#34 幸福な死を

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ﾋﾟｯ

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ぐらぐらと揺れている。 ゆらゆらと揺れている。

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彼女に死が迫っている。 彼が死んでいる。

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彼女を助けなきゃ。 彼女を助けなきゃ。

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僕が、死ぬ事で。 僕が、生きる事で。

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｢はい、どうぞ。｣

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｢ありがとう、ございます……。｣

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ラキさんは僕の前にドーナツの乗った皿を置いて、自分の方にもまた置いた。

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嬉しそうにドーナツを頬張るラキさんを見ても、僕はドーナツを手に持っただけで一向に食べることはしなかった。

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｢……ドーナツ、お嫌いでした？｣

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ラキさんが心配そうに首を傾げる。

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落ち込んでいる様子で、咄嗟にそれを否定する。 ドーナツが嫌いでは無いのは事実だが。

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これから死ぬ事への緊張と不安で、何かを食べる気にならないのだ。

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｢……では食べながら死に方のお話をしましょうか。まずは貴方が死にたがっている理由をお聞かせ願えますか？｣

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｢は、はい……。えっと、僕は………若頭のために………。｣ pic.twitter.com/5kCIW3vkju

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ここに来た理由を頭の中に浮かべ、話し始める。

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しかしそれはとても憂鬱なことで、気分はどんどん沈んでいく。

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｢それで、ある日───｣

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その時、ぐい、と腕が上に引っ張られた。

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何が起きたのかわからずに上を見上げる。 僕が手に持ったドーナツの一部分は、その人の口に吸い込まれていった。