Herbie Hancock "Chameleon(1973)" 誕生から"Rockit(1983)"までの飽くなき挑戦の10年間(written by Dr.ファンクシッテルー)
Herbie Hancock - Chameleon (1973) youtu.be/UbkqE4fpvdI 突然ですが、ハービー・ハンコックの話をします。「ファンクの歴史」で書ききれなかった話、こぼれ話です。 今回は「Chameleon誕生秘話」です。 pic.twitter.com/ybi2AKDjoL
2021-06-06 12:00:111964年、マイルス・デイヴィス率いる世界最高のジャズバンドの一員となったハービーは、そこで数年間を過ごしました。音楽的に、そして知名度的にも大きな飛躍をします。 youtu.be/zOSYBw73WbU pic.twitter.com/sUwp6Li2XZ
2021-06-06 12:00:13マイルスは1969年に電子楽器やエレキギターに大きく接近。その場にハービーも居合わせ、これは「Bitches Brew」というアルバムになりました。 ジャズ、フリージャズ、ロック、そして生まれたてのファンクなど、雑多な音楽が奇跡的なバランスで融合した名盤です。 youtu.be/ibanLlREjTk pic.twitter.com/ei6RkzTB1f
2021-06-06 12:00:17ハービーはマイルスの元を離れ、さらに新しい音楽を追求するために、「Mwandishi」というバンドを結成。 このバンドは非常に簡単に言うと、マイルスの「Bitches Brew」の延長線上にあるかのような、先進的でマニアックなジャズバンドでした。 youtube.com/watch?v=57W4Q5… pic.twitter.com/2dtupSmxsE
2021-06-06 12:00:21このバンドは「Mwandishi」「Crossings」「Sextant」の三枚を吹き込みますが、難解すぎてまったくセールスに結び付くことはありませんでした。 似た方向性のマイルスの「Bitches Brew」は売れていましたが、残念ながらそこには大きな壁があったのです。 youtube.com/watch?v=RqQ2ZB… pic.twitter.com/pMiWEaqbVw
2021-06-06 12:00:25Mwandishiバンドは経営面で行き詰まり、お互いの信頼関係にも亀裂が入っていきます。 そのなかでも懸命に新しい方向性を探していたハービーは、そこで人生を変えることになる二つの大きな出会いをします。
2021-06-06 12:00:27彼の自伝によれば、その一つは創価学会への入信でした。仏法の世界へ入ったことが彼の精神を安定させ、新しい決断をさせる勇気へ繋がったと書かれています。
2021-06-06 12:00:27もう一つが、1973年のポインター・シスターズとの対バンでした。 ごくわずかのジャズファンに対してしかエクスキューズできない自分のバンドに対して、流行のファンクを取り入れたポインター・シスターズのステージの盛り上がりを見て、ハービーは衝撃を受けます。 youtube.com/watch?v=F2U1OU… pic.twitter.com/aJc5wjMMLd
2021-06-06 12:00:29ハービーはこの対バンの後、「おれもあんなふうに人々に受け入れられたい」と語ったと自伝に書かれています。 さらにSlyの「Thank You」のフレーズが頭から離れなくなり、いよいよ彼は本気でファンクを演奏する決意をしました。 youtu.be/N5BP2KlPD4U pic.twitter.com/a0ElM14rT2
2021-06-06 12:00:31しかし、Mwandisiのメンバーは基本的にジャズ至上主義で、ポインター・シスターズを「本物の音楽ではない」と切り捨てていました。 この考え方の違いも溝となり、ハービーはついにMwandishiを解散した状態で、新しいジャンルへと進む決意をします。
2021-06-06 12:00:34Mwandisiは解散となりましたが、唯一、ファンクに興味を示していたサックス、ベニー・モウピンだけがハービーについて行きました。 ハービーの自伝によれば、ファンクというまったく新しいジャンルへの進出は、かなり大きな賭けだったと書かれています。勝算があったわけではないのです。 pic.twitter.com/WAbZTEy3Dm
2021-06-06 12:00:38勝算はなくてもハービーは「どんな曲を作ればいいか」は分かっていました。 彼はこれからはジャズとは違った、繰り返しのメロディが人々を躍らせ、熱狂させることが分かっていたので――「Thank You」のような、印象的なメロディのベースラインを考え出します。 そう、「あのベースライン」です。 pic.twitter.com/qr3Pj3mY94
2021-06-06 12:00:41その曲は「ホーム・グロウン」と呼ばれ、ハービーはmini moogでそのベースラインを自ら弾き、レコーディングします。 レコーディング中、偶然エンジニアが前の録音を消し忘れ、2テイク分のベースが同時に鳴ったのを聴いて、ハービーはその音の太さに驚きます。 このミスはアイデアとして採用され、
2021-06-06 12:00:43オーディオの左右のチャンネルから、ハービーがレコーディングした2テイク分のベース音が鳴り響く、かつてなくファンキーな曲が生まれました。 その「ホーム・グロウン」は最終的に改題され…「Chameleon」としてアルバムに収録されたのです。 youtube.com/watch?v=UbkqE4… pic.twitter.com/3sseUdVUbb
2021-06-06 12:00:44続編が来たらここに足します。(まとめ人より)
「Chameleon」は当時のファンクとジャズの良いところをうまく融合させた画期的な曲でした。 ファンクのシンプルなベースライン、コードがフックとなっていますが、その裏で繰り広げられるドラムやベースの超絶技巧、また後半のエレピソロは熟練のジャズマンにしか演奏できないものです。
2021-06-06 12:00:45また、前半のシンセソロは現在の耳ではすこし退屈な音に聴こえるかもしれませんが、当時、あの音はものすごく斬新で、時代の最先端にいるサウンドでした。 ハービーはシンセに夢中になっていたので自然なことだったのかもしれませんが、コマーシャル的にも完璧な展開だったのです。 pic.twitter.com/PSdsYg5VUm
2021-06-06 12:00:49ファンクバンドを結成するのに、ギターを入れないというのも、非常に大きな決断でした。 ハービーは、スティービー・ワンダーやファンカデリックが使っている鍵盤楽器、「クラビネット」に興味があり、あれを持ってくればギターを入れる必要がない、と判断したそうですが、 youtube.com/watch?v=TjihmO… pic.twitter.com/8pT8D6PbLG
2021-06-06 12:00:51それによってバンドの芸術性が高まり、より自由で、面白いサウンドが生まれていたと思います。 「Chameleon」の前半部分では、なんとギターが弾くような音域のフレーズをベースが弾いています。このアイデアも非常に斬新で、新しいサウンドとして時代に訴求しました。
2021-06-06 12:00:52「Chameleon」が入ったアルバム「Head Hunters(1973)」は大ヒット、結局マイルスが持つアルバムの記録を抜き、一時期、ジャズチャートで最も売れたアルバムになりました。マイルスは後に、その悔しさを自伝で語っています。 明日はこの次のアルバム…「Thrust(1974)」について話します。 pic.twitter.com/bQnLGXLd57
2021-06-06 12:00:55HERBIE HANCOCK - THRUST (1974) - FULL ALBUM youtu.be/ffzjh7nl3Lg 昨日に引き続き、ハービー・ハンコックのファンクについて話していきます。 今日は名盤「Head Hunters(1973)」の次のアルバム、「Thrust(突撃)」です。1974年発表。「ギターレスのジャズファンク」における最高傑作です。 pic.twitter.com/swb5WlMad2
2021-06-07 12:00:03前作「Head Hunters」はハービーが勇気を持ってファンクへ踏み出した大きな一歩となり、結果それは大ヒットとなって大衆に受け入れられました。 彼はさらに、ギターレスのジャズファンクだった「Head Hunters」の方向性を推し進めた作品を作ろうとします。それが「Thrust」です。
2021-06-07 12:00:05当時のジャズファンクは、グラント・グリーンなど、常に素晴らしいギタリストと共にありました。 ジミー・スミスの「Root Down」にも、当然ギターが入っています。「オルガンジャズ」「ソウルジャズ」から派生した当時の王道ジャズファンクには、ギターが不可欠だったのです。 pic.twitter.com/bzWOOsHk1F
2021-06-07 12:00:09一方、ハービーはオルガンジャズやソウルジャズとは全く無関係なところからジャズファンクの道に入り、また最初からシンセサイザーに強い興味を持っていたため、 従来のギター(やオルガン)ありきのジャズファンクとは大きく違ったサウンドを生み出すことができた、と思われます。 pic.twitter.com/Kk7P0QRXuE
2021-06-07 12:00:13ギターレスであることによって、和音を担当する人間がハービーひとりだけになり、より自由で面白いサウンドが生まれていました。 16ビートのグルーヴはベースやドラム、パーカスが担当し、ハービーは時にハーモニー、時にグルーヴ、時にソロと、縦横無尽に暴れまわることができたのです。
2021-06-07 12:00:14