- Yuusisaitou
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久しぶりに「ローゼンメイデン」を全巻読み返した。 高校の頃にアニメ一期を見て当時原作を既巻分買ったものの、アニメ版の続きは私の地方では放送されず原作は例の連載終了→移籍のゴタゴタで何となく興がそがれてしまいYJ版二巻辺りで離れ、全巻読んだのはごく最近。 今回は二度目の通し読み。 pic.twitter.com/PxiPJwFomT
2021-06-05 00:52:56「ローゼン」は私の中で長いこと好きなのか嫌いなのかよくわからないラインを行ったり来たりしていた作品。 始めて見た頃はAKIRAや攻殻機動隊等の青年誌の金字塔作品に出会って大傾倒していた頃だったので、当然少女趣味な絵柄や作風には合わないところがあった。
2021-06-05 00:52:57ただ、これ以前に大きく感銘を受けた作品がある。 それが中学の時にハマった「七人のナナ」。今川康弘監督の当時としては萌え系に分類されるドタバタ(微ラブ)コメディ作品である。 テレビアニメに病的にハマったのはこの作品が最初。 pic.twitter.com/lKXLhUl5Vi
2021-06-05 00:52:58私の中の少女趣味の源泉は「カードキャプターさくら」に在ると今でも思っているけど、この「七人のナナ」ラインもやはり大いに在るとローゼンを読み返して思った。 改めて読み直してみるとやはりこの二作品、似ているところが多い。 この二つの作品を似てると公言する人は多くないだろう。 pic.twitter.com/JKIhbMwwvp
2021-06-05 00:53:00居候型のエブリデイマジックで、複数の居候が秘密の同居生活を送っている、という類似性は当時から気付いていた。 色で分けられた複数人、というのも共通している。 ローゼンはアニメ一期の頃は「六体のドールズ」だったが後に全七体であることが判明した(ナナのほうは八人目が登場するが) pic.twitter.com/QgPrMD65Zt
2021-06-05 00:53:01悪役のイメージが似ていることは過去にツイートした。白髪で紫が基調で変形する羽を広げて跳ぶ。 争う理由が「自身の希薄なアイデンティティを確立するために相手のエネルギー源を奪おうとする」というのも同じ。 pic.twitter.com/La0bupgU5L
2021-06-05 00:53:02改めて完結まで読み返すとクライマックスの流れも非常に酷似していることに気付いた。 主人公がライバルに互いに争うことの虚しさを説き、自身が消滅することを厭わずエネルギーを譲渡しようとする。 ライバルは改心し主人公に生存の権利を譲渡する。 pic.twitter.com/aCeUhIDppE
2021-06-05 00:53:04私が少年漫画嫌いなのはこの「七人のナナ」ラインの影響だと思う。 少年漫画特有の「相手を威圧して自分を上に見せる」というのが私はキライで、あれが全然カッコよく思えないんである(大抵相手は小者だし) 七人のナナは少女主人公の感性で「相手を赦す」ということを最初に教えてくれた作品。
2021-06-05 00:53:04元々は宮崎駿的ヒロイズムの影響が強い。子供の頃は「ナウシカ」は嫌いだったけど、高校の頃に漫画版を読んで深い感銘を受けた。 原作終盤で語られた真紅の志はナウシカに近い。ナウシカも「誰も見捨てず関わったもの全てを連れて行く」と評されていた。 pic.twitter.com/kEBeezqc73
2021-06-05 00:53:06少年が主人公の作品では、競争相手を蹴落として自身がトップに立つという構造のものがどうしても多くなる。 私はバトル漫画が嫌いだけど、「闘争」自体が嫌いなのではなくこの相手を蹴落とすマッチョイズムが嫌いなのである。 七人のナナもローゼンも、バトル要素はそれなりにある。
2021-06-05 00:53:06以前からローゼンは真紅が一番好きだと公言してるけど、私は真紅の、常識(ルール)に染まらず己を貫き困難な道を行く精神の高潔さが好きなのである。 アニメ版の頃は「不人気」などと言われ今でも世間ではそのイメージが強い。原作を最後まで読んだ人がそれだけ少ないということだと思う。 pic.twitter.com/rmI95nZJpb
2021-06-05 00:53:07少年漫画の主人公は、我こそはと力を誇示し相手を屈服させることで自らの存在価値を証明する(勿論全てがそうではないが) 私はこの構造が嫌い。まず争うことに疑問を持ち、運命に抗いながら解決策を模索する。少女主人公達のそうした姿勢、強い意志を秘めた凛とした眼差しが好きなんである。 pic.twitter.com/kyWjR3twr6
2021-06-05 01:05:09それはさておき漫画版「ローゼンメイデン」という作品について少し語りたい。 総合的には綺麗にまとまった良作だと私は思う。しかしやはり全体を見ると移籍騒動が痛かった。 あのままバーズで連載出来ていればもう少しコンパクトにまとまったように思う。 pic.twitter.com/CXctJFpzNn
2021-06-05 01:54:15YJ移籍後の「まかなかった世界」という展開は、一度終了した連載を再始動させるために生み出された苦肉の策だったんじゃないかと思う。バーズで継続出来ていればあの展開はなく、「まいた世界に戻った」YJ版5巻からの展開(ジュンが登校を始める)にそのまま移行していたように思う。 pic.twitter.com/06sYTE87y6
2021-06-05 01:54:17YJ版で始まった「まかなかった世界編」は、正直私はあまり好きではない。大手青年誌に移籍しての再始動ということで作風を少し青年向けに上げたのだろうけど、終始暗くギスギスした話で、物語の展開も遅かったので連載当時はここで脱落してしまった。 pic.twitter.com/NYkaEMXtK6
2021-06-05 01:54:18元不登校児の私から見ても桃種先生の心理描写は上手く、痛いところを突いてくる。でもYJ版はそれが逆効果だったように思う。「まいた世界」は、前提としてのヒキコモリという設定はあるものの、とりあえず序盤は前に出過ぎず、後から辛い展開が待っていた。YJ版は最初から前面にコレが出てくる。 pic.twitter.com/NPepP7LKcL
2021-06-05 01:54:20更に「まいた世界」「まかなかった世界」という前シリーズを見ていないと分かりにくいメタ展開。 ここから再アニメ化した新アニメ版が特にハネなかったのはしょうがない(私も未だに見ていない)正直YJ版前半は面白くないというのが本音。 pic.twitter.com/14QjHyqmG3
2021-06-05 01:54:22まいた世界に話が戻る五巻、日常話がいくつかあり一気に最終局面に入る後半は盛り上がる。 この作品は哲学的思索がなかなか多い。自己の存在意義、他者との折り合い、欲求と渇望のせめぎ合い。そうしたテーマが前面に出てくる終盤は読み応えがある。
2021-06-05 01:54:22この作品が面白いのは人形達が「至高の少女(アリス)」に成ることを巡って争うという倒錯的な特異な設定。 厨房の頃に押井攻殻に傾倒した身としてはこういうテーマは否が応でもゾクゾクくるし、この作品はそこも丁寧に描いている。 pic.twitter.com/MUkRRtw8QW
2021-06-05 01:54:24文学としての「ロリータ」や「不思議の国のアリス」を参照出来るとなお面白い。終盤の「お父様」が絡む展開はフロイト的解釈も用いられる。 女性作家が描く「少女論」の作品としても読み応えがある。 pic.twitter.com/Zt0i0foj2D
2021-06-05 01:54:25ネタバレ注意だけど、今作の結論は非常に「女性的」だったのが面白い。 「お父様」が作ろうとした至高の少女への昇華を拒否し、真紅は「生み出す者になる」ことを選択する。 これは作品を生み出す作家自身の投影でもあるだろうと読む。 pic.twitter.com/WzG6ATxAUT
2021-06-05 01:54:27男性の視点から所有し消費される存在だった「少女(人形)」が、その枷を外し自立し生み出す存在に成る。ロリータを扱いながら実は結論は極めてフェミニズム的といえる。
2021-06-05 01:54:27ただこう、ジュンの不登校問題やジュンと真紅の絆といった面はかなりショートカットされてしまったように思う。原作序盤はこの関係性が非常によかったので、ここが段階的に掘り下げられることなく、揺るがないものとして描かれきってしまったのが、個人的には残念だった。 pic.twitter.com/bvAqTRvFor
2021-06-05 01:54:29個人的には色々惜しいと思う点や不満点もあるが、「ローゼンメイデン」は極めて真っ当な「少女」漫画として綺麗に完結した名作であると結論づける。 少年漫画ばかり持て囃される少年漫画ブーム全盛の今、あえて主張したい。 「ローゼンメイデンはいいぞ」と。 pic.twitter.com/Lm07gTjF3F
2021-06-05 01:54:30