ロケットの打ち上げは、当たり前のことながらカメラを手持ちで持って追いかけなきゃいけません。遠く小さいカメラを、ファインダーだけで、あるいはカメラの液晶画面だけ見て追いかけるのは、これは無理!視界が狭いもんで、一度見失ったら高速で飛行する物体を再び補足するのは至難の技です。
2011-07-28 11:37:30んじゃどうやってカメラの画角にロケットを収めて追跡しているかというと、右目でファインダーを、左目で実景を見て、脳内で重ねて画角を判断するという技が必要になります。右目の視界は狭いけど、ファインダーを覗いてない左目の視界は広いんで、左目ならロケットを見失わなくて済む訳。
2011-07-28 11:39:19素人がカメラを使うとき、ファインダーを覗いていない目は閉じちゃってますが、プロカメラマンは右目でファインダーを、左目で全景を見てるって話を聞いたことがあります。聞いたときにはさすがプロだのーと感心するだけだったんだけど、高速飛行物体を追尾しようと思うとこれの会得が必要になる。
2011-07-28 11:41:42笹本が最初にこの技を会得したのは、デジタルビデオカメラでの追尾でした。相手はシャトルだったりH-IIロケットだったり。なんせ高い金払って来てますから、撮れるだけの画像は撮りたい。んじゃどうすればいいか考える訳です。
2011-07-28 11:45:22厄介なのが夜間撮影。ロケットってのは爆発的な光量を放つもんで、点火前にくらい周辺に会わせて絞りを開けておくと、点火と同時に光のダマになってしまうのが目に見えてる。手持ちのデジタルビデオカメラはソニーのDCR-VX1000。同行者のもの。
2011-07-28 11:48:48これがソニーの新型機、最初の新規格に対応した準プロ機とも言える機体なもんで、撮影中に絞りの変更が出来る。もちろんズームも出来る。アップも出来る。んじゃどうすればいい絵が撮れるか考える。まずはアップでエンジン部分を狙い、点火と同時にめいっぱい絞り込み、逆に画面はズームする。
2011-07-28 11:50:35こうすると、夜飛び上がるロケットの全景と炎が同時に捉えられるはず。離床を開始したら、今度は絞りを開けながらアップにしつつロケットを追跡する。この段階で、左目の肉眼で全景を、右目のファインダーでロケットを、という一度に二つの画像処理が脳内で必要になります。
2011-07-28 11:51:43事前にイメージトレーニングは散々やったけど、ずるい手として左目の視覚で右側にカメラの形からどれくらいの場所が画角に取られられているか覚えておくってのがけっこー役に立ちます。左目でロケットを追いかけつつ、左目の視界に見えている自分のカメラの角度が変わらなければ撮れているはず。
2011-07-28 11:53:36こういうことやってるんで、ファインダー上でも肉眼でもとっくにロケット本体を見失ってるのに、「あのあたりに消えたはず!」ってカメラ向けてるんで、今回のスロー画像は幸運なことに噴射終了後のロケットがかなり長く画面上に映っています。
2011-07-28 11:55:02EX-F1がスロー撮影中にズームが効けば、もう少しファインダーの画面をアップにしていい画面が撮れたかも知れないけれど、残念ながらその機能はなし。ソニーのデジカメと違って撮影中の絞り変更も出来ませんから、そのあたりはまあ楽っちゃー楽ですな。
2011-07-28 11:56:30で、右目でファインダー覗いて、左目の肉眼でも追跡なんて撮影やってると、その上カメラを縦位置にして追跡すると一気に目の前の撮影環境が変になってしまうんです。通常ポジションでの撮影だってまぐれ狙いみたいなところがあるんで、この上縦位置でのスロー撮影追跡は難しいと思うなあ。
2011-07-28 11:58:10もし、同じロケット発射を撮影するチャンスが三回くらいあれば、一回くらいそういうことやってもいいけれど、残念ながらシャトルもH2Aもうちのロケットも飛んでいくのは一回勝負でやりなおしの機会なんかありません。なんか簡単なトレーニング手段でもないかとは思ってますが。
2011-07-28 11:59:42ロケットは下から上に、鳥や虫は横向きに飛ぶもんですが、アップで捉えた鳥や虫をずっと動画撮影で追跡するってのはいい訓練になります。あと、右目と左目を同時に使う撮影も練習だけならそこらへんで可能です。撮影練習するときは場所を選んで不審者扱いされないようにご注意。
2011-07-28 12:01:25追跡撮影のために、カメラの上に対空機関銃みたいな同心円状の照準があれば楽、とか思ったことはある。ああいうのがあればファインダーを覗いてなくてもカメラ軸線上に撮影対象を捉えておけるはず。
2011-07-28 12:09:54カメラがデジタルになって撮影枚数の制限も現像待ちも事実上無くなった反面、ロケット相手だと撮影が一回限りやりなおしなしの真剣勝負って環境で鍛えられたんだろうなあ。人のところのロケットでも、発射前の緊張って半端ないから。
2011-07-28 12:11:23プロカメラマンのロケットアップ画像がそれほど多くないのは、絞りが難しい、というよりもロケットの炎の光量が大きすぎて現在のカメラでは人が見たように撮ることが出来ないから。もし、撮影画面上の一部分、まぶしくなるロケットの炎だけ絞ることが出来れば、かなりいい絵が撮れます。
2011-07-28 12:13:29夜間に打ち上げられるロケット、例えばH2B初号機なんかの場合、真夜中三時の射点が点火離床と同時に昼間みたいに明るくなります。カメラの絞りってのは一軸につきひとつしかないから、全体の光量を落とすしかないんですな。
2011-07-28 12:14:39ところが、人間の眼はロケットの炎、その光に照らし出されるロケット本体、噴射炎まではっきり見えます。人間の眼だって絞りは虹彩ひとつしかないんで、たぶんこれは網膜に映ったあとの脳内処理の問題です。そして、いまのところそういうふうに撮れるカメラはまだ無い。
2011-07-28 12:16:43だから、人の目で見たような打ち上げ画像ってのは音も含めて存在しないんで、打ち上げ現場にいく良いものが見えますぜ。ロケットの音も衝撃波なんで、スピーカーじゃ再生できないし。
2011-07-28 12:17:59