大事な記憶

いぞーさんがりょーまさんの記憶だけなくった話
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かむい @sunyaxxx

気が向いたら続くかもしれないりょいの話をします。 気付くのがいつも遅すぎる。 気付いた時にはもう手遅れ。 「なんじゃあ、馴れ馴れしい」 それは、本当に見たことのない目だった。 自分をわからない、いや、記憶にないのだ。 だからこそ見せる警戒した目で見る。

2021-03-19 14:51:41
かむい @sunyaxxx

いつでも斬れるように握られている。 甘くみていた、カルデア技術なら、すぐ治ると思っていた。 「罵倒されたっていい、斬られたっていい、殺されたっていい…だから、お願いだから、僕を忘れないで、いぞーさん」 りょーまを助けるためにいぞーは、りょーまに関する記憶の一切を手放したのだ。

2021-03-19 14:51:41
かむい @sunyaxxx

それは一ヶ月前の出来事だ、りょーまが消滅寸前の重症をおった、それを見たおりょーは叫び、いぞーは立ち尽くした。 りょーまの死をおりょーは二度も見たくない。その体にすがり付いた。 何度もその名を呼び続ける。 自慢の万能の唾液もなにも効かない、ただの負傷ではない呪いなのだから。

2021-03-19 15:06:15
かむい @sunyaxxx

「どうせ、修復されりゃあ、のうなる世界の人間一人助けて消滅しそうになる阿呆の気持ちは、わしにゃあ、とんとわからんは」 口を開いたと思えば、心底バカらしいと言う。 「本望じゃろうて、見も知らん人間助けて死ねりゃあのう」 嗤ってやる。

2021-03-19 15:06:16
かむい @sunyaxxx

人助けも大概にしろと何度も言ってやったのに忠告してやったのに、この様と。 「イゾー、お前」 ざわりとおりょーの髪が辺り一面を多いいぞーを貫こうとする。 おりょーは、普段いぞーとよく喧嘩もする、だが、それでもいぞーはおりょーの中でりょーまと同じくらいに特別な人間だ。

2021-03-19 15:06:16
かむい @sunyaxxx

だがそのいぞーが、死んで当然と嘲笑う。 許せない。 「ほんまの事じゃ」 「!!!」 「おまんの事も大事じゃ言いながら、おまんの事も考えとりゃせんから、こがな事になっちゅうやろが」 今まさにその首を撥ね飛ばそうとした伸びた髪が止まる。

2021-03-19 15:06:17
かむい @sunyaxxx

「ま、どうもならん思うが、かるであに帰還するぜよ、仕事は終わっちゅうきの、どうにかなるやもしれんき、神さんにでも祈っとれ」 りょーまの体を肩にのせ三人がカルデアに戻っていく。

2021-03-19 15:07:59
かむい @sunyaxxx

「助ける方法がないこともない」 りょーまの側に付きっきりで顕現出来ているのはカルデアの技術のおかげだ。 自立型宝具と言えども、おりょーはりょーまが瀕死であれば出てくることも不可能に近い。 だが、おりょーは、女の姿のまま側にいることができている。

2021-03-20 13:18:43
かむい @sunyaxxx

カルデアの魔力によって顕現できているのだ。 「りょーまを治すせるなら、おりょーさんはなんでもするぞ」 万能の天才は苦笑を浮かべる。 その苦笑にも気付かずだ・ヴィンチにすがり付こうとするが、その肩を掴み下がらせた。 言葉はない。ただその琥珀の瞳が雄弁に語っている。

2021-03-20 13:18:43
かむい @sunyaxxx

きっとその方法はおりょーを悲しませることになると。 二人を引き離すな、そして泣かせるなと言っているのだ。 「わしが聞くきに、おまんは、そこのばあたれの側におれ」 おりょーを下がらせたまま、いぞーとだ・ヴィンチはメディカルルームから場所を移した。

2021-03-20 13:18:44
かむい @sunyaxxx

移す寸前まで、おりょーもその方法を聞くと言い張ろうとしたのを、もしもりょーまが目を覚ました時に側にいなければ悲しがるのではないかと忠告してやれば唇を噛みしめりょーまの手を掴み、また側に座った。

2021-03-20 13:18:44
かむい @sunyaxxx

なんて簡単なことだ。 たったそれっぽっちで、あの愚かな幼馴染みはカルデアの魔力をたちまち受けとり体が回復次第、また抑止の英霊として世界から魔力を受けとることができるのか。 そして、また泣くのを堪えながら痛みに耐えながら擦りきれながら、その仕事を全うしていけるのか。

2021-03-20 13:18:45
かむい @sunyaxxx

「しいそいことよ、そいでえい」 あっさりと快諾した顔と言葉は、晴れやかなものだった。 「その条件でえい」

2021-03-20 13:18:45
かむい @sunyaxxx

「りょーま!!」 三日間の昏睡状態から目を覚ましたりょーまに抱き着くおりょー。 目を覚ましたばかりで抱き着かれて、またすぐベットに倒れこんでしまう、が、自分が重傷を負いそれでおりょーを心配させてしまったということはわかる。

2021-03-20 23:21:24
かむい @sunyaxxx

おりょーの全てはりょーまだ、りょーまがおりょーの目の前でなくとも二度目の死を見てしまえば…おりょーはそれこそ深い海の底から二度と地上にあがることはないだろう…泡となって消えてしまうかもしれない。 「ごめんね」 縋り付くように抱き着くおりょーの背中に手を回し撫でる。

2021-03-20 23:21:25
かむい @sunyaxxx

大事な人を悲しませてしまった後悔、だが、また誰かが傷つくようなことがあればまた自分を顧みず手を伸ばしてしまうかもしれない。

2021-03-20 23:21:25
かむい @sunyaxxx

誰も悲しませたくない傷ついてほしくない…だからこそ、大事な幼馴染を助けられなくても死の間際まで走り続けた、そして死してなお、この身を世界に渡してでも作り出したい自分の望んだ世界がある夢がある。

2021-03-20 23:21:25
かむい @sunyaxxx

おりょーも、それをわかっている、わかっていても、どうにもならない感情がある、それを教えたのはりょーまと… 「いぞーさんもいてくれたんだ」 りょーまが目を覚ますまでおりょーと共に側についていたいぞーに視線を向ける。 「マスターが側についちょれ言うきに」

2021-03-20 23:21:26
かむい @sunyaxxx

仕方なくと言いながら背中を向ける。 「飯、運んじゃる」 カルデアに来て、いぞーがわかりやすく見せた優しさだった。 数刻して、いぞーは、おりょーには蛙を、りょーまには卵でといた粥を運んできた。 「ありがとう」

2021-03-20 23:21:26
かむい @sunyaxxx

目を覚ましたばかりの体を気遣っての優しい食事、ベットの横にあった椅子を引き寄せどっかりをそこに座り足を組み肘を置いて顔を横に向ける。 「冷める前に食えや」 ぶっきらぼうにそう言ってやれば、まだできたてのそれをゆっくりと口に運ぼうとするがスプーンを持つ手に力が入らなくて、 「っち」

2021-03-20 23:21:27
かむい @sunyaxxx

粥を置いた膳をとりスプーンを取り上げ口に運んでやる。 「申し訳ない」 まるで子供に戻ったようだ。昔、自分が熱を出して上手く食事をとれなかった時、姉や兄がそうしてくれた、いぞーもりょーまが治ったと知れば飛んできて泣きそうな顔で抱き着き食べさせてくれたものだ。

2021-03-20 23:21:27
かむい @sunyaxxx

今は、成長し泣くこともないが、その時と同じで…それが嬉しくて。 「冷める前に黙って食え」 「イゾーが優しいなんて、なんかあるのか?」 「りょーまが起きんでびいびい泣いちょったスベタが起きたらそれかよ」 さすがのその言葉におりょーも黙った。

2021-03-20 23:21:28
かむい @sunyaxxx

りょーまの食事が終わるまで、ずっと側にいてくれる。 最後の一掬いまで食べさせ終わると、また膳を持ち立ち上がろうとする前に目が合う。 「ありがとう」 目が合って素直な礼を言われるが目を離さず、 「礼言うくらいやったら、これに懲りて無駄なことはせんことじゃな、べこのかあ」

2021-03-20 23:21:28
かむい @sunyaxxx

膳を持ち、今度こそ立ち上がり背中を向ける。 「それでも…助けたいから…」 背中に向けられた言葉に自動で開かれる前の扉の前で一瞬だけ止まり、 「わしの幼馴染は、死んでも阿呆じゃの」 その言葉に苦笑を浮かべるが開いたドアから動かず少しだけ顔を横に向け口を開き、

2021-03-20 23:21:28
かむい @sunyaxxx

「       」 小さく呟く言葉を口の中でかみ殺し、 「おまんは、ほんにべこのかあじゃ」 「ちょっと待って、その前に何か言ったよね、言い直さないでよ」 「知らんわ、あ~ほ」 何もない膳を下げるために今度こそ出て行った。

2021-03-20 23:21:29
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