橘田(kizta)さんによる「スエズ運河閉塞事故における人工衛星データの活用について」

橘田(kizta)さんによる各衛星写真からの各衛星の分解能や即応性の分析。
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橘田(kizta)@VSP&etc... @INHI_UV2B

それでは、これより始めさせていただきたいと思います スライドが大変長くなってしまいましたが、お付き合いいただければ幸いです #SuezCrisis #スエズ運河座礁 #宇宙 #人工衛星 #JAXA twitter.com/INHI_UV2B/stat… pic.twitter.com/XvFH7GDqMr

2021-03-31 20:10:58
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パワポ完成しました! 改めて本日20:00より、#スエズ運河 の事故において、衛星画像がどのように用いられたのか、各社ごとの特色はどのような物なのか、撮影した衛星はどんな機体なのか等についてお話させて頂ければと思います。 もし変なこと言っていたら遠慮なく教えて頂けると助かります #宇宙 pic.twitter.com/RPLPNWFklG

2021-03-31 13:53:20
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皆さんご存知の通り、23日にスエズ運河にてコンテナ船が座礁 交通を遮断しました これを受け、世界の衛星企業がこぞって当該船舶を撮影 多数の企業の衛星が一つの対象を撮影するのは貴重な機会であり、また対象は規格化されたコンテナを搭載するという特徴から、分解能の比較に役立つと考えました pic.twitter.com/EGGyxQhVsp

2021-03-31 20:18:01
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従って、少なくともTwitterで確認できた9社(JAXAを入れて10社)の衛星およびその画像について比較検討し、 衛星の規模や種類とレスポンスの速さの関係性、 各企業の特徴、 そして画像の分解能等を見ていこうと思います pic.twitter.com/M7I0dOgmyV

2021-03-31 20:20:22
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①Planet labs 120機以上もの地球観測衛星による観測網を構築しているアメリカの企業です スライドにある通り、事故発生の23日のうちに最初の画像を撮影している初動の速さが特長です。 一方、最初に撮影された画像は極めて解像度が低く、より詳細な画像は27日のSkySatにより撮影された物となります pic.twitter.com/rai94SpBif

2021-03-31 20:24:03
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注目するべきは、四枚目のDove衛星で撮影された画像です。 コンテナの長辺方向は判別可能ですが、短辺方向が潰れています。 これはDoveの解像度が最大でも3mであり、短辺2.33mの40ftコンテナの判別は性能上不可能であると結論付けられます

2021-03-31 20:26:00
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Planet labsの特徴は次のように分析することが出来ます 100機を超えるDoveによるコンステレーションは、それだけ高速でのレスポンスを可能とし、非常に大きな強みとなっています。 一方、Doveの解像度は比較的低く、より高解像度の画像を手に入れるためには、SkySatの回帰を待たなければなりません pic.twitter.com/3ZEXr1HtQh

2021-03-31 20:28:37
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②Capella Space 2016年に設立された、SAR(合成開口レーダ)画像を専門とする企業です。 保有する衛星の解像度は50cmと桁違いですが、これには60秒間の長時間レーダー照射が必要となり、船の画像はブレてしまいます 一方、画像の中には非常に細かな構造を捉えた物もあり、解像度は伊達ではありません pic.twitter.com/6uNMl2Nf22

2021-03-31 20:32:03
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SARは夜間でも撮影可能であり、天候にも左右されにくいという長所があります (左画像は現地時刻の深夜に撮影) Capella Spaceは小型衛星ながら、展開式レーダーを装備する等、非常に高い技術を持っていると言えます 一方、軌道上に保有している衛星はまだ数機なので、これからの拡大が期待されます pic.twitter.com/TccPUqmAKF

2021-03-31 20:36:14
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④Airbus Defence & Space エアバスの防衛・宇宙部門です 同型の地球観測衛星を2機ペアで運用するスタイルを取っています 今回スエズの撮影を行ったのは、Pléiadesと呼ばれる衛星です パンクロ(単波長)で0.5m マルチで2.0mの解像度を持ちます pic.twitter.com/c7YRRGJ7pU

2021-03-31 20:40:29
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撮影画像を見ると、解像度2.0だけあり、コンテナの短辺もはっきりと判別可能です 一方、細かな部品についてはやや潰れているように見えます スエズについてのツイートはこの1件しか確認できませんでした。Pléiadesは上記二社のような定点観測よりも、広域の地図作成等に使用されることが多いようです pic.twitter.com/Mtyw0ivBg8

2021-03-31 20:43:02
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④Sentinel-Hub ESA(欧州宇宙機関)の開発した地球観測衛星Sentinel-2の画像をWeb上で閲覧することの出来るサイトです Google Mapに近いですが、日時の指定や、他の衛星画像との比較機能もあります pic.twitter.com/yhddcJbxxj

2021-03-31 20:45:07
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Sentinel-Hubには、24日と29日の二回分スエズを撮影した画像があります ご覧の様に、解像度はこれまでの衛星とは激しく劣ります これは、そもそもSentinelは可視光だけでなく、エアロゾルや雲の分布等の観測も行う複合衛星であるため、可視光の分解能はそこまで高く設計されていないためと思われます pic.twitter.com/XCJMruVTtB

2021-03-31 20:48:14
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⑤Roscosmos 宇宙界隈で知らない人はいないでしょう ロシアの宇宙開発を行う国営企業です スエズの撮影には、Kanopus-VとRssurs-Pという二機の衛星が参加しました pic.twitter.com/GyPgYFYXlm

2021-03-31 20:49:58
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左がKanopus-V 右がRessurs-Pの撮影した画像です Kanopusはマルチの解像度が10.5mと比較的低いため、かろうじてコンテナ船だと分かる程度ですが、Ressurs-Pの画像の鮮明さには驚かされます。 解像度3mとされていますが、コンテナの短辺もはっきりと判別でき、それ以上の性能があるようにも見えます pic.twitter.com/ZnXehzFEtQ

2021-03-31 20:53:06
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Roscosmosの特徴として、元ロシア宇宙庁としての歴史ある国営企業であるため、大型の高性能衛星を多数打ち上げることが可能です。 これは民間企業には簡単には真似することは出来ません 一方、画像が25日と28日のものであることからも分かるように、即応性や撮影頻度では民間の小型衛星には敵いません pic.twitter.com/uUoGRjXSvp

2021-03-31 20:56:51
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⑥Satellogic 2010年に設立された、アルゼンチンの衛星開発企業です。 現在25機の小型衛星を保有し、分解能はマルチで1mという性能を持っています 将来的には90機でのコンステレーションを構成する計画です pic.twitter.com/ShCfTy6hcC

2021-03-31 20:58:49
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Satellogicの撮影画像を見ると、コンテナの短辺が判別可能であり、分解能は2mを超えることが確認できます。 一方、船のより細かな部分に関しては、PlanetやAirbusの画像の方が勝るように見えます 解像度1m級の衛星を既に21機も保有しているのは非常に強みです。今後の機数増加が待たれます pic.twitter.com/9mqzcHWtcq

2021-03-31 21:01:34
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⑦Spacety 中国で2016年に設立された、SAR画像を専門とする企業です 運用する海丝一号は、185kgの小型衛星ながら、1mの分解能を持つとされます pic.twitter.com/74TdY0BMQM

2021-03-31 21:03:43
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画像を見ると、やはりブレてはいますが、コンテナの長辺方向は確認できます。Capella Spaceには分解能の点で一歩譲りますが、非常に高い技術を有する企業と言えるでしょう pic.twitter.com/SqCYfhepPD

2021-03-31 21:05:28
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⑧Black Sky 2014年に設立された、シアトルに本拠地を置く企業です。 現在5機の衛星を保有しており、将来的には30分ごとに同じ場所を撮影できるようなコンステレーションを目指します 運用するGlobal衛星は、マルチ0.9~1.1mと、ここまでで最高の解像度を持ちます pic.twitter.com/GrZ6HmZjmc

2021-03-31 21:07:43
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コンテナの短辺は識別可能ですが、細部の解像度はSatellogicや、Airbusの方が鮮明なように見えます。ただ、引きの画像であるため、本来はよりズームする事も可能かもしれません また、Black Skyはユーザーインターフェースにも力を入れておりスマホから衛星画像を閲覧できるサービスも提供しています pic.twitter.com/eiyljOXEjD

2021-03-31 21:12:19
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⑨Maxar Technologies 1969年創設の老舗衛星開発企業です 地球観測サービスのみならず、衛星の基本構造(標準衛星バス)の開発・販売も行っており、種類も小型衛星から静止衛星まで多岐に渡ります 今回は、GeoEye1とWorld View2という二機の衛星が観測に当たりました pic.twitter.com/qj3AI9PAKh

2021-03-31 21:14:30
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もはや、これまでの画像は何だったのかというレベルの超高解像度です。 船首揚錨機や、掘削作業に当たるショベルカー、さらには周囲の人影まで鮮明に映し出されています。 本当は航空写真ではないかと疑うレベルです pic.twitter.com/zQsK4e24Gj

2021-03-31 21:16:10
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Maxar Technologiesの特徴として、最も大きいのは老舗・大手故の技術力と、それに裏付けされた高性能でしょう。 一方、その分衛星一機は大きく、機数は少なくなるため、レスポンスの速度はどうしても他社の小型衛星よりは遅く成りがちです pic.twitter.com/QQInDfcF8E

2021-03-31 21:17:55
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⑩JAXA 言わずと知れた、日本の宇宙開発を行う研究開発法人です。 今回スエズを撮影したのは、「だいち2号」というSAR衛星で、最大で1.0mの解像度があります pic.twitter.com/LFu6uGGSQK

2021-03-31 21:19:20
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