空間が飛び飛びの自由度しか持たない場合の量子力学

堀田先生の連続ツイート
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Masahiro Hotta @hottaqu

非相対的な粒子の量子力学を勉強する時、数学の関数解析の知識があればそれはそれで良いのですが、本質的には要らないのだと思ってます。もしデルタ関数とか自己共役作用素とかの数学的設定で躓くようでしたら、まずは有限次元の行列を考えて、その極限で連続的な空間自由度を再現する扱いもあります。

2021-04-17 11:08:11
Masahiro Hotta @hottaqu

6月の教科書もそのスタイルで考えていくわけですが、まずは空間が飛び飛びの自由度しか持っていないと考える方向性です。その数を大きな自然数であるNとしましょう。 pic.twitter.com/AaK8sqQzS5

2021-04-17 11:09:52
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Masahiro Hotta @hottaqu

状態空間の次元もNとなり、有限です。その空間で下記の基底ベクトルを考えてみましょう。 pic.twitter.com/jQvxJ3zQ7T

2021-04-17 11:11:36
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Masahiro Hotta @hottaqu

そしてこの基底で下記のようなN次元正方行列を定義します。これはこの基底ベクトルに対する消滅演算子(下降演算子)になっています。 pic.twitter.com/auDRfk2fK4

2021-04-17 11:13:01
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Masahiro Hotta @hottaqu

そして生成演算子(上昇演算子)はエルミート共役で定義されます。 pic.twitter.com/Yv1wOfTd43

2021-04-17 11:13:56
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Masahiro Hotta @hottaqu

例えば各基底ベクトルは、最初のベクトルに生成演算子をどんどんかけて、適当な規格化をすれば得られます。 pic.twitter.com/4CTCqP0sAZ

2021-04-17 11:16:16
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Masahiro Hotta @hottaqu

なお消滅演算子と生成演算子の交換関係は、有限次元だと少しずれていて、このままでは単位行列に比例はしていません。しかしそれでも飛び飛びの空間での調和振動子のモデルとかは作れてしまいます。 pic.twitter.com/T8O2GzHcpV

2021-04-17 11:18:06
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飛び飛びの空間での調和振動子モデルを作るには、下記のような数演算子を定義すればできます。 pic.twitter.com/vwYx4VDvu9

2021-04-17 11:19:54
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Masahiro Hotta @hottaqu

最初に考えた基底ベクトルは、この数演算子の固有ベクトルになっているのも簡単にチェックできますよね。 pic.twitter.com/L1ltGqtNtY

2021-04-17 11:20:50
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Masahiro Hotta @hottaqu

この有限次元の量子力学においても、長さの単位を持つ定数Lとプランク定数を導入すれば、下記のような(飛び飛びの空間の)位置演算子と運動量演算子を導入できます。 pic.twitter.com/n8BUHolnLm

2021-04-17 11:22:28
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Masahiro Hotta @hottaqu

ただ連続空間の場合とは異なっていて、位置演算子と運動量演算子の交換関係は正確にはまだ単位演算子Iに比例はしていません。 pic.twitter.com/NLIKwkYKhp

2021-04-17 11:23:55
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Masahiro Hotta @hottaqu

運動量演算子の固有値と固有ベクトルでも、同様です。 pic.twitter.com/DDlOwQk9ML

2021-04-17 11:26:47
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Masahiro Hotta @hottaqu

飛び飛び空間でも調和振動子モデルを作れる理由は、下記のように数演算子と生成演算子の交換関係が連続空間の時と同じになるからです。 pic.twitter.com/Qh42VVDejQ

2021-04-17 11:29:09
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Masahiro Hotta @hottaqu

ちなみに両辺にエルミート共役をとれば、消滅演算子の交換関係も確認できますし、具体的計算でももちろん同じ結果を与えます。 pic.twitter.com/2SGB1AlMiX

2021-04-17 11:30:33
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Masahiro Hotta @hottaqu

ちなみに消滅演算子の交換関係も、連続空間の場合と同じです。 pic.twitter.com/HcrLk32gwI

2021-04-17 11:31:22
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Masahiro Hotta @hottaqu

そこで角周波数の単位をもつωという定数と数演算子を使ってハミルトニアンを構成して、下記のユニタリー行列で時間発展を考えましょう。 pic.twitter.com/DcDmZqQm1Z

2021-04-17 11:32:56
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Masahiro Hotta @hottaqu

すると位置演算子と運動量演算子のハイゼンベルグ演算子を定義すれば、古典の調和振動子と同じ運動をすることが確認できるわけです。飛び飛び空間にも関わらずです。 pic.twitter.com/6uTJxZRdNJ

2021-04-17 11:34:15
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Masahiro Hotta @hottaqu

ここで下記のように調和振動子の質量mを導入できます。 pic.twitter.com/ChmCpWSgDW

2021-04-17 11:34:56
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Masahiro Hotta @hottaqu

すると位置と運動量のハイゼンベルグ方程式の形は、ぴったり古典的な調和振動子の運動方程式の形と一致するわけです。 pic.twitter.com/SghOgyatIh

2021-04-17 11:36:04
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Masahiro Hotta @hottaqu

ですからエーレンフェストの定理で出てくる位置と運動量の期待値も、古典的な運動方程式と同じ方程式を満たすわけです。 pic.twitter.com/5QmXp8iPzb

2021-04-17 11:37:18
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Masahiro Hotta @hottaqu

後はℏωNに比べて低エネルギーしか持たない量子状態だけを考えて、Nを無限大極限をとれば、連続空間での量子的な調和振動子モデルが出現するわけです。 pic.twitter.com/Qd7hwr779t

2021-04-17 11:40:07
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Masahiro Hotta @hottaqu

このような思考ルートでも、普通の連続空間での量子調和振動子の理論が構成できるので、そんなに悩む題材は実際には物理学としてないわけです。関数解析の知識がないと、調和振動子さえ理解できないというわけではありません。

2021-04-17 11:43:03
Masahiro Hotta @hottaqu

なお物理学としては、完全なN無限大極限をとらなくても、実際の実験データの誤差の範囲で現象を説明できる理論にはなっています。つまりある程度空間が飛び飛びでも、これまでの実験結果とは整合してしまう現状です。

2021-04-17 11:54:37
Masahiro Hotta @hottaqu

補足です。1つスライドが抜けました。Nが有限の場合の位置演算子の固有値と固有ベクトルを下記にように考えられるという部分です。 pic.twitter.com/JxJCuXG3j4

2021-04-17 11:56:06
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