韓国でのバンドデシネ

宣政佑さんによる解説
4
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

前にも言った事あると思うけど、韓国には2000年代前半からBD(バンドデシネ)が多く翻訳出版された。中には日本ではまだ未翻訳な作品や、最近になって出版されたような作品もあるらしいが、それらは結構面白い作品が多いので日本でも翻訳出版されればとよく思う。

2011-08-14 01:15:48
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

そういうことを思うと、漫画読者として私が韓国で生まれたのは本当に幸運だと思う。まず日本の漫画は世界でも例を見ないくらい翻訳されてるので不自由しないし、また私みたいに日本語版で読みたい人にも便利なように日本書籍が山ほど、また近いから送料も結構安く輸入される。(続く)

2011-08-14 01:18:22
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

(承前)そしてBDやアメリカンコミックスは勿論、香港や台湾漫画とかも一時は翻訳出版されてたし、何より日本と英語圏に続いて漫画を多く出している国である韓国の漫画も読めるのだから…。これだけ豊かな漫画環境は本当ラッキーだった。で、何でそういうことを言おうと思ったかと言うと…

2011-08-14 01:21:06
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

ポーランド人漫画家の自伝的漫画『Marzi 1984-1987』の韓国語版が出たらしいのだ。 http://t.co/LRnSRXK 日本でも輸入書籍としては売られてるが、 http://t.co/paBUDeS フランス語で漫画を読む人はあまりいないだろう…。

2011-08-14 01:25:05
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

『Marzi 1984-1987』の英語版は10月に出るようだから http://t.co/ZjuBxIS 英語版よりも韓国語版が先に出たことになるのかな。それにしても、作家のMarzena Sowaさんはポーランド人だがフランスに留学してこの本を出版したと言う。(続く)

2011-08-14 01:29:25
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

(承前)そしてこの漫画の内容はポーランドの共産主義の最後の時期に幼年期だった著者の自伝。ここまで読むと浮かぶのは勿論『ペルセポリス』(マルジャン・サトラピ)だろう。これはイラン人女性がフランスに来て、イランでの幼年期を描いた漫画だから…。『ペルセポリス』は素晴らしい作品だったが

2011-08-14 01:32:24
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

『Marzi 1984-1987』はどうかな。一応さっきの韓国語版出版社ブログに出ている説明(韓国語だけど)を読むと、かなり面白そう。ポーランドそのものもそれほど馴染みがある国ではないので面白そうなのに、共産主義の社会での生活を描いている部分がかなり興味深い。

2011-08-14 01:35:13
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

ついでに推薦ですが、『ペルセポリス』(マルジャン・サトラピ)は本当に素晴らしい作品だと思うので、興味ある人は見ても良いと思います。日本語版も出てるので。(全2巻) http://t.co/HBVzUoD 何とアニメもあります。こっちも結構良い。

2011-08-14 01:37:53
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

ちなみに『ペルセポリス』のマルジャン・サトラピさんは、『マウス』(アート・スピーゲルマン) http://t.co/fVywoLR を見て「モノクロで」「自伝的の」漫画を描こうとしたらしいということを見た記憶がある。

2011-08-14 01:44:58
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

『マウス』(アート・スピーゲルマン) は1991年に出た日本語版がすでに絶版状態らしいが、韓国語版は1994年出て以来1巻がすでに33刷(2011年1月28日)、2巻が32刷(同年2月10日)になっているくらいの人気ぶり。完全に韓国の漫画読みには基本的な作品となっている。

2011-08-14 01:49:22
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

『ペルセポリス』(マルジャン・サトラピ)もアニメが韓国でも劇場公開されたし、ネットとか見ると評判も良いらしい。まぁ良い作品だから当然だろうけど。私も(韓国で)ずっとお勧めしている。出版社は別だけど、多分『Marzi 1984-1987』もその流れで翻訳版が出たんじゃないのかな。

2011-08-14 01:53:39
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

90年代末~2000年代前半までは韓国でBDの翻訳版出版が多かったと言うなら、2000年代後半からはアメリカのヒーロー物が目立っている。でも今回の『Marzi 1984-1987』はそのアメリカンコミックスを多く出してきたセミコロン出版社からの発行。今後はBDも増やすのかな。

2011-08-14 02:01:08
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

そう言えば、セミコロン出版社みたいな所は日本語Wikipediaには全然説明ないのだな…。他にもアニブックス、ギルチャッギなどほぼ漫画だけを出版する専門の出版社も全然見れないし、ギムヨン社、ジュンアンブックス、ファングムガジなど漫画もよく出版する一般出版社も見ない。(続く)

2011-08-14 02:11:02
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

あるのは日本漫画の輸入が凄く多い3つの出版社(ソウル文化社、デウォン(大元)C.I.、ハクサン(鶴山)文化社)と辛うじてシゴン(時空)社くらいか。これでは日本の韓国漫画への理解がかなり偏るのは当たり前だろうと常々思う。

2011-08-14 02:13:43
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

一応私は出来るだけ韓国の他の漫画出版社とか、ウェブトゥーンや新聞漫画など他のジャンル(これらは「発表メディアの違い」だけではなく、すでに「ジャンル」と言って良いほど特徴があると思われるので)も紹介してきたが、一人では限界があるしそもそも…(続く)

2011-08-14 02:18:45
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

(承前)(どの国でもそうだろうけど)「世界の日本漫画」じゃなく「世界の漫画」の紹介は、発表する場がそんなには多くないのが問題かな…。ブログとかでも書ければと思うけど、思うだけで実際日本語でそんなに書くのは結構しんどい…。

2011-08-14 02:21:43
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

さっきの「ジャンル」の話だが、前からずっと考えていることだけど…日本では漫画を区分する時、SF漫画、スポーツ漫画、グルメ漫画のように「テーマ」別と、少年漫画、青年漫画のように「対象読者」別に分けるのが一般的なようだが、(続く)

2011-08-14 02:31:37
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

(承前)韓国漫画を研究する時はそれに「発表メディア」も加えないといけないと思う。と言うか、韓国ではむしろ「対象読者別」区分よりもこの「発表メディア別」区分がもっと重要だ。そもそも対象読者別に分けるのは、現在の日本漫画の発表メディアが主に雑誌だけに偏っているからではないかな。

2011-08-14 02:33:40
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

韓国では漫画のメジャーな発表メディアが「雑誌だけ」だった時期は昔から今まで「ほぼない」と言って良いと思うくらいなので、対象読者別の区分があまり意味を成さないケースがあることを想定しないと、韓国漫画への正しい理解に繋がらない。

2011-08-14 02:35:51
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

例えば1970年代以来韓国漫画の重要な発表メディアに「スポーツ新聞」がある。このメディアはそもそも最初から読者が「大人・男性中心」なので、そこに「少年漫画」や「少女漫画」が入り込む余地はない。韓国では大人向けの漫画の発表メディアとしてスポーツ新聞があまりにも強かったので、

2011-08-14 02:38:30
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

(承前)漫画雑誌としては大人向けの漫画雑誌(日本の「モーニング」とかに該当する)が出にくかった。なのにそれを知らなかったりその情報を重要視しないと、「韓国には何で大人向け漫画雑誌がないのか」という質問に対してちょっと変な答えになってしまったりする。

2011-08-14 02:42:30
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

つまりスポーツ新聞と、あと韓国では1990年代までも根強く残っていた貸本屋の存在があったので、韓国の大人はわざわざ雑誌で大人向けの漫画を読む必要がなかった訳だ。実はこれは結構重要で、韓国の漫画メディアが日本のように「雑誌」一つでまとまらなかった理由もそこからじゃないかと見ている。

2011-08-14 02:45:59
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

と言うか、日本の現代漫画があまりにも雑誌一つにメディアを絞ってきたと思うけど…。他の国では日本よりはもうちょっと多様じゃないのかな?日本も昔はこんなに雑誌一辺倒じゃなかったと聞いてるし。まぁ日本も最近はウェブや同人誌など、もっと多様になりつつあるとは思うが。

2011-08-14 02:48:59
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

まぁそんな訳で、韓国漫画も日本漫画もBDもグラフィックノベルもアメリカンヒーロー漫画もヒット出来るし、最近はカラー中心のウェブトゥーンがメジャーになっているという今の韓国の漫画市場の多様性は、この「発表メディアの多様性とその長い歴史」も理由の一つではないかと思う。

2011-08-14 02:54:04
mirugi/宣政佑 @mirugi_jp

また一つの理由は、韓国の漫画市場の小ささもあるだろう。小さいからむしろどんな作品も出せると言うか。日本のヒット作でも、よっぽどの作品じゃなければポーランド作家のあまり馴染みない漫画と予想部数にそんなに違いはない…。だったらネームバリューで勝負しない、ベンチャーな出版社も出易い。

2011-08-14 03:01:21