モパイ・マスト・ダイ 後編

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

（これまでのあらすじ：サラリマン雀士「イチロー・モリタ」を名乗り、邪悪なソウカイニンジャ「クレアボヤンス」の根城たる非合法マージョンカジノ「役」へと潜入、最高レートの直接対局へと持ち込んだニンジャスレイヤー……）

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

（これまでのあらすじ続き：……ナンシー・リーによる雀卓ハッキングの助けを得て善戦するも、クレアボヤンスの謎めいたジツにより点棒を削られ、残り100点へと追い込まれてしまった。もはやリーチすらも不可能な状況で、ニンジャスレイヤーに逆転の目はあるのか？）

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【モパイ・マスト・ダイ】（後編）

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((我がソナー・モパイ・ジツにかかれば、全ての雀卓はヌーディスト・ビーチにも等しい！)))ナムアミダブツ！盤面は最初から完全にクレアボヤンスによって支配されていたのだ！　1

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

モパイ透視行為は当然ながら反則。X線サイバネアイを埋め込んだ雀士は、モパイ行為が露見すればその場で両目をくり抜かれるのが暗黙の掟。だが、ニンジャのジツによる超自然的モパイ行為を見抜ける者など、この場には存在しない。クレアボヤンスの暴虐を止められる者はいないのだ！　2

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ダッダッダッダッ。四人は黙々と牌を引き、捨てる。ダッダッダッダッ。不可避のクライマックスに向け、緊張が高まってゆく。(((さあ、イチロー・モリタ＝サン、君は散りざまに、どんな狂気を見せてくれるのかな！？)))残る牌はあと４枚。ダッ。ダッ。ダッ。最後の１枚を引くのは、クレアボヤンス。　3

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「さて、最後の牌は、一体何だろうな……？」無論、この牌の中身も、クレアボヤンスは引く前から知っている。それは、彼に数百万点級のアガリをもたらす「伍萬」牌である。彼はそれを先ほどのカン時に手を横に動かして密かにモパイし、読み取っていたのだ。　4

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「いい牌だといいんだが。私としたことが、とても勝ち目の薄い牌をアガリ牌にしてしまったからね……」クレアボヤンスは勿体ぶりながら、ゆっくりと最終牌に手を伸ばす。だが。 5

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((……ム？))) 最終牌の背に触れたクレアボヤンスは……ごく一瞬、逡巡した。何らかの違和感があった。直ちに居住まいを正し、ジツを再行使する。キュンキュンキュンキュン……やはりおかしい。これまでに読み取ったことのない、奇妙な漢字のスキャニング・パターンが返ってくる。 6

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((「伍萬」ではないだと？　私としたことが、先ほどのモパイ時に読み誤ったか？　……ではこれは何だ？　漢字が書かれている。字牌か？　違う！　何だこの牌は？　何故、私の知らない牌が山に置かれている……！？)))クレアボヤンスのこめかみから頰に向かって、冷たい汗の筋が引かれた。 7

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「どうした、引かぬのか？何故、牌を引く前から躊躇している？……もしや、モパイしているのでは？」イチロー・モリタが問うた。　8

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ふざけるな、くだらぬ言いがかりを！」クレアボヤンスは図星を突かれ、語気を強めた。これ以上躊躇すれば、左右のカチグミ・サラリマンも訝しみ始めるだろう。「最終牌……これで終わりだ！」クレアボヤンスは荒々しくその牌を引き、自分だけが見えるように表返し、眼前へと運んだ。　9

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何！？」クレアボヤンスは目を剥き、名状しがたい恐怖に震えた。ナムアミダブツ！そこには禍々しき「忍」「殺」の二文字が刻まれていたのだ！　10

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「な！ 何だ！？ この牌は一体何だ！？ 誰が紛れ込ませた！？」クレアボヤンスは反射的に、その不気味な牌を卓の中央に叩きつけた。直後。イチロー・モリタが腕組み状態で言い放った。「……それでロンだ」 11

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だと！？ 貴様、世迷言を！」クレアボヤンスは顔を上げ、対面を睨んだ。だがそこにはもはや、トレンチコートにハンチング帽のみすぼらしいサラリマンはいなかった。代わりに、赤黒いニンジャ装束を身に纏い、その目を血のように赤く輝かせる復讐者がいた！　12

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「この役名はニンジャ殺すべし。オヌシの首をいただこう……！」復讐者は自らの手牌を右から左へと倒し、全てを詳らかにした。ゴウランガ！ そこにはクレアボヤンスが引いたのと同じ「忍」「殺」の異常牌が十三枚！　13

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何だと！？　待て！　貴様、さては牌を入れ換」「イヤーッ！」「グワーッ！」ニンジャスレイヤーは機先を制するようにスリケンを投じた！クレアボヤンスの両目にスリケンが突き刺さり、スプリンクラーめいた血が全自動雀卓と気絶したカチグミ・サラリマン二人を染め上げた！　14

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ドーモ、ニンジャスレイヤーです。クレアボヤンス＝サン、オヌシがニンジャであることは先刻お見通しだ」「ニンジャスレイヤー＝サンだと！？　実在したというのか！？」クレアボヤンスは両目を潰されてなお戦意衰えず、両手を前に突き出して、ソナー・ジュー・ジツを構えた！　15

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが、精神的優位は既にニンジャスレイヤーの側にある！「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは目の前の雀卓に鞍馬競技めいて飛び乗り、連続カラテキックを繰り出した！「グワーッ！？」クレアボヤンスはソナーによって敵の動きを読み取り対応するも、凌ぎきれぬ！「な、何たる連打か！」　16

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」怒りに満ちた右、左、右の巧みな蹴りの連打が、クレアボヤンスの顔面に叩き込まれる！　ニンジャスレイヤーは手を小刻みに動かし、連続鞍馬キックをなおも加速させる！　17

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」この違法マージョン領域において、死はすぐそこに口を開けている。そしてここに集う誰もが、それは自分の運命ではないと考えているのだ。自らに破滅が訪れる、その瞬間までは。　18

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ……！」ニンジャスレイヤーは卓上開脚倒立から静止状態に入った。極限までカラテを集中させ、両足を勢いよく前方に突き出す！「Wasshoi！」「グワーッ！」クレアボヤンスの首はバスケットボールめいて飛び、胴体はゆっくりと麻雀卓の上に倒れて、壮絶な爆発四散を遂げた！「サヨナラ！」19

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはそのまま高く跳躍し、空中回転とともにスリケンを四方に投じ、着地ザンシンを決めた。ソウカイ紋を持つクローンヤクザたちはチャカ・ガンを抜く暇すら与えられず、ニンジャスレイヤーの投じたスリケンを額に生やして死んだ。 20

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ！？」「ニンジャ！？　ニンジャナンデ！？」「アイエエエ！　アイエーエエエエエエエエエ！」カジノにいたサラリマンたちは悲鳴をあげ、失禁し、点棒を放り出して床を転げ回った。あるいは我先にとエレベータや非常階段に殺到し、違法マージョンカジノから逃げ出した。 21