<コメント記録>(主に)過剰診断の定義に関する記録/NATROMのブログ

●(主に)過剰診断の定義に関する記録/NATROMのブログ https://natrom.hatenablog.com/entry/0021/02/08/000000
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AGAPEROS

TAKESANさんへ
解説有難うございます。
名取先生がこのような式を提示した経緯を伺って成る程そう言うことかと得心した次第です。
私の場合次のような会話があって、先生の式が提示されましたが、過剰診断を過剰治療になる診断と捉えていた為、全く理解することが出来ませんでした。 https://twitter.com/nek0jita/status/1350048016753852416?s=21
ら「診断基準を厳しくしても発見数全体が減るだけで、発見された甲状腺がんの殆ど全てが過剰診断だという事実は変わらないってことだと思うのですよね。」
今、A国の過剰診断の例のお話を伺って読むと、そう言うことが言いたかったのかとわかる気もしますが、逆に、ASをも過剰診断と言うなら、過剰診断はそんなに大きな問題ではなくて、過剰治療が抑制されていればかなり大きな問題が解決されているのではないかと考えてしまいます。
何れにしても、定義を誤って理解していたので、議論の入り口にも立って居なかったことは反省しきりです。


AGAPEROS

名取先生へ
「甲状腺癌の過剰診断を半減しても95%が90%になるくらい」について、丁寧な解説を有難うございました。
過剰診断の定義と過剰診断率の一般的な公式から、一見奇妙な計算になってしまうことが理解出来ました。

つきましては、A国(多分韓国)の過剰診断率を95%と見積もった根拠について教えて頂きたくお願い致します。
常識だと言われましても、その常識がない者の悲しさで下記の資料を見て考えても分からないので、よろしくお願い致します。
https://www.bmj.com/content/355/bmj.i5745


名取宏(なとろむ) (id:NATROM)

AGAPEROSさん。

ASをも過剰診断と言うなら、過剰診断はそんなに大きな問題ではなくて、過剰治療が抑制されていればかなり大きな問題が解決されているのではないか

すでに別の方から指摘がありますが、たとえ手術をされなくても甲状腺がんと診断され密に経過観察されることは大きな害を伴います。「次の検査ではがんが大きくなっているのではないか」「もしかしたら次の検査まで待っていたら手遅れになるのではないか」「いっそ手術をしてしまったほうが安心できるのでは」「でも手術を受けるのも心配だ」etc…。甲状腺がんのASは「何年続けたら終了してよし」という基準はいまのところありません。下手をすると一生涯、これが続くのです。「丁寧な説明を行うことで低減可能」だとしても心理的な害はゼロにはなりません。絶対になりません。こうした害に見合う利益が甲状腺がん検診にありますか?

つきましては、A国(多分韓国)の過剰診断率を95%と見積もった根拠について教えて頂きたくお願い致します。

95%というのはざっくり大雑把な推測です。「95%というのは過大評価だ。90%が正当な推測値だ」という人がいらっしゃれば、90%でもいいです。少なくとも5%とか10%とか、30%とかですらありません。韓国で検診で見つかった甲状腺がんの(95%ではなく)90%が過剰診断だとして、現在の基準を適用したところで過剰診断の割合が高いままであることは変わらず(90%→80%ぐらいになる程度)、甲状腺がん検診の害は利益よりずっと大きいという結論は変わりません(そもそも過剰診断をゼロにできても甲状腺がん検診の害は利益より大きいと考えます)。

具体的に95%は、罹患率が15倍になったことからです。ごく単純に増えた分が全部過剰診断と仮定すると、14÷15≒93.3%。だいたい95%。この数字は過大評価である理由と、過小評価である理由とそれぞれあります。それぞれ大雑把な推測にしかなりませんが、いろいろ勘案して95%でもやや過小評価ではないかなと個人的には思っていますが、「過剰診断は(ほとんど)ない」と主張している人たちにおまけして95%としています。

過大評価である理由は、将来症状を呈する分を前倒しして診断される分(「狭義のスクリーニング効果」)が計算に入っていないことです。将来14年分の有症状甲状腺がんを全部前倒しして診断していたとしたら、「罹患率15倍でも過剰診断の割合は93.3%ではなく0%」ということになります。過剰診断の割合が0%ってことはないですが、狭義のスクリーニング効果がありますから93.3%よりは目減りするはずです。

ただ、韓国事例では連続的に10年以上継続して罹患率が上昇していることから、狭義のスクリーニング効果は少ないことがわかります。検診が行われていなかったころと比べて、ある年に甲状腺がん検診を行ったところ罹患率が10倍になったとしましょう。過剰診断が0%、すべてが今後9年間に自覚症状をもって発見されるはずの甲状腺がんを見つける「狭義のスクリーニング効果」だとしたら、翌年以降9年間は自覚症状をもって発見される甲状腺がんがなくなります。翌年は検診を行わなかったら罹患はゼロ、検診を行っても罹患率はきわめて下がります(11年後に発症する分を前倒しして見つけるので検診が行われていなかったころの罹患率ぐらいにはなります)。

過剰診断が50%で残りが「狭義のスクリーニング効果」だとしても、今後発症するはずの甲状腺がんは半分ぐらい既に診断されていますので、翌年には同様の検診を行っても罹患率10倍とかにはなりません。将来発症するはずのがんの数は有限であり、ある年にそれをたくさん「刈り取って」しまうと、翌年は見つかるがんが減るというイメージです。詳しくは[「前倒し効果」では継続した罹患率の上昇は説明できない https://natrom.hatenablog.com/entry/00150606/p1 ]で論じています。おそらく難しいかと思いますが、少なくとも『名取宏は過剰診断の割合が95%だと言うが「狭義のスクリーニング効果」を無視している』という指摘には5年前にとっくに反論しており、独自定義を駆使して議論(のようなもの)を行っている何人かの人たち以外には反論されていないことは、おわかりいただけると思います。

以上が95%が過大評価であるという理由でした。95%でもやや過小評価だという理由は複数ありますが、二つほど。罹患率15倍を根拠に過剰診断の割合を計算しましたが、これは検診を行っていないころの罹患がすべて有症状と仮定しています。しかしながら実地臨床では、検診を行っていないころですら、甲状腺がんの過剰診断は多く発生します。バセドウ病や橋本病などの良性甲状腺疾患でも甲状腺エコーはします。腫瘤が見つかればがんを疑い、細胞診をされていました。がんだと診断されたらがん罹患率の統計に乗ります。亜全摘後の病理検査でも同様。検診を行っていないころでも過剰診断が仮に50%ぐらいだったとして、罹患率が15倍になったときの過剰診断の割合は14÷15≒93.3%ではなく、(14+0.5)÷15≒96.7%です。

もう一つ、過大評価であるという理由。過剰診断の割合は分母によって変わります。福島県と比較するなら、分母は「人口全体で甲状腺がんと診断された数」ではなく「検診で甲状腺がんと診断された数」です。93.3%の推測値は人口全体の罹患率の推移から計算した、分母が「人口全体で甲状腺がんと診断された数」での話です。明らかに過剰診断ではない、自覚症状をもって甲状腺がんと診断された人は「検診で甲状腺がんと診断された数」に含みません。直観的にも、「人口全体で甲状腺がんと診断された数」のうちの過剰診断よりも、「検診で甲状腺がんと診断された数」のうちの過剰診断の割合のほうが小さいことがおわかりだと思います。


AGAPEROS

皆さんへ
甲状腺癌検診に於けるメリットと害については、以前にも自分の考え方を表明して居ますが、当面は、後の課題とさせて頂きたいと考えています。
また、韓国に於ける過剰診断率95%の根拠について、他にご意見のある方はいらっしゃいますか?


AGAPEROS

名取先生へ
「A国では、緩い基準のころは、甲状腺がんと診断された1000例のうち、過剰診断は950例、非過剰診断は50例でした。また、緩い基準のころは、甲状腺がんと診断された1000例のうち、475人が腫瘍径1.0cm以下、525人が1.0cmより大きかったです。腫瘍径1.0cm以下の475人は全員過剰診断とみなしていいとします。」
これについて、論文等の証拠を探したのですが、見つかりませんでした。申し訳ありませんが、資料の提示をお願い致します。


名取宏(なとろむ) (id:NATROM)

AGAPEROSさん。

「A国では、緩い基準のころは、甲状腺がんと診断された1000例のうち、過剰診断は950例、非過剰診断は50例でした。また、緩い基準のころは、甲状腺がんと診断された1000例のうち、475人が腫瘍径1.0cm以下、525人が1.0cmより大きかったです。腫瘍径1.0cm以下の475人は全員過剰診断とみなしていいとします。」
これについて、論文等の証拠を探したのですが、見つかりませんでした。申し訳ありませんが、資料の提示をお願い致します。

A国は説明のための仮想の国なので論文はありません。「過剰診断を説明するための仮想的な乳がん検診のランダム化比較試験」の論文がないのと同様です。説明のための仮想例においては、わかりやすいよう、諸々の条件を極度に単純化しています。仮想の国であって韓国ではないのでわざわざA国としています。

韓国の成人例における過剰診断割合を95%と見積もった根拠については、昨日、すでに述べています。韓国における罹患率15倍についての資料はたとえば以下です。2014年のNEJM誌。最終著者は過剰診断の本を書いた、そして広く受け入れられている過剰診断の定義を提唱したWelchです。

Korea's thyroid-cancer "epidemic"--screening and overdiagnosis
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25372084/

甲状腺がんの過剰診断に関して、おそらく、もっとも有名で一番広く読まれている論文です。


AGAPEROS

あめりかなまずさんへ

A国は「例」は名取先生の説明で分かりました。
罹患率15倍の根拠にはたどり着けましたか?
はい、幾つか見つけました。
検査開始前の1993年に比較して2011年に約15倍
1999年から約20年(2019年)で約15倍
98年には約2500件だった甲状腺がんが2013年には約4万3000件と約17倍に急増
ご心配有難うございます。


AGAPEROS

名取先生へ
https://diamond.jp/articles/-/191941?page=2&display=b
『2014年に医師のグループが過剰診断を警告する声明を出し、甲状腺のがん検診は中止され、罹患者は急激に減少していったのです。』や
https://synodos.jp/fukushima_report/21930
『2011 検査開始前の1993年に比較して約15倍の方が甲状腺癌と診断されている。
2014 韓国の高麗大学教授AHN氏らは「甲状腺癌の過剰診断」についてNEJM紙で報告。同時に、韓国の大手テレビメディアが特別番組を組んだ。
2015 から、受診者は減少しはじめ、
2018 ピーク時の約半分にまで減った。』
との記述が見つかり、診断基準の見直しで半減したと言うお話と違うなと考え、証拠の提出をお願いしました。
架空のお話だったのですね。了解しました。

さて、95%の根拠「罹患率が15倍」についてですが、先生は狭義のスクリーニング効果は考えられないと仰ってましたが、それは無いと考えます。
何故なら、福島県では約38万人が繰り返し検査を受けるのですが、韓国では、政府の支援策の強化や癌保険制度などにより、検診の受診者が年々増加していったと言う違いがあり、狭義のスクリーニング効果が連続して発生すると考えられるからです。
また、先生は95%は専門家の間では常識だと言う主旨の発言をされてましたが、私の調べた範囲では95%或いは90%などの記述は見つかりませんでした。
もし、その様な記述が専門家のみが見ることができる論文等にあるのならご紹介下さい。
無いのなら95%は誤りと認めて撤回をお願い致します。


AGAPEROS

suzanさんへ
「自分が論文を探して出てこないから」はメインの主張ではありません。
メインは「検診の受診者が年々増加していったと言う違いがあり、狭義のスクリーニング効果が連続して発生すると考えられるから」です。
先生が専門家の間では常識と言う主旨の発言をなさったので、念の為確認させて頂きました。
suzanさんは、私のメインの主張に対してはどの様にお考えでしょうか?


AGAPEROS

影龍さんへ
論文ではありませんが次の様な文章は見つけております。
韓国に於ける癌対策
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0311-8p.pdf
下表は、前記の文章に載ってない部分は他の文章で補っております。
1996 第1期癌対策10ヵ年計画
1999 国家癌検診事業開始(胃,乳,子宮頸)対象
   低所得者のみに検診を無料提供
   乳癌検診のオプションとして甲状腺癌
   検診が受けられる様になった
2000 癌保険発売
   癌診断時に500万ウォン支給
   国民の70%が加入
   医師の誘導でUTによる甲状腺癌検診が 
   急速に広まる
2001 保健福祉部健康増進局癌管理課
2002 国民健康保険加入者の
   所得下位20%まで拡大
2003 癌管理法成立
   肝追加 下位30%に対象拡大
2004 地域癌センター
   大腸癌追加
2005 下位50%に対象拡大
2006 第2期癌対策10ヵ年計画
2007 下位50%の家族に対象拡大

https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h29kisoshiryo/h29kiso-03-07-18.html
韓国では1999年から甲状腺がん検査の公的援助が始まり、最先端の検査が低負担で受診出来るようになりました。そのため多くの人が受診し、甲状腺がん罹患率の大幅な上昇につながったと考えられます。


AGAPEROS

皆さんへ
論文でなくても構いませんが、名取先生以外の方から「韓国での甲状腺癌の過剰診断率は95%」と言う話を聞いた、又は、何か文章を読んだことがある方はいらっしゃいますか?


AGAPEROS

suzanさんへ
私の主張は「韓国に於ける罹患数の上昇は、過剰診断のみによるものではなく、過剰診断と狭義のスクリーニング効果によるものであろう」という事です。
決して、検診やりすぎを否定するものではありません。


AGAPEROS

suzanさんへ
力の籠もったご説明ご苦労様でした。
然し、名取先生の主張も私の主張も誤解しておられる様です。
名取先生は『福島県の甲状腺癌の悉皆検査に於けるスクリーニング効果の考察を基に、韓国での10何以上に亘る、罹患率上昇は過剰診断50%、狭義のスクリーニング効果50%でも説明出来ない。故に、14/15≒93%の殆どが過剰診断であろう。』と主張されており
私は『韓国は悉皆検査ではないから、名取先生のお説は成り立たない。』と主張しております。
これに対してsuzanさんは悉皆検査を前提とした解説をしています。よって、以下長々と解説していますが全く意味がありません。


名取宏(なとろむ) (id:NATROM)

AGAPEROSさんがそうだというわけではないですが、一部の人たちの不誠実な態度についていちど、まとめておきます。

●相手にだけ具体的な数字を出させて、自分たちは数字を出さない不誠実な態度。あるいは、立証責任の転嫁。

過剰診断の割合は推定するしかなく、とくに甲状腺がんはランダム化比較試験がないので不確実性が増します。ただ、エコーによって無症状で発見された甲状腺がんの過剰診断の割合は、90%だろうと95%だろうととにかく高いことには変わりなく、議論の本筋には影響しません。具体的な数字があったほうが説明もわかりやすいだろうと考え、「ざっくり大雑把」と断った上で90%とか95%とかいう数字をこちらは出すのですが、本筋が理解できないごく少数の人たちは具体的な数字にこだわります。

しかも、卑怯なことに、反論をするにしても具体的な数字を彼らは出しません。「過剰診断の割合95%はおかしい」というなら、じゃあ、ざっくり大雑把でもいいから自分たちは何%と推測しているのか数字を出すべきでしょう。「現在の基準だと過剰診断はない」などというから、ゼロはありえんだろと指摘すると、「常識的に考えてまったくのゼロとは言っていない」と言い逃れをします。しかし、じゃあ何%なのか、0.1%なのか、1%なのか、5%なのか、具体的な数字を彼らは言いません。言えるわけがない。疫学について基本の基もわかっていないのだから。

対等な議論をしようとする気が彼らにはないのです。ざっくりでもいいからたとえば「韓国における過剰診断の割合は95%ではなく●%だと推定する、早期発見可能前臨床期○年、受診割合△%と仮定すれば韓国の継続した罹患率の上昇は説明可能だ」などと主張していただければ議論できますが、彼らはしません。というかその能力がありません。早期発見可能前臨床期という概念を理解し、シミュレーションする能力があれば、甲状腺がんの過剰診断の割合がとにかく大きいことがわかるからです。理解できず取り残されたごく少数たちが、教科書も読まず、当然論文も読まず、知的努力を怠りつつネットをちょっと検索して自説に都合がよい(と彼らが誤解した)断片的な情報を提示するのみです。そしでエコーチェンバーでお互いがお互いを混乱させていきます。

科学は不完全です。医学はさらにさまざまな制約が入ります。どのような権威ある雑誌に載っている、高い評価を受けている論文にでも、制限があります。多くの、ときには相矛盾する不完全な情報を統合して、より妥当な結論を導くしかありません。一方で、「ニセ科学」「ニセ医学」のよくある手口は、自説の根拠はまったく提示せず、相手にだけ根拠の提示を求めることです。そもそも、検診という潜在的に害のある介入を行うのですから、まず、害より利益が大きいという根拠を提示すべきなのは、検診を推奨する側です。立証責任の転嫁がみられます。


名取宏(なとろむ) (id:NATROM)

AGAPEROSさんへ。

診断基準の見直しで半減したと言うお話と違うなと考え、証拠の提出をお願いしました。
架空のお話だったのですね。了解しました。

架空のお話です。韓国での手術件数の減少は、診断基準の見直しによるものではなく、検診数の減少によることは5年前に存じておりました。

韓国における甲状腺がんの手術が減少した
https://natrom.hatenablog.com/entry/20151211/p1

「診断基準の見直しで半減した」という話は、もともと、よくわかっていないごく少数の人たちが「福島では診断基準の見直しで過剰診断は(ほとんど)なくなった」という間違った主張をしたことが発端です。「過剰診断は(ほとんど)なくなった」と主張する彼らにオマケして診断基準の見直しで過剰診断が減るという架空のお話を受け入れてあげた上で、「診断基準を見直して過剰診断の数を減らせるとしても韓国事例ではせいぜい半減。割合で考えるとは半減すらせず95%が90%になるぐらい」とこちらが反論したのです。数と割合の違いすら彼らは理解できませんでしたが。AGAPEROSさんのほうが先に進んでいます。

何故なら、福島県では約38万人が繰り返し検査を受けるのですが、韓国では、政府の支援策の強化や癌保険制度などにより、検診の受診者が年々増加していったと言う違いがあり、狭義のスクリーニング効果が連続して発生すると考えられるからです。

「狭義のスクリーニング効果が連続して発生する」のは正しいです。ただ、あまりにも過剰診断が多いので相対的には無視しうる数というだけです。「狭義のスクリーニング効果」が発生する数に上限があるのはおわかりですよね?「狭義のスクリーニング効果が連続して発生」したとしても、連続して罹患率10倍以上の年が続いたりしないんです。

もう一度説明します。ある年、仮に西暦2000年に(※)「(検診なしの年と比べて)罹患率10倍」の罹患率が観察されたとしましょう。その一年だけなら、「2001年~2010年の分まで前倒しで発見しちゃった」でも説明可能です。では2001年は?2010年の分まで前倒しで発見しちゃったんで、2001年は検診をしても10倍もの罹患率にはなりません。

※仮にですよ。後から論文がないとか架空の話だったんですねとかは無しにしてくださいね。後述する受診割合も架空です。

「検診の受診者が年々増加していった」からそうではないのだ、とAGAPEROSさんはおっしゃりたいんでしょう。2000年には国民の(たとえば)10%が受診して罹患率が10倍なら、2001年には国民の11%が受診したなら、連続して罹患率は上昇します。たぶん、2001年には「(検診なしの年と比べて)罹患率11倍」ぐらいになるでしょう。では、2000年に国民の10%が受診したとして、「狭義のスクリーニング効果」だけで罹患率が10倍になりますか。なるわけないでしょう。

検診なしだと罹患率が10万人年あたり5人、検診を受けると10年後までに発生するはずだった甲状腺がんを全部見つけるが過剰診断はないとしましょう。すると検診群では罹患率が10倍になります。人口の10%が検診を受けると人口の90%は罹患率5人/10万人年、10%は罹患率50人/10万人年。全体では9.5人/10万人年になるはずです。罹患率は10倍じゃなく2倍弱です。検算していないので細部は間違っているかもしれませんが、だいたいそんなものです。

ここでは早期発見可能前臨床期を10年と仮定しました。もっと長く、たとえば90年と見積もればどうでしょう。そう、90年先に発症するはずの甲状腺がんまでぜんぶ見つけていたとしたら、受診割合が10%でも罹患率10倍を説明可能ですね…ってそんなわけあるかーい!AGAPEROSさんは、いったい、早期発見可能前臨床期を何年と見積もっているんです?(「相手にだけ具体的な数字を出させて、自分たちは数字を出さないのは不誠実」であることを思い出そう)。というか、早期発見可能前臨床期と有病割合と罹患率の関係について、大雑把でもいいから計算しようとしたことありますか。

実際のところ、命に係わるような甲状腺がんの早期発見可能前臨床期の推定値は10年でも長いかもしれません。まあ考えてもみてくださいよ。エコーで診断可能になってから臨床症状を呈するまで10年かけてゆっくり成長するような甲状腺がんと、去年はエコーでは発見できなかったのに今年はもう転移して症状を引き起こした甲状腺がんと、どちらがヤバそうですか?長い早期発見可能前臨床期の甲状腺がんなんて、たとえ過剰診断でなくても、検診で見つける意義は乏しいんです。

以上、述べたことは専門家の間で常識です。韓国事例は過剰診断ではなく「狭義のスクリーニング効果」が主因かもしれないなんて論じた専門家は私の知る限りは一人もいません。いるというなら論文を一つでもいいから挙げてください。そもそも「狭義のスクリーニング効果」に言及すらされていません。見ただけで「狭義のスクリーニング効果」はあっても誤差範囲だとわかるからです。

また、先生は95%は専門家の間では常識だと言う主旨の発言をされてましたが、私の調べた範囲では95%或いは90%などの記述は見つかりませんでした。
もし、その様な記述が専門家のみが見ることができる論文等にあるのならご紹介下さい。

では二つほど。

. “A few years after ultrasonography of the thyroid gland started being widely offered in the
framework of a population-based multi-cancer screening, thyroid cancer has become the most commonly
diagnosed cancer in women in the Republic of Korea, with approximately 90% of cases in 2003–2007
estimated to be due to overdiagnosis.”

https://www.iarc.who.int/wp-content/uploads/2018/07/pr246_E.pdf

これは2003年から2007年の話なので、その後のさらにどんどん罹患率が上昇してきている時期は90%よりは高いはずです。しかも、分母が「人口全体で甲状腺がんと診断された女性の数」で、有症状で発見された人も含んでいます。分母が「検診で甲状腺がんと診断された女性の数」だと、過剰診断の割合の推定値は90%よりもずっと高くなります。

もう一つ。こちらは有名なやつです。「95%或いは90%などの記述は見つかりませんでした?」。何も調べていないと言わざるを得ません。基本文献です。Table 1の"Probability of overdiagnosis where entire disease reservoir detected"の99.7–99.9のところ。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20413742/

これは分母が"entire disease"なので、「とにかくものすごく精密な検査で甲状腺がんを見落としなく全部診断した場合」の話です。それだと過剰診断の割合は99.7~99.9%です。実際には見つけようとしても生きている人のごく小さいがんは発見できませんので、過剰診断の割合は下がります。99.7~99.9%は理論上の上限値ですね。実際の、韓国の、検診で甲状腺がんと診断された人のうち過剰診断の割合の推定値は、90%と、99.7~99.9%の間のどこかです。95%ぐらいが妥当じゃないですか。違うというなら、具体的に数字を出してください。


名取宏(なとろむ) (id:NATROM)

私は『韓国は悉皆検査ではないから、名取先生のお説は成り立たない。』と主張しております。

だったら、「私の調べた範囲では95%或いは90%などの記述は見つかりませんでした」『名取先生以外の方から「韓国での甲状腺癌の過剰診断率は95%」と言う話を聞いた、又は、何か文章を読んだことがある方はいらっしゃいますか?』などとは言わずに、はじめから、「韓国は90%とか95%とかかもしれないが、それはそれとして、福島では違う」とおっしゃってください。回答するのも手間や時間がかかるのですよ。

まあ、「韓国の事例すらわかっていないのに、福島の事例を正しく推測できるだろうか」という疑義を示すことはできましたが。


AGAPEROS

名取先生へ
『はじめから、「韓国は90%とか95%とかかもしれないが、それはそれとして、福島では違う」とおっしゃってください。』
これは、完全に話が逆です。福島は悉皆検査の繰り返しですから先生のブログでの指摘の通り、最初罹患率が上昇しましたが、徐々に下がってきております。
それに対して、韓国は悉皆検査ではなく、毎年受診者が増加しているのであるから10年以上も罹患率が上昇し続けているのです。
よって、悉皆検査の繰り返しで起こるスクリーニング効果の減少がないからと言って、全て過剰診断だろうと言う先生のお説は成り立たないと言ってます。
韓国では過剰診断率が95%ぐらいあったのは専門家の間では常識だと先生が仰ったから、それなら、私が知らないだけかもしれないから、その証拠を示して頂きたいと言う主旨で、論文等を示して頂きたいとか、他の方も医療関係の方とお見受けしたので質問させて頂きました。自分の無知を疑ったからこそ確認させて頂いたのです。
回答をお待ちしております。


AGAPEROS

名取先生へ
一度にたくさん回答を頂き有難うございます。
取り敢えず、文献について確認させて頂きました。
① >.“A few years after ultrasonography of the thyroid gland started being widely offered in the
framework of a population-based multi-cancer screening, thyroid cancer has become the most commonly
diagnosed cancer in women in the Republic of Korea, with approximately 90% of cases in 2003–2007
estimated to be due to overdiagnosis.”

https://www.iarc.who.int/wp-content/uploads/2018/07/pr246_E.pdf

この文章は「甲状腺の超音波検査が人口ベースの多発性がん検診の枠組みで広く提供され始めてから数年後、甲状腺がんは韓国の女性で最も一般的に診断されるがんであり、2003年-2007年の症例の約90%を占めています。 過剰診断によるものと推定されています。』であり、韓国の女性の癌全体に占める甲状腺癌の割合を示したもので、韓国に於ける甲状腺癌の実績としての過剰診断率を示してものではないと考えますが、如何でしょうか?

②Table 1の"Probability of overdiagnosis where entire disease reservoir detected"の99.7–99.9
のところ。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20413742/

この表は、『50〜70歳の成人は36〜100%(a)甲状腺癌を持っており、死亡又は転移性リスクが0.1%(b)であるから、甲状腺癌を全て検出した場合の過剰診断の確率は(c=[a-b]/a)、%であるから、99.7〜99.9%となる。』と書いてあるのであって、韓国に於ける実績としての過剰診断率ではないと考えますが如何でしょうか?


AGAPEROS

名取先生へ
先程、ご提示頂いた文献について、コメントさせて頂きましたが、書き漏らしたことがありますので、追加します。
②については、「50〜70歳の成人」に関する理論的な最大値の過剰診断率との事ですが、そこから、95%に行くまでに飛躍があると考えますし、スクリーニング効果が見積もられていません。なによりも、95%や90%の根拠をお尋ねしているにも関わらず、その数字が書いてありません。
根拠として不十分と考えます。


AGAPEROS

名取先生へ
文献に関するコメント①については、私の翻訳ミスでした。お詫びして撤回させて頂きます。
韓国女性の甲状腺癌の90%が過剰診断と書いてあるのを確認しました。
しかし、これも、男性は70%で、TAKESANさんの資料から男女比が1:3とすると、韓国全体では83%程度になるかと考えます。
なぜ、90%、95%が常識なのに、その数字がズバリ載っていないのでしょうか?
また、この文献でも狭義のスクリーニング効果を考慮したのかどうかはっきりしません。
期待値の中には、スクリーニング効果が含まれているのでしょうか?

私の考える過剰診断率、狭義のスクリーニング効果の割合については、以前、Twitterで説明しましたが、現在、データを見直して次の様に変更しております。
以前にCoup!さんに説明した分は下記です。名取先生はCoup!さんとのやり取りもご覧になっていらっしゃったので見ていると思ってました。
https://twitter.com/agapeeros123/status/1359314772135534594?s=21
韓国のデータは下記のtable 2をPopupすると出ます。
https://www.bmj.com/content/355/bmj.i5745
過剰診断率約60%、狭義のスクリーニング効果約30%
根拠は単純です。
韓国の2008年の甲状腺癌の大きさ別の発見率の表から
1cm未満が過剰診断
1〜2cmが狭義のスクリーニング効果
2〜4cmとanspecifyedが元々の罹患率
です。
毎年、新しい人が受診しますから、何年先まで刈り取ろうが関係ありません。


名取宏(なとろむ) (id:NATROM)

AGAPEROSさん。

福島は悉皆検査の繰り返しですから先生のブログでの指摘の通り、最初罹患率が上昇しましたが、徐々に下がってきております。

「徐々に」下がっていることは別途説明を要しますが、1回目でたくさん発見され、2回目以降が少ないのは、悉皆検査なので当然です。過剰診断であろうと「狭義のスクリーニング効果」であろうと、2回目以降は少なくなります。そういや『悉皆検査を行うと、過剰診断だろうと、狭義のスクリーニング効果だろうと、1回目よりも2回目の方が(よほど1回目と2回目の間隔を空けない限り)がん診断数が減る』ことを理解できないまま議論から逃げ出した人もいましたね。

それに対して、韓国は悉皆検査ではなく、毎年受診者が増加しているのであるから10年以上も罹患率が上昇し続けているのです。

存じています。

よって、悉皆検査の繰り返しで起こるスクリーニング効果の減少がないからと言って、全て過剰診断だろうと言う先生のお説は成り立たないと言ってます。

「悉皆検査の繰り返しで起こるスクリーニング効果の減少がないからと言って、全て過剰診断だろう」とは私は言っておりません。「悉皆検査の繰り返しで起こるスクリーニング効果の減少がないからと言って、【多くが】過剰診断だろう」というようなことすら、申し上げておりません。正直、意味がわかりません。かろうじて、「AGAPEROSさんは私の主張を正しくご理解できていないのだろう」ということしかわかりません。

この文章は「甲状腺の超音波検査が人口ベースの多発性がん検診の枠組みで広く提供され始めてから数年後、甲状腺がんは韓国の女性で最も一般的に診断されるがんであり、2003年-2007年の症例の約90%を占めています。 過剰診断によるものと推定されています。』であり、韓国の女性の癌全体に占める甲状腺癌の割合を示したもので、韓国に於ける甲状腺癌の実績としての過剰診断率を示してものではないと考えますが、如何でしょうか?

ちょっと待って!「韓国の女性の癌全体に占める甲状腺癌の割合を示したもの」が「約90%」なのですか。つまり、AGAPEROSさんは、2003~2007年に韓国でがんだと診断された女性が100人いたらそのうち約90人が甲状腺がんだった、と思っていらっしゃる?そういうことがありうるとでも?乳がんや胃がんや肺がんや大腸がんを全部合わせたものの9倍も甲状腺がんが診断されていたってことですか?いくらなんでも。韓国では甲状腺がんは多い(多かった)ですが、さすがに全がんの90%もないです。英文和訳の問題だけじゃないですよ。全がんの罹患率や甲状腺がんの罹患率がどれぐらいかを大雑把にでもわかっていれば、絶対にしない間違いですよ。

TAKESANさんがNEJMを引用してくださっていますが、"and 50% in Japan"とあります。AGAPEROSさんはどう解釈します?「日本の女性の癌全体に占める甲状腺癌の割合」が50%もありますか。90%とか50%とかは、「甲状腺がんと診断された女性のうち過剰診断の割合」です。韓国は罹患率がピークに達する前ですら90%、甲状腺がん検診を大々的に行っていない日本でも検診外で偶発的に甲状腺がんがバンバン発見・診断されるので、過剰診断の割合が50%と高いんです。50%は症状を契機に発見された診断も含みますので、無症状発見者に限るとこの割合はもっと高く、おそらく90%とか95%とかそれ以上とかになります。

「相手にだけ具体的な数字を出させて、自分たちは数字を出さないのは不誠実な態度」です。ざっくりおおざっぱでいいです。AGAPEROSさんは、ピーク時の韓国では甲状腺がんの何%ぐらいが過剰診断だったとお考えですか?というか、ざっくりでもいいから計算をしてみようと思ったことが一度でもおありですか?

②については、「50〜70歳の成人」に関する理論的な最大値の過剰診断率との事ですが、そこから、95%に行くまでに飛躍があると考えますし、スクリーニング効果が見積もられていません。

該当する論文をAGAPEROSさんはお読みになりましたか?文句つけるとしても「スクリーニング効果が見積もられていません」ではないです。有病割合と"Lifetime risk of death or metastatis disease"を比較しているので、「狭義のスクリーニング効果」はちゃんと除外されています。"Lifetime risk"つまり一生涯での累積リスクです。「狭義のスクリーニング効果」だったら定義上、一生涯のどこかで症状が出るでしょう。文句をつけるなら「"death or metastatis disease"ではなく"death or symptoms"であるべき」です。


AGAPEROS

名取先生へ
先生から下記の反論がありましたので、ご説明させて頂きます。
『「悉皆検査の繰り返しで起こるスクリーニング効果の減少がないからと言って、全て過剰診断だろう」とは私は言っておりません。「悉皆検査の繰り返しで起こるスクリーニング効果の減少がないからと言って、【多くが】過剰診断だろう」というようなことすら、申し上げておりません。正直、意味がわかりません。』

①『具体的に95%は、罹患率が15倍になったことからです。ごく単純に増えた分が全部過剰診断と仮定すると、14÷15≒93.3%。だいたい95%。』
ここでは、増加分が全て過剰診断によるものと仮定されています。

②『検診が行われていなかったころと比べて、ある年に甲状腺がん検診を行ったところ罹患率が10倍になったとしましょう。過剰診断が0%、すべてが今後9年間に自覚症状をもって発見されるはずの甲状腺がんを見つける「狭義のスクリーニング効果」だとしたら、翌年以降9年間は自覚症状をもって発見される甲状腺がんがなくなります。
翌年は検診を行わなかったら罹患はゼロ、検診を行っても罹患率はきわめて下がります(11年後に発症する分を前倒しして見つけるので検診が行われていなかったころの罹患率ぐらいにはなります)。』

これは、受診者が毎年同じだった場合を想定していますよね。

③『過剰診断が50%で残りが「狭義のスクリーニング効果」だとしても、今後発症するはずの甲状腺がんは半分ぐらい既に診断されていますので、翌年には同様の検診を行っても罹患率10倍とかにはなりません。将来発症するはずのがんの数は有限であり、ある年にそれをたくさん「刈り取って」しまうと、翌年は見つかるがんが減るというイメージです。詳しくは[「前倒し効果」では継続した罹患率の上昇は説明できない https://natrom.hatenablog.com/entry/00150606/p1 ]で論じています。』

これも、受診者が毎年同じだった場合を想定していますよね。

以上の様に、②③の論証は毎年同じ人が受診すること(悉皆検査)を前提になされており、結局①のスクリーニング効果を考慮しない論証を維持しております。
よって、「悉皆検査の繰り返しで起こるスクリーニング効果の減少がないから、全て過剰診断だろう」と言っている事になります。

そもそも、『具体的に95%は、罹患率が15倍になったことからです。ごく単純に増えた分が全部過剰診断と仮定すると、14÷15≒93.3%。だいたい95%。』は論理的に成立しているのでしょうか?
私は、過剰診断率と狭義のスクリーニング効果率の合計が93.5なり約95%なりになるのだと考えます。 
下記をご参照下さい。
https://www.google.co.jp/amp/s/biz-journal.jp/2017/07/post_19633_2.html/amp
『韓国では1999年から、低負担で受けることができる国家的ながん検査プログラムが開始された。すると1993年には10万人当たり4人だった甲状腺がんが、2011年には約60人にまで増えた。
論文ではスクリーニングの受診率が10%上がると、甲状腺がんの罹患率も10万人当たり約40人増えたとしている。理論的には受診率がさらに上がれば、罹患率も15倍よりもっと増える可能性がある。』
と、記載されています。
倍率は受信率が上がったから増えたのです。
そして、過剰診断率と狭義のスクリーニング効果率の合計はそれにつれて、先生の計算式に従って増えたでしょう。
しかし、その合計の中には過剰診断率2 対 狭義のスクリーニング効果率1 の割合で含まれているのではないでしょうか?
2008年は1999年に対して、罹患率が6倍でしたから、約60%、約30%でしたから、15倍で計算すると、62%、31%となりますが、まあ、誤差範囲でしょう。
如何でしょうか?


AGAPEROS

まささんへ
面白いお話を聞かせて頂き有難うございます。
ただ、お話のテーマは過剰診断に関するものだったのですが、韓国に於ける過剰診断率や狭義のスクリーニング効果率に関するお話では無かったので、なぜ、このお話をされたのか分かりません。
少しの間、コメントを控えて頂きたくお願い致します。


AGAPEROS

名取先生へ
私の回答と先生のお返事が前後してしまった為、分かりにくくなってしまったかと考えましたので再掲します。

私の考える過剰診断率、狭義のスクリーニング効果の割合については、以前、Twitterで説明しましたが、現在、データを見直して次の様に変更しております。
以前にCoup!さんに説明した分は下記です。名取先生はCoup!さんとのやり取りもご覧になっていらっしゃったので見ていると思ってました。
https://twitter.com/agapeeros123/status/1359314772135534594?s=21
韓国のデータは下記のtable 2をPopupすると出ます。
https://www.bmj.com/content/355/bmj.i5745
過剰診断率約60%、狭義のスクリーニング効果約30%
根拠は単純です。
韓国の2008年の甲状腺癌の大きさ別の発見率の表から
1cm未満が過剰診断
1〜2cmが狭義のスクリーニング効果
2〜4cmとanspecifyedが元々の罹患率
です。
毎年、新しい人が受診しますから、何年先まで刈り取ろうが関係ありません。

そもそも、『具体的に95%は、罹患率が15倍になったことからです。ごく単純に増えた分が全部過剰診断と仮定すると、14÷15≒93.3%。だいたい95%。』は論理的に成立しているのでしょうか?
私は、過剰診断率と狭義のスクリーニング効果率の合計が93.5なり約95%なりになるのだと考えます。 
下記をご参照下さい。
https://www.google.co.jp/amp/s/biz-journal.jp/2017/07/post_19633_2.html/amp
『韓国では1999年から、低負担で受けることができる国家的ながん検査プログラムが開始された。すると1993年には10万人当たり4人だった甲状腺がんが、2011年には約60人にまで増えた。
論文ではスクリーニングの受診率が10%上がると、甲状腺がんの罹患率も10万人当たり約40人増えたとしている。理論的には受診率がさらに上がれば、罹患率も15倍よりもっと増える可能性がある。』
と、記載されています。
倍率は受信率が上がったから増えたのです。
そして、過剰診断率と狭義のスクリーニング効果率の合計はそれにつれて、先生の計算式に従って増えたでしょう。
しかし、その合計の中には過剰診断率2 対 狭義のスクリーニング効果率1 の割合で含まれているのではないでしょうか?
2008年は1999年に対して、罹患率が6倍でしたから、約60%、約30%でしたから、15倍で計算すると、62%、31%となりますが、まあ、誤差範囲でしょう。
如何でしょうか?

また、先に述べた下記の②③の論証ですが、これが悉皆検査を前提としたものではないとしても、②はスクリーニング効果100%では成立しない。③は同じく50%でも成立しない。なので、「だからスクリーニング効果が0%である」とは言えないと考えます。

『②『検診が行われていなかったころと比べて、ある年に甲状腺がん検診を行ったところ罹患率が10倍になったとしましょう。過剰診断が0%、すべてが今後9年間に自覚症状をもって発見されるはずの甲状腺がんを見つける「狭義のスクリーニング効果」だとしたら、翌年以降9年間は自覚症状をもって発見される甲状腺がんがなくなります。
翌年は検診を行わなかったら罹患はゼロ、検診を行っても罹患率はきわめて下がります(11年後に発症する分を前倒しして見つけるので検診が行われていなかったころの罹患率ぐらいにはなります)。』
これは、受診者が毎年同じだった場合を想定していますよね。
③『過剰診断が50%で残りが「狭義のスクリーニング効果」だとしても、今後発症するはずの甲状腺がんは半分ぐらい既に診断されていますので、翌年には同様の検診を行っても罹患率10倍とかにはなりません。将来発症するはずのがんの数は有限であり、ある年にそれをたくさん「刈り取って」しまうと、翌年は見つかるがんが減るというイメージです。詳しくは[「前倒し効果」では継続した罹患率の上昇は説明できない https://natrom.hatenablog.com/entry/00150606/p1 ]で論じています。』
これも、受診者が毎年同じだった場合を想定していますよね。』


AGAPEROS

あめりかなまずさんへ
どうして、サイズで判断するとアウトなのか分からないので、教えて下さい。


名取宏(なとろむ) (id:NATROM)

AGAPEROSさんへ。

なぜ、90%、95%が常識なのに、その数字がズバリ載っていないのでしょうか?

相対的にどうでもいいからです。90%とか70%は検診外まで含んでがんと診断された人が分母で、私が言っている95%とか90%とかは検診でがんと診断された人が分母です。人口統計から算出される過剰診断の割合は前者です。

また、この文献でも狭義のスクリーニング効果を考慮したのかどうかはっきりしません。

考慮はしているというか、「狭義のスクリーニング効果」はあっても誤差範囲内だということが論文を読むぐらいの人には見ればわかるんです。

過剰診断率約60%、狭義のスクリーニング効果約30%
根拠は単純です。
韓国の2008年の甲状腺癌の大きさ別の発見率の表から
1cm未満が過剰診断
1〜2cmが狭義のスクリーニング効果
2〜4cmとanspecifyedが元々の罹患率
です。

疑問が山ほどありますが、

(1)1cm未満がすべて過剰診断としているようですが、いずれ症状を呈するがんも1cm未満だったことがあるのでは?
(2)1〜2cmがすべて狭義のスクリーニング効果としているようですが、1〜2cmでも症状が出ないままのがんがあるのでは?
(3)2〜4cmが元々の罹患率とありますが、2〜4cmでも症状が出ないままのがんがあるのでは?4cmを超えるがんが検診で見つかることがあるのはどのように説明できますか?
(4)検診で見つかった1.01cmのがんは、過剰診断ですか?それとも狭義のスクリーニング効果?
(5)検診で見つかった0.99cmのがんは、過剰診断ですか?それとも狭義のスクリーニング効果?

とくに大事なのは(2)ですね。おそらく剖検結果を反論に使われると思われますが、誤りです。ごく単純な話です。ポイントは三つ。

a. 剖検では有病割合の上限しかわからない。
b. 剖検でも1~2cmのがんは見つかっている。
c. 剖検には「剖検されるような人」というバイアスがかかっている。

「剖検では有病割合の上限しかわからない」というのは「100人調べて1人も1cm以上のがんが見つからなかったからといって、1000人調べたら見つかるかもしれない」という単純な話です。剖検、しかも連続剖検となると対象者が限られます。だいたいは数百人ぐらいです。数百人調べて見つからない場合は、有病割合は0.1%以下だろうとぐらいは言えますが、ないとは言えません。たとえば有病割合0.1%、罹患率10万人年あたり5人、早期発見可能前臨床期10年だと、過剰診断割合50%ぐらいになるはずです。以前、「検診で発見された2cm以上の甲状腺がんが過剰診断である確率は(たとえば)50%ぐらい」と申し上げましたが、こういう根拠です(加えて検診やAS例も根拠です)。

そもそも、剖検でも1~2cmのがんは見つかっています。たとえば、

・アイスランドで201例を調べると16例の甲状腺がんが見つかり、うち一つは1cm以上(髄様がん)。(PMID:1437838)。
・フィンランドで101例を調べると36例52病変の甲状腺がんが見つかり、うち二つが1cm以上。(PMID: 2408737)

日本からの報告もあります。

・日本で320例を調べると44例に甲状腺がんが見つかり、うち二つが1cm以上。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrine1927/45/1/45_65/_pdf/-char/ja

1cm以上が見つかったけれども除外されたことが明記されたものあります。日本。剖検504

・例うち甲状腺がん25例を発見したが1.0cm以上が4例。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/joma1947/89/3-4/89_3-4_333/_pdf/-char/ja

なぜ「除外された」のというと、研究者の興味の対象が微小がんにあるからです。1cmより大きい、もしくは、肉眼的に同定できるぐらいのサイズの甲状腺がんは甲状腺がんの剖検研究から除外される傾向があります。というか「微小甲状腺がんを調べた」という研究はすべて例外なく1cmより大きい甲状腺がんは初めから除外されています。1cmより大きい甲状腺がんの有病割合を剖検研究から推定しようとすると過小評価します。

加えて「剖検されるような人」はかなり特別な人です。病理解剖は大学病院の病理教室で行われることがほとんどです。とくに何百例といった連続剖検ではそうです。大学病院で剖検される人は大学病院で亡くなった人が多いですが、死亡者全体と比べて生前により綿密な検査を受け、よって無症状のうちに甲状腺がんが診断され、治療されている傾向があります。やはり、甲状腺がんの有病割合を過小評価する方向へのバイアスがかかります。そういう網の目をくぐった症例ですら、1cm以下の甲状腺がんはぞろぞろ見つかり、1~2cmの甲状腺がんはそこそこ見つかります。

以上、剖検例からは「1〜2cmがすべて狭義のスクリーニング効果」とすることはできないと論じました。