どうしてサイエンスライターは中庸のふりして御用になるのか？

Jun Makino @jun_makino

佐倉さんの「科学とはなにか」を眺める。

Jun Makino @jun_makino

「はじめに」(p7)に「アインシュタイン理論の世界観は……物体の運動の記述体系としてはニュートン力学の修正拡張版と捉えるべきだろう」とそれ以上なんの説明もなく書いてあるが、これは単純に「間違い」ではないか。

Jun Makino @jun_makino

一般相対性理論とか特殊相対論理論からある極限とか近似とかをすればニュートン力学がでてくるが、だから修正拡張版だということにはならない。

Jun Makino @jun_makino

もちろん、「日常的な」物体の運動等についてはニュートン力学(+低次の補正)で十分正確である、とはいえるが、それは記述の体系がそういうものだということとは根本的に違う。

Jun Makino @jun_makino

そこから、「科学的に誤った事柄を正しいことであるかのように吹聴する連中」が云々という話になっていくが、えーと、それは誰のことかしらみたいな。

Jun Makino @jun_makino

で、「専門家だけの見方でもダメ。素人だけの評価でもダメ。……この本 は、この両極端ではないか第三の道を……」と。

Jun Makino @jun_makino

ちゃんとした科学者であろうとしている人ならだれでもわかっていることだと思うが、少なくとも科学者の目指すことはまず科学的に正しくあることであり、外からの評価はそれが専門家であろうが一般社会であろうが正しくあることに比べて全くどうでもいいことである。

Jun Makino @jun_makino

あ、佐倉さんはここで自分は科学者ではないとして、その上で「だが、そもそも、専門家か一般の人たちかという二者択一が、もはや実情にあっていないのだ。専門家とも一般の人たちともつながる場で、どちらの意見も取り入れて問題を解決していくしかないのである」とか書いてるのか。

Jun Makino @jun_makino

例えば現在のコロナウィルスの状況で、この「専門家」と「一般の人たち」を対立させる見方は有効か、というと全然そうではないことは明らかで、そもそも専門家って誰？何？とかそういうところから問題が発生している。

Jun Makino @jun_makino

これは、「専門家が社会から遊離している」とかじゃなくて、むしろその逆に「専門家」が社会の特定の部分と強く結びついた結果(ちょっと大雑把にいうと)「科学的に正しくあること」から離れている状態といってもいい。

Jun Makino @jun_makino

2章になると天動説と地動説について書いてあるが、そこで「天動説と地動説の使い分け」という言い方がでてくる。

Jun Makino @jun_makino

しかし、「天動説」と「地動説」は使い分けられるようなものではもちろんなくて、我々が実際に状況に応じ行なうのは(例えばニュートン力学の範囲で)座標の原点とその運動を適切にとることで、それはもちろん「天動説」でも「地動説」でもない。

Jun Makino @jun_makino

つまり、「科学原理主義者」なら「沈む夕日という表現は科学的に間違っている。地球の自転によってあなたたちのいる場所が太陽光の当たる部分から当たらない部分に入りつつある、と表現するべきだ」と主張するという佐倉さんの記述はニュートン力学の理解としておかしい。

Jun Makino @jun_makino

ここで私は「科学原理主義者」ならニュートン力学を適切に理解していると仮定したが、それはさすがにそうでないと話にならんだろう。

Jun Makino @jun_makino

ここで佐倉さんは佐倉さんが考えるところの「天動説」と「地動説」の使い分けを「知識を適切に使い分けること」といっているが、ニュートン力学的にはこれは単に等価な記述に間の座標変換でしかなくて「知識」が変わるわけではない。

Jun Makino @jun_makino

というわけで科学、専門家、知識といった言葉の意味するところがなにもかも私の理解とは全然違うということがわかった。問題意識も。うーん。

Jun Makino @jun_makino

読むのつらいので6章までスキップする。

Jun Makino @jun_makino

6章。2011/3/11 から始まる。まず、「旧知の科学ジャーナリスト」から 「今こそ原発に引導を渡すときだ」といった内容の電話があり「なんとも嫌な、 ザラついた余韻が残った」

Jun Makino @jun_makino

で、非常勤講師控え室にいた原子力工学の教員たちが「進学振り分けで人 気が下がるのは困る」みたいな会話をしているのはあまりに当事者意識が欠け ているとして「怒りがこみあげてきた」

Jun Makino @jun_makino

で、それぞれを「傲慢な反知性主義」と「尊大な専門家主義」と位置付 けて、自分の立場=中庸が正しい選択枝であると主張する。

Jun Makino @jun_makino

でも、この佐倉さんの立場こそが、実は「傲慢な反知性主義」で、問題の 科学的内容を理解しないで中庸に立てる、というまさに「傲慢」なものであろ う。

Jun Makino @jun_makino

あともう読む必要がある気がしないのでこれでおしまい。