笛系まとめ

椎葉 @siiba66

【一緒に居たのは誰？】「――なあ」「何？」いつもより口数の少ない帰り道。「……何でもねえ」「何よ」「何でもねえって」「……変な亮」土曜、お前が笑いかけてた彼奴は、誰だよ。なんて、聞けるはずもない。いつもどおりに繋いだはずの手がするりと逃げていきそうで、やけに心細かった。

椎葉 @siiba66

【恥ずかしい、でも、好き】ずっと見つめていた姿が、こっちを向くことなんてあり得ないと思っていた。「……なあ、なんでお前いっつも顔伏せんの」不満げな声が上から降ってくる。でも分かる。絶対、口元は意地悪に笑っているんだ。――好きすぎて正面から見られないってこと、知ってるくせに。

椎葉 @siiba66

【秘密の恋をしよう】フェンス越しに、背中合わせ。愛の障壁なんて名前を、誰が付けたのか。人目につかないように座り込んで、金網越しの、微かな体温。「――ねえ三上」「あ？」「今日は満月だよ」空を見上げた、気配がする。月が綺麗だねなんて言わないけれど、フェンスをすり抜けた指先が、触れた。

椎葉 @siiba66

【本気にしてもいい？/@l_asami】 ダン、と壁に手を付く音がやけに耳に響いた。目の前には端正な顔。「――本気で言ってんのかよ」「冗談で言うと思ってるなら馬鹿でしょ」その耳が、熱い。にやりと三上が笑って――低い声で、囁いた。「だったら遠慮しねえ」お前の全部を、貰ってやる。

椎葉 @siiba66

【あどけない寝顔/@yuzuzaki】「あっちゃん？」サッカーの練習から帰ってきて、シャワーを浴びたらしい弟がやけに静かだと見れば、ソファで眠りこけていた。まだ幼いその寝顔。でも、調子に乗るから言わないけれど、サッカーしてると格好いい自慢の弟。その頬をそっとつついてやった。

椎葉 @siiba66

【引き出しにしまいこんだ言葉/@ruins36】書いてみたはいいけれど、渡せないままの手紙がある。綴った、すきです、の一言。「何ボーっとしてるんだ」でも私が伝える前に、あなたが言葉にしてしまったから。「なんでもないです、辰巳先輩」それがとても幸せだから、もう少しだけ秘密のままで。

椎葉 @siiba66

【すきにして、いいよ。/@chip060827】「はい、どうぞ。」広げられた腕に、戸惑った。ソファに座ったままの彼はいつものように穏やかに笑って、首を傾げる。「甘えたいんでしょう？」――ああ、どうして気づかれてるんだろう。けれどたまには素直に、抱きしめられてあげてもいいよ。

椎葉 @siiba66

【涙で滲んだ景色/@kkmkna417】確かに言ったよ、何度も。夢ばっかり語ったよ。だからって、こんなふうに全部叶えてくれること、ないじゃない。「――もっかい、言って」「何度でも。――結婚しよう、ミサキ」愛してるよ。煌めくイルミネーションが、ゆらりと滲んだ。

椎葉 @siiba66

【傷つけてもいいから/@yauzzz】そんなの全部、覚悟してた。そう言ったら、彼は目を丸くした。「他の女の子なんて、怖くない」全部分かって、あなたを好きになった。そんな私を傷つけてくれて構わない。それでもあなたを、世界で一番愛してる。

椎葉 @siiba66

【嫉妬なんて俺らしくない/@yuzuzaki】「…い、たい」小さな声で届く苦情。思い切り握って引っ張ってきた腕の所為だろう。ただ、彼女が他の男と笑ってた。それだけなのに。「――…、」らしくない。分かっているけど、口に出来ない謝罪の代わりに抱きしめた。折れそうなくらい、強く、強く。

椎葉 @siiba66

【どうしたら振り向いてくれる？/@htc_fst】少し前を歩く後姿に、何度も手を伸ばしては引っ込める。遅くて危ないからと何時からか恒例になった、2人一緒の帰り道。だけど決まって1歩分後ろの私。――本当は、振り向いてほしい。手を繋ぎたい。今あるこの時間に、自惚れても、いいのかな。

椎葉 @siiba66

【ずっと隣で笑っていて欲しい/@yuzuzaki】「聞いてよ柾輝！あのね…」彼女の話は、いつもこんな調子で始まる。そして苦笑交じりに、はいはいと聞く俺。相槌を打っているうちに、やがて彼女は満足して笑う。――その笑みが見たくて、側にいる。永遠を約束する言葉は未だ、胸の奥に抱いて。

椎葉 @siiba66

【君しか知らない/@ricomica】様子を伺うように、そっと後頭部に小さな手が当てられた。そして子供をあやすような調子で、髪を撫でられる。大分ギリギリだった涙腺は、彼女のその行為でとうとう決壊した。声を出さないまま、流れて、彼女の服に染み込む雫。彼女だけが知る、夜のこと。

椎葉 @siiba66

【交わした約束/@hayu_kami】ぱしん、と掌が打ち合わされる音がする。言葉なく笑った誠二に、笑い返した。『トロフィーを、お前にやるから』――それは遠い、いつかの約束。そして今日。国立競技場に、試合開始のホイッスルが高らかに響き渡った。

椎葉 @siiba66

【見える位置に残された痕/@maki_fujisaki】「――お前、」「え？」それどうした。問いは、寸でのところで呑み込まれた。項に残る紅い痕。明らかすぎる情事の証。あいつの、独占欲の表れ。「……なんでもねえ」ふいと顔をそらした俺に、追及は来なかった。対抗する術を俺は、持たない。

椎葉 @siiba66

【一目見たときから俺の世界は君だけだった/@tizuki13】「…何て言ったら、信じてくれる？」人を食ったような笑みで、秀二が笑う。何処まで本気か分からないと他人は評す。それは概ね正しいけれど 。「うん」一言で答えてやれば、目を見開いて、それから笑った。彼は案外、いつも本気だ。

椎葉 @siiba66

【可愛いにも程がある/@m10mkm】「だからてめえはもう少し自覚しろっつんだよ」べしん、と頭をはたく音が響く。周囲に見境無く愛想を振りまいて。自分がどう見えてるのかも知らないで。「亮、聞いてる！？」抗議の声には耳を塞いだ。守るのに苦労してるんだから、これくらい許せよ。

椎葉 @siiba66

【しらじらと明けていく夜/三笠】ふと目を開けば、窓の外が薄青に染まっていた。朝だ。隣には寝起きの悪い先輩が、まだ熟睡中。動こうとすると、若干の痛みを覚える。――このひとは、俺に容赦がない。言葉のない関係は、不安定な関係は、この先どれくらい続くのだろう。夜明けがやけに遠く思えた。

椎葉 @siiba66

@l_asami 「――レナ？」「頭痛い」「薬は」「持ってない」「…帰るまで我慢しとけ」少し乱暴に撫でる亮の手。それが精一杯の優しさの表現だと、知っている。「――頑張る」「おう」

椎葉 @siiba66

【食べてしまいたい/@Jclavellina】なんだかやたらと今日は触られている気がする。髪に。腕に。足に。手に。頬に。「……ねえ、なんなの英士」とうとうたまりかねて問いかけたら、唇を塞がれた。甘い甘い、接吻けで。そして耳元に落ちるのは、悪魔の囁き。「撫子が、美味しそうに見えて」

椎葉 @siiba66

【はっかの味を舌でころがして/@naginooon】良平が、急に顔を顰めた。ポーカーフェイスの彼には珍しい。「どしたの」尋ねても、無言で――不意に。「…っ！？」降りた、接吻け。そして口の中に転がり込んできた、異物。「……ハッカ飴はあんまり好きじゃない」ぽそりと低い声で彼は呟いた。

椎葉 @siiba66

【闇にさらわれたかのよう/@RroKku】目の前が漆黒で埋まる。烏の濡れ羽色。それはとても、綺麗だ。前にそう言ったら、「男に対する褒め言葉じゃなくねえか」って笑われた。だけど私は、すきなのだ。抱きしめられると近くなる、その髪が。そのまま黒に呑み込まれて、ひとつになれたらいいのに。

椎葉 @siiba66

【君の声が聴こえた気がした/@sawa214】「――さわ？」名前を呼んで、顔を上げて、苦笑い。今此処に彼女はいない。勉強に、精一杯頑張っている。そう知っているはずなのに。いったいどれほど自分は彼女を求めているのか――思い知らされた気がした。まるで束縛のような、けれど心地良い感情。

椎葉 @siiba66

【俺だけを見て/@4t_u】視線の先には彼女の横顔。いつもは逆なのに。液晶画面に向かう彼女は心底楽しそうで、――なんとなく、もやっとする。けれどその感情の名を自覚するのは癪で、代わりに手を伸ばして顎を掴み、不意打ちのキスをしてやった。ほら、お前が一番好きなのは、誰？ ――なんて。

椎葉 @siiba66

【今すぐ会いたいよ/@chichiyasu6】握り締める携帯電話。11桁のナンバーは画面に並ぶのに、ボタンは押せないまま30分。今日はそろそろ帰ってくる頃だと思う、けど。妙な遠慮なんてらしくないのに。本当は声だけじゃなくて、今すぐ抱きしめたい。どこでもドア、欲しーなあ。