活気に満ちたディスカッションをしていると信じている彼らは気づいていなかった。すでに他の自治体で定番化している制度を取り入れ、応用しているだけのことに独創性などかけらもありはしないことを。-彼らは実に、悲しいほどに、どこまでも「公務員」であった。-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:19:31「別に後追いも悪かないんですよ。ただ、後追いすんなら個性出さなきゃ陳腐なだけなんだけど、この制度で高知が打ち出す個性って何かなぁって、それが見えなかっただけで」見えなくて当然だ。そんなもの最初から考えていない。ただ真似できる手ごろなアイデアがあったから借りてきただけで。-有川浩「
2011-07-31 21:21:57吉門と電話を終えたのはたった数十分前なのに。同じ数十分で、こちらはうだうだ中身のない会議を回しているだけだった。-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:23:41「名刺ってさ、なんで名刺なのか知ってる?」吉門はふいに話題を変えた。「名前の通りだよ」「名前の通り・・・?」「名を刺すって書くだろ。ここぞって時、狙った相手に自分の名前を確実に刺す。相手の意識に。そのための道具なんだよ」-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:25:43名刺に刷ってあるのだから見ればわかるだろう、さように処置してくれるだろう。お役所的な、いかにもお役所的な不親切さの非が鳴らされた。-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:27:04「観光施設なんてもんは県外客に『外貨』を落としてもらう見せゴマ扱いで大盤振舞するべきなんだよ。観光施設でがめつく金を取ったら客は財布のひもを固くする。民間に落とす金を節約して調節する。考えりゃわかるだろ」-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:29:14県庁という堅い看板で悪気なくごり押しする手法は、改めて指摘されるまでいつの間にか身についていたことすら気づかなかった。-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:30:20真面目に仕事を探し続けて、ずっといらないと言われ続けたら卑屈にならない人間がおかしい。多紀も態度には出さないが、内心では充分卑屈になっていた。-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:32:20「行政は変化を嫌う。特に地方は保守的だ。現状を維持できたらいいって感覚のままじわじわジリ貧になってることに気づかない。気がついたら財政破綻してるって寸法だ。破綻が見えてから慌てたって手遅れだ。そのときにはもうどうにもならない」-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:35:49自治体が金儲けを考えるなんて、という風潮は根強い。しかしそうではないのだ。土地に金が落ちてくるシステムを考える、それは自治体が胸を張って取り組むべき仕事だ。それは県民のためにこそだ。-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:37:11「どっちにしても嘘やったらすらっと言わなぁいかん。お前は口ごもった。言い淀んでから客の質問を否定したらわけありに聞こえる。それはマイナスやろう」-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:38:47「県にセンスがない、組織にも弾力性がない。地域の発想をまとめ上げて県を『商品』としてPRすることを分かってない。観光の一番大きな窓口になれるのは県や、それやのに県と観光素材が乖離しちゅう」-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:41:04清遠が助けていたら意味はなかった。初めてスカイパークを訪れる観光客の立場を体験できるのは、白紙の状態で出かける一回目だけだ。-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:42:13「佐和の言った通り、客商売で一番の肝は水回りだよ。宿なんかもそうだけどさ、部屋がボロでも『うらぶれた風情』とかで押し通せる。でもこれでトイレや風呂が汚かったらアウト。逆に水回りさえ清潔だったら人間大抵のことは許せるもんだよ」-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:44:22あるのが当たり前と思っていたらその価値を見失う。それは吉門や清遠と知り合ってから折に触れ思い知ることである。-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:45:27「物が売れるのは一番分かりやすい評価や木。自分の作ったものが直接お客さんに選ばれてお金になるのは、値段が安くてもすごく嬉しいもんやきね。業者に卸してお金にするのとはわけがちがうわ。やき、おばちゃんやおばあちゃんは産直の出品にはまるがよ」-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:48:17電話で問い合わせてくれたら説明します、資料を送ります-ということだろうが、そこには興味があれば電話くらいかけてくるだろうという楽観が透けて見える。-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:49:23箱のクオリティを上げたところで、そこに箱があることをユーザーに向けて的確に発信できていなかったら意味がないのだ。-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:51:40災厄は突然降りかかった。すべての災厄は予告なく人を打ちのめす、おもてなし課はそのことを思い知らされることになった。-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:52:52「やめちょけ。抗議らぁしても無益よ。癒着じゃ汚職じゃ言うがはつつかれた側が圧倒的に不利じゃ。徹底抗戦して最後に潔白を証明したとしても、イメージが悪くなるのは避けられん」-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:54:45横槍をまともに受けとめようとするおもてなし課の反応には面食らった。吉門の常識では横槍を入れられたら相応にやり返すのがセオリーである。-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:57:27役所のシステムにはそこで働く者の堕落が織り込まれている。お前たちは堕落するものだと最初から決め打ちされたシステムの中で、能力を発揮できる人間がどれだけいるだろうか。-有川浩「県庁おもてなし課」
2011-07-31 21:58:48