@光@先生 @ray_ligntning の、皮膚に露出した進行癌病変の局所コントロールの話(モーズ軟膏と亜鉛華でんぷんの使い分けを含めて)

皮膚に露出した頭頚部癌や乳癌の局所コントロールは本人のQOLを保ち介護者の負担を軽減するにも重要。鎮痛薬だけでは十分でない緩和ケアの方法がある。
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@光@ @ray_ligntning

奥さんと姫のためなら働ける緩和医です。訪問と重心施設の医者もできる。最近は療養型にも出没。もと頭頸部の癌治療してました。日々感じたことをつらつらと垂れ流しますので嫌ならリムブロよろしく。アイコンとヘッダーはなめこさんより。故郷北信ですが、新天地は南国になりそう。

@光@ @ray_ligntning

頭頸部がんの局所再発・皮膚進行例や乳がん皮膚転移症例を担当する上で重要なのが、患部の収れんと消炎・防腐だ。特に増大した腫瘍の中央部は虚血でほぼ壊死するので、浸出液と感染が必発。特に口腔原発、あるいは口腔が近い頭頸部がんは嫌気性菌を含む口腔内細菌の感染によって適切な処理をしなければ

2020-06-20 06:54:51
@光@ @ray_ligntning

悪臭がすさまじく、本人のliving willを挫いてしまうこともある。必ず対処せねばならない。このように書くと褥瘡にも通じるところがあるようにも思われるが、最大の違いは褥瘡のように積極的なデブリドマンが難しい点だ。なんせ相手はがんである。これ以上の播種はもちろん、口腔底や腋下、頸部では

2020-06-20 06:54:53
@光@ @ray_ligntning

壊死組織の裏はがっつり動静脈だ。壊死組織でマスクされて正常解剖もイメージしにくい。そんなところにやみくもに鋭匙を突っ込めばどうなるか・・・想像するだけで恐ろしい。 同じ理由で、褥瘡処理には一般的な組織を侵すゲーベンクリームやブロメライン軟膏の使用も躊躇われる。太い動静脈壁を

2020-06-20 06:54:53
@光@ @ray_ligntning

化学的にデブリドマンしてくれる薬剤、使いたいだろうか?やむを得ずデブリドマンするにしても鋭匙や剪刀などの固い器具は安全であると確信できる場合しか使用しない。個人的には怪しい場所はシリンジ+ベニューラ針外筒で生食洗浄後にサクションで十分だ(吸引圧によってはサクションですら出血する)

2020-06-20 06:54:54
@光@ @ray_ligntning

さて洗浄した後に、止血や滲出、悪臭のコントロールをどうするか。メトロニダゾールゲルは使い方が簡単で悪臭には著効するが滲出は止まらない。止血・滲出対策も含めた薬剤の選択では、まず昔からあるモーズ軟膏が挙げられる。これは主成分が塩化亜鉛であり、遊離した亜鉛イオンが腫瘍血管と、

2020-06-20 06:54:54
@光@ @ray_ligntning

細菌の細胞膜を硬化させて局所収れんと殺菌効果をもたらす。ただし欠点もあり、正常の皮膚をも侵してしまう。なので周囲皮膚に対してワセリンによる保護が必要となり、在宅緩和で家人が処置を行う場合などはハードルが高くなる。 そこで代替として広まってきたのが亜鉛華デンプンだ。

2020-06-20 06:54:54
@光@ @ray_ligntning

亜鉛華デンプンはモーズ軟膏の一成分であるが、単独で使用した場合でもモーズ軟膏には劣るものの、幹部の収れん・消炎・防腐が可能になる。また粉末なのである程度、その場にある水分も吸収してくれる。 使い方はそう難しくない。皮膚病巣の洗浄・ガーゼふき取り後に散布する。

2020-06-20 06:54:55
@光@ @ray_ligntning

個人的には「うっすら白くなるかならないか」くらいの散布量で効果はあると思っている。もちろんケースバイケースで、滲出や匂いの程度によっては増量する場合もある。もっぱら乳がん皮膚転移で使用されてきたが、皮膚に達した頭頸部がんでも非常に有効なことは確認済み。

2020-06-20 06:54:55
@光@ @ray_ligntning

患者の尊厳を守ること、これも緩和ケアの一部だ。生きていたい、と前向きになれる環境を作ることはとても重要。首からだらだらと血液交じりの液体が出て、悪臭がする。自分がその状態なら、そうと分かって人に会いたいか?外に出たいか?答えはノーだろう。患者が「自分が自分であること」を保ち、

2020-06-20 06:54:56
@光@ @ray_ligntning

少しでも有意義で穏やかな時間を過ごせるように力を尽くしてゆきたいものだ。 以上、セミナー講義資料の一部改訂版でした。何かご意見がございましたら是非ご指摘お願い致します。

2020-06-20 06:54:56
@光@ @ray_ligntning

あ、追記です。 亜鉛華でんぷんは、粘膜に付くのはよくないが皮膚なら問題はないと考えてください。なので乳がん皮膚転移にもっとも使いやすい。頭頸部癌で目や口腔が近い場合は適応を十分に考えてくださいね。

2020-06-20 07:52:34
三成(みつなり) @3narihns

@ray_ligntning 皮膚浸潤、ほんとにQOLを下げますよね。 地方会などでは、症例報告でときどきみますが、まとまったものをみないので、日耳鼻の発表はもちろん、寄稿頂ければ、、、と思います。参照できる対応法があれば助かる! みんな悩んでいる割に、大変だから取り組んでいないところですよね。光先生尊敬します。

2020-06-20 08:39:33
@光@ @ray_ligntning

@3narihns 恐縮です。色々あり半分緩和ケア科所属ですので、どうしてもこのような処置に触れることが多いです。その一方で耳鼻科医としてのカンを失わずにいられるか不安です😥 日耳鼻、ご指摘の通りあまり緩和関連は無いですね・・ 緩和ケア学会にまとめて出そうかと思ってましたが、大ボスとも相談してみます。

2020-06-20 13:40:50

モーズ軟膏をむやみに使いすぎることへの警鐘も。

bao @baobabustroll

菩薩の化身やぷりぷり少年と一緒に巨体紳士猫を揉んだりこねたりしています。 スズリやってるsuzuri.jp/baobabustroll #suzuri

note.com/baobabustroll

@光@ @ray_ligntning

モーズ軟膏凄くいい!!腫瘍が縮んでなくなった!!というツイートを某所で見かけて何とも言えない気持ちに。 モーズ軟膏は抗がん剤ではなく、単なる処置薬剤に過ぎない。従って腫瘍を治すものではない。また腐食性があるので扱いが難しく、正常皮膚や腫瘍の潰瘍面に付着しないよう処置に習熟が必要。

2021-02-27 15:03:38
@光@ @ray_ligntning

上手く扱えるなら皮膚浸潤の感染制御・局所止血にとても有効だが、潰瘍面に付けば患者は痛がるし、正常皮膚に着いたら発赤が出て皮膚炎の原因となる。 モーズ軟膏を塗って腫瘍が縮んで落ちたとしても、それは虚血などのために部分的に壊死して落ちただけであって、腫瘍が治ったわけではない。

2021-02-27 15:03:39
@光@ @ray_ligntning

特に在宅では処置の主体が家族や慣れない訪問看護師となり、皮膚トラブルのリスクが高く気軽に出せるものではない。一方的に礼賛するのは危険。 提携している訪看には緩和認定看護師さんがいて週3回モーズ軟膏塗布という離れ業ができるので出すけど、外勤先はモーズ何それおいしいの?なので出さない。

2021-02-27 15:03:39
@光@ @ray_ligntning

潰瘍面や正常皮膚への付着に気を遣わなくて良いのは亜鉛華でんぷんだ。効果はモーズより多少落ちるが局所収斂・防腐作用がある。これにフラジール3T粉砕+プロペト100gの調剤軟膏で十分局所制御は可能だ。あえてリスクを冒さなくてもよい。 詳しくは以前まとめたこちらも参照されたい。 twitter.com/ray_ligntning/…

2021-02-27 15:03:40
@光@ @ray_ligntning

ロゼックスゲルでもいいけど頸部だと流れが良すぎて垂れてしまうし、それなりに高い。メトロ+プロペトの方が安いよ!! あとoozingが制御しきれなければアルト原末を足すのも良い。 少し匙加減は難しいけど、亜鉛華でんぷん・メトロ軟膏・アルト原末の組み合わせでリスクなく管理する方が私は好みだ。

2021-02-27 15:03:40
bao @baobabustroll

@ray_ligntning 耳鼻科研修中は皮膚瘻を作った舌癌にモーズを塗る先輩に「これは扱いが難しいから注意するのよ」って教わり、その後乳腺外科では花咲いた方にフラジール亜鉛華ミックスを「遠慮はいらんぞたっぷり塗れ!」と指導され、使い分けに疑問だったのでスッキリしました。ありがとうございます!

2021-02-27 15:17:18