ストレイトロード：ルート140（56周目）
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Rista_Bakeya
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Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
隙間を通る空気を手掛かりに、藍が室内に誰もいないことを確認した。それから私達は歪んで固まった扉に角材を叩きつけこじ開けた。一歩踏み込んだ直後、正面に人影を見た。「あれ、わたしたちよ」姿見として壁に貼られた鏡に横並びの二人が映っていた。身構えた私を見上げる藍はどこかほっとしていた。
2021-04-14 18:50:19
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
軽食や土産物を抱えて向かった広場は、車座になって昼食を楽しむ人々で混雑していた。ベンチに二人分の席を確保できたのは幸運だった。「お味はどうかな」隣から藍に話しかけた初老の人物に見覚えがある。祭の開幕を宣言した世話役だ。「端から端まで巡ったようだね」随分前から観察されていたらしい。
2021-04-15 19:48:01
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
140文字で描く練習、2764。世話役。 旅先で何か楽しそうな祭をやっていて出店があったら立ち寄りますよね？という一幕。
2021-04-15 19:48:02
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
「冷房と暖房を間違えてつけてる」リモコンを見た藍の指摘に、研究員は新人助手の仕業だろうと説明した。相当な粗忽者らしく職員達も手を焼いているという。「でも、こんな仕事に応募してくる人って少ないでしょ」「そこなんだよ」人類の敵と向き合う最前線に怯まず飛び込む。ある意味では才能がある。
2021-04-16 19:15:56
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
訪ねるよう言われていた山小屋に住人の姿はなく、一度は諦めていた。夜になってから藍が立ち上る煙を見つけ、森の一角を照らす黄色の輝きに行き着いた。彼は焚き火にあたっていたその場所に新しい小屋を建てているという。「手で？」「そこに重機が見えるか？」指が示す先に車輪はない。獣の影がある。
2021-04-17 19:53:51
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
空路が禁止になれば陸路が発展する、世界が変わり始めた頃よくそう言われた。だが実際は維持管理の手間と危険が山越えの道から人を遠ざけた。かつて超特急と持て囃された路線が今は草に埋もれている。「だからまっすぐで走りやすいのね」私達の車はトンネル内を突き進む。後方につけた怪物も加速する。
2021-04-18 18:49:50
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
「あれね、変な声の鳥」藍が空色の羽根で廃屋の上を指した。「たくさんいる」麦畑に囲まれた村が怪物に踏み潰された日、逃げ出せたのは人間や家畜だけではなかった。つがいの小鳥が壊れた篭から脱出し、半壊した家で巣を作ったことに、当時は誰も気づかなかった。今や人より鳥の方が多いと住民は言う。
2021-04-19 18:54:20
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
大小の棚に様々な競技会のトロフィーが並び、壁には大判の写真が飾られている。屋敷の主は息子の多才ぶりを熱心に語った。私は聞き役に徹したが、藍は口を挟んだ。「同時じゃないのね。全部違う年に別の種目で取ってる」選手の親が言葉に詰まった。頻繁な転向は壮大な戦略ではなくただの飽き性なのか。
2021-04-20 20:03:54
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
140文字で描く練習、2769。転向。 まだまだ「て」の段階でサジェストに「テキレボ」が出てきます。 続々届けられているようですね。
2021-04-20 20:03:54
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
パレードの通り道に着いたとき、既に人だかりが壁となっていた。魔女でも割り込む隙はないようで、藍がこちらを向いてから不満を顔に表した。私を睨んでいると一瞬思った後、今まさに隣で肩車している親子の存在に気づいた。雇い主も同じ特等席へ招いた方が良いのか。迷っていると静かに足を踏まれた。
2021-04-21 19:02:46
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
林の外れに駐車したのが朝方のこと。食事中にどこからか現れた男が勝手に居座り、調理の手際から付近の治安まで延々と話し続けた。「つい長居しちゃったねぇ」気づけば日が傾いている。「いや、こんなところに人が来るなんて久々だったもんで」笑う男は悪びれない様子で、黙る藍は私にも顔を見せない。
2021-04-22 19:27:57
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
客室にかかってきた電話の声がうまく聞き取れない。藍が何か探し物をしていたようだが、その目的と捜索場所を絞れず、広い屋敷を歩き回った。ようやく発見した藍はキッチンで煮魚の鍋を見下ろしていた。「いいの、謎は解けたから」無表情を作っている。彼女のハーブを母親が勝手に料理へ入れたらしい。
2021-04-23 20:22:11
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
写真を一枚ずつめくり内容を確かめていた藍が手を止めた。「これ欲しい」無人となった街角を撮影したものにどんな価値を見出したのか。「本当にこんなものが役に立つのか」「ここで額にも入れないで放置するよりはマシじゃないかしら」買取額が提示されると教授は言葉を失った。額に汗が集まっている。
2021-04-24 20:17:52
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
動かぬ証拠を手にした藍は休憩も惜しんで学長の私邸に突入した。使用人の手をすり抜けて本人を捕まえ、根掘り葉掘り問い詰めること小一時間。怪物の生息域を調べようとした研究者に圧力をかけたと認め、屋敷の主は床に倒れた。「まだ隠し事あるわよね？」魔女は一連の疑惑を根こそぎ掘り起こす構えだ。
2021-04-25 20:02:11
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
屋根裏部屋の住人は階下の人々より若く、閉じ籠る彼らとは違い外の様子を知っていた。世界的に知られた大学に通うべく勉強に励んでいるという。小論文の下書きに目を通しただけで望み薄だと感じたが、本人はもう合格したつもりなのか、壮大な夢を藍に語っていた。野望を追う魔女の前では水を差せない。
2021-04-26 19:08:46