掌小説語り~自作つぃのべる集~85

自作ついのべるのまとめです。 2020年5月分。
0
リュカ @ryuka511

霞んだ記憶の向こう、私を睨む赤い瞳。「死なないで」という誰かの悲痛な声。あの瞳は、あの声は誰なのだろう。「気付きましたか、ゆ「まだ休んでて下さい。ここは安全ですから」私を支えた女性は、何か言いかけた少年の口を塞ぐ。眠っている場合ではないと感じるが、どうすべきか分からない #twnovel

2020-05-01 00:28:00
リュカ @ryuka511

それは2人が共に永久に生きる為に、やらねばならない事。けどそれは、私の生命を危険にさらす事になる。それでも私は覚悟を決めていた。ためらう貴方の首を抱き寄せる。すまないと囁いた貴方の牙が、私の首筋に突き立てられる。甘い痛みが身に沁みて、意識が遠のく。大丈夫、きっと上手くいく #twnovel

2020-05-01 22:39:18
リュカ @ryuka511

暗雲立ち込める空に雷鳴が轟く。選べない上に逃げられない定めならば、受けて立つのにこれ以上の舞台はないだろう。両親が間者であると発覚し、処刑された。何も知らぬ私も追われている。追手は共に剣を学んだ友だ。怒りの形相で追ってくる。私の潔白と世の怒り、どちらが真となるか、勝負だ #twnovel

2020-05-02 23:20:01
リュカ @ryuka511

汽笛が鳴る。ゆっくりと遠ざかるふるさとに、さよならを告げる。帰ってくるか分からない。夢を叶えるまで帰らないと決めた。いや、叶えても帰らないだろう。ここに居ては家業を継ぐしか生きる道は無い。私にその才能は無いのに、居るだけでよいなどとぬかす。そんな家督に何の価値があるのだ #twnovel

2020-05-03 23:21:16
リュカ @ryuka511

長く深い口づけの後、貴方を見つめる。口に残った毒薬を舌先にのせて笑う。気づかないとでも思ったの?最初から知っていたのよ。貴方が私を利用して、王位簒奪を企んでいる事。溶け始めた毒薬が滴る舌を、青ざめる貴方の唇に這わす。弑逆の罪を負って死ぬか私と心中するか、選ばせてあげる。 #twnovel

2020-05-04 23:42:07
リュカ @ryuka511

竜は神聖な生き物であるはずなのに、何故。黒い鱗は闇夜に紛れ、金の瞳が地を睨む。今にも地を焼き尽くさんとばかりに輝くその瞳は、見た者の血を凍らせる程の憎悪に満ちていた。黒竜が悪に堕ちた、人々はそう噂し恐怖した。悪竜の咆哮が、地を揺るがす。果たして真に堕ちたのは、竜か人か。 #twnovel

2020-05-05 23:38:53
リュカ @ryuka511

運命の出会いだと思った。永遠の愛を得たはずなのに、なぜこんなにも胸が苦しいのだろう。君は世界中から愛される歌姫の地位を捨て、私との愛を選んでくれた。君は今、私の為だけに歌う。だが、私が拵えた上質な籠よりも、卑俗なステージにいた君の方が、明らかに輝いて見えるのが腹立たしい #twnovel

2020-05-06 23:53:50
リュカ @ryuka511

かつて、この星は水の惑星と呼ばれていた。空も海も青く澄み、草木が陽光に青々と煌く美しい星だった。生命が正しく循環し、秩序が守られていたあの頃までは。知的生命体の誕生に、喜ぶだけではいけなかった。過ぎた進化の果てに、惑星の煌きは失われた。手を出すべきか迷う。救いか、断罪か #twnovel

2020-05-07 23:05:36
リュカ @ryuka511

近隣諸国の王族が集う式典で出会った美しい人。何としても我が妃に迎えようと手を尽くした。だが、王族の婚姻に政が絡まぬはずはなく。彼女の国が持つ資源を巡り、各国が水面下で争っていたのだ。この恋が戦争の発端になるなんて。私はただ、恋焦がれる人を手に入れたいと願っただけなのに。 #twnovel

2020-05-08 23:18:32
リュカ @ryuka511

君が生まれた時僕の運命は決まっていた。君は世界の命運を握る存在。僕はただ、君を守るためだけに生まれて来たんだ。君が擦り傷でも負えば叱責され、僕の役目を知った君は増長する。気に入りの帽子が飛ばされ、谷へ身を乗り出した君の背を押した。君なんかが世界の命運を握るなど、認めない #twnovel

2020-05-09 22:54:35
リュカ @ryuka511

死を極度に恐れ王は不死の薬を開発させた。薬の材料として、薬の被験者として、数多の生命が犠牲になった。高額な報酬に怪しい者が王へ近づく。「もうおやめ下さい!」家臣の叫びと共に床に落ちる不死の薬を、慌てて拾い集める王。やがて薬は完成する #twnovel 民も家臣もいない王国に、不死の王が一人

2020-05-10 23:08:26
リュカ @ryuka511

「約束通り、人間になって逢いに来た」君は悲鳴を上げ扉を閉めてしまった。君の為に誇りも永遠の生も捨て人間になったのに。様々な薬や術を試み、私でさえ死にかけた程苦労したのだぞ。何故、応えてくれない #twnovel 吸血鬼は気づかない。彼が人間ならとうに死んでいる歳、そのまま人間になってもーー

2020-05-11 23:32:59
リュカ @ryuka511

貴方と私は住む世界が違うの。私は貴方を不幸にするだけ。だからもう、私の前から消えて。貴方の真っ直ぐな眼差しに泣きそうになる。血を吐くような想いで吐いた嘘を見抜いてしまう、貴方が嫌い。何の為の嘘だと思っているの?拒絶し、遠ざける。それが私にできる唯一の、貴方の愛し方なのに。 #twnovel

2020-05-12 23:39:37
リュカ @ryuka511

少しでも近づきたくて、君に本を借りた。嬉しそうに「感想聞かせてね」と笑った君の顔に胸が痛む。君の好きな作家の本は、僕には難しくて全く解らない。どうしよう。がっかりされてしまう。君の見ている世界はこんなにも遠くて、僕は君に釣り合わないって現実を、突きつけられてしまった #twnovel

2020-05-13 22:58:33
リュカ @ryuka511

いつも、手を伸ばせば届く距離にいた。だけど臆病な私の手は、君に伸びる事なく止まってしまう。君の瞳に、私はどう映っているのだろうか。ただの友人のひとり、きっとそうだ。放課後の、地面に長く伸びた君の影と、私の手の影を重ねるのが、精いっぱいだった。 #twnvday

2020-05-15 00:04:43
リュカ @ryuka511

君に駆け寄り突き飛ばす。転んだ君を気にかける暇は無く、胸に刃を受ける。こいつで最後だ。舌打ちした敵の額を撃ち抜いてやった。君を守り抜く、その誓いは果たせた。共に帰還する事は叶わないけれど。君の叫びが聞こえる。手を伸ばす。微かに指先が触れる。最期の感触が君なら……悪くない #twnovel

2020-05-15 23:27:18
リュカ @ryuka511

「なぜ、憎み合い戦うのです?」「我らが戦うのは、憎しみなどではありません」掲げた剣の切っ先を見つめる。「大陸を平定し、王国を一つにまとめる。この戦いは平和への祈りです」王女に視線を戻す。「貴女のお父上がかつて、そうしたようにね」王の首をはねた剣を王女に向けた。「お覚悟を」 #twnovel

2020-05-16 23:26:57
リュカ @ryuka511

禁忌を犯した彼らは天界から追放された。記憶も力も消され、見知らぬ同士の人間として生きている、はずだった。だが、星の数程の人間の中で彼らは邂逅を果たし、消された想いを蘇らせたのだ。雑音に混ざる愛しきその声を、何年もかけたぐり寄せた。彼らの想いは神も予測し得ない奇跡を起こす #twnovel

2020-05-17 23:53:48
リュカ @ryuka511

独立への戦いだった。夜明けと同時に新しい時代の夜明けも訪れる、はずだった。あいつが裏切らなければ。王国軍に奇襲をかけるべく、深夜に出陣した。だが、我々の進軍は王国軍に筒抜けだった。軍の指揮をとったあいつは、王国軍の軍旗を掲げ笑った。#twnovel 私はまだ戦う。裏切者へ復讐する為だけに

2020-05-18 22:11:57
リュカ @ryuka511

銃声が響く。僕の胸を銃弾が貫く。 だが勝利は目前だ。この戦いに勝利したら、世界は変わる。暴君による圧政は終わり、自由で平和な世界になるんだ。届かない空へ、手を伸ばす。新しい世界で、君は、僕らの子は、ちゃんと笑えてますか? 僕がその笑顔を見る事は、叶わないけれど。 #twnovel

2020-05-19 23:09:15
リュカ @ryuka511

どうしてこんな事に。エレベーターに乗り込み36階のボタンを押す。赤黒い跡が付いたのを緩慢な動作で拭き取った。洒落たガラスのエレベーターが行き来するタワーマンション。僕らの新しい暮らしが始まるはずだった。あいつが現れなければ。あいつは君の何だったのか。答えは永久に解らない。 #twnovel

2020-05-21 01:49:34
リュカ @ryuka511

私にはこの子の傷を治せる力があるのに。よほど恐ろしい目に遭ったのだろう。目を覚ました途端悲鳴をあげ、部屋の隅で震えるばかり。命に関わる大怪我だ。早くどうにかしなくては。吸血鬼は恐ろしい奴らだと聞く。だが、吸血鬼とはいえ子供にこんな大怪我を負わせる人間の方がよほど恐ろしい #twnovel

2020-05-22 01:14:03
リュカ @ryuka511

心臓に星を飼うのが最近の流行だと聞いた。星といっても星を模した人工生命体だが。若者の考える事は実に面白い。心臓は昔のような人体の急所ではない。生命維持が容易になった昨今、内臓や骨にも装飾を施すのが流行り始めた。君の胸部を透かして星は光る。まるで君自身が宇宙のようで美しい #twnovel

2020-05-23 01:19:41
リュカ @ryuka511

突然、目の前が鮮明になった。辺りの惨状に震える。ぼくがやったのか?おびただしい量の血と死体。ぼくの足に絶命寸前の人達が纏わりつく。来るな、ぼくは何も知らない!頭の中に誰かの笑い声が響く。誰かがぼくを操ってこんな事を。見つかる前に逃げなきゃ。そしてぼくを操った誰かを探すんだ #twnovel

2020-05-23 23:18:15
リュカ @ryuka511

戦は終わり、あの人はまだ帰ってこない。必ず生きて帰るという約束を信じ待ち続ける。「兄の事は諦めて僕と」今、私との未来を望む人はあの人によく似ていて心が揺らぐ。いいえ、本当はとうに気づいている。それでも踏み出せないのは愛ゆえか、交わしたあの日の約束に縛られているだけなのか #twnovel

2020-05-24 23:34:47