掌小説語り~自作つぃのべる集~78

自作ついのべるのまとめです。 2019年10月分。
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リュカ @ryuka511

視線を感じて顔を上げると君が不満げに僕を見ていた。でも仕事の邪魔はしちゃいけないと気を遣う所がいじらしい。僕の視線に気づいた君はプイっと目を逸らす。構ってほしいくせに素っ気ない態度も可愛い。よし、遊んであげるかと君を抱き寄せる。「痛っ!」猫パンチを喰らった。あれ? 違うの? #twnovel

2019-10-01 00:20:23
リュカ @ryuka511

私の首を狙う輩が大勢いる。一人残らず返り討ちにしてやったが、襲撃者は後を絶たない。たとえば私がこの首一つになってしまったとしても、奴らの望みは叶わない。私が首一つで世界に君臨し続ければ、奴らは絶望するに違いない。それもまた愉快だ。さぁ、人間共。いくらでも襲ってくるがいい #twnovel

2019-10-02 00:55:50
リュカ @ryuka511

吸血鬼の貴族ともなれば大勢の従者を従えているものだが、私の従者は寡黙な人間1人のみだ。従者に着替えを手伝わせる。私の身体中に残る火傷の痕を見せられるのは彼だけだ。同族も醜いと顔をしかめるこの身体に、彼は表情1つ変えない。考えは読めないが、黙々と働く彼は同族より信用に値する #twnovel

2019-10-03 00:13:31
リュカ @ryuka511

青年を飼っていた吸血鬼がハンターに倒され、彼は自由になった。虚ろな瞳で彼は街を彷徨う。急に自由だと言われても、どうしたらいいのかわからないのだ。家族も友人もいない。飼い主だった吸血鬼だけが、彼を世界に繋げていた。飼われていた自分は不幸だったのだろうか。よくわからない。 #twnovel

2019-10-04 00:11:57
リュカ @ryuka511

決行までにかかってしまった長い時間が、決意を鈍らせる。全て忘れて、平穏な人生を歩むのもいいかもしれないと。だがその度に、君の最期の姿と声が脳裏に蘇る。あぁ、分かっているよ。君を死に追いやった奴らを皆殺しにする。君の最期の願いだ、何があっても叶えるから、そんな目で見ないで #twnovel

2019-10-05 01:40:13
リュカ @ryuka511

魔女の呪いで君は獣に姿を変えられた。だが僕はどんな姿とて君を愛す。獣、虫、どんな姿にされても中身は君だ。躊躇わず抱き寄せ愛した。だが。今、君は声も仕草も何から何まで僕そのもの。中身は君だ、解っている。これは、鏡? 生霊? 違う、君だ。いや、僕? なら、ここにいる僕は、誰だ? #twnovel

2019-10-05 23:58:09
リュカ @ryuka511

「さぁ、早くその手でころして」少女は青年を見上げた。青年に恋した少女は振り向かない彼に最後の手段に出た。彼の家族、友人、そして恋人を殺す。青年は少女を追い詰めた。彼が私を見てくれる。少女は幸せだった。少女の首にかけた手を、青年は無造作に離した。「お前に復讐の価値は無い」 #twnovel

2019-10-07 00:56:15
リュカ @ryuka511

僕達の未来はもう見られない。余命数ヶ月。君はそれでも僕と結婚すると言って聞かない。君の未来に悲しい影を落とすわけにはいかない。この先君を幸せにはできないから。「全部、忘れていいよ」約束を守れない僕の事など忘れてどうか幸せに。泣いたりしないよ。その資格は僕には無いのだから #twnovel

2019-10-07 22:57:27
リュカ @ryuka511

竜殺しの英雄を祀った祝祭が今年も開かれる。世界を滅ぼそうとした竜とたった一人で戦った英雄への、感謝と鎮魂の祭だ。だが祝祭と聞いた旅人は困惑する。街は厳粛な雰囲気に満ち人々の表情も硬い。老人は旅人に告げる。「竜と英雄にこの街は呪われている。次の生贄にされる前に去りなさい」 #twnovel

2019-10-09 01:19:02
リュカ @ryuka511

ずっとずっと追い続けていた背中を、いつしか追い越してしまった。そんな日が来るなんて。あなたはずっと憧れの人だ。それは変わらない。けれど、あの日あなたの時は止まり、私は否応無しにあなたを追い越していく。あなたを追い越す事を目指していたけど、こんな形で果たせても嬉しくない。 #twnovel

2019-10-10 00:12:20
リュカ @ryuka511

世界を恐怖で支配すべく侵攻した魔王は、1人の青年に倒された。人々は歓喜に沸き、長かった闇の時代、悲しみと苦しみに満ちた時代だった。人々が歓喜に沸くのも当然だろう。だが、誰1人世界を護った青年に想いを馳せない。帰らぬ人となった、愛しい人。護られた世界で泣く心を、誰も知らない #twnovel

2019-10-11 00:32:11
リュカ @ryuka511

男は大仰な身振りで語る。「神は我らを見捨てたもうた!」聴衆は男の熱い語りに引き込まれる。「我らを見捨てたもうた神を、まだ信仰するのか⁉︎」人々は歓声を上げる。 彼らは何も解っていない。神とは我らを導くもの、無条件には救わない。他力本願な連中など、初めから見ていなかっただけ #twnovel

2019-10-11 23:57:42
リュカ @ryuka511

魔王討伐の旅で、魔法使いは勇者に恋をした。間も無く魔王との決戦。敗れれば死、勝っても勇者は王女と婚姻が決まっている。自分に勇者との未来は無い。だけど。「今だけでいいから夢を見させて」幻惑術を勇者に。抱きしめてくれるだけでいいから #twnovel 愛しい人の腕の中で聞いたのは、婚約者の名

2019-10-12 23:36:38
リュカ @ryuka511

君は傷だらけの手首を晒す。「私の為なら何でもすると言ったね?なら、君の愛した命を殺してみせてよ。自力じゃ上手くいかないんだ」君のその願望は知っているけど、叶えたくはない。「じゃあ、君の命は僕が貰う」だから。「僕のものなんだから、好きにしていいだろ?」僕の我儘の為に、生きて #twnovel

2019-10-14 00:18:10
リュカ @ryuka511

「お前を襲い恋人を殺したのは吸血鬼だ」大怪我を負った私に教会の人間は告げた。「復讐したいなら我々に協力するんだ」痛みと飢餓感に朦朧としながら頷く。以来、私は吸血鬼狩の先鋒として多くの吸血鬼を屠る。吸血鬼の私に大怪我を負わせその恋人を殺すなど、人間には出来ない。そうだろう? #twnovel

2019-10-15 00:06:19
リュカ @ryuka511

革命軍の決起も戦いの中であなたと愛し合った事も、間違いだったなんて言わないで どうか。王国軍の前に敗走する。時期尚早なだけ、生き延びて悲願を。革命軍を率いるあなただけは、未来を潰さないで。私達の子に、希望を。「投降するぐらいなら、自決を」 #twnovel 何よりもあなたの言葉に、絶望する

2019-10-16 00:12:05
リュカ @ryuka511

あなたの顔ってやっぱり綺麗。もちろん、顔だけじゃなく全部が好きよ。大好きだったから、ほんとうに大好きだったから。愛されてるって感じたくて、想いを込めた手に力が入る。利用されてただけなんて信じてないよ。あなたの優しさだけを信じてる。ほら、優しいあなたは、苦痛に歪む顔も綺麗 #twnovel

2019-10-17 00:19:50
リュカ @ryuka511

主を亡くしたアンドロイドは、それでも毎朝同じ時間に主を起こしに行く。もう誰もいない寝室に、混乱して立ち尽くす。主は死亡したと聞いた。ではその後、主はどこへ行ったのか。他の部屋を見てみよう。その瞳から落ちていく雫が涙だと知らず、アンドロイドは主を探して屋敷中を歩き回る。 #twnovel

2019-10-18 00:38:31
リュカ @ryuka511

「こっちだ!」教会の連中から逃げる吸血鬼を導く。和睦を結んで何年も経つが、教会は未だに吸血鬼を異端視し追い回す。共存など夢物語だと悟ったのは最近だ。 #twnovel 「裏切り者め!」捕まった吸血鬼が私を罵る。だが私は半吸血鬼、教会の言い分も分からんではない。利害の一致した側についただけの話

2019-10-18 23:27:35
リュカ @ryuka511

もうここへは来るまいと決めたのに、彼女の縋るようなくちづけに心が揺らぐ。ほんの遊びのつもりだった。だが彼女の境遇を聞き、のめり込んでしまった。私にはどうしてやる事も出来ないくせに。想いだけでは変えられないほどに重い現実。強すぎる光は、闇にいる者の目を射るだけなのだ。 #twnovel

2019-10-20 00:23:35
リュカ @ryuka511

凄い数の死体に思わず笑っちゃった。もっと手こずると思ったのに。これ全部僕がやったの。動機?復讐だったっけ?もうどーでもいいよ。どれも同じに見えたけどちょっと違うね。これなんて胸ポケットに子供の写真が入ってるよ。だったらもっと頑張んないと。ま、僕みたいにならなくて良かったね #twnovel

2019-10-21 00:40:51
リュカ @ryuka511

「貴方の色に染まりたい」だなんて止めた方がいい。知らずにいた世界が君には新鮮に映るだけ。君に惹かれる度に出逢いは間違いだったと思い知らされる。君と私では住む世界が違うのだ。君を愛しく想うと同時に君が憎い。いや、世界への憎悪が君へ転化されてしまう。だからもう、来ないでくれ #twnovel

2019-10-21 23:47:47
リュカ @ryuka511

松明の灯りは頼りなく揺れ恐怖を煽る。怖くない、君の為だ怖くない。山奥の怪物を倒せば君は生贄にならずに済むんだから。だが、山奥に怪物なんていなかった。思い返せば、生贄にされたのは親のいない子供ばかり。今まで生贄にされた子供の骨を前に泣いた後、村へ走る。本当の怪物がいる村へ #twnovel

2019-10-23 01:34:29
リュカ @ryuka511

僕らは冷たい月の光の下でずっと生きてきた。温かな太陽に焦がれているけれど、その温もりに触れる事は叶わない。月の光は冷たいけれど、夜の闇を確かに照らしてくれる。太陽はきっと、僕らに優しくないのだ。闇に慣れた目を射抜き、冷たさに慣れた肌を焼くだろう。だから、これでいいんだ。 #twnovel

2019-10-24 00:42:59
リュカ @ryuka511

離れ離れになってしまった君に逢いたくて飛び出した。消えてしまいそうな君の痕跡を慎重に辿りながら歩く。あとどれくらい歩けば君に逢えますか?逢いに来た僕に、君は喜んでくれますか? それとも怒るかな。でももう向こう岸には戻れないから、こっちではずっと一緒にいられたら嬉しいです。 #twnovel

2019-10-25 00:38:17