2021年4月2日

掌小説語り~自作つぃのべる集~79

自作ついのべるのまとめです。 2019年11月分。
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リュカ @ryuka511

1人になって、この部屋は広すぎると感じた。君が窓辺に挿した花はとっくに枯れているのに、片付ける気になれない。お揃いのカップも2人がけのソファも、もういらない物なのに。君の痕跡を消してしまうのが怖いんだ #novelber 黒い額縁の向こうで微笑む君は、こんな僕を女々しいよと笑うだろうか。

2019-11-01 23:52:34
リュカ @ryuka511

幼い頃、臆病な僕と違い君は高い所も暗い所も平然と入っていった。危ないからやめようと言うと、怖がりだね、と君は笑っていた。大人になって、あの頃怖かったのは高さでも暗さでもなく、君がそこで危ない目に遭う事だったと気づく。心配しすぎと君はまた笑う。「だったらしっかり守ってね」 #twnovel

2019-11-03 00:53:13
リュカ @ryuka511

誑かされているだけだと言われた。だが私はあの人が好きだ。種族の違いなど問題にならない。吸血鬼と人間が捕食者と被捕食者の時代は古い。あの人は高潔で美しい。私を真似て血を啜る姿も、唇から零れる真紅を拭う舌も愛おしい。他者を恋い慕う心は種族を問わず尊い、応える価値のあるものだ #twnovel

2019-11-04 00:05:57
リュカ @ryuka511

1人は寂しい。だけど2人でいても寂しさは拭えない。会える日までを指折り数えたあの頃が恋しい。会えない時間があった頃は、互いを思いやれていたはずなのに。あの頃の気持ちはどこへ行ってしまったのだろう。寄り添って眠っても、鼓動が聞こえるくらい近くにいても、心は遠い。 #novelber #twnovel

2019-11-05 00:45:24
リュカ @ryuka511

「治さなかったんだ、それ」魔法使いは勇者の額の傷をそっと撫でる。初めて魔王軍と戦い負った傷だ。実力不足で無様に敗走したあの日の想いを忘れない為に。「俺が皆を守る」拳を握る勇者に魔法使いは笑う。「それはこっちの台詞だ。魔法なら君には負けない」世界を守り戦う君を、守らせて #twnovel

2019-11-06 01:07:27
リュカ @ryuka511

魔王軍の侵攻が始まった。代々伝わる聖剣を抜く時が来たのだ。救世の勇者の家に生まれ、この時を覚悟はしていた。だが、事が起きる前に防ぐ事は何故できなかったのか。あの日には抜けなかった聖剣。ならば何の為に在ったのか。君のいない此処を世界とは呼べない。 救世の勇者など、もういない #twnovel

2019-11-07 00:54:28
リュカ @ryuka511

革命軍が城内へ突入してきた。王と王妃は城を捨て逃げ出した。幼い王子は自室に籠り震えている。見捨てられたのならばと家臣達もこぞって逃げ出した。革命軍は王子の部屋へなだれ込み王の居場所を吐けと王子に詰め寄る。「僕は何も知らないんだ、何も」俺が王子を守らねば。「私ならここだ!」 #twnovel

2019-11-07 23:05:15
リュカ @ryuka511

異国から来たあの人は、冬空に一等輝くあの星を天狼星と呼んだ。知らない世界を沢山教えてくれた人だった。別れも告げず居なくなってしまったのは、切実な理由があったに違いない。天狼星を目指し船を出す。もう一度会いたい、共に世界を知りたい。あの人の目を通した世界は、輝いていたから #novelber

2019-11-08 23:52:44
リュカ @ryuka511

深い森の奥にポツンとある古びた小屋に老賢者は住んでいた。魔王討伐を果たした英雄の1人である彼が何故このような所にいるのか、 誰も知らない。#novelber 魔王討伐は正確には果たされていない。私の中に封じたのだ。敗北を許されない勇者を救う為に。私の死は魔王の消滅。私の使命も間もなく終わる。

2019-11-10 00:19:53
リュカ @ryuka511

最近は巧みに人間へ擬態する吸血鬼も多く、教会の人間だけでは到底狩りきれない。そこで私は協力を持ちかけた。吸血鬼が異端者と映るのは、人間の血が混ざった半端者のせいだ。半端者を狩り尽くし、半端者となり得る人間も狩る。純血の吸血鬼のみが生きる世界を作るのが、始祖たる私の使命だ #twnovel

2019-11-11 00:49:13
リュカ @ryuka511

森に入ると一斉に蝉が鳴き出した。そんなに沢山いるのかと思わず足を止めた僕に君は笑う。「都会の子は怖がりだ」そんな事はないと足を速める。数年ぶりに会ういとこが大人びて見えるのが悔しい。「意地っ張りなのは変わらないね」見透かされてるのも。蝉時雨が、速まる鼓動を隠してくれたら #novelber

2019-11-12 01:03:48
リュカ @ryuka511

おはよう、今日も精が出るね。やぁ、体調はどうだい?そうか、養生するんだよ。魔女は一人一人に優しく声をかける。だが彼らの瞳は魔女を映さない。声も無く青白い顔で漂うのみ。湖底に沈んだ故郷。彼女の魔法は故郷を救えなかった。水中に漂う死者。時を止めた湖底で魔女は一人幸せそうに笑う #twnovel

2019-11-12 23:20:21
リュカ @ryuka511

あの病院にはクラスメイトが入院している。友達と見舞いに行ったが、容態が悪いらしく会えなかった。大人しそうだけど気が合いそうだと思ってたのに。同い年の子が死にかけてるなんて実感が湧かない。みんなあんなに元気なのに、どうしてあの子は。ねぇ神様、友達を取らないでよ。 #novelber #twnovel

2019-11-14 00:23:11
リュカ @ryuka511

祖父の遺品整理をしていると、燕尾服の内ポケットからしわくちゃの手紙が出てきた。祖父の字で宛名には祖母の名前。生真面目な祖父らしく実直な、それでいて情熱的なラブレターだった。ここにあるという事は渡せなかったのか。仏壇に置こうとして、止めた。並ぶ2人の写真に今更だねと微笑む #novelber

2019-11-15 00:38:33
リュカ @ryuka511

氷で作った城は私以外誰も入れない。仮に入れても1分と生きられないだろう。ここは私だけの楽園。恐れず恐れられずにいられる唯一の場所。誰もが私を魔女と呼び、恐れ忌避し亡き者にしようと襲う。分厚い氷の城壁と真っ白に荒れ狂う風は私の砦。極寒の中の孤独だけが、私を守ってくれるのだ #twnovel

2019-11-15 23:34:55
リュカ @ryuka511

あの日差し伸べられた手は、白く綺麗で柔らかそうで温かそうで、とても僕には握れなかった。土と垢と血と罪に汚れたこの手は、あの目映い手に灼かれてしまうだろう。無垢な存在は時に鋭利な刃となる。彼らは汚れた存在を、許しているわけじゃないから。 #twnovel

2019-11-17 01:10:33
リュカ @ryuka511

魔王は最期に魔界を崩壊させた。僕らも道連れにする為だ。死戦を共にした仲間達は崩壊する魔界に飲まれ消えてしまった。1人地上へ帰還し人々の歓待を受ける。杯を満たすは酒か、涙か。仲間を犠牲にして帰還した僕は、断じて英雄なんかじゃない。杯を受ける資格も、泣く資格さえ、僕には無い #twnovel

2019-11-18 00:10:41
リュカ @ryuka511

月明かりのなかであなたを待つ。森の傍で落ち合って、私達の愛が許される世界へ向かう為に。今宵の月が一番高く登る時、初めて会った森の傍で。そう約束した。晴れた夜空に高く登る月。あなたは来ない。獣の咆哮が聞こえる。最近は夜盗も出るという。こんな所に、1人でいてはいけないのではー #twnovel

2019-11-19 00:33:38
リュカ @ryuka511

陽は沈んだのに、空には鮮やかな残光がある。寒く暗い夜が来るのは解っているのに、まだ希望があるかのような光。夜を越えれば朝は来る。だがそれは、同じ朝ではない。君がいた幸せな朝は、二度と来ない。君がいる空からの光。なのに決して届かない。ならば、希望を持たせるのはやめてくれ #novelber

2019-11-19 23:39:08
リュカ @ryuka511

橋の上から釣り糸を垂れる男がいた。こんな澱んだ川に魚などいるのか。「釣れますか?」興味本位で声をかけると男は微笑み頷いた。「えぇ。この時期は特に、味の濃いものが釣れますよ」川を指差し男は語る。「こんな寒い季節に、川へ飛び込む程の深い絶望は実に美味です。無論、貴方のも」 #novelber

2019-11-20 23:14:31
リュカ @ryuka511

彼の真っ白な髪と紫の瞳は生まれつきだった。その為「あれは人間ではない、吸血鬼だ」と迫害されてきた。そんな彼を唯一愛した少女がいた。彼女との時間は最初で最後の幸せな時間だった。彼女は彼を庇って死んだ。あぁ、そうか。私が人間ではないと言うのなら、お望み通りの化物になってやる #twnovel

2019-11-22 00:25:53
リュカ @ryuka511

冬将軍は悩んでいた。人々は吹雪を恐れ寒さを厭い、固く門扉を閉ざす。春を待ちわびる歌を歌い、温もりを求め火を囲む。自分は何の為に存在しているのか。溜息を着いた冬将軍の視界に子供達が作った雪だるまが映る。「愛らしいな」雪を楽しむ子供達の姿が見えたようで、ほっと口元が緩んだ #novelber

2019-11-23 00:38:02
リュカ @ryuka511

自販機に温かい飲みものが並ぶ季節になった。コーヒーを買おうとして、つい君が好きだったミルクティーを買ってしまう。甘いものは苦手なのに。君はもう、いないのに。曇天模様の空に、ミルクティーのペットボトルを軽く掲げる。「君の分も買ってきたよ」こんな僕を、君は笑うだろうか。 #novelber

2019-11-24 00:43:35
リュカ @ryuka511

蝋燭に火を灯す。火の届く範囲は小さく洞窟の全貌は解らない。王位継承の試練に宝を持ち帰れという。宝が何か父上は教えてくれなかった。王に相応しい器量を示せとだけ。どういう意味だ。「寒いよぅ」不意に聞こえた助けを求める声。蝋燭は残り僅か。暗闇の中、火を手放す訳には。どうする? #novelber

2019-11-25 00:54:34
リュカ @ryuka511

魔王と対峙する。仲間も魔王の配下も倒れ、僕も魔王も満身創痍。次の一撃で決まるだろう。剣を構え間合いを測る。魔王の策は読めない。斬り込む。魔王の魔法が発動する。最後の一撃。倒れたのは、僕の方だった。最期に見えたのは、魔王の悲痛な顔。「お前も、私を死なせてはくれないのか」 #twnovel

2019-11-25 23:47:29
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