ウォーロックMAGAZINEソロアドコンテスト掲載作感想
ウォーロックマガジン9号のソロアドコンテスト入賞作の感想がようやくまとまったので、今からちょっと投下します。世に出てから半年近く経過しているとはいえ、両作のネタバレも含んでいるので気になる人はミュートしておくれ。
2021-06-13 22:44:16こちらのソロアドコンテストには自分は投稿できなかったんですが、掲載作の「ウッズエッジのひなげし」「逃亡の山嶺」ともに面白く、自分は投稿できても両作に肩を並べるのは厳しかったかな……と思っております。
2021-06-13 22:44:56掲載された両作が(取り上げている個所は違えど)『モンスター!モンスター!』からネタを引っ張っていたのには(シンクロニティ……!)となって笑ってしまった。
2021-06-13 22:45:27あと両作に共通しながら切り口が違って面白かったのが仲間NPCの扱い。「逃亡の山嶺」は直接的に戦闘へ参加してくれるシックスパックやクォーツみたいなタイプ。
2021-06-13 22:46:21対する「ウッズエッジのひなげし」は、地の文の描写をまぜつつ魔法使いならではの援護をするタイプで、地の文で援護を描写するのは『フリーウェイの戦士』のアンバーに近いと言えるかも。
2021-06-13 22:47:45過去にソロアド「傭兵剣士」を分析した経験からT&Tソロアドは仲間NPCを生かしやすいシステムだと思っていたので、両作品が仲間NPCを採用していたのは興味深かったですね。(仲間NPCの扱いと自作ソロアドでの試みについても色々と話したいことはあるけど、完全なる脱線なのでまた後日に)
2021-06-13 22:50:23「逃亡の山嶺」で特に感心したのが山小屋のイベント。最初にプレイした時は、中で寝ている時に襲われたんですが(描写無しで結構唐突に現れたな……まぁ入口壊したし外から来たんか)と普通に思っていたんですよね。
2021-06-13 22:51:47でもって次のプレイで別ルートになったら(ああー!なるほど、そういうことだったんね!)となり、さらに次のプレイで山小屋に入らずに火をつけたら(主人公視点では)不思議と大量に冒険点が手に入る展開になって笑ってしまった。
2021-06-13 22:52:53同じ物であっても「真上から見たら円」「真横から見たら長方形」「角度をつけて見たら円柱」と視点の違いで別の形を見せるように、同じイベントでも選んだ選択肢によって全然違った姿を見せるというのはゲームブックならではの展開。
2021-06-13 22:54:17自分は最近『四人のキング』みたいな1イベントが1パラグラフで完結しているようなタイプばかり書いていたので、久しく忘れていたゲームブックならでは面白さを再発見できる体験でした。
2021-06-13 22:56:08もうひとつ感心したのが難易度のバランス感覚。最後のバトルはかなりの強敵なんですが、仲間NPCやドーピングアイテム、強力な武器を各所に配置して、(ベストルートさえ進めれば何とかなるんじゃね?)と思わせるバランスになっているんですよね。
2021-06-13 22:57:40最初の強制戦闘もレベル1二刀流無し人間戦士だと結構厳しい相手なんですが、そういう時は射撃が頼りになるというのを「角笛で仲間を呼ばれるのを防ぐ」という展開にして無理なく例示しているのが上手い。その上で、投擲用の短剣も支給アイテムや追加資金で入手できるようになっているのも上手い。
2021-06-13 22:59:47ただ逆に言うと「投擲武器を使うかどうかでパラグラフが分かれるということは、明言されていない限り投擲武器も使えない」と考える人がいるかもしれないので、どこかで捕捉があった方が親切やもしれぬ。
2021-06-13 23:00:38ドーピングといえば(増強薬というよりか倍増薬じゃねえか!でもってそこが倍増すんのかよ!)と笑ってしまったんですが、冒険を通して異形化や強化アイテムを獲得することで、初期作成時の数字が並んだだけのキャラが独自の“個性”を獲得するというのもT&Tのソロアドならではの魅力ともいえそう。
2021-06-13 23:01:42T&Tのキャラメイクは背景情報とかが付与されないので、どうしても数値が並んだだけの個性が薄いキャラになりがちなんですよね。ソロアドは特にその傾向が強い。
2021-06-13 23:02:55別に自分で何か背景を考えても良いし、TRPGならそれで全く問題ないんですが、キャラが死にやすいソロアドだとそこまで考えてらんないところがある。三時間かけて背景を考えたキャラであっても、開始3パラグラフで普通に死んだりするので……
2021-06-13 23:03:47なので背景とかイチイチ考えずに作った数字が並んだだけのキャラになりがちなんですが、そんなキャラでもソロアドで冒険を重ねることで「右手がダイヤモンドで左手がグレムリン、魔剣ワーカス持ちでエルフ女魔術師の恋人がいる元サーベルタイガー」みたいな個性を獲得できるわけです。
2021-06-13 23:06:01過去のソロアド諸作にはやたら異形化する展開が多くて(皆そういう展開が大好きすぎるな!いや自分も好きだけど……はて、じゃあ自分はなんでそういう展開が好きなんだ?)となって自分なりに考えて思いついた結論なんで、諸作品の作者さんたちもそう考えて書いたのかは不明ですが。
2021-06-13 23:07:18さて、そうしたキャラメイク時に無個性なプレイヤーキャラクターになりがちなソロアドの対極的存在なのが、もうひとつの掲載作である「ウッズエッジのひなげし」。
2021-06-13 23:09:20ゲーム開始時点で背景が既に確立しているんだけど、それはキャラクター自身ですら知らないことで、ゲームを進めるうちに読者と自キャラの双方がその背景を知ることとなる。
2021-06-13 23:11:09この「僕の知らなかった僕の過去がドンドン出てくる!」って感覚を突き詰めているのがブラッドソードシリーズで、激闘の末に打倒したかつての強敵や頼りになるコネクションが無からガンガン生成されていき、読者自身が(自分はこんなキャラだったのか……!)となるし、そこがまた楽しい。
2021-06-13 23:12:36話を「ウッズエッジのひなげし」に戻すと、背景のしっかりとした自キャラや、もう戻ることのできない無邪気だった少年時代への哀愁みたいな読み味は、既存のT&Tソロアドよりも思緒雄二『送り雛は瑠璃色の』に近いものを感じる。
2021-06-13 23:13:47マップ上の選択肢からどこを調べに行くのか選ぶ形式(ミニマムなオープンワールドかフリーシナリオ)を採用しているのも『送り雛は瑠璃色の』に近いものを感じる。
2021-06-13 23:15:36ゲームブックは「作中の場所、作中時間、パラグラフ」が、それぞれX軸、Y軸、Z軸になっていて、作中の場所(X軸)やパラグラフの移動(Z軸)とともに作中時間(Y軸)がエンディングに向かって進むんだけど、こうしたフリーシナリオや双方向性タイプは矢印が途中で丸く戻りながらY軸を進んでいく。
2021-06-13 23:19:25つまりこういう途中でぐるっと円を描いている矢印のような構造。別の場所を調べ行くため同じパラグラフに戻る部分が、矢印でいう円を描いている部分に当たる。 pic.twitter.com/iLscYIXfLy
2021-06-13 23:20:33