なぜワクチン接種が進んだ国で流行が起きると怖いのか

ワクチン接種が進んだ国で流行が起き、しかも経済活動を活発化させて、ウイルス曝露の機会を増大させると、ワクチンの効かない変異株を誕生させるリスクがある。
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shinshinohara @ShinShinohara

・ワクチン接種がある程度進んだ国であること ・新型コロナが流行すること ・マスクなどの感染対策を怠ること 以上の条件がそろうと、ワクチンが効かない変異株が誕生するリスクが高まる。そのメカニズムをなるべくわかりやすく説明しようと思う。 buzzfeed.com/jp/naokoiwanag… @nonbeepandaより

2021-07-08 17:14:38
shinshinohara @ShinShinohara

たとえば、抗生物質の効かない病原菌は、簡単に作り出すことができる。抗生物質入りのシャーレに、病原菌の細胞を1億個ほど塗りつけて培養すると、抗生物質で死なない変異株が数個くらい含まれていて、それらが増殖する。その変異株は、抗生物質入りシャーレで元気に増殖する。抗生物質は効かない。

2021-07-08 17:17:39
shinshinohara @ShinShinohara

なぜこんなことが起きるかというと、「自然変異」という、遺伝子がちょっとずつ変異する現象はどんな生き物にも起きていて、1億個くらいの病原菌がいると、抗生物質で死なないような変異が起きたものが含まれるから。けれど、「選択圧」がかからないかぎり、変異株はあまり表に現れない。なぜか。

2021-07-08 17:20:33
shinshinohara @ShinShinohara

遺伝子の変異は、だいたい不都合なことが多い。だから、変異株は通常、もとの野生株と比べると生きる力が弱かったりする。だから、抗生物質も何もない栄養たっぷりな環境だと、野生株の方が元気に育ち、変異株は生存競争で負け、淘汰されたりする。

2021-07-08 17:22:03
shinshinohara @ShinShinohara

ところが、環境が激変すると立場が逆転することがある。抗生物質だらけのシャーレに1億個の病原菌が塗られたら、野生株は抗生物質でやられて死んでしまう。抗生物質が効かない変異株は、通常なら野生株との生存競争に負けるひ弱な奴だけど、この場合は我が世の春。ライバルいない。大増殖。

2021-07-08 17:24:02
shinshinohara @ShinShinohara

というわけで、抗生物質の効かない病原菌の変異株は、たやすく登場する。病院に抗生物質の効かない多剤耐性菌が多いと言われるのも、このため。抗生物質が日常的に使われ、他方、病原菌のエサになる患者がたくさんいる。抗生物質に耐えさえすれば、むしろライバルがいないから大増殖。

2021-07-08 17:26:09
shinshinohara @ShinShinohara

新型コロナはRNAウイルスといって、バクテリアなどの他の生物と比べて、はるかに変異しやすい。だから、増殖する過程で、自然変異した株がたくさん含まれているものと思われる。なにしろ、正確に遺伝子をコピーするのがヘタクソなのがRNAウイルス。

2021-07-08 17:27:53
shinshinohara @ShinShinohara

新型コロナのワクチンは「スパイク」という場所をターゲットにしているそうだ。新型コロナが人間の細胞にとりつく際に重要なたんぱく質。ここが変に変異すると感染力が失われるわけだから、変異は起きにくい・・・と期待したところ。だから、多くのワクチンメーカーがターゲットに選んだのだろう。

2021-07-08 17:31:06
shinshinohara @ShinShinohara

ファイザーやモデルナ、アストラゼネカなどのワクチンは、RNAを人間の体内に送り込み、「スパイク」をたくさん作らせて、免疫がこれをやっつけようと発達。すると、そのスパイクを持つ新型コロナは、免疫がスパイクにくっつきまくるので、感染もできず、やっつけられる、というメカニズム。

2021-07-08 17:34:01
shinshinohara @ShinShinohara

免疫はなかなか柔軟なところがあって、スパイクに少々変異が起きたところで、「あ、お前はスパイクだね」と認識してくっつく能力はある(ポリクローナル抗体だから)。新型コロナの変異株に対してもワクチンが有効とされるのは、そのため。

2021-07-08 17:36:27
shinshinohara @ShinShinohara

けれど。冒頭の3条件がそろうと、話が違ってくる。 イギリスのように、ワクチンを打った人がたくさんいる中で、新型コロナの流行が起き、しかも経済活動を再開させて、大量のウイルスの曝露を、ワクチン接種者が毎日のように受け続けたとすると。

2021-07-08 17:39:19
shinshinohara @ShinShinohara

何億個ものウイルスがワクチン接種者の体内に、何度も何度も侵入を試みることになる。もちろん、何億個もいれば、変異が起きたものが必ず含まれる。変異が起きていないウイルスは免疫でやられて増殖しない。けれど、免疫が認識できないほど変異が起きた変異株があったとしたら。

2021-07-08 17:41:07
shinshinohara @ShinShinohara

免疫をかいくぐって、感染に成功する。すると、ウイルスは増殖することができる。となると、ワクチン接種者の免疫をかいくぐれるタイプの変異株が増殖する恐れがある。西浦教授が恐れているのは、この点と思われる。

2021-07-08 17:43:53
shinshinohara @ShinShinohara

もし、ワクチン接種者がマスクをするなどの感染対策を怠らず、新型コロナ感染者との接触を避け、ウイルスの大量曝露の機会を極力減らすことができれば、ワクチンの効かない変異株が誕生するリスクは低くなる。

2021-07-08 17:46:12
shinshinohara @ShinShinohara

ごくわずかな量のウイルスに、たまに接触するだけなら、免疫だとか様々な仕組みでウイルスを完全撃滅できる。だから、ワクチンの効かない変異株は生まれにくい。けれど、経済再開させ、マスクなどの感染対策を取らなければ、話が違ってしまう。

2021-07-08 17:48:14
shinshinohara @ShinShinohara

大量の病原菌を抗生物質入りのシャーレに塗りたくるのと同じ理屈で、変異株が生き残り、増殖する確率がグンと上がる。新型コロナの流行が収まらない中では、ワクチン接種が進んだとしても下手に経済活動を再開できないのはこのため。ワクチンの効かない変異株を育ててしまいかねないから。

2021-07-08 17:50:11
shinshinohara @ShinShinohara

経済活動を早く開始したい。そうでないと経済的に殺される人が増える。だから早く経済活動再開を、という声の気持ちもよくわかる。悩ましい。ただ、ワクチン接種者がウイルスの大量曝露を受け続ける環境があると、ワクチンが全く効かない変異株を自ら生んでしまうリスクがある。

2021-07-08 17:51:53
shinshinohara @ShinShinohara

もし、現在のワクチンが全く効かない変異株が誕生してしまうと、経済的損失だけでなく、たくさんの死者を生むことにもなりかねない。それを感染症の専門家は心配しているのだろう。しかしこうしたメカニズムを一般の方にわかりやすく説明するのは大変難しい。で、私が勝手連的に試みた次第。

2021-07-08 17:57:11