【ケイジ・オブ・モータリティ】 #5

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(これまでのあらすじ) 凶悪犯罪者の箱庭、要塞社屋廃墟「ポンポン・ビルディング」に異変が起こりつつあった。上層から逃れてきたハッカー、サイダ3はビルから脱出をはかるが、下で発生したソウカイ・シンジケートのカチコミ大規模抗争によって逃げそびれる。

2021-03-17 21:42:09
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(あらすじ) ソウカイヤはただ二人。だがその二人は最強の威力部門、シックスゲイツのニンジャである。ガーランドとインシネレイトは応戦するギャングたちを殺戮しながら上を目指す。一方、彼らとは別の目的からビルに潜り込んだニンジャあり。ヨロシサン社のニンジャエージェント、クレッセントだ。

2021-03-17 21:43:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クレッセントは途方に暮れるサイダ3に暴力でキアイを入れ、臨時社員として雇い入れる。彼女を先導してビル最上層に棲む者のもとへ連れてゆけと。それはヨロシサン製のバイオ蝿を用いる存在であり、対処の必要があるというのだ。業務エレベータを用いて77階まで上昇する二人であったが……。

2021-03-17 21:46:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ギュグン。二人を乗せた貨物エレベーターが震動しながら上昇を開始。クレッセントは腕組みし、姿勢を超然とリラックスさせる。サイダ3はクレッセントから視線を逸らし、液晶パネルの増加してゆく階数字を見る。56……57…58、ガゴッ。なにかに引っかかったような震動。59でエレベーターは止まった。 0

2021-03-17 21:47:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」サイダ3はLANケーブルをパネルから引き抜き、ゆっくりとクレッセントを振り返った。クレッセントはサイダ3の頬を張るかわりに、肩を掴み、後ろに庇った。一瞬後、SMAAASH! エレベーター扉が外側から破城槌じみた衝撃を受け、引き歪んだ。そして唸り声が轟いた!「AAAARGH!」 0

2021-03-17 21:50:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

吠え声の主が何なのか、すぐにわかった。KRAAAASH!その者は歪んだエレベーター扉を強引に引き裂き、醜い胞子状に膨れ上がった体躯をあらわしたのである。肩のあたりに「大銀杏」の漢字タトゥーがある事からも、もともとはスモトリギャングであった筈だが……「AAAARGH!」正気ではない! 1

2021-03-17 21:54:53
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」クレッセントは躊躇ゼロ秒で胞子スモトリの顔面にジャンプ・セイケン・ツキを叩き込んだ。「アバーッ!」膨れ上がったスモトリが破砕し、緑色の血飛沫が散った。いつの間にかクレッセントの顔面はフルフェイス状に変形したメンポで覆われている。サイダ3も慌ててガスマスクをした。 2

2021-03-17 21:58:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

顔を失い肉塊と化した胞子スモトリは垂れ下がるようにしてエレベーター扉を押し分け、うつ伏せに倒れ込んだ。もうこのエレベーターは使えない。クレッセントは振り返った。「出るぞ」「こんなの嘘だ!」サイダ3は叫んだ。クレッセントはサイダ3の頬を殴った。「グワーッ!」「出るぞ」「ハイ……」 3

2021-03-17 22:00:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

薄暗い廊下に二人が降り立ってほんの数秒。メキメキと音を立てて、エレベーターがシャフトを落下していった。クレッセントは肩をすくめて見せた。サイダ3は腰を抜かしそうになったが、再度の殴打に晒されるのは嫌だった。「い……今は……」壁の表示を見る。「じ、実際59階です」「まあいい」 4

2021-03-17 22:03:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

バチバチと音を立て、廊下を狭めるほどに無秩序に設置されたネオン看板が明滅する。擬人化された歯がにこやかに笑う「歯くん」と書かれた絵看板や、擬人化された七面鳥が丸焼きを持って笑う「ターキーくん」の絵看板が不気味に光って、出迎える。「あんなのないですよ……人間じゃなくなってる」 5

2021-03-17 22:05:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そうだな。チッ」クレッセントはもう一度エレベーターシャフトを振り返る。「ボディを持っていかれたな。エレベーターに」「え……?」「調べる必要があると言ったろ」フルメンポの奥でクレッセントの冷徹な目が光った。「まあいい。次に見つけた時に……」「次……?」その時だ。「AAAARGH!」 6

2021-03-17 22:11:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

叫び声がシャッターの向こうから聞こえた。そして、KRAAASH!シャッターを破壊し、中から胞子スモトリが飛び出した!待ちかねたようにクレッセントは躍りかかった!「イヤーッ!」「アバーッ!」鮮やかなムーンサルト跳躍が描いた斬撃が、胞子スモトリの首を斜めに切り裂く! 7

2021-03-17 22:13:17
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

着地したクレッセントのチョップの指先、プラズマめいて発光する爪の光!「ドッソイ!ドッソイドッソイ!」さらに廊下の奥!張り手を繰り返しながら電車じみて直進してくる胞子スモトリあり!「イヤーッ!」クレッセントがその場で横薙ぎのチョップを繰り出すと、実際三日月じみた斬光が飛翔! 8

2021-03-17 22:15:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アバーッ!」斜めに切り裂かれた胞子スモトリが床に落ちると、その場は驚くほどに静かになった。クレッセントはザンシンを終え、腕部UNIXを確認した。「このフロアの生体反応は他に無い」「全滅させましたか……?」「そうだ。来い」彼女はサイダ3を随行させ、両断スモトリ遺体に近づく。 9

2021-03-17 22:18:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クレッセントが何らかの生体スキャナーを用いて遺体を確認する間、サイダ3は廊下の前後を何度も確認する。生きた心地がしない。上層手前の60・70階は閉鎖テナント群。かつてはポンポン社のサラリマンが利用するバーバーや食堂、セントー等が入っていた。退社せず生活できるようにだ。 10

2021-03-17 22:21:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「こんな酷い事になってるなんて」サイダ3は言った。「上層の乗っ取られたギャングの奴ら、様子はおかしくなったけど、こんな膨れ上がったバケモノになるなんて聞いてないよ。蝿のせいなんですか?いや、蝿のせいッて事ですよね?コワイ!嫌だ……!」クレッセントは無視してスキャンを継続。 11

2021-03-17 22:26:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「人間に蝿がタマゴを生むんでしょ!?それでおかしくなって……光とかが見えるんだよ!そ、そのあと、こうやって膨れ上がっちゃうのかよォ!俺にも入ってるかも!そんなの嫌ァ!」『スキャン完了な』UNIX音声が聞こえると、クレッセントは満足して立ち上がり、サイダ3を張り倒した。「グワーッ!」12

2021-03-17 22:28:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いちいち取り乱すな」クレッセントは倒れたサイダ3を踏みにじり、逃げられぬようにしながら腕部UNIXを確認した。『ヨロシ遺伝子不正。不一致な』「やはり……そうだろうな」彼女は無感情に呟いた。「どういう事ォ……」サイダ3は涙目で見上げる。「我が社のプロダクトの遺伝子が破壊されている」13

2021-03-17 22:31:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「は、破壊ッて……」「人体に卵を産みつけ、孵化すれば寄生虫じみて体内に潜り込み、タンパク質を変異させ、こんな気色の悪い出来損ないに変える、そんな非合理的なモノを我が社が作るわけがないだろう。盗まれたバイオ蝿が何らかの手段で歪められている。アンタイ・ヨロシ・パルスも効くまいな」 14

2021-03-17 22:36:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「めちゃくちゃマズイんじゃ」「そうだ。ASAPの対処を要する。最悪の場合、このビルディングはニューク攻撃する必要がある」「ニューク!?」「最悪の場合だ。何にせよ、周辺被害を必要最小限に留めた最適な対処方法を決めるには、核心にたどり着かねばならない。私と、キミがだぞ」 15

2021-03-17 22:40:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「なんて……こった」サイダ3が落ち着いたのを確認し、クレッセントは足をどけた。「事前の調査から、蝿がビルの外に拡散した形跡は一切ない。それが不幸中の幸いといったところだな。おそらく蝿の使用者の……フン……ニンジャの何らかのジツの特性が関係しているのだ」「コントロールしてる……」16

2021-03-17 22:43:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

クレッセントはサイダ3の手を取り、立たせてやった。「行くぞ」「ハイ。エット……エレベーターがダメになったんで……」サイダ3はこめかみをリズミカルに叩き、網膜にガイドを表示した。「とりあえず階段使いましょう。それで77階まで行ければ良いんだけど。そこから先はまた別の手段で」「よし」17

2021-03-17 22:49:01
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そこの突き当りを右に……アイエッ」開きかけたシャッターが糸をひき、寝転がった死体が隙間に挟まって、凄まじい形相で彼らを見ていた。コチ、コチ、コチ。クレッセントのUNIXが平常音を鳴らす。「ひとまず、死んでしまえば無害だな」「増えないんでしょうか、蝿」サイダ3は耳を澄ませた。 18

2021-03-17 22:53:46