史前帰化植物の生態的重要性
前川さんは人の力で作られ人の気配のする土地に限って生える植物を「人里植物」と呼び、そのほとんどは帰化植物(記録により外来であることが明白)、史前帰化植物(記録は無いが外来と推測)あるいは逸出植物(外来栽培種が野生化したと推測)のいずれかとした。つまり、人里植物≒外来植物。
2021-06-12 15:49:44日浦さんの「海をわたる蝶」に前川さんの史前帰化植物の分類(A~C)が紹介引用されている。A.ムギなどを作り始めた時代に中国経由で進入したもの。B.水田耕作の始まりとともに南方から進入し田や畔に定着したもの。C. 中国から栽培植物を持ち込んだ時代に紛れ込んで進入したもの。
2021-06-12 15:28:01日浦さんの前著に記述されている前川さんの分類をそのまま引用。 Aは春に開花するもの:スイバ、サナエタデ、コアカザ、ミミナグサ、ノミノツヅリ、ウシハコベ、ハコベ、タガラシ、ナズナ、タネツケバナ、コイヌガラシ、グンバイナズナ、ミヤコグサ、トウダイグサ、チドメグサ、キウリグサ(続)
2021-07-02 16:09:16A(続)ホトケノザ、サギゴケ、オオバコ、ヤエムグラ、ホソバノヨツバムグラ、ハハコグサ、キツネアザミ、ハルノノゲシ、ジシバリ、ノニガナ、スズメノチャヒキ、ヌカボ、コヌカグサ、スズメノテッポウ、カラスムギ、スズメノカタビラ、カニツリグサ、カモジグサ等。
2021-07-02 16:10:37Bは夏に開花するもの:カナムグラ、イヌタデ、ボントクタデ、イシミカワ、ミチヤナギ、オオイヌタデ、イヌビユ、ザクロソウ、クルマバザクロソウ、ツルナ、スベリヒユ、ミチバタガラシ、クサネム、タヌキマメ、メドハギ、エノキグサ、ニシキソウ、コミカンソウ、ヒメミカンソウ、キカシグサ(続)
2021-07-02 16:11:33B(続)ミズキンバイ、チョウジタデ、イヌホオズキ、スズメノトウガラシ、アゼトウガラシ、アゼナ、ウリクサ、キクモ、ムシクサ、ヨモギ、クソニンジン、タウコギ、トキンソウ、タカサブロウ、アキノノゲシ、アキノハハコグサ、オナモミ、メナモミ、コメナモミ、カズノコグサ、ギョウギシバ(続)
2021-07-02 16:12:12B(続)カリマタガヤ、イヌビエ、オヒシバ、カゼクサ、スズメガヤ、ニワホコリ、チガヤ、ヌカキビ、チカラシバ、イタチガヤ、ヌメリグサ、ハイヌメリ、エノコログサ、キンエノコロ、ネズミノオ、メヒシバ、アキメヒシバ、ハタガヤ、アオスゲ、クグガヤツリ、タマガヤツリ、ミズハナビ(続)
2021-07-02 16:12:51B(続)コアゼガヤツリ、コゴメガヤツリ、カヤツリグサ、ハマスゲ、ミズガヤツリ、テンツキ、ヒデリコ、アゼテンツキ、マツバイ、ヒメクグ、ヒンジガヤツリ、カワラスガナ、ホシクサ、ツユクサ、イボクサ、コナギ、イ、コウガイゼキショウ、クサイ等。
2021-07-02 16:13:35日浦さんの説 史前帰化植物は、人間が絶えず耕したり、草を刈ったりするために木が育たず森林が成立しない場所――つまり木陰で覆われず、日当たりの良い場所にだけ生える、という点で共通している。さらに人間の耕作形態に一生のリズムがうまく合っているものが多い。
2021-07-02 16:15:24日浦さんは、人里植物の中にも、日本の土着種が人里に入り込んで広がったとしか考えられない種、たとえば在来タンポポのような存在を認めている。その根拠として国内での地理的分化をあげ、川原や海岸を住みかとして地理的分化したものが人里に広がったとしている。
2021-07-02 16:16:36ところで、ヒトは約3万8千年前に日本に到達したというのが定説のようだ。したがって、外来生物はそれ以降に日本に進入したことになる。一方、約3万年から2万年前、日本列島と大陸は地続きになっていたという。したがって、この時代に自力で日本に到達した在来生物も居たに違いない。
2021-07-02 16:17:46前述のように、前川さんや日浦さんは地理的分化が見られない植物を史前帰化植物と推測している。約4万年の時間スケールでは、地理的分化は生じないということだろうか。そうであれば、約3万年から2万年前に自力で到達した在来種でも地理的分化は生じていないことになる。
2021-07-02 16:20:37そうであるならば、地理的に分化しているかどうかで3万年から2万年前に自力で到達した在来植物と史前帰化植物を区別することには無理があると言わざるをえない。この考えに基づけば、地理的分化が見られる在来タンポポなどは、もっと古い時代からの在来種ということになる。
2021-07-02 16:21:40いずれにせよ、人里植物のほとんどが外来植物、史前帰化植物、逸出植物(外来栽培種が野生化)だという説が否定されるわけではないだろう。
2021-07-02 16:23:06外来生物法第二条の特定外来生物の定義では、導入された時代を限定する記述は無い。しかし、特定外来生物被害防止基本方針で、「概ね」明治元年以降に我が国に導入されたと考えるのが妥当な生物を特定外来生物の選定対象としている。
2021-07-02 16:57:32ゆえに、史前帰化植物は「概ね」外来生物法に基づく特定外来生物の選定対象外であり、現時点では全種が外来生物法に基づく対策の対象外である。それどころか、史前帰化植物は居住地や耕作地、オープンランド等における生物相の構成種として不可欠な存在であり、生態学的に重要な存在である。
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