掌小説語り~自作つぃのべる集~70

自作つぃのべるのまとめです。 2019年2月分。
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リュカ @ryuka511

けもの道を行き夜の闇にまぎれる、人の子に生まれながら人の姿をせず生まれてきた私は、そのようにしてしか生きて行けなかった。親に捨てられた後、獣を真似て食糧を確保し、木の下で雨風を凌ぎ生きた。自分は何者かと、思考するのはとうにやめた。何者でもない、私は私でしかないのだから #twnovel

2019-02-01 00:44:37
リュカ @ryuka511

暗闇の中、抱きしめてくれる腕と優しい掌の温もりに包まれた。生贄として差し出された火山の洞窟。鳴動する大地に怯えていると不意に何かの気配が近づいてきた。喰われるのか。目を閉じ覚悟を決める。次の瞬間、未だかつて触れた事の無い温もりを感じた。人ではない感触、なのに人より温かい #twnovel

2019-02-02 01:15:56
リュカ @ryuka511

格安だからと事故物件に住む彼の家を訪れた。何だか息苦しいのは先入観のせいだけではない。そう言うと彼はそこに死体があるわけじゃなしと笑い飛ばす。霊なんて非科学的なものがいるわけないと。信じず感じないのは幸せな事だ。彼が視線をやった正にそこ、恨めしげな顔を見ずに済むのだから #twnovel

2019-02-03 00:06:49
リュカ @ryuka511

居なくなった君を探して数年、ようやく君を見つけた。色とりどりの花が香る花畑に佇む君へ駆け寄る。私に気づいた君は悲しく厳しい顔で首を振り、私が一言も発しない内に私を突き飛ばした。花畑の残り香を身に帯びながら、落ちる。気づけは病院のベットの上。君の所へは、まだ行けないのか #twnovel

2019-02-04 00:21:56
リュカ @ryuka511

世界に蔓延る厄災を鎮めるため、君は進んで生贄になると言った。「この苦しみを終わらせるの」「君の死で何が終わるというんだ?」「それが私の使命だから」「傲慢だな。君の生命1つで変わる程世界は単純じゃない」震える君の手を思わず掴んだ。「君が死ななくても世界は救える。行くぞ」 #twnovel

2019-02-05 00:12:39
リュカ @ryuka511

長い髪が熱風に煽られ舞い上がる。古代の炎が、彼女の手から放たれる。永い時をかけて錬成された炎は、辺り一面を焼き尽くし尚も燃え盛る。炎の海に佇み彼女は微笑んでいた。これで世界は救われる。永遠の無、それのみが救い。やがて彼女自身も炎に呑まれゆく。彼女は満足げに微笑っていた。 #twnovel

2019-02-05 23:08:36
リュカ @ryuka511

灯台の傍、大枚の金貨を賭けた対決に挑む。この対決に勝って一等船室の乗船券を入手するのだ。貴女とその婚約者が一等船室にいる。あの船は沈み、婚約者は彼女を見捨てて助かる。だから彼女を助けてあいつを沈めてやるのだ。その為に、地獄のような沈没直後の三等船室から戻ってきたのだから #twnovel

2019-02-07 00:09:51
リュカ @ryuka511

ぼくにはたくさんのお友達がいた。いつからお友達になれたのか覚えてなかったのだけど、ある日知ってしまった。母様がどこかからお友達を攫ってきて、みんな本当は帰りたくて泣いてると。もうずっと一人ぼっちでも構わないから、みんなを帰してあげて。お友達がぼくのせいで泣くなんて嫌だよ #twnovel

2019-02-08 00:35:38
リュカ @ryuka511

永らく続く戦に終止符を打つべく談合し、休戦協定を結んだ。この協定は、この先永遠に互いの平和を約束してくれる、はずだった。それから数年。かの日に握手を交わした手が今、我が城を攻め我が首を狙う。始めからそのつもりで談合に臨んだか。我が国我が首、そう簡単に落とせると思うなよ #twnovel

2019-02-09 00:20:21
リュカ @ryuka511

あれほど綺麗で儚い流れ星が人の欲望など叶えるわけがない。そう言うと貴方は「君らしい」と微笑むのだ。生まれた町ではたくさん見られた流れ星は、ここじゃ一つも見られない。貴方はそれでも夜空を見つめ流れ星を探す。「欲しいものがある」と。清らかな貴方の願いなら、きっと叶うだろう。 #twnovel

2019-02-10 00:59:27
リュカ @ryuka511

流れ星が人の醜い欲望など叶えるはずがないと君は言う。君らしいと思わず微笑む。故郷の空には多くの星が流れたが、ここでは一つも見られない。私はそれでもここで、流れ星に願いを掛けたいのだ。諦観に満ちた君の、希望が欲しいから。かつての君の清らかな微笑みを、取り戻したいから。 #twnovel

2019-02-11 00:22:12
リュカ @ryuka511

数多の血を流しても守りたい人がいる。あの人を利用する輩を斬り捨てていく。私の血を流す事も厭わない。あの人の力、美しさ、聡明さ、決して穢されてはならないものだ。高潔なあの人は王国の光、罪深き私は歴史の闇でいい。剣を振るう手を引かれる。「おやめなさい、歴史に闇はいらぬ」 #twnovel

2019-02-12 01:10:53
リュカ @ryuka511

薄闇の中、殺気に目覚める。首元に短刀。賊は私が目覚めた事に驚いたようだ。跳ね起き賊の手を掴む。「依頼主は誰だ?」私の手を跳ね除け賊は唇を歪めた。「言うと思うか?」「ならば吐かせるまで」指を鳴らす。音も無く現れた用心棒が賊を囲む。「ここで死ぬか、依頼主を裏切るか、選べ」 #twnovel

2019-02-12 23:59:11
リュカ @ryuka511

魔王を倒し満身創痍で帰還した勇者は、一切の記憶を失っていた。責任を感じ王は勇者を城に匿う。たとえ覚えていなくとも、魔王を倒した勇者を世界は放っておかないだろう。もう二度と危険な目は遭わせない。勇者も王国民の1人。魔王から世界を守ってくれた勇者を、世界から守るのは私の役目だ #twnovel

2019-02-14 00:07:14
リュカ @ryuka511

親友はアイドルみたいなイケメンで、毎年この日は大荷物を抱えている。「お前はいいよな」「こんなのただのイベントだよ。あっ」苦笑しながら校門を指差す。君が包みを手に立ってた。君もか。溜息を吐く俺の背を奴は軽く押す。「僕からすればお前の方が羨ましい」君の視線は俺だけを見てた #チョコラ

2019-02-14 23:50:43
リュカ @ryuka511

砂漠に栄える王国は、古代の魔法によって水と緑に満ちていた。近隣の王が古代魔法を狙って幾度も王国を攻めたが、激しく舞う熱砂に阻まれ近付く事すら出来なかったという。戦とは無縁の平和な王国。王の傍に跪き騎士は誓う。王よ、貴方の夢を、永遠に守ります。#twnovel 王の髑髏が微笑んだ気がした

2019-02-16 01:04:44
リュカ @ryuka511

人間共の手にかかり君は灰になってしまった。私を庇い、君は奴らの罠に自ら飛び込んで行った。何故私なんかを庇ったのか。私にここへ隠れているよう告げた君は、微笑んでいた。解らない。君の灰をかき集める。どっぷり灰に躰をうずめて、君を感じてみる。君の微笑みの理由を、考え続けている #twnovel

2019-02-16 22:55:06
リュカ @ryuka511

「あなたは死なないものだと思っていました」つまらなさそうに少年はそう口にした。満身創痍で倒れた私に手をかざす。「魔王に死なれちゃ困るんですよ」少年の手から溢れた光が、私の傷を癒した。「僕はまだ勇者でいたいんでね」口角を上げ笑う少年に戦慄する。お前の方が余程魔王に相応しい #twnovel

2019-02-18 01:16:49
リュカ @ryuka511

「誓います」絶対の誓いの言葉を口にしてしまった。もう後戻りはできない。互いに悲しい視線を交える。家の存続の為だけの政略結婚。参列席では互いの想い人が悲しい目でこちらを見つめる。愛の証である口付けは互いの心を裂く。貴族になど生まれなければ。虚しい祝福の鐘が、鳴りわたる。 #twnovel

2019-02-19 00:38:06
リュカ @ryuka511

この私を倒し魔族を滅ぼすと予言された子供をずっと監視してきた。部下達は奴が幼い内に殺そうしたが、それではつまらない。私を憎むように仕向け戦う理由を作った。勇者は私が作り上げたも同然。貴様を一番知り尽くした私が、負けるはずがない。予言など覆す。私にも守るべきものがあるのだ #twnovel

2019-02-20 00:59:32
リュカ @ryuka511

今日も主は恋人と大喧嘩してやけ酒を飲んでいる。もう何度目か。別れるのが最善の選択と私なら考えるのに。在るだけ無駄な感情を、何故人は持っているのだろう。疲弊するばかりで得るものは何もない。酔った主は幸せそうに恋人の写真を私に見せる。この人物は、私よりも主を幸せにできるのか? #twnovel

2019-02-21 00:05:46
リュカ @ryuka511

戒厳令が発令された街で道化師は居場所を失った。街からは笑い声が消え、笑顔さえも見られなくなった。仲間が街を出たり他の職に就く中で、彼は1人道化師の仕事を続ける。笑う事より笑わせる事の方が重罪とされた。それでも誰かが笑ってくれたら。未来は捨てたもんじゃないと思えるだろう #twnovel

2019-02-22 01:16:56
リュカ @ryuka511

魔法は何の為にあるのだろう。事件の真実を明らかにすれば恨まれた。魔物を倒せば恐れられた。その内、雪が降る事も自分のせいにされかねない。もう、他者の為に魔法を使うのはやめよう。魔法使いは森の奥へ引きこもった。 #twnovel 森に魔族が潜んでいると噂がたつまで、それ程時間はかからなかった

2019-02-23 00:16:10
リュカ @ryuka511

道端に落ちている薬草、井戸の底にあったコイン。旅人なら躊躇いなく拾うものだが、勇者は決して拾おうとしない。勇者が盗っ人のような真似はできないという。勇者だからって綺麗に生きようとしなくていいよ。みんな満身創痍で魔力も尽きてるんだ。そこに落ちてる薬草を使わせてくれないか #twnovel

2019-02-23 23:43:47
リュカ @ryuka511

魔術師は勇者の伝説について調べていた。本当に魔王を倒す程の力を秘めた人間がいるのか。伝説が本当ならば一刻も早く見つけなくてはならない。魔王に人間が対抗し得る唯一の存在。他の者が見つける前に見つけ、その力を私の物にするのだ。そして私が魔王も勇者さえも超える王として君臨する #twnovel

2019-02-25 00:59:34