長瀧先生の論座の記事

歴史
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甲状腺がんとチェルノブイリ、そして福島 - 長瀧重信 2016年03月07日webronza.asahi.com/science/articl… 「長瀧重信 長崎大名誉教授 32年生。東大医卒。長崎大時被爆者治療、調査の経験を踏まえ、チェルノブイリ原発事故健康被害調査活動やJCO臨界事故周辺住民健康管理にかかわる。2016年11月12日、逝去」

2021-04-23 20:34:26
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「福島事故から5年、86年4月チェルノブイリ事故から30年。チェルノブイリ調査に関係してきた筆者として、福島で継続して甲状腺がんの患者さんが発見されている状況の解釈に役立つことを願って、チェルノブイリで小児甲状腺がんの増加が国際的に確認されるまでの経過を詳細に記載することにしました。」

2021-04-23 20:38:26
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「86年から90年までソ連邦からの事故の情報は非常に限られたもの。90年にソ連政府は正式にIAEAに放射線影響の調査を依頼、諸外国からの調査を受け入れ始めました。日本は、WHOのプロジェクトへの協力、外務省を通じた2国間の専門家協力、日本財団の90年にチェルノブイリ笹川プロジェクト。」

2021-04-23 20:43:14
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「笹川プロジェクト。子供の甲状腺がん、白血病調査を目的。91年4月に甲状腺超音波検査機器、白血病調査機器、ホールボデイカウンターを積むバスを5台贈呈、ソ連側準備の5検査センターで調査を開始。5年間に10歳以下の子供20万人の調査ができました。採血検査も全員に、尿中のヨウ素も各地で採取。」

2021-04-23 20:47:25
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「筆者は笹川プロジェクトに甲状腺の責任者として参加、日ソ専門家協力の委員、さらに日本が資金の90%を提供したWHOの初期のチェルノブイリプロジェクトの作成委員としても参加しました。」

2021-04-23 20:48:12
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ベラルーシ 二次大戦後、ベラルーシ全域がソ連領ベラルーシ共和国。 86年4月26日共和国南のウクライナ北部チェルノブイリ原発事故、南風で放射性物質が南東部ホミェリ(ゴメリ)州を中心とする地域に。 90年7月27日独立宣言、1991年8月25日に独立が承認。9月15日国名が白ロシアからベラルーシ共和国。

2021-04-23 21:00:45
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「91年来日されたベラルーシ、ミンスク甲状腺研究所長デミチック教授が研究所での小児甲状腺がんの手術例が事故後増と長崎で発表されました。ソ連以外の国では初めてでしたが、IAEAの調査は病気が増えている証拠はないと発表したばかりでしたので、記者会見ではあまり取り上げられませんでした。」

2021-04-23 21:03:33
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「92年9月Natureに甲状腺がん増加の論文がベラルーシ保健大臣、甲状腺研、放射線医学研の所長名で発表。WHO欧州支部、ケンブリッジ大、ピサ大教授などの支持論文が発表。放射線原因の結論は早すぎの反論が日本の放射線影響研究所、英国オックスフォード大、米国シカゴ大の教授からNatureに投稿。」

2021-04-23 21:07:21
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「この頃世界の専門家の交流も盛ん。12人の甲状腺専門家がミンスクの研究所に。デミチック教授司会で次次という感じで患者さんが紹介され、病歴、手術記録、病理標本まで供覧、出席者全員一日目にたくさんの甲状腺がんの患者さんがいることに同意。今まで自分が診た患者よりはるかに多いと驚く印象。」

2021-04-23 21:12:30
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「次の議論は原因。全員で興奮して議論しましたが、最後まで一致せず、両論併記のような結論になりました。 チェルノブイリ事故によると同意したのは主としてヨーロッパ。 日本とアメリカを中心とする学者はまだ疫学的な検討がなされていないと主張しました。」

2021-04-23 21:13:31
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「この問題をめぐって96年までの間に世界各国で、また国際機関の主催で、1年に何度も国際会議が開かれました。 筆者が参加した国際会議 WHO、欧州共同体、IAEAシンポ 92年ミンスク、93年キエフ、94年ジュネーブ、ウイーン、ウイーン。 長崎市での交際シンポ 93年、94年3回、96年。」

2021-04-23 21:19:46
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「筆者は長崎市で3回国際集会を開催。。甲状腺がんの原因が放射線、あるいはチェルノブイリ事故に起因するかが常に議論の中心。さまざまな解釈、全員が真剣に科学的に評価して議論。」

2021-04-23 21:22:48
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「疫学的に不十分という立場からの発言は、患者の数は発表されてもどの集団からという分母がない、分母がなければ疫学ではないと主張され、分母が出てくると、今度はスクリーニングのために患者が増加したという解釈が主としてロシアの学者から主張されました。」

2021-04-23 21:23:21
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「94年(8年目)長崎で開催の国際シンポでは、世界各地の被ばく体験の場所(原爆、マーシャル諸島、米国ハンフォード、ウラル核惨事のマヤーク、チェルノブイリ関連の3共和国)からの科学者、WHOなどの国際機関の代表が討論。」

2021-04-23 21:25:47
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「司会の筆者が、甲状腺がんの増加は、『チェルノブイリの事故による』という回答と、『まだ確定できない、他の原因も調べる必要がある』のどちらかを選択するようにお願いしたところ、11人の演者全員がさらに検討が必要であると投票されました。」

2021-04-23 21:26:58
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「95年以降の国際会議 95年 ジュネーブ チェルノブイリ事故と他の事故による健康影響 96年 ミンスク 第一回チェルノブイリ事故の健康影響に関するEC、ベラルーシ、ロシア、ウクライナによる国際会議 96年 ウイーン チェルノブイリ事故10周年国際会議 」

2021-04-23 21:33:43
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「この当時は、出版された論文より、実際の調査結果を前に国際的な学者が討論するという形が多。」

2021-04-23 21:36:14
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「最初のWHOの会議の打ち合わせ。今まで甲状腺がんは増えてないと主張してきたロシアの学者が突然ロシアでもベラルーシ、ウクライナと同じように増加していると発言。スクリーニング影響はあるが、同じ方法で毎年調査をしてて94年までの14歳以下の子供の結果から増加していると言わざるを得ないと。」

2021-04-23 21:37:57
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「筆者はこのWHO の会議では基調講演をすることになっていましたので、ロシアでも甲状腺がんが増加しているとスライドを書き換え、被災した3共和国(すでにソ連政府はなかった)のすべてで甲状腺がんが増加していると講演しました。まず増加したという事実がWHO の会議で確認されたということです」

2021-04-23 21:38:35
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「10周年国際会議の最後のOne Decade after Chernobylでは、前もって共同演者6人(英国、米国、日本、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ)で打ち合わせ、ケンブリッジのWilliams教授が代表で口演。質問時には全員が壇上に座りました。代表的な発表のまとめは右図の甲状腺がんの頻度の増加です。」 pic.twitter.com/UGgBkSOK07

2021-04-23 21:43:43
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「同じ体制で検査をしてスクリーニングの影響は同じなのに、毎年発見される14歳以下の患者数が増加している。疫学的には分母はその国の子供の数、分子はその年に手術された甲状腺がんの子供の数です。この調査結果から『チェルノブイリ事故によって子供の甲状腺癌が増加した』と報告しました。」

2021-04-23 21:44:42
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「発表後の討論で、米国の専門家から被ばく線量との関係(線量相関)を質問され、筆者が答えましたのでよく覚えていますが、この時期には甲状腺の線量相関は調べられていませんでした。被ばく線量の測定結果がまだ認知されていなかったのです。」

2021-04-23 21:45:30
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「実際に甲状腺の放射性ヨウ素―131を測定された子供は10万人以上といわれていましたが、疫学的に被ばく線量として使えるほどの信頼ある測定値にはなっていませんでした。したがって線量相関はわからない段階です。」

2021-04-23 21:45:47
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「それでもこの時点で『チェルノブイリの事故で甲状腺がんが増加した』と結論した理由は、時間的(1990ごろから明らかに増加している)、地理的(3共和国とも被ばくしている)なChronological and geographical strong circumstantial evidence(年代的地理的に強力な状況証拠)と記載されています。」

2021-04-23 21:48:26
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「その後、国際機関の動きとは独立して笹川プロジェクトとして、ベラルーシの一番甲状腺がんの頻度の高かった地域で、事故の後に生まれた被ばくしていない子供を同じように超音波で調べたところ、事故後に生まれた子供には甲状腺がんが全く増えていないことが分かり、」

2021-04-23 21:49:15