
知られざる名作?『クラッシャージョウ』について。
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woody_honpo
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『クラッシャージョウ』がYouTubeで限定配信されている。高画質。 これが再評価の機会にならないかな? 公開当時は、アニメ・ジャーナリズムの評価が不当に低かった印象がある。これはSFアニメ論争で高千穂遙が嫌われていた煽りを食ったのじゃないか?と当時、疑っていた。 natalie.mu/eiga/news/4199…
2021-03-13 15:57:57
『クラッシャージョウ』は日本映画にしてはストーリーテイルに甘えがなく論理的なのだが、これは本当に珍しい。私は「説明不足は能力不足」と言っているのだが、日本の映像作品(特にアニメ)は論理的ストーリーテイルが致命的に弱い。それは観客への「甘え」なのだが、カッコいいと思っているらしい。
2021-03-13 16:05:58
ただ『クラッシャージョウ』は、前半をもう少しテキパキと語れると、もっと良かった。丁寧に語り過ぎて少し重い。ディスコのシーンなどは、長い割りに上手くなく、失敗している。 それを考えると『カリオストロ』の頃の宮崎駿は凄かったね。 しかし、安彦良和も宮崎駿も、30代後半の仕事なんだな。
2021-03-13 16:12:42
『クラッシャージョウ』は安彦良和がラフな第一原画を描き、第二原画スタッフがそれをクリーンアップする方法を採っている。だから、132分の劇場アニメの第一原画の殆どを安彦良和が一人で描いている! 当時「この方法なら劇場アニメの全編を僕の(作画の)タイミングに出来るんです」と語っていた。
2021-03-13 16:26:37
安彦良和は当時『クラッシャージョウ』『アリオン』『ヴィナス戦記』の3本の劇場アニメを作っているが、第一原画方式を採用したのは『クラッシャージョウ』だけだ。さすがに大変過ぎたのだろう。 だから、『クラッシャージョウ』こそが「安彦良和のアニメーション」を心から堪能できる作品なのである。
2021-03-13 16:32:06
ちなみにガンダムⅢ『めぐりあい宇宙』の新作部分も基本的には『クラッシャージョウ』と同じ第一原画方式を採っているはずだ。 当時のインタビューで「『めぐりあい宇宙』で採用したら上手く行ったので、その方法で『クラッシャージョウ』を作った」と話していたと記憶する。
2021-03-13 16:45:06
第一原画のほとんどが安彦良和と言っても、安彦良和は人物の演技の作画には強いこだわりがあったが、メカ作画はそれほどでもなかったから、板野一郎などに任せていた部分もあったのだろう。 twitter.com/woody_honpo/st…
2021-03-13 16:57:22
ミネルヴァの初登場シーンの作画は河森正治で、安彦良和によると「こういうメカデザインをするとアニメーターがどういう思いをするのか、一度知って欲しかったから」描いてもらった、とのことらしい。 『マクロス』を観ると余り響かなかったようですが…😅
2021-03-13 17:01:23
でも、ジャングルに不時着したジョウとアルフィンを海賊たちが夜襲するシークエンスの作画タイミングなんかは、本当に「ザ・安彦良和」という感じで陶然となります。
2021-03-13 17:07:53
『クラッシャージョウ』YouTubeのコメントに「今の作品に比べるとスタッフの数が少ない」というのがあったけれど、当時としても異例の少なさだったのです。 安彦良和は「金田伊功君もこのやり方(第一原画方式)なら彼のスタイルで長編アニメが作れる」と言っていたけれど、結局、誰も真似しなかった。 twitter.com/woody_honpo/st…
2021-03-13 20:48:17
この第一原画方式は元々は東映の『白蛇伝』が採用した方法だけれど、安彦良和は宮崎駿の方法論を参考にしたのではないかと思う。宮崎アニメの「原画チェック」は、しばしば宮崎駿による新たな描き下ろしに近い形になり、作画監督の仕事は宮崎駿のラフ原画をクリーンアップする作業が大半になるらしい。
2021-03-13 20:56:21
『風の谷のナウシカ』の作画監督だった小松原一男は「通常のアニメの作監補佐に近い仕事ですよね。でも、それなら楽なのかというと、これが大変なんですよ!」と話していた。
2021-03-13 20:58:41
『クラッシャージョウ』の作画スタイルの特異性というか凄さ(キーアニメーターが実質的に安彦良和ひとりだけなのだ)はもっと評価されても良いと思う。宮崎アニメは「長編個人映画」とか「ワンマンショウ」と表現されることがあるが、『クラッシャージョウ』はそれを意図的にやろうとした作品なのだ。
2021-03-13 21:10:06
『クラッシャージョウ』と『巨神ゴーグ』を作った頃の安彦良和は、明らかに宮崎駿を目指していた。(特にアニメ制作の方法論において) しかし、そこで(安彦良和なりの)挫折を感じたことで、漫画家への転身を決意したのだろう。
2021-03-13 21:13:22
劇場版『クラッシャージョウ』の公開当時、原作者の高千穂遙が、試写会であるアニメ作家に「こんな体制的な作品を子供に見せるべきではない」と詰め寄られて当惑したとコラムに書いていた。高千穂遙はこのアニメ作家の名前を書かなかったのだが、私は「宮崎駿では?」と疑っている。いかにも言いそう。
2021-03-13 17:33:58
制作中に大塚康生が安彦良和と対談していて、大塚康生は『クラッシャージョウ』に注目していた。だから、大塚康生が試写会に呼ばれて、一緒に宮崎駿が顔を出す可能性はあったと思う。 宮崎駿は観ていないようで、意外に新作をチェックしていましたしね。
2021-03-13 17:39:10
当時の宮崎駿は尖っていて(今もか😅)『うる星やつらビューティフルドリーマー』の押井守や『王立宇宙軍』の山賀博之に厳しい言葉をぶつけていた。その感じに似てるんですよね。(だいたい、普通の人は試写会で作者を批判しない) 宮崎駿は「何か」を感じた作品こそ厳しく当たるクセがあるようだ。
2021-03-13 17:45:24
@woody_honpo ふたりの関係性には大変興味があります。 安彦さんの話によると、宮崎駿に対談を申し込んだ時があって、「誰それ?知らない」と言って断られたとかで、「そんな筈あるか!?」と安彦さんは相当衝撃を受けたと語っていますよねぇ…。 宮崎駿が安彦良和に対して特別な感情を持ってるのではないかと。
2021-03-13 17:48:59
@Tirumu リプライありがとうございます。 あのエピソードには驚きました。知らない筈ないですよね。当時の対談で大塚康生も「以前から上手い人がいるな、と思っていました」と話してましたし。それに押井守によると、宮崎駿は富野由悠季と仲が良くてよく電話をしてたそうですから、いよいよ不思議な感じが…。 twitter.com/woody_honpo/st…
2021-03-13 18:01:19
@woody_honpo 富野さんや押井さんなどに対する感情とは全く違う、何かしらの嫉妬みたいなものがあるんじゃないかと思えてならないんですよね。
2021-03-13 18:21:18
『クラッシャージョウ』のストーリーの「意外なカタルシスのなさ」は当時の高千穂遙がSFでハードボイルドをやりたがっていたことを考えると納得できる。ハメットやチャンドラーの小説みたいなプロットではないか。それに、安彦良和のビルドゥングスロマン志向と反抗する若者趣味が合わさったのである。
2021-03-13 21:37:52
原作の『クラッシャージョウ』シリーズには、作品ごとにSFとしての筋を一本通そうという志が見られるのだが、劇場版『クラッシャージョウ』のストーリーには、それはない。これは高千穂遙が映画というメディアの特性と安彦良和の作家としての資質を考慮した結果ではないかと思う。
2021-03-13 21:46:21
劇場版『クラッシャージョウ』のビルドゥングスロマン志向については、安彦良和はジョウをもっと反抗的に描こうとしたが、高千穂遙がそれを押しとどめたのだそうだ。高千穂遙はクラッシャーをエリートと捉えていたが、安彦良和は「宇宙の土方でしょう?エリートのワケがない」と言っていたそうだ。
2021-03-13 22:28:48
劇場版『クラッシャージョウ』が時々みせるギャグというかおふざけ(真面目ぶることに対する照れなんですよね「照れギャグ」と呼びたい)は、いかにも手塚治虫風で、改めて安彦良和は正統的な虫プロの後継者なのだなぁ…と思う。 当時の漫画家を使った内輪ネタも、虫プロイズムと考えれば納得できる。
2021-03-13 22:41:06