『蔓延期の院内防疫と検査について』とホロジック社パンサーシステムの性能と国内の動向。そして抗原定量ルミパルスG600IIの性能について(2021.5.4作成) #新型コロナウイルス

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Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

蔓延期の院内防疫と検査について所感(その1) ①「社会防疫の失敗という大きな波に呑まれつつある」と書いたのは3日前のこと。 蛍光プローブのリアルタイムPCRに、年余に亘って専従に近い格好で関わった過去をもつ臨床医として、私は一貫して「特異度は100%だが、感度は高くない」と書いてきた。

2021-01-09 21:26:39
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

②このことを、 「下手と馬鹿が使わなければ偽陽性は出ない」 「体内分布の問題と、唾液ダイレクトの検出性能の低さから偽陰性(取りこぼし)はしばしば起こる」 と説明してきた。

2021-01-09 21:26:40
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③特異度はヒューマンエラーを除けば100%であり、事前確率やベイズを無視できる臨床検査の例外中の例外である。 他方、感度は咽頭や唾液にウイルスが来ないが肺には居る症例があり、さらに検体の採取・運搬・処理による鋳型の滅失のため高くはない。また唾液からの1stepは検出能が劣る。

2021-01-09 21:26:40
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

④この感度は、事前確率の影響を受ける。分かってはいたが、今このことを実感している。市中蔓延のフェーズに入って事前確率が上がってきて、偽陰性が生じる可能性を無視できなくなってきた。 下記リンクは7月に紹介した専門家のブログ。非常に分かりやすい。 bit.ly/2WXdX6a

2021-01-09 21:26:41
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

⑤そして実際に、入院時スクリーニングで陰性ののちイエローゾーン留め置き期間に発熱して陽性となる例が出てきた。 感度が優れていなくても院内防疫に使えていたのは、事前確率が低かったからなのだと思い知った。院内防疫は社会防疫失敗の波に呑まれるのだ。

2021-01-09 21:26:41
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

⑥「入院時のPCRスクリーニングは無意味」と論ずる向きもあるが、私は蔓延期以前は有効に機能してきたと確信している。LODを下げる(ごく少ないコピー数でも検出できる)べく唾液でなく鼻咽頭スワブ採取を堅持し、すぐさま院内で検査。COVIDを疑わないincidentalな5例の陽性者を拾えている。

2021-01-09 21:26:42
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⑦予想されたことではあるが、蔓延期になって院内防疫が偽陰性に脅かされる今、イエローゾーン留め置き期間を延ばすのか、別モダリティーとして抗原検査を併用するのか(個人的には反対)院内で議論中である。 院内感染発生時の網羅的スクリーニングについても綱要がまとまった。これは別項で改めて。

2021-01-09 21:26:42
日付切取線 @krtr_date

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2021-01-10 00:00:01
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

コメントありがとうございます。私も「検査の性能は一定なのだから、患者自身および周辺状況(事前確率)は、有病を陽性、無病を陰性と判断する確率に影響はない」と思っておりました。臨床検査の基本とやらを意識せずにおりました。(続く twitter.com/CordwainersCat…

2021-01-10 18:35:18
彫木🌧環🧷✂️✏️(オミクロン株にはガッカリだよ) @CordwainersCat

事前確率(つまり市中感染者数)が多かろうが少なかろうが「感度70%の検査は感染者のうちの7割しか見つけない」訳だから、防波堤(院内防疫)を突破される「割合」は同じじゃ無かろうか? 防波堤を突破される「人数」は確かに違うけれど、防疫の「精度」は前から同じなんじゃ?という疑問が浮かぶ。 twitter.com/kakeashi_ashik…

2021-01-10 01:01:40
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

承前)英国医師会雑誌の論文を題材に、「同じ陰性の結果でも対応が分かれる」という考え方を学びました。そして最近になって具体的事例をもってそのことを経験しております。(続く ※科学的背景をお持ちの方とお見受けしますので、よろしければ。 bmj.com/content/bmj/36… twitter.com/kakeashi_ashik…

2021-01-10 18:35:19
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

【後編】Table1の右側は1回陽性のときの検査後確率だが、特異度を95%と低く見積もっているため、陽性の信頼度が低い結果になっている。現在主流となっている蛍光プローブのrRT-PCRは特異度が100%にかぎりなく近いので、実際には陽性の曲線は天井に張り付くと考える。(長文続く

2020-07-27 00:53:40
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

承前)入院時陰性で36時間後に発熱して陽性だった例では発症前36時間なら最も検出できるはずなのに取りこぼし、肺炎をきたした典型的症例でCOVIDを強く疑って再検を重ねて陽性を得たり(複数事例あり)ということが増えてきています。陰性の結果を額面通り受け取るのは危険になってきました。

2021-01-10 18:35:19
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

蔓延期の院内防疫と検査について所感(その2) ①ここからは医療機関の水際対策とスタッフ防護に、どう検査を使っていくかについて私見を述べる。 7月から始めた院内PCRは、12月にメーカー違いとなるが2台目を導入。いずれも96穴プレートのオーソドックスな機械。

2021-01-10 18:43:16
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

②試薬は国産1stepのもので、成人入院全例と上部内視鏡前は鼻咽頭スワブ、小児入院全例とスタッフプーリングは唾液。 当初は1台で1日3ラン、再検もあるので実サンプル数にして200件のスループットだったが、これは技師さんの早出と居残りの上に成り立っていた。

2021-01-10 18:43:17
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

③機械が2台になって、各2ランずつ計4ランで300件にアップ。ラン回数を増やすことは可能だが消耗戦になるので、やるにしても今はその時ではない。 スループットの増分のかなりの部分をスタッフ検疫に回したが、機械が増えたことのメリットは実は別のところにある。

2021-01-10 18:43:17
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

④96穴の機械のランは満員になったら出発するシャトルバスのようなもので、1日1便だったら、その日のランに間に合わなかった検体は最悪24時間留め置かれることになる。その出発時刻が日勤帯3便とオーバーナイト1便になった。深夜帯の新規入院や、朝イチ回収のスタッフ検疫は昼過ぎには結果が出る。

2021-01-10 18:43:17
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

⑤迅速な抗原検査で時間的な隙間を埋める考えもあったが、国際感染症学会誌10月号に出た日本からの論文の、国産抗原検査とリアルタイムPCRの性能比較を見てやめた。 デカい機械を使う「高級な抗原検査」だが、下手すると陽性者の半数近くを見落とすという驚愕の性能である。 ijidonline.com/article/S1201-… pic.twitter.com/wYFSrfgipH

2021-01-10 18:43:18
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⑥以上のように、最長でも日勤帯からのオーバーナイト便17時締めで翌朝9時返し、以降の時間帯は翌13時返し、をPCRで実現できることが見通せたので、抗原検査に頼らないという選択をした。 しかし、抗原検査はAbbott社のPanbioのように優れたものが利用可能になれば、積極的に使いたいと考えている。

2021-01-10 18:43:19
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

⑦スタッフ検疫は、希釈による検出能低下と再検時の手間の両方を考慮して4名プールとした。シフト勤務のため検査周期は固定できないので、陽性者対応業務従事者は4日以上7日以内、患者対応業務者はまずは7日以内に受けてもらうことで開始した。まだ2-3周期しか回っていないが陽性は出ていない。

2021-01-10 18:43:19
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

蔓延期の院内防疫と検査について所感(その3) ①院内感染が発生した際に行う網羅的検査の基本的方針は、12になってやっと決まった。これには他所、特に旭川での事例が参考になった。

2021-01-10 23:48:33
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

②重要なのは二次三次の感染者を出さないことで、そのためにはスクリーニングを2日以内に終えることが望ましいと考えた。とにかくスピードが優先で、次いでLOD(最小検出コピー数)の小さい方法で末端まで確実に拾うことである。 twitter.com/kakeashi_ashik…

2021-01-10 23:48:33
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院内クラスタが各地で発生しているが、一次感染者と二次感染者の発症間隔は4日。感染してから他者への感染力を持つまでは更に短い。その2日ほどの間に全対象者を一気に検査できなければ無限数珠つなぎになる。地域の検査キャパシティ次第では非常に困難な状況に陥る。 natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/19/05…

2020-11-29 00:08:42
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

③そのために、コストはかかるが、院内PCRは使用せず検査会社に外注することとした。 対象者の数が多いので検体は唾液→唾液で検出能を下げないためにはRNA精製を介する2step→それを全自動で、と考えるとロシュのcobas8800かホロジックのパンサーを持っているところにお願いするしかない。

2021-01-10 23:48:34
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

④cobas8800もパンサーも、24時間で1000件の処理が可能だが、前者は一般的な蛍光プローブのリアルタイムPCRであるのに対し、後者は等温増幅でリアルタイムではなく最終産物にプローブを当ててバリデーションする。Ct値は出ない。パンサーの原理については別項で整理する。

2021-01-10 23:48:34
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

⑤結論として、有事の際にはパンサーで短期決戦する契約を結んだ。院内PCRは通常業務のために稼働を続けられるし、技師さんに欠員が出たとしてもクラスタ対応は進む。 大都市圏の病院にしかできないことだが、全自動機械を保有する外部検査機関にお願いしてスキームを作っておくことを勧める。(了

2021-01-10 23:48:34
日付切取線 @krtr_date

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2021-01-11 00:00:01
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

昨年8月にホロジック社のパンサーシステムを簡単に説明したが、改めて。蛍光プローブのリアルタイムPCR推しの私だが、別方式ながらよく考えられた素晴らしい製品なので、少し突っ込んで解説する。 ①同社の核酸増幅検査は、リンクの報道によれば9月時点で米国シェア30%! bit.ly/3oynIn1

2021-01-11 15:57:39