森村泰昌展中止に見る美術という名の偽善/欺瞞

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RT @yukoktd: 岩手県立美術館の復興支援展示が画家のご遺族の使用許可が得られず、中止。『「森村泰昌「人間風景」－萬鐵五郎、松本竣介、舟越保武とともに－」展の中止について』http://t.co/pPaIs4w

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QT @curatorshinya: …「『人間風景』〜萬鉄五郎 松本竣介 舟越保武のために」中止について、「傷ついた」と述べている森村泰昌さんの文章を拝読した。全力投球で作品作りに励む森村さんの姿を思い浮かべながら、いろいろ考える所が… http://t.co/bNaEYU8

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自ら恃む所あろう方々が、岩手県美の森村泰昌展中止を惜しんでいる。いつの間に、森村はそれ程の評価や同情を集めるようなアーティストになったのだろうか。中止のリリースから引いてみる。

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引用：森村氏は、岩手ゆかりの3人の美術家、萬鐵五郎、松本竣介、舟越保武の代表作からテーマを得て、それぞれの時代と社会に向きあいつつ、3人ともに悩み苦しんで深い美術表現を獲得したことを森村氏自身の表現を通じて再現しなおし、（…）

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引用：（…）美術は時代とどうつながっているかということを、この岩手の現状の中において熟考してみようと試みていました。

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さっそく欺瞞に満ちている。他人様の軒先を借りるコスプレに、「テーマ」などないし、それを「自身の表現」などと言うのも無理がある。そのうえ「再現しなおし」とは、「頭痛が痛い」のように破綻した日本語だ。

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あのマンネリズムの、一体どこに「熟考」があり得ようか。ただ絵を掛け並べるだけの挙を、例えば「再考」と称したりするような、この業界ならではの強弁である。リリースは「森村氏の意図と情熱は、そのまま岩手県立美術館の災害復興意識と合致し」とも言っているのだ。

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引用：該当の作品も、近代日本の社会から発した深刻な問題をテーマとして苦悩の底から制作されていて、それだけに森村氏の共感も深く、また、そのために、ご遺族には、森村氏の問題提起と該当作品がもつ固有の問題提起とは一体にできない別個のものと認識され（…）一致を見ることは叶いませんでした。

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どう読んでみても、森村の該作品への共感は深かった「ために」遺族には理解されなかったと言っている。まるきりワケが分からないのだが、何せ要するに、岩手県美・読売・美連協の三者は、森村展中止を全て遺族のせいだと言い募っているのだ。何たる無様か。

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それだけの説得力を持ち得なかった企画者としての反省の言は、このリリースには絶無である。各方面に損害ないし迷惑も生じていように、主催者として型通りの詫びの言葉さえ無い。実にもって嘆かわしくも荒廃した人情ではないか。

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逝去以来の年数も浅い作家の作品を、森村のような者に好きにさせるなら（と言うほど森村は「自由」な作り手ではないと思うが）、慎重の上にも慎重を期すべきであったろう。

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制作も終盤となってのキャンセルとは、その経緯が如何なるものであろうが主催者のヘマに過ぎず、それは遺族と森村双方への甘えに由来したものではないか。これを遺族の無理解などと説明するなら、卑劣な言いがかりと断ずる他はない。

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という訳で、森村に同情しない訳ではないのだが、しかし彼の言は主催者のそれよりもみっともない。

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引用：はっきり言おう。今回のことで、私は非常に傷ついた。表現する人間が、その表現の自由を奪われることで、どれだけ傷を負うか、他人にはあまり理解は出来ないかもしれない。

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まず森村が他人様世間様を理解していない。彼は遺族の美意識にも倦厭感情にも、個展中止を要請するという決断の重さにも、一切忖度していないではないか。傷ついたのは遺族も同様、あるいはそれ以上であったかも知れないのである。森村の言う「表現の自由」は、彼自身にしか属していない。

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引用：今回発表できなかったビデオ作品のいったいどこがいけないのだろう。私にはそれがどうしてもわからない。このビデオ作品が、舟越保武やその作品を穢すものであるなら、納得もできよう。しかしどう考えても、どうながめても、その逆なのだ。そのことが理解されないことがいたたまれなく悲しい。

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問題は、それを当の自分が「わからない」ところにあるかも知れないなどとは、森村には思いも寄らないらしい。そもそも、「わからない」とか「悲しい」とか、被害者ヅラして言うのは大抵わるいやつである。でなければガキであり、最低の場合はその両方である。

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彦坂尚嘉のブログに森村を論じた記事がある。まずシンディ・シャーマンやメイプルソープについて「人間像というものを復活させて、全面に出しながら、同時にそれに対して、偶像崇拝禁止の抑制をかけていくという、そういう表現がされているのです」と言う。http://t.co/ANeaBZl

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そして彦坂氏は「これに対して、／森村泰昌の画像は、逆で、／人物像は、呪術的アニミズム的に礼拝対象化されて、／強調され、絶対化されているのです」と喝破する。完膚なきまでの卓見であろう。

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恐らく森村は、かの「長崎26殉教者記念像」や「病醜のダミアン」を、寂れた観光地の顔ハメよろしく、またぞろ「自身の表現」とする料簡であったのだろう。中止はむしろ慶事であり、ざまあみやがれである。僕は嬉しい。

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復興の美名のもとに、あるいは公の美術館の権威を傘に、萬、竣介、舟越の「供出」を求め、これを「接収」する。いま、岩手県民の誰が、そんな事を望んでいるだろうか。

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思うに、岩手県美で行われようとしていた事は、けっきょく平時の発想に由来するものでしかなかったのではないか。戦争画が美術の存続、平時の存続を期したものでしかなかったのと同じように。

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この状況下で、美術と美術館に出来る事など殆ど無い。絶無ではないと思うが、ここで私案を披露するほど僕は親切でも傲慢でもない。ただ、今そのような断念に立つ事は、決して敗北ではないと言いたい。こういう時にわあわあ声を上げるのは、森村泰昌や椹木野衣のような下品な馬鹿だけなのである。

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森村泰昌展の中止は、震災に由来するものではなかった。その事を僕は慶ばしく思う。美術という名の偽善に満ちた社会悪を抑圧し、撲滅するのは、天災などではなく、社会であるべきであり、即ち人でなくてはならないと考えるからである。