ストレイトロード:ルート140(57周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」をベースに、毎日1作ずつ投稿している掌編という名の習作。 今回は2801~2850+おまけ。終盤のリクエスト回数以外の共通テーマは「家」。なお各話の内容につながりはありません……多分。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

どこかで鍵が外れる音がした。その時点で藍は仕掛けに気づいたのだろう。何が作動したかは語らず、私に階段を下りるよう命じた。「先に行ってよいのですか」「確かめたいことがあるの。下からの目線も欲しいからそっちにいて」何も察していない私が尋ねても階下を指差すだけ。じらして遊ぶ余裕がある。

2021-06-02 20:15:12
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2812。焦らす(じらす)。 「あせらす」とも読めるけど、うまく使えなかった。

2021-06-02 20:15:12
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

質素な皿を拾って表に返すと金色の文字が刻まれていた。「優勝トロフィー?」「前の住人の忘れ物かもしれません」「ふーん」飾り皿に興味のない藍がクローゼットの奥を探索する間に、電波が辛うじて入る窓際で大会名と氏名を検索した。当時としてはずば抜けた実力で、誰も寄せつけずに圧勝したらしい。

2021-06-03 19:08:50
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2813。ずば抜けた。 似た意味の「抜きん出た」を前に使ったので、全く違う場面にすることは意識した。

2021-06-03 19:08:51
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

張り込みを始めて以来、藍の元には毎晩同じ相手から電話がかかってくるという。尋ねたらある経営者の名が返ってきた。「この前の騒ぎでちょっと手を借りたでしょ。それでここの情報くれたの」通話内容は進捗確認らしい。是が非でも彼女の成果が欲しいようだ。「成果だけ、ね」藍が棘を一言投げてきた。

2021-06-04 18:55:21
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2814。是が非でも。

2021-06-04 18:55:21
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「あの人はちゃんと指示聞いてくれるから。余計なことは言うけど嘘はつかないし」電話越しの会話なので藍の声しか聞こえないが、私の話題らしい。褒め言葉に続けて本音もこぼれたが、考えてはいけない。「何それ。ぞんざいに扱ってるように見えるってどういう意味?」気にかけてくれるのは誰だろうか。

2021-06-05 19:09:50
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2815。ぞんざい。

2021-06-05 19:09:50
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

引き出しの奥に残されていた手記、と聞いて後世への置き手紙を連想する者はある程度いるらしい。「そんな面白い話そうそうないでしょ」藍が電話で報告した研究員もその一人で、発見した文書の解読結果を伝えると落胆されたという。「時々いるんだって、人間が堕落したから空を取られたんだって言う人」

2021-06-06 20:20:09
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2816。堕落。

2021-06-06 20:20:09
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

人類の愚行が怪物襲来の原因とはさすがに信じないが、ある種の集団でその表現が多用される様子は容易く想像できる。「だから『魔女』なのよ」人前で特異な現象を起こした藍にまず挙がったのはやはり中傷だったのか。恐怖や不安にとりつかれた者は今より多かった。「でも好きだからそう呼ぶ人もいるの」

2021-06-07 18:53:10
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2817。中傷。 人間の発想の根底はだいたい一緒だ。 しかし彼女には浅い傷でしかなかったらしい。

2021-06-07 18:53:10
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

真っ暗な通路はとても狭く、奥行きは判らないが相当長いらしい。通気だけは確保するつもりで扉を開けたままにしたが、それでも息苦しさを感じた。「開けっぱなしにしてきたの?」藍に尋ねられたのは振り向いても光が見えなくなった頃だった。「別にいいけど。わたしたちの他には誰も来ないみたいだし」

2021-06-08 18:57:57
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2818。通気。 こういうときはだいたい藍ちゃんが前を歩く。

2021-06-08 18:57:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

定点観測を始めて五日目、今日も同じ時間に同じ色の怪物が群れを成して飛行していった。風に追跡させる藍によると近くの畑を物色して戻ってくるらしい。最後尾の通過を確認して録画を止め、ふと顔を上げると、快晴の空をもう一体が横切った。出遅れがいたのか。撮影するか迷う間に目が合った気がした。

2021-06-09 18:48:06
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2819。出遅れ。

2021-06-09 18:48:06
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「間違いない。今、ここにいるのはわたしたちだけよ」藍が笑顔で外を指した。庭、森、山、そして空。出窓からの眺めを独占できると喜ぶ姿にも見える。「時間もたっぷりあるし、絶対あれを捕まえて帰らなきゃ」藍の携帯端末が誰かからの着信を知らせた。手柄の独占は許さないと叫ぶようなタイミングで。

2021-06-10 19:00:23
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2820。独占。

2021-06-10 19:00:23
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

互いに背を向け、藍の合図で同時に腰を下ろす。古い長椅子の両端に二人で座るとようやくきしむ音が弱まった。地中から染み出すような振動を尻と両足で感じる。「ずっと同じリズムで揺れてない?」「地下に大型機械でもあるのでしょうか」振り向くと藍ではなく鶏と目が合った。いつからそこにいたのか。

2021-06-11 18:54:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2821。長椅子。

2021-06-11 18:54:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

間違いなく藍はその時、人類を苦しめてきた侵略生物の謎に肉薄していた。決定的な瞬間を撮影できれば生態の解明に一役買ったはずだったが。「わかってて石を投げたの?」椅子に拘束された男は黙秘を続けている。「撮ってから横取りすれば超高額で売れたのに?」視線がブレた。邪魔者の原動力はそこか。

2021-06-12 19:27:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2822。肉薄。

2021-06-12 19:27:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

預かった袋を盗まれることなく藍に届けたまでは良かったが、何故か彼女は不機嫌になった。「中の封筒に用があるのに、なんか出てこないんだけど?」確かに中身を取り出せない。口を尖らせる藍から袋を返され、慎重に裏返して謎を解いた。封筒の口が袋自体の縫い込みに巻き込まれる形で一体化していた。

2021-06-13 19:20:17
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2823。縫い込み。

2021-06-13 19:20:17
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

日没を過ぎた頃、小さな揺れと物音に気づいたのは私だけだったらしい。窓越しでは暗いばかりで何も見えず、玄関から表に出ても異変はない。戻って藍に報告しようと踵を返した途端に謎が全て消えた。細身の怪物が一体、我が物顔で庭に寝そべっている。ちょうど私が外の様子を確認していた窓のすぐ横だ。

2021-06-14 18:50:52
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