので投資視点だと比較しても水掛け論何ですが。 人権という視点に立つと全く見る景色が変わるんですけど、それも個人の危機感によるのでわかる人が分かればいいと最近は感じますw
2021-02-05 10:23:50日本暗号通貨市場の岡部氏が井元説を拡散
Cryptoの本源的価値は人権であるとの井元説は 非常に良い着眼点。 人権に価値がないなら暗号資産に本源的価値は無く、 国家に依存しない人権に価値があるならBTCやETHには価値がある。
2021-02-07 23:48:19@noritaka_okabe 「クリプトの本源的価値は自由権である」かなと。そして自由権が衝突する他の人権との兼ね合いが体制との摩擦ポイント。
2021-02-07 23:53:42仮想通貨の本源的価値は人権(井元説) やばい、妙に納得してしまった twitter.com/noritaka_okabe…
2021-02-08 06:30:23JPYC株式会社で日本円ステーブルコインJPYCを発行。社会のジレンマを突破する! 責任あるイノベーションを一緒に起こしましょう! Blockchain Award Person of the Year (Japan)受賞 連続起業家/BCCC 理事/ iU客員教授 人口157人の青ヶ島村に住むMr.B.E。
@noritaka_okabe 人間の持つ創造力とインターネットインフラの価値の相乗効果。物理資産から仮想資産へ資産領域が広がったことにより価値の総量は無限に広がる可能性があると考えます。
2021-02-08 07:04:59暗号資産の本源的価値が人権にあるとの見解は(語感の良さで選んだだけかもしれないけど)よくわからない。ここでの人権は自由権としての財産権を指すんだろうけど、単なる消極的権利に本源的価値があると言うためには他の財産権には存在する制約が暗号資産にだけは及ばないことを説明する必要がある
2021-02-08 07:51:44Cryptoの本源的価値を研究する研究者は人権の観点からも検討してほしい。 例えば結社の自由や取引自由の原則が法律や国家権力によって侵害されない為の保証金としてETHやJPYCを使うことができます。 twitter.com/noritaka_okabe…
2021-02-08 09:46:34@noritaka_okabe 補足をありがとうございます!御指摘の性質は確かに仮想通貨の価値を高めるものと思います(stable coinに価値の上振れがあり得るとすればこの点かなとも)。ただこれを人権から根拠づけていくのか、そもそも秘密鍵に資産性を認めるのか、認めるとして不可侵かは伝統的な議論からは悩ましいですね…
2021-02-08 10:16:08@noritaka_okabe ただこの議論の裏にあるのが仮想通貨に本源的価値がない、という一説への反駁であるならば、そこには直接答えていない気もします(ということであってますでしょうか)。そもそも本源的価値ってなんやねんということではあるのですが、多分その説は、誰も価値を担保しないこと
2021-02-08 10:18:43Facebookで「人権じゃね?」 って軽いノリで言ったら説になった(๑╹ω╹๑ ) 岡部さんの拡散力にビビる日々 うーんこの🧐
2021-02-08 10:41:25人権の用語、概念、歴史的経緯のお話
人権は主に ・自由権 ・社会権 ・参政権 がメイン3要素で 自由権はクリプトの独壇場 社会権は国家の方がメイン(あと国連?) 参政権はもちろん国家メインですが、Sg さんみたいにCryptoを混ぜることでもっと良い形に出来るかも という感じで整理してます
2021-02-08 10:12:25@IYRKcryptoJ 自分の興味のど真ん中の話題なので、少しだけ補足させてください。 1948年の世界人権宣言からしばらくの間は、人権(human rights)を自由権と社会権に分けて整理する考え方が主流でした。 人権を規定する最も基本的な国際条約「国際人権規約」も、社会権規約と自由権規約に分かれています。(続
2021-02-08 15:52:46@IYRKcryptoJ なお、国際人権規約では、参政権は「自由権」の一部として扱われています。 ただし、1993年以降は事情が変わっています。(続く
2021-02-08 15:53:32@IYRKcryptoJ 冷戦終結後、1993年に開催された「世界人権会議」の「ウィーン宣言及び行動計画」において「人権は不可分で普遍的である」と宣言されました。 世界人権宣言や各種の人権条約(国際人権法)が規定するフルセットの人権でなければ人権とは呼べない——これが今の世界の合意です。(続く
2021-02-08 15:54:58@IYRKcryptoJ この1993年のウィーン宣言の背景には、当時のシンガポールのリー・クワンユー首相が唱えた「アジアの人権」——個人の自由権より開発独裁による経済成長を優先する考え方——に国際社会がNoを突きつけたという経緯があります。(続
2021-02-08 15:56:07@IYRKcryptoJ ただし例外があり、中国の習近平主席は「国情にあった人権」「経済を優先」という表現で、リー・クワンユーの「アジアの人権」と同様の考え方を示しています。 なので、人権に関する言説は、フルセットの人権を指しているのか、中国/シンガポール型の考え方なのか、注意して見る必要があります。
2021-02-08 15:57:41