進化心理学における「家父長制」の起源

ホモサピエンスのオスが社会を成立させたプロセス
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まとめ 繁殖期のヒトメスが「やんちゃなオス」に惹かれる進化心理学メカニズム ガラスを割るヤンキー=「強いオス」として繁殖期のメスには認識される 6727 pv 4
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

男が女の性と暮らしを支配する「家父長制」の起源とは?それは文明以前から人類社会の伝統的なスタンダードだった。ハーバード大の生物人類学教授R.ランガムは、サピエンスのオスが "死刑執行能力" を進化させた点、成人オス間に "平等主義体制" が築き上げられた点から、その生物学的由来を説明する↓ pic.twitter.com/QvyJLJPeuL

2021-02-12 18:16:22
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ランガムの著書を紹介する前に基本的なことを確認しておこう。 ホモサピエンス社会の特徴とは、それぞれ女をひとりずつ所有している既婚成人男性から成るコアリションが、 "男たちの平等" という原則のもとに、政治やカルト宗教的立法の役目を独占的に牛耳り、女たちの性的支配を行っていることだ。

2021-02-12 18:16:40
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

coalitionとは "同じ目的を達成するために集まった派閥や連合" という意味の進化心理用語で、日本語では単に「連合」と訳されることが多いが「徒党」と訳した方がニュアンスとしてはより正確だろう。サピエンスはチンパンジーと同様の遺伝的組成を受け継ぎ、群れの中で徒党を作ることができる種だ。 pic.twitter.com/CjabGj4Xvg

2021-02-12 18:17:49
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マクロ生物学に精通する人は動物界の決闘が1vs1のタイマンであることを知っているだろう。だからゾウアザラシの世界では肉体的に最も強いアルファオスが100頭以上のメスをハーレムにおさめて性的に独占できる。弱者オスは一頭ずつしか挑んでこない。チーム戦を可能にする認知が進化しなかったからだ。

2021-02-12 18:25:41
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

だが我々ホモサピエンスという動物は先史時代の部族社会でコアリションゲームに適応し、賢い脳を進化させた。《負ける派閥のトップになるより、勝った派閥のナンバー2になる方が良い》という意思決定ルールは人類社会の随所に見られる。このコアリションゲームの基本法則が人間同士の協力を促進する。 pic.twitter.com/jUcRoPYd6H

2021-02-12 18:29:43
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参考: Coalitional Value Theory: an Evolutionary Approach to Understanding Culture link.springer.com/article/10.100…

2021-02-12 18:31:18
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多数の弱いオス同士が徒党を組んで闘えば、最も強くて乱暴なオスでさえ打倒できる。このことを人類の祖先は発見した。農耕文明の興りと蓄財の開始とともに再び社会的強者が経済的資源(金銭)で軍隊を雇うことが可能になるまでは、コアリションゲームは部族内の男性同士の平等化に寄与していたのだ。

2021-02-12 18:35:06
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

" 人間はなぜ〔生物界において〕例外的に向社会的なのか、なぜ何かに導かれて善悪を判断するのか、そしてなぜ悪事を目撃すると介入したくなるほど気にかけるのか…。クリストファー・ボームによれば、その答えは、トラブルメーカーにとって死刑が現実的な骨威となる閉鎖的な小集団のなかにある。" twitter.com/sapiensism/sta…

2021-02-12 18:38:09
🐒 @Sapiensism

「処刑人が支配する先史の社会では、死は逸脱者のもとに垂れ下がるダモクレスの剣であった。そのような状況下では、社会から追放されるリスクを最小限に抑えた者が自然選択される。つまり、誰もがどの行動が『正しい/right』のか、どの行動が『あやまち/wrong』なのかを知る必要があった」。 pic.twitter.com/KA0BiIMJQ8

2020-10-15 23:38:56
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

"ボームは2012年にこう記した。「人間の集団で平等主義が強まるたびに、論理的な適応としてパンドのポス的な存在は支配力を慎重に抑制するようになった…やがて、ほかの動物では進化しなかった良心の原型のような意識が芽生え、類人猿的な恐怖にもとづく自制心が人類の祖先に広がっていったのだろう」"

2021-02-12 18:39:10
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

関連:セルフコントロールモジュール(自制心)の進化について。このモジュールがよく言われるように「計画性」のために進化的に発達したわけではないことには多くの研究者が同意しているが、進化人類学の二大巨頭ボームとランガムは、処刑や追放を回避する為にこの機能が進化したと考えている。 twitter.com/selfcomestomin…

2021-02-12 18:43:05
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

マシュマロ実験などでも有名な「自制心」という認知機能(理性とも呼ばれる)について、多くの進化心理学者はよく言われる"計画性"の為ではなく、"社会的折衝における必要性"から進化したシステムだと考えている。進化心理学者のウィリアム=フォン=ヒッペルは「自制心の進化」について述べている; pic.twitter.com/UXnpNNNJuR

2019-11-30 01:42:41
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

" ボームに倣って推測してみよう。団結によるプロアクティブ攻撃性を用いる最初の段階では、下位の者たちの力は、支配的な男を制御する反権力行為に利用されたにすぎなかった。女性はほとんど影響を受けず、男性のあいだで野心的な者や、気が短く乱暴な者が淘汰された。" twitter.com/selfcomestomin…

2021-02-12 18:44:39
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“「カの強い、ならず者に制裁を加えようとしても、接近戦では、いくら制裁する側の人数が多くても反撃を受けるリスクがあります。しかし飛び道具なら、ならず者を集団で取り囲み、安全に威嚇したり、場合によっては処罰したりすることができるのです」” pic.twitter.com/6hFWyzBIAw

2019-12-04 09:05:23
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

" 権力に対抗するための団結は、強いリアクティブ攻撃性を淘汰していった。次第に男性は温厚な性格で生まれるようになり、他者に暴力をふるう者も減ったのだろう。自己家畜化(Self-domestication)の始まりである。" pic.twitter.com/i2ouNcnR4n

2021-02-12 18:49:32
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エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

" より平和的な種が生まれるこの初期段階で、道徳的感情はほとんど影響を受けなかっただろう。新たな連合の標的は、異常に好戦的な男だけだった。" pic.twitter.com/ZihhHnFjvO

2021-02-12 18:54:32
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" しかし次の段階は、道徳的感受性の進化にとって重要だった。身体的に強いボスを殺す能力を発達させるうちに、下位の男たちは一致団結の圧倒的な力に気づいた。協力して人を殺すことを覚えたのだ。" pic.twitter.com/WDTKMJ9VBK

2021-02-12 18:58:16
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エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

" そうなると、あらゆるタイプのトラブルメーカーは危険にさらされる。団結して人を殺す集団の利益を、不服従によって損なえば、理屈のうえでは脅威を招く。年配の男たちの権力のまえでは、支配的な乱暴者も女子供と等しく弱い立場だった。" pic.twitter.com/zX4sUWRpWp

2021-02-12 19:00:17
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エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

" 小規模社会全般に言えることだが、移動生活を送る狩猟採集民のあいだでは、野心家のボスだけが仲間の暴政の犠牲者ではない。"

2021-02-12 19:00:55
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

"若者が年配者の妻に手を出して処刑されることもある。女たちも、儀式で使うトランペットを見たとか、女人禁制の秘密の道に入ったとか、不適切な相手と性行為をしたといった一見些細な文化規範を破ると処刑されうる。男たちが強いるルールにしたがわない者は、誰だろうと処刑される可能性があるのだ。" pic.twitter.com/o8QOBu8aEz

2021-02-12 19:03:17
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エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

"その結果現れるのが、男性の連合/コアリションが権力を握るだけでなく行使する社会だ。人類学者のアダムソンホーベルが小規模社会の法制度を記録して気づいたことがある。多くの信念体系は「人間は超自然的な力や精霊に支配されており、それらは本来情け深い」といった宗教的な見解にもとづいている" pic.twitter.com/VZiddYMDp7

2021-02-12 19:06:19
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エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

" この種の見解は、不可抗力のせいにすることで信念体系を正当化する。そしてそこから一連の前提条件が出てくる。たとえばイヌイットの第七の前提条件は「女は社会的に男より劣るが、経済的生産性と子育てには欠かせない」だった。男が社会的に女より劣るような逆の体制を示唆する社会は皆無だった。" pic.twitter.com/ZARuJgqk4O

2021-02-12 19:08:09
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エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

" 人類学者のレス·ハイアットが、オーストラリアのアボリジニ社会におけるその効果をまとめている。女たちには自立と文化的な自治の強固な伝統があった。場所によっては女性の秘密結社も存在し、娘の結婚相手選びで最大の役割を果たすこともあった。" pic.twitter.com/omJusm3l4K

2021-02-12 19:12:07
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" しかし、女性の男性への従属がないとはいえ、男女平等ではなかった。男たちの秘密を知った女は、罰として強姦されたり、命を奪われたりすることもある。それに対して、女性の儀式に乱入した男が報復として体を傷つけられることはなかった。"

2021-02-12 19:12:39
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

" また、男たちは近隣の地域社会の住民と会合を開くことができたが、女たちにそれは認められなかった。 男たちは女人禁制の秘儀のために女たちに食べ物を用意させたり、然るべき相手を性的にもてなすよう命じたりもした。"

2021-02-12 19:13:20
エボサイ(EvoPsy) @selfcomestomine

" 男性が独占する宗教的な知識が支配を正当化していた。神々は男性に甘かったのだ。" pic.twitter.com/zbEd4Gj0Dj

2021-02-12 19:15:59