掌小説語り~自作つぃのべる集~84

自作ついのべるのまとめです。 2020年4月分。
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リュカ @ryuka511

僕の病が発覚した時、君はそれでも傍にいると言った。だが僕は君に二度と愛を囁けない。それは僕らに不幸を招く。僕らは別れた方がいい。だから最後に言わせてくれ。君を愛している。 #twnovel 貴方の身体に咲いた花は、貴方の愛が真実である証。だから貴方の花を私に移植したの。これで最期まで一緒よ

2020-04-01 23:27:11
リュカ @ryuka511

夕暮れは慟哭にも似た激しさと寂しさで街を包んでいる。そう思うのは、私の心が鮮烈なまでの寂しさを抱えているからなのだろう。君を喪って、寂しさとは静けさに沈む孤独感だけではないのだと知った。喉が枯れるまで泣き叫んでも消えない寂しさは、寄り添う者もなく沈む夕陽のように胸を刺す #twnovel

2020-04-03 00:17:49
リュカ @ryuka511

魔王を討つ救世の勇者だと言われ、幹部ですらない敵に惨敗した。人々はたった一度の敗北さえ許してくれないのか。今は何倍も強くなったんだ、あの時の俺じゃない。街を支配する魔王軍将軍を敗り敗走する雑魚共を掃討した。魔物も獣も魔族も人間も分け隔てなく殲滅した。なぁ、俺を見てくれよ #twnovel

2020-04-03 23:36:44
リュカ @ryuka511

満身創痍で倒れていた人間の子を見つけ保護した。記憶喪失のようで何も覚えていないらしい。またやったのか、子供にまで手を出すのはやり過ぎだ。私の中に潜むあいつに苦言を呈する。聞く耳など持たないが。この子を守るのは私の義務であり贖罪だ。戦いと血を求めるもう1人の私を消す為にも。 #twnovel

2020-04-04 22:33:27
リュカ @ryuka511

君は私を愛していると言う。その真摯な眼差しを、私は受け止め切れずにいる。君が他の人と楽しそうに話しているのを見る事さえ辛い。私しか見ないように、私としか触れ合わないように、君をどこかへ閉じ込めてしまいたくなる。そんな醜い嫉妬と劣情を伴うものを、君への愛とは言えないだろう #twnovel

2020-04-05 23:55:40
リュカ @ryuka511

魔王直属の騎士の強固な守りに勇者は苦戦していた。幾度も剣を交えようやく騎士の兜を叩き割る。顕になったその顔に勇者は驚愕した。魔王討伐に向かい死んだと思われていた実の父だ。「父さん、どうして!」「お前もいずれ解る」割れた兜を拾い騎士は言う。「お前が正しい選択をする事を願う」 #twnovel

2020-04-06 23:17:35
リュカ @ryuka511

君が敗れそうな時には、魔王軍に不利な情報を流し戦いを中断させた。君が勝てると踏んだ時には、魔王軍の援軍を殲滅させた。孤独な戦いは君を鼓舞し、実力以上の力を発揮する。だから私は決して君の前に姿を現さない。この戦いで最後に笑うのはきっと君だ。この私が陰から助けているのだから #twnovel

2020-04-07 23:35:42
リュカ @ryuka511

桜を眺める貴女に見惚れていた。風に舞った花弁がひとひら、貴女の黒髪に絡む。取り去ろうと伸ばした手を、振り返った貴女に気付かれぬよう慌てて引っ込めた。貴女の髪に触れるなど私には許されない「どうしたの?」「何でもありません」私の苦悩など知る由も無く微笑む貴女に、心は揺れ動く #twnovel

2020-04-08 23:33:41
リュカ @ryuka511

「祟りを鎮めるには」旅の精霊使いは言う。「火山の洞窟最奥の祭壇へ赴き祈りを捧げよ」今も鳴動する火山は皆の不安を煽る。ただでさえ帰還した者はいない危険な山だ。「同胞の死体を踏みつけ得る安寧は不要。我々は村を捨て新たな地を拓く」村長は精霊使いを睨む。「残念だったな、魔族よ」 #twnovel

2020-04-10 01:31:53
リュカ @ryuka511

反乱軍の蜂起が噂されている。真偽を調査し私は噂が事実だと知っていた。だが私は結婚式を控えている。幼い頃から愛する許嫁と漸く結ばれるのだ。戦が起きればそれ所では無くなる。せめて、式を挙げてから。それだけのために知らない振りをした。後に、その浅はかさを死ぬ程後悔する事になる #twnovel

2020-04-10 23:13:11
リュカ @ryuka511

戦に向かったあの人は、破れた私の写真だけが帰ってきました。戦士の亡骸は損傷が激しく、個人の判別は不可能だと役人は言いました。泣く泣くあの人の死を受け入れ、戦も終わった3年後。庭に立つ人影に息が止まりそうでした。「おかえりって、言ってくれないのかい?」「お帰りなさい……!」 #twnovel

2020-04-11 23:35:28
リュカ @ryuka511

幼いお嬢様にとって私は心を開ける唯一の存在でした。お嬢様を密かに想っていますが、歳も身分の差も弁えておりました。それでも旦那様はお嬢様の為にと私の解雇を決めました。「どこにもいかないで」お嬢様に微笑みます。「いなくなったりなんてしないよ」どうか、私がいなくても笑っていて #twnovel

2020-04-13 00:17:53
リュカ @ryuka511

天才の不調、周りは誰もがそう思った。彼も人間なのだと、安堵と親しみを抱いた。だが、当の本人は激しく動揺していた。今まで苦もなくやれていた事がなぜ出来ないのだ。そんな私を誰が必要とするのか。もがけばもがく程、遠のいていく感覚。「じゃあ、もう要らない」誰かの声が聞こえてーー #twnovel

2020-04-13 22:52:46
リュカ @ryuka511

私の仕事は雨の方が上手くいく。今日も傘を忘れ雨宿りする少女が1人。さぁ、私の出番だ。少女を見つめながら傘を握った手を震わせる少年に、天から囁く。あの子は君が傘を差し出せば喜ぶぞ。帰る方向は同じ、さぁ、行け! #twnovel 「これ、使って」傘を少女に渡し走り去る少年。違う、そうじゃない!

2020-04-14 22:55:22
リュカ @ryuka511

魔王討伐の旅に出るあなたに、生きて帰ってきてと言うつもりだった。けどあなたは、自分の事は忘れ幸せになってくれと言う。その悲壮な顔に頷くしかなかった。忘れられるはずなどなく、あなたを待ち続ける。約束が欲しかった。あなたにとって重荷となっても、死を覚悟なんてして欲しくなくて #twnovel

2020-04-16 00:05:33
リュカ @ryuka511

「心とは何ですか?」「精神活動を統べるものだ」「それは体内のどこにありますか?私にもありますか?」「明確に示すのは難しいな」ロボットの真剣な問に答えつつ、心のありかを探る指先が私の身体をくすぐり笑ってしまう。「なぜ笑うのです?」傷つき怒る彼に、それこそが心だとどう説明しよう #twnovel

2020-04-16 23:36:54
リュカ @ryuka511

魔王軍に滅ぼされた王国。その王宮やの隠し部屋で、魔王の力に対抗する力を秘めた姫が生きているという。魔王討伐の使命を負った王子様は傷だらけで姫の下に向かう。「やはりいらしたのね」王国滅亡と同時に破棄された2人の婚約。「貴方の目的は私の力?」「違います」「貴方とは行きません」 #twnovel

2020-04-18 00:17:44
リュカ @ryuka511

孤島の洞窟に隠された帆船は、かつて魔王討伐に向かう勇者一行が使っていたものだ。魔王の脅威が去らぬまま、ぼろぼろになった船は洞窟内の湖に浮かんでいる。魔王城に程近い島の民は、いつかこの船が息を吹き返し、魔王の脅威を消し去ってくれると信じ、乗り手のない船を修復し守っている #twnovel

2020-04-19 01:16:17
リュカ @ryuka511

悪名高い貴族の屋敷からお宝を頂戴し、逃走すべく屋根裏部屋へ上がる。そこには女の子がいた。おかしい。この屋敷に女の子はいないはず。「誰?」その子は泣いていた。豪奢な屋敷の屋根裏で泣く、痩せた少女。訳アリか。「俺は泥棒、君の涙を貰っていこう」頂いたお宝の礼に、君へ幸福をあげる #twnovel

2020-04-19 23:27:52
リュカ @ryuka511

私には幼い頃に決められた許嫁がいる。私の婚姻は家の為、ひいては侯爵家次期当主として、世に責任を果たす為のもの。恋慕などという私情を持ち込んではならないのに。許嫁という名の想い人よ。私の負った責任には、貴女の幸せも含まれている。貴女は私との婚姻をどう思っているのだろう。 #twnovel

2020-04-20 23:05:16
リュカ @ryuka511

事故に遭い記憶を失った貴方を支え続けた。貴方の友人だと告げ、貴方に寄り添う。貴女は私を友人だと信じ頼ってくれた。それは長くて幸せな、夢。記憶が戻れば、貴方は私を憎むだろう。この夢が醒めないよう取り繕ってきたがそろそろ限界だ。拗れた別れ話。私から逃げる貴方は事故に遭いーー #twnovel

2020-04-21 23:59:05
リュカ @ryuka511

救世の勇者だと崇められ、意気揚々と旅立った。だが、魔王軍の猛攻に加え、絶望し切った人々の冷たさに、心は折れていく。自分にしか魔王討伐は不可能なのだと鼓舞し旅をする。使命感に満ち旅立った「あの頃」とはもう違う。誰よりも絶望しながら、もはや滑稽でしかない旅を終わらせる為進む #twnovel

2020-04-22 22:39:02
リュカ @ryuka511

「主様、あの者は人間です。お気をつけを」私の囁きに、主様は媚び諂う男をひと睨みで昏倒させた。「お前のお陰で助かった。さて、食事にしよう」満足気な主様に首筋を差し出す。私の血が主様の吸血衝動を抑え無益な殺生をなさるのを防いでいる。私は吸血鬼も人間をも守れる唯一の存在なのだ #twnovel

2020-04-23 22:35:30
リュカ @ryuka511

黄泉のほとりであの人を待っている。一緒にいこうと決めたのに、私だけがここへ来てしまった。かろうじて此岸が見えるここで、あの人の姿を探す。来て、くれるだろうか。もしも、来なかったら。もしかしたら、始めからそのつもりだった? いや、そんなはずはない。そうでしょう? ねぇ? ねぇ⁉︎#twnovel

2020-04-24 23:40:43
リュカ @ryuka511

この胸に今も残る傷跡は、かつて救世の勇者と呼ばれた者と戦った時につけられた傷だ。哀れな者だった。圧倒的な我が力を前に、絶望する事も屈する事も許されなかった勇ましき者。この傷跡は消さずにおいてやろう。憐憫を寄せ隙を見せた我が過ちへ戒めを。そして哀れな者の勇敢さへ称賛を。 #twnovel

2020-04-25 22:39:58