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これは「∞列車初見時の🎴がこの土地の守り神かもしれないだろうと言ってたとこで何故か頭に浮かんだ山道にあるお社に手を合わせる🎴と守り神のエンムチャン」のらくがきです pic.twitter.com/e1NwLlWHOf
2021-04-22 17:52:37山の守り神どま様がしばらく山を留守にするので頼むよ〜って言われ立場上逆らえず嫌々守り神やってる山の妖怪エンムチャン これが一番しっくりくるな
2021-04-22 17:55:32山の守り神代理エンムチャン、住んでる人間や獣の精気を吸い上げてそれを山の実りに還元するお仕事をしてるんだけどひょんなことから知り合ったタンジロに病弱な父親の死を話されて自分の仕事がそれに関わってることをなんとなく察して罪悪感はないもののほんの少し胸がちくちくする
2021-04-22 18:05:38むかしむかし、やまのなかにちいさなおやしろがありました。そこにはやまのかみさまがすんでいると、むかしからいいつたえられています。 けれど、いまそこにいるのはかみさまではなくいっぴきのようかいです。なまえを えんむ といいました。
2021-04-23 00:27:04えんむは、もともとひとくいのようかいでした。このやまにきたときに、やまのかみさまであるどうまにたいじされて、かみさまのけんぞくになりました。 そして、いまはどうまのるすをあずかって、かわりにやまのかみのしごとをしています。
2021-04-23 00:28:57「かみさま、きょうもおしごとおつかれさまです」 そういって、おやしろにてをあわせるのは、やまにすんでいるすみやきのたんじろうです。たんじろうはまいにち、このおやしろにおそなえものをとどけにきます。 「だからおれはかみさまじゃないっていってるじゃないか」 えんむはくちをとがらせます。
2021-04-23 00:31:23それもそのはず、えんむはやまのかみのしごとがすきではないのです。どうまがいうからしかたなくしたがっているだけで、ほんとうはひとのやくにたつことなんてしたくありません。むしろ、ひとのくるしむかおがかれのだいこうぶつでした。 だから、じぶんをかみとよぶたんじろうのこともきらいです。
2021-04-23 00:35:03けれども、たんじろうはえんむがいやなかおをしてもおかまいなしです。 「でも、かみさまとしてみんなのためにはたらいているんでしょう?だったら、かんしゃしなくちゃ」 そうして、いつもたんじろうにおしきられて、えんむはかれのもってきたおそなえものをいっしょにたべるのでした。
2021-04-23 00:36:27「かみさま、あなたはいつからここにいるんですか」 「おまえのうまれるずっとまえからだよ。ようかいやかみのじかんはにんげんよりずっとゆるやかなんだ」 「かみさま、あなたはどこからきたんですか」 「とかいのほうさ。ほら、モダンなふくだろう」 えんむはぶっきらぼうにこたえます。
2021-04-23 00:40:53まいにち、たんじろうはおそなえものをもってきます。そうして、えんむにたくさんはなしかけます。 もともとにくしょくのえんむも、だんだんくだものやさんさいのあじになれはじめたころでした。はじめて、えんむからかれにしつもんをしました。 「ねえ、おまえのそのみみかざりは、どうしたの?」
2021-04-23 00:43:42はなふだににたそのみみかざりは、としわかいしょうねんがつけるにはすこしはでなものでした。 それをきかれるとたんじろうは、ちょっとくちごもってから、こたえました。 「これは、ちちのかたみなんです」 ゆびのさきで、みみかざりがちりちりゆれました。
2021-04-23 00:47:56「もともとちちはからだがよわくて、このやまにきてすぐにしんでしまいました。それから、おれはずっとひとりでしごとをしているんです」 かなしそうなかおをするたんじろうをみて、えんむはなんとなくばつがわるくなりました。ひとのふこうやくるしみをみるのは、だいすきだったはずなのに。
2021-04-23 00:52:02やまのかみのしごとというのはいろいろありますが、いちばんだいじなのは、ひとやけもののいのちのちからをほんのちょっとだけわけてもらって、それをやまのみのりのためにつかうことです。 だから、おもったのです。たんじろうのちちおやがはやじにしてしまったのは、じぶんのせいでもあるのだと。
2021-04-23 00:54:18それから、えんむはたんじろうのまえにかおをだすのをやめました。かれのためをおもったわけではありません。かれといるとじぶんがくるってしまうからです。かれのふこうを、かなしいとおもってしまうじぶんに、かわってしまうから。 それでも、おやしろのまえにはおそなえものがまいにちおかれます。
2021-04-23 00:56:29たんじろうのもってくるおそなえものを、たべるのはどうしてもはばかられました。だから、そのみのりはやまにかえします。 それをなんどくりかえしたでしょう。だんだん、えんむはおなかがすいてきました。そうして、ふとおもいだします。にんげんのちのあじを。ひとくいだったころのことを。
2021-04-23 01:00:16おそなえをもってくるたんじろうをとおくからみて、えんむはひっしにしょくよくをおさえます。あんなこころのきれいなやつをたべたらおなかをこわしてしまう、なんてかんがえて。 そんなふうにきをそらそうとしていたからでしょう。ついに、たんじろうにみつかってしまいました。 「…かみさま!」
2021-04-23 01:02:40「かみさま、どうしていなくなってしまったんですか」 しんぱいそうなかおですがりついてくるたんじろうを、えんむはすげなくふりはらいます。まともにあいてをしていたら、たべてしまいそうだったから。 「…いいことをおしえてあげる。おまえのちちおやをころしたのは、おれなんだよ」
2021-04-23 01:04:21「えっ…」 しんじられない、というふうにめをみひらくたんじろうにおかまいなして、えんむはつづけます。 「やまのかみは、にんげんのいのちをわけてもらって、やまをせいちょうさせるのがしごとなんだ。だから、おまえのちちおやがしんだのは、おれのせいなんだよ」 「だから、もうくるんじゃない」
2021-04-23 01:06:17たんじろうのうでが、がくりとおちて、おそなえものがあしもとにばらばらおちました。かおはうなだれて、どんなひょうじょうをしているのかはわかりません。それでいい、とえんむはおもいました。かれのかなしいかおをみても、ちっともたのしくないのですから。 ふと、たんじろうがかおをあげました。
2021-04-23 01:08:58そのめはとてもちからづよく、えんむはおもわずたじろぎました。あまりのかがやきにしょくよくもわすれてしまうほどに。 「かみさま。わるいとおもうのだったら、おれのまえからいなくならないでください。おれのちちがしんだことをかなしいとおもうなら、もうおれからたいせつなひとをうばわないで」
2021-04-23 01:13:44そのことばは、えんむのみみにしっかりととどきました。そうして、かれのこころにあたたかくしみこんでいきます。 「たんじろう…おまえ」 えんむがたんじろうのもとへいっぽふみだしたとき、おさえていたうえがきゅうげきにもどってきました。ぐるぐるとこころがみだれます。 にくが、たべたいと。
2021-04-23 01:18:46もはやおさえきれないきがが、えんむのつめを、きばをたんじろうにむけようとしたそのとき、かれのかたをだれかがたたきました。 「やあやあ、おまたせしていたあいだに、ずいぶんおもしろいことになっているじゃないか」 それはるすにしていたはずの、ほんとのやまのかみである、どうまでした。
2021-04-23 01:21:02「おなかがすいてるならこっちをたべなよ」 どうまはあしもとにおちているおそなえもののかきをひろいあげると、えんむのくちにおしこみました。 「もごっ」 えんむはもがきながら、それをのみこみます。えんむのくちにつぎつぎにくだものがつめられるのをみて、たんじろうはあっけにとられています。
2021-04-23 01:24:37おなかがくちくなり、えんむのようすがおちついてきたのをみて、どうまはやっとえんむのかたからてをはなしました。たんじろうもやっときがついたのか、どうまにといかけます。 「あの、あなたは…」 「ああ、おれかい。おれはえんむくんにるすをたのんでいたやまのかみだよ」
2021-04-23 01:26:59