「Q. 環境的要因が遺伝子に影響を与えることはありますか?」 これは、大きなご質問。私にきちんと答えられるようなものではないですが、自分の知識の範囲内で。 「獲得形質は遺伝しない」、つまり、環境要因で経験したことは次の世代に伝わらないというのが従来の定説でした。 #脳科学の達人2021
2021-07-25 09:26:13しかしながら、親が受けた心理学的ストレスが、ゲノムの修飾(メチレーション等)の変化をもたらし、それが長期的に続く、しかも、世代を超えて受け継がれる、というような一連の研究があります。 「獲得された行動の世代を超えた非遺伝的継承」と表現されてます。nature.com/articles/nrg39…
2021-07-25 09:32:47最初、こういう話が出てきたときは、ちょっとうさんくさいな、本当かな、と思ってましたが、その後もたくさんの論文が出てきていて、心理学的特性だけでなく、他の種類の形質にもそういうものがありそうだ、という論文も多数あり、本当である可能性は高そうです。 science.sciencemag.org/content/354/63…
2021-07-25 09:36:33あと、これとは全く異なる話ですが、環境要因によってゲノム自体に変異が入ってしまう、という話があります。 普通、一般の方々は、生物の1個体のゲノムはどの細胞をとってきても全く同一だとお考えになっている、のはないでしょうか。 sciencedirect.com/science/articl…
2021-07-25 09:45:20実は、最近は1細胞の全ゲノムシークエンスとかが容易にできるようになり、この考えがかなり間違っていたことがわかってきてます。1個体からとってきた細胞であっても、それぞれの細胞でゲノムの配列が完全同一ではなく、結構、変異が入ってしまっているんですね。
2021-07-25 09:47:36そのよい例がLINE-1という自分のコピーをゲノムのあちこちにとばして挿入することができるレトロトランスポゾンですね。これ、神経が分化する際などにとんで入ったりするらしいので、脳の発達期にそれぞれの神経細胞の個性・多様性を作ってしまう、という説もあります(上で引用した総説参照)。
2021-07-25 09:53:05あと、随分毛色の違う話として、お腹の中の胎児の細胞が血液に乗って、脳までいって神経細胞に分化する、という話がありますね。 …cellsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.16…
2021-07-25 10:03:32つまり、妊娠という環境要因によって他者(男性)のゲノムの一部も持った胎児の細胞が、脳まで運ばれて、そこで神経細胞として生着してしまうと。 他者由来の細胞が自分の細胞になってしまうということで、ある意味、自分の遺伝子が後天的に変化するといえなくもないかと。 journals.plos.org/plosone/articl…
2021-07-25 10:06:18Neuroscientist. Professor, Fujita Health Univ. Editor-in-Chief, Molecular Brain Editor-in-Chief, Neuropsychopharmacology Reports Tweets are my own