2021年3月19日

同性婚に関する札幌地裁判決への評価(両論併記編)

自分用に。
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Takehiro OHYA @takehiroohya

Professor of Jurisprudence, Keio University Faculty of Law. Dean, Keio Univ. Correspondence Courses. Visiting Prof., Nagoya Univ. PhD Professional Office.

law.keio.ac.jp/~t_ohya/

Takehiro OHYA @takehiroohya

>RT 違憲性を認定しつつ形式的には棄却なので勝った(ことになっている)国側からは控訴できない、という確定狙い判決だったような気がするんだけど。

2021-03-17 16:07:09
Takehiro OHYA @takehiroohya

後半① 後半から。この訴訟は、同性婚を認める制度が作られていないこと(立法不作為)が憲法に反する違法な行為であり、それによって損害を受けたとして損害賠償を請求したものです(形式的には)。なので直接問題になっているのは立法府の行為。 twitter.com/ipatrioticmom2…

2021-03-17 18:16:15
Takehiro OHYA @takehiroohya

後半② しかし立法・行政・司法の別を問わず、あるいは行政内部の何省であろうが法人格としては「国」しかないので、これは国に対する訴訟ということになります。で、法律の規定で国を当事者とする訴訟では法務大臣が国を代表することになっており、具体的には法務省訟務局という組織が対応します。

2021-03-17 18:16:15
Takehiro OHYA @takehiroohya

後半③ このため、立法府の行為をめぐる訴訟に行政府が対応し司法府が裁くという状況になっています(ややこしい)。

2021-03-17 18:16:16
Takehiro OHYA @takehiroohya

前半① さて原告側の主張は、(A)民法・戸籍法が同性婚を認めていないことが憲法13条・14条1項・24条に反しており、(B)にもかかわらず立法府がそれを解消する法改正を行なっていないことが違法であり、(C)したがってそれによる損害を賠償する責任があるというものでした。 twitter.com/ipatrioticmom2…

2021-03-17 18:52:44
Takehiro OHYA @takehiroohya

前半② わかりやすいところから。(A)のうち24条は婚姻に関する憲法上の規定で、論点の「両性の合意のみに基づいて成立し」が書かれている部分です。しかし制度のすべてを憲法で書くのは無理なので、これは詳細な立法を議会が行なうことを前提に、その条件や制約を規定したものと理解できます。

2021-03-17 18:52:44
Takehiro OHYA @takehiroohya

前半③ たとえば「夫婦が同等の権利を有することを基本として」とあるので理由なく両者の権利に差を付けるような法律を作れば憲法違反。また、婚姻の自由が認められている以上、対応する法律を作らないことも自由の制限だから立法の不作為であり、憲法違反になると考えられるわけですね。

2021-03-17 18:52:45
Takehiro OHYA @takehiroohya

前半④ そこで同性婚制度がないことが憲法違反であると言うためには、24条の規定が保障する婚姻の自由に同性婚も含まれており、それを可能にする制度を作ることが議会に義務付けられていると解釈しなくてはなりません。原告はそう主張しましたが、判決で否定されています。

2021-03-17 18:52:45
Takehiro OHYA @takehiroohya

前半⑤ 判決は「婚姻をするについての自由」という表現を使っていますが、憲法上規定されているのはあくまで異性婚の場合であり、同性婚が憲法上前提されているともそのための制度を作ることが義務付けられているとも言えないという判断です。

2021-03-17 18:52:45
Takehiro OHYA @takehiroohya

前半⑤' (なので逆に言うと、憲法上は想定されていないという状態なので、仮に立法で同性婚を認めたとしても憲法違反になるわけではないという理屈にはなっていると思います。)

2021-03-17 18:52:46
Takehiro OHYA @takehiroohya

前半⑥ 13条もこれと同じ話で、規定されている幸福追求権から直接に特定の制度が義務付けられているわけではないので、それがないことが憲法違反とは言えないという判断です。

2021-03-17 18:52:46
Takehiro OHYA @takehiroohya

前半⑦ これに対し14条1項は法の下の平等を保障したものです。婚姻という制度は当事者にさまざまな法的効果を与えます(たとえば法定相続分)。異性愛者は婚姻によりそれを享受できるのに同性愛者が排除されていることがこれに反すると原告側は主張したわけですね。

2021-03-17 18:52:46
Takehiro OHYA @takehiroohya

前半⑧ 判決が認めたのはこの部分で、もちろん両者が異なるのでまったく同じ制度にはならず(たとえば子に関する規定は必要ない)、具体的な設計については議会の裁量がある。しかし制度がまったく存在しないためにすべての利益を享受できない状態は、その裁量の範囲を逸脱しているという判断です。

2021-03-17 18:52:47
Takehiro OHYA @takehiroohya

前半⑨ つまり、異性愛者が婚姻による法的効果を受けることができる以上、性質の違いにより合理的な区別を設けても差支えないし、どのような区別が合理的かを決める裁量が議会にはあるけれども、まったくゼロというのは正当化できず憲法に違反していますという結論でした。

2021-03-17 18:52:47
Takehiro OHYA @takehiroohya

前半⑩ このように現状が憲法に違反していると判決は認定したわけですが、次に(B)立法不作為が違法行為になるかという論点が来ます。

2021-03-17 18:52:48
Takehiro OHYA @takehiroohya

前半⑪ 不作為=「やらなかった」ことですが、これについてはどんな対応をするにも一定の時間はかかるので、作為義務=「やるべき状態」が生じたことを認識しつつ・正当な理由なく・長期にわたって放置されたような場合には責任が生じると限定的に解されています。

2021-03-17 18:52:48
Takehiro OHYA @takehiroohya

前半⑫ 今回の判決では、明白に違憲性が認識されつつ放置されていたとは現時点において言えないだろうという理由で、この点を否定しました。なので、(C)損害の程度は判断することなく、請求は認められない(原告敗訴)という結論になっています。おわり。

2021-03-17 18:52:48
Takehiro OHYA @takehiroohya

日本法に「傍論」という制度はないのでその区別はあまり重要でないのですが(という話はかなり昔に書いた)、長々解説したとおりこの判決だと違憲性は本論として判断しています。その上で立法不作為の違法性を否定して勝訴だから国から控訴はできません、としたことについては議論があるでしょうが。 twitter.com/5b0a29db23dd47…

2021-03-17 18:57:57
Takehiro OHYA @takehiroohya

(B)のところで、今回は初めての判断だし時間経過もそれほどないしという理由で立法不作為が違法とまでは言えないと判断しているのです。繰り返し同趣旨の判決が出てものらくらしてると、そのうちここがひっくり返されて正面からの敗訴判決になるという論理ですね。 twitter.com/adadgh/status/…

2021-03-17 22:56:39
Takehiro OHYA @takehiroohya

考えていたのですが、本件では損害自体を否定したわけではなく立法府の不作為がまだ違法という段階にまでは達していないという判断でした。となると、どこのどういう違憲性を問題にしているのかが確定できないと議論できないはずで、違憲性の判断は避けられないと思います。 twitter.com/tama_musashi/s…

2021-03-17 23:09:19
Takehiro OHYA @takehiroohya

また、そこで違憲判断したことを前提にしても立法不作為をこの時点で違法と断じることには躊躇されるものがあり、こういう結論になったことには必然性があるかなとも思うようになりました。言いっぱなし判決のように見えたけどそうではないなという印象です。

2021-03-17 23:11:33
Takehiro OHYA @takehiroohya

この問題の本質的な出口は制度構築なので、立法を動かす必要があります。そこで司法による直接的な救済は否定しつつ対応の必要性について国会へとボールを投げ続ける(だんんだん速くしていく)という流れは考えられるし、いつか見た光景だよなという気もします。 twitter.com/kozawa/status/…

2021-03-17 23:20:54
Takehiro OHYA @takehiroohya

国会の裁量を相当に認めつつ、社会通念や国民意識、国際的な動向などを重ねて、許される限度を超えたという認定なので、そのあたりを使って線を引く気だと思います。つまり程度問題として扱っていて、程度で議論しない哲学的理論との相性は悪いわけですが。 twitter.com/Perfect_Inside…

2021-03-17 23:28:43
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コメント

ティルティンティノントゥン @tiltintninontun 2021年3月19日
結局原告が控訴したようですが、原告が判決のどこに不服なのかも、人によって解釈が分かれるのでしょうか?>>違憲性を認定しつつ形式的には棄却なので勝った(ことになっている)国側からは控訴できない、という確定狙い判決だったような気がする
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ろんどん @lawtomol 2021年3月19日
「(立法措置を)怠った期間が長期と認められない」かどうかの判断に、「いつから違憲と認識していた・認識すべきだったか」の検討が必要になるので、「違憲か否かの検討は不要」との見解は無理があると思う
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tacosun @kagami4432 2021年3月19日
tiltintninontun 違憲性を認定されてるのに結婚できないから 本気で裁判に勝訴して法改正まで持っていきたいんじゃないでしょうか?
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刑事長/理事長 @DekatyouNy 2021年3月19日
tiltintninontun 同性婚を認めた訳ではなく、「同性カップルでも、結婚したのと同じ権利を認めるべき(いわゆるパートナーシップ制)」だから控訴したのではないかと。
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ロイミロ(6136########) @hsgwkyt 2021年3月19日
裁判所が「国には同性婚を認める義務は無いが異性カップルと同性カップルに不必要な格差が出ない様な立法をする義務はあるって見解出すのであとは政治運動でやってくれ(実利はやったんだからこれ以上こっちに振ってくるな)」と言ったので、原告は「いやいや国に同性婚の導入自体を強制してくれ」って返した感じなんじゃないかな。
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八代泰太 @3914kcorkcolc 2021年3月19日
格差是正が本丸なら、現段階で差を埋めるための各種法手続き(相続人指定とか養子縁組とか任意後見契約とか)の一括パッケージ用意した弁護士事務所とかが、ある程度居そうなもんだけど。
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