ブラック・ストライプス

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【親愛なる読者の皆さん】 これから始まるのは、ニンジャスレイヤーPLUSに収録された短編エピソードのシリーズ、「デッドリー・ヴィジョンズ」の一篇です。時系列は過去（フジキド・ケンジ時代）、息詰まるニンジャの戦いがコンパクトに描かれています。是非、体験してください。

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【ニンジャスレイヤー】 ・ニンジャを殺す者。彼もまたニンジャである。赤黒の装束、「忍」「殺」と刻まれたメンポが特徴。 【ナラク・ニンジャ】 ・ニンジャスレイヤーに宿りし邪悪なるニンジャソウル。 【ソウカイ・シンジケート】 ・ニンジャの暴力でネオサイタマを支配する闇の組織。

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お盆休み特別ニンジャ再放送プログラム 【ブラック・ストライプス】 pic.twitter.com/fiPg4keSTT

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眩い太陽だった。強い潮風が吹き抜け、打ち寄せる波が砂浜に食らいつくと、白い泡が幾層にも重なって、濡れた砂に貝やカニ、ワカメを残してゆく。松の木は黒い枝葉をゼンのフラクタルに茂らせ、岸壁のテトラポットの上では、極彩色のヒトデたちが強烈な日差しでボイルされ、美しい屍をさらしていた。 1

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「ハアーッ！ハアーッ！」人里離れた砂浜を、振り返りながら走るニンジャの姿あり。彼の名はブラックストライプス。深緑の装束には黒い縦縞模様テキスタイル。その姿は砂浜の白黄色の中、極めてよく目立つ彼の影が、点々と足跡を残してゆく。彼の頭上ではカモメがゲーゲーと鳴きながら旋回していた。 2

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（屍肉喰らいの鳥どもめ。俺が死ぬ事を待ち構えているに違いない）彼は怖気を振るった。（ふざけるな……！）彼はソウカイ・シンジケートのニンジャである。ムイガハマ海岸付近の洋上、漁船に偽装したヤクザボートを用い、敵対ヤクザクランの者たちとその家族をドラム缶に詰めて沈め、水葬処刑した。 3

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順風満帆のミッションであった。水底のイカリを引き上げた時、赤黒の藻屑が絡まっている事に気づくまでは。……はじめはイカリに何か大きな廃棄物でも引っかかっているのかと思った。だが、藻屑が身じろぎし、恐るべき赤黒の眼光で睨んだ時、彼は死神を引き上げてしまったのだと知った。 4

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イカリの鎖を這い上って来た赤黒のニンジャは、ジゴクめいてアイサツした。ニンジャスレイヤーと。ブラックストライプスは当然その名を知っていた。コッカトリスやソニックブームといった手練れのニンジャを殺した恐るべき戦士であり、その首には莫大な懸賞金がかけられていた。　5

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シックスゲイツ級のニンジャであれば、キンボシのチャンスと奮い立ちもしただろう。だが彼にそんな度胸はなかった。少なくとも正面きったカラテで勝てる相手ではない。彼はボート乗組員のクローンヤクザ達にニンジャスレイヤーを襲わせ、その隙に回転ジャンプで海に飛び込み、逃走を図った。　6

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浜辺まで泳ぎきった彼だが、ニンジャ第六感は確信させる。奴は追ってきている！「ハアーッ！ハアーッ！」砂浜を走りながら、やがて彼は覚悟を決めた。逃げられぬ。こんな僻地で救援要請など無意味。ならば、やるしかない。危険を冒してでも機を見て攻撃を試み、あわよくば仕留めるべし！ 7

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「イヤーッ！」波濤とともにニンジャスレイヤーは海中から飛び上がり、砂浜に着地した。海水が赤黒の装束を滴り落ちる。決断的殺意に染まった目が敵を求め、点々と続く足跡を見出す。「……」死神は走りだした。群れなすカモメ。風になびく松の木々。極彩色のヒトデたち。砂は白く、海は青かった。 9

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観光で訪れるならば、ここは美しきワビサビの地だ。だが今この時は、ニンジャ対ニンジャの容赦なきキリングフィールド以外のなにものでもない！「……これは」ニンジャスレイヤーは立ち止まり、眉根を寄せた。足跡が途絶えている。だがブラックストライプスの姿はない。どこにいる……？　10

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「ここだ！イヤーッ！」その瞬間、ニンジャスレイヤーの斜め後方で殺意溢れる叫び声が聞こえた。彼は反射的に向き直り防御した。だが、そこには何も無し！向き直ると背後でさらに声！「バカめ！かかったり！」ナムサン！これは意図した地点から物音を発生させるヤマビコ・ジツのアンブッシュ転用！ 11

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「コシャク！」ニンジャスレイヤーは意識を研ぎ澄ませ、砂の上に現れた緑と黒縞柄のニンジャの上半身を捉えた。放たれるブラックストライプスのクナイ！「ヌウッ！」反射的に打ち払う。だがそれが罠だ！クナイはチョップを受けて爆散、明らかに不穏な粉塵を撒き散らした！「グワーッ催涙ガス！」　12

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ニンジャスレイヤーは砂の上でたたらを踏んだ。目が霞む。開けていられない！そればかりかガスには神経撹乱物質すらも含まれており、すぐさま目鼻の粘膜を通してニンジャスレイヤーの体内を冒しはじめた。平衡感覚が失われ、激しい痛みが襲って来た。「グワーッ！」倒れ込み、のたうつ！アブナイ！　13

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立て直し、反撃せねば！彼は盲滅法にチョップを打つが、苦し紛れだ。「「愚かなり！」」ブラックストライプスの嘲笑が響いた。「「俺を逃げるだけのサンシタと侮った貴様の負けだ。俺とて腐ってもソウカイヤのニンジャ戦士よ……もはや不退転、ここで返り討ちにしてキンボシ重点してくれるわ！」」14

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「ヌウウーッ！」砂上でもがくニンジャスレイヤーの手に何かが触れた。それは砂に埋まった木片であった。彼は藁を掴む溺死者めいて、杖代わりに起き上がった。「どこだ……どこにいる……！」「「毒の味はどうだ！」」嘲笑が反響する。「「死神といえど所詮ケミカル脆弱性は拭い去れぬものよ！」」 15

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「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーはボーで薙ぎ払った。手応え無し！お返しとばかり、数発のクナイが飛来した。「グワーッ！」攻撃は執拗かつ連続。チャドー呼吸による解毒を試みるも、新たなクナイが身体を傷つけ、その集中を破ってしまう。このままではジリー・プアー（注：徐々に不利）である！ 16

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「「ハハハハ！死すべし、ニンジャスレイヤー＝サン！」」「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーはボーを打ち振った。ボーは偶然、彼の眉間をめがけたクナイを弾き飛ばした。（そうだ。まだ戦える。まだ死ねぬ）彼は我に返り、ケミカル影響を闘争心で塗り潰そうとした。（耐え続け、攻撃の機会を……！）17

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「「イヤーッ！」」「グワーッ！」クナイがニンジャスレイヤーの身体をかすめた。「まだだ……諦めるわけにはゆかぬ……」(((ググググ……なんとブザマな姿であることか)))そのとき、ブラックストライプスとは異質の声がニンジャスレイヤーのニューロンに木霊した。(((ブザマの極み……))) 18

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(((この程度のサンシタ相手に遅れをとったは、まさに増上慢の招きしインガオホー也。未熟なオヌシでは復讐は果たせぬ。儂に身体をあずけよ。さすれば此奴ごとき、瞬く間に退治てくれる)))（黙れ……ナラク）朦朧とした意識下、彼はかろうじてその名を絞り出した。邪悪なるニューロンの同居者の名を。19

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ナラクを解放してはならぬ。邪悪な魂に屈すれば、戦いの意義は無に帰する！（敵の居場所を言え、ナラク！オヌシが目となるのだ！）(((何だと？)))ナラクが訝しんだ。(((この状況に追い込まれた時点でオヌシに選択権なし。儂に身体を任せよ)))（ダメだ！オヌシに身体をくれてやる気はない。絶対にだ）20

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(((ならば死ね)))（私が死ねばオヌシにとっては不本意の筈）(((……そのような頓知で儂を意のままにする事などかなわぬぞ！)))（敵の居場所を知らせるのだ、ナラク！）「イヤーッ！」「グワーッ！」クナイ攻撃を受ける！(((ええい！バカの極み！)))ナラクが激昂し、そして……(((右だ！))) 21