掌小説語り～自作つぃのべる集～83

リュカ @ryuka511

魔王討伐を果たした勇者一行は人々の歓待を受けた。勇者は仲間を見回し涙ぐむ。皆がいなければ、自分は死んでいただろうと。使命を果たした達成感、重責から解放された安堵感、仲間と共に生還できた喜びが勇者を包む #twnovel 但しこれらは全て嘘。私の魔法が見せる幻だ。貴方はもう、苦しまなくていい

リュカ @ryuka511

あなたなら大丈夫だと、あの人の背を押したのは私の手だ。そしてあなたは、今や知らぬ人はいない大スターになった。あなたの夢が叶った事を喜ばなきゃいけないのに。昔、私の為だけに作ってくれた曲をステージで歌うあなたに、涙が止まらない。この涙は何なのだろう #twnovel

リュカ @ryuka511

泣きながら、君だった水泡にキスをする。恋した人間と結ばれなかった君は、そいつを殺すより自らの死を選んだ。そいつは生命の恩人である君ではなく隣国の姫を娶ったと聞き、僕がそいつを殺したくなった。水泡は僕の手をすり抜け海面へ登っていく。太陽の光に揺れるそれは、とても綺麗だった #twnovel

リュカ @ryuka511

都会の雑踏でも、待ち合わせ場所に向かってくる彼女は私の目を引く。特に目立つ格好をしてるわけじゃない。きっと、先週まで友達だった私達が恋人になったから。何だか不思議な感覚。駆け寄る彼女に微笑む。「ごめん、待った?」「ううん、今来たとこ」指を絡めて歩き出す。今日は朝帰り、かも #twnovel

リュカ @ryuka511

魔王の返り血により英雄は不死身となった。それを知った王や民衆は英雄を頼り、次々と戦いを強いる。困っているのだと縋られれば、英雄に断る道は無かった。悪竜に害獣、怨霊、様々なものと英雄は剣を取り戦った。不死の英雄は今日も戦う。血や脂に剣は曇り、その心はとうに死んでしまっても #twnovel

リュカ @ryuka511

傭兵の募集に応じ戦場に立つ。戦況は苦しく、治癒術が全く追いついていない。疲弊した治癒術者が俺を治癒するのを遮った。「俺は傭兵だ。正規の兵を先に治癒しろ」術者は首を振る。「王は全員の生還を望まれています。兵に貴賎はないと」数多の傭兵募集の中、この国を選んだのは正しかった #twnovel

リュカ @ryuka511

タイムマシンで見た私の未来は2通りあった。好きな人と結ばれ幸せな私、お金持ちになり独り身の暮らしを満喫する私。どっちの私も満足そうだ。2つの内1つが現実に、幸せな私を消さないでと、2人の私に言われ苦悩する。何よりどっちも欲しい私の我儘に嫌気が差す。未来なんて知るもんじゃない #twnovel

リュカ @ryuka511

虹の袂に宝物？いいや、死体が眠っているのさ。本当だよ。嘘だと思うなら見に行けばいい。虹や桜、美しく儚いものはみな、死体から血を吸い上げているんだ。なぜそんな事を知っているのかって?世の中知らない方がいい事は多いものだよ。夢を見ていたいなら、いつまででも見させてあげようか。 #twnovel

リュカ @ryuka511

ネオンがぎらつく街に男は首を振った。真の夜はもうどこにも無い。昨今の夜は危険なものでは無くなった。どこも昼のように明るく、人々は昼夜を問わず騒ぎ立てる。真の夜はどんな色をしているか、誰も知らないだろう。ネオンが彩るけばけばしい街を男は見据える。私の生きる場所を、返せ #twnovel

リュカ @ryuka511

ただの雑魚だが数が多すぎる。魔法使いは勇者に囁く。「すぐに追いつくから、先に行ってて」勇者は躊躇いを隠せぬまま進む。彼は神託が示した救世の英雄だが、私は違う。殺気を放つ魔物を睥睨し笑う。「来いよ。お前らの相手は私で充分だ」 #twnovel 救世の英雄の友として凱旋する夢は、叶いそうにない

リュカ @ryuka511

呪われた経緯などとうに忘れた。悲哀も憎悪も無くただ永遠の生がある。諦観に満ちた時の中、君は私の希望であった。吸血鬼の始祖たる君は支配者ゆえの孤独に苦しむ。君が欲するのは愛だ。君に子を成すよう進言する。人間の真似事など出来ぬと言う君は、それでも私の愛に応え孤独を満たし合う #twnovel

リュカ @ryuka511

長きに渡る戦いが終わった。もっと手こずると思っていたのに、あまりにもあっけない。随分と派手に散らかしてしまったなと、赤黒く汚れた部屋を見回す。暴力しか振るわない腕と暴言しか吐かない頭、母親だったものがバラバラに転がっている。こんなに簡単ならもっと早く決行するべきだったな #twnovel

リュカ @ryuka511

スラムで暮らしてた僕は、ある人に拾われ暗殺者として育てられた。あのままスラムにいたら、僕は飢えて死んでいただろう。血の色と臭いが僕の身体に染み込んでく。殺した相手も僕も同じ血の色をしてた。それを知った時、安心した。同じなんだ。僕だけが捨てられていい存在なんかじゃないんだ #twnovel

リュカ @ryuka511

君とは赤子の頃から一緒にいる幼馴染みで、僕らの間に恋愛感情はなかったはずなのに。君の彼氏に君を名前で呼ぶのはやめてほしいと言われた。その時は、恋心ってそんなものだろうと思った。その後君を名字で呼んで胸が痛む。この時から名前すら呼べなくなった君に、恋していたんだと気づいた #twnovel

リュカ @ryuka511

何としてでも君を取り戻してみせる。千切られたパーツを一つ一つ探し出し、元通りに繋ぎ合わせる。合わせ目はもちろん目立たないように。最後のパーツを見つけて取り付ける。蘇らせて視線を合わせた時の、君の嬉しそうな顔といったら。やはり誰が何と言おうと、君はガラクタなんかじゃない。 #twnovel

リュカ @ryuka511

視てしまった。世界を救う為戦う君の末路を。神託を降した術師は、人々の希望が英雄の力になると言う。だがとうの昔に絶望しきった人々は、英雄の力になどなりはしない。使命に満ち旅立つ君を見送る。「大丈夫、世界は希望で溢れている」涙を堪え告げる。この嘘が真実になるよう願いながら #twnovel

リュカ @ryuka511

夜更けの河を往く船は、水面にその姿を映さない。現し世のものではなくなった者達を乗せ、音も無く進む。志半ばで倒れた無念、愛しき者とはもう逢えない悲しみ。ともすれば膨れ上がるそれらを、取り込もうと煽る怨霊共から守りながら。此岸の河から彼岸の河へ消える瞬間を、見た者はない #twnovel

リュカ @ryuka511

そんなつもりは無かった、と言った所で無意味だ。私は友を傷付けた。片想いに苦悩する友を見かね術をかけた。友は恋が実ったと思い込む。2人が永遠の愛を誓った瞬間、術は解けてしまった。全てを知った彼女は絶望し海に身を投げた。彼女を追い飛び込む。謝罪も出来ぬまま、私だけが生き続ける #twnovel

リュカ @ryuka511

「後悔しているのか?」「まさか」死神の問に首を振る。君を救う為、この命を差し出したことに後悔なんてありえない。君がそれを知らなくても構わない。「なら何故そんな顔をする?」知らない奴と幸せそうに笑う君に死神は笑う。「あいつに教えてやろうか」「やめてくれ」後悔なんて、してない #twnovel

リュカ @ryuka511

私の居場所はあそこだけだ。血は繋がってなくても皆が家族だった。私だけが、亡くなった令嬢と似ていると、ある貴族に引き取られた。広い部屋は落ち着かず、豪華な食事は味が分からない。養父母の優しさと愛情は、本当は私が受けるものじゃない。望んでいなかった幸せは、孤独を深めるばかり #twnovel

リュカ @ryuka511

心というものは、どこにあるのでしょうか。ある人は胸の中にあると言い、またある人は頭の中にあると言う。しかし私の胸にあるのは金属製の部品ばかり、頭の中のプログラムを精査しても、それらしきものは見つからない。どなたか教えて下さい。心さえあれば、あの人を愛し救う事ができるのに #twnovel

リュカ @ryuka511

師は「窮地にあればいつでも私を頼れ」と言った。あれから弟子をとる立場になり、俺は行き詰まっていた。弟子が俺を追い越し、こんな程度かと落胆されるのが怖い。再度教えを請おうと師の下へ向かった。だが、師は病床にありそれはもう縋りつける腕ではない。そうして悟る。それでいいのだと #twnovel

リュカ @ryuka511

神殿に仕える君へ密かに会いに行った。驚く君は逃げるように後ずさる。自分は神に仕える身、色恋に染まってはならないと。いわゆる全智全能の神が全て正しいとして、君はそれに従うの?僕の愛は間違いだと?君だって僕を愛してるくせに。君は神ではなく、僕の為に在るのだと思い知らせてやろう #twnovel

リュカ @ryuka511

その夜僕を殺したのは、花嫁姿の君でした 。君は泣きながら引鉄を引いたのです。放たれた弾は僕の心臓を撃ち抜きます。その瞬間の君の叫びを聞きました。私は幸せだったから大丈夫、貴方は生きて、と。目が覚めた時、僕は泣いていました。君を喪い生ける屍だった僕を、君が消してくれたのです #twnovel

リュカ @ryuka511

私を見る人間の想いは様々だ。単に美しい骨董品として私を愛でる者、私を通して主を見る者。前者はいいとして、許し難いのは後者だ。悪人なのは主の親であって、幼かった主は関係ない。むしろ主は暴君の犠牲者なのに。何も知らない輩が、主の名をもらった私をそんな目で見るのは許さない。 #twnovel