ヴェルヴェット・ソニック #1

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【現在のニンジャスレイヤー】 ・マスラダ・カイ かつてオリガミ・アーティストであった青年。ニンジャスレイヤーとなった。 ・シーズン4 ダークカラテエンパイアの邪悪なる古代ニンジャ達がカリュドーンの儀式を開始。彼らに遣わされた狩人達がネオサイタマに入り込み、ニンジャスレイヤーを狙う!

2021-08-20 21:16:39
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤー シーズン4 第4話 【ヴェルヴェット・ソニック】#1

2021-08-20 21:18:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ゴーン。ゴーン。ゴーン。ゴーン。朝の鐘の音がネオサイタマじゅうのテンプルで一斉に打ち鳴らされるなか、マルノウチ・スゴイタカイビル、東西南北のシャチホコ・ガーゴイルに囲まれた屋上では、油断ならぬニンジャの狩人達が、いまだ互いに睨み合っていた。 1

2021-08-20 21:22:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

狩人マークスリーの狩りは失敗に終わった。「コンヴァージ=サン、ベルゼブブ=サン、そしてマークスリー=サン。フフ」サロウは指折り数え、弱々しく笑った。「もう三人やられちゃったんだ。パーティープレイでニンジャスレイヤーを共に制圧したメイト達だったのに。……ああ、でも一人増えたか」 2

2021-08-20 21:25:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サロウは見た。ウーガダルはフードを目深に被ったまま、手首の数珠をジャッジャッと鳴らしていた。メイヘムは腕組み姿勢で風を受け、ネオサイタマの街を見下ろしている。「覚悟のない雑魚から消えていく。順当にな」彼女は呟いた。「前座が終われば真のイクサだ」「フン」アヴァリスが鼻を鳴らす。3

2021-08-20 21:33:13
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「そこから何が見えるんだい」サロウはメイヘムの横に立ち、吹き上がる風に怯んだ。メイヘムは冷たくサロウを睨んだ。サロウは苦笑いし、中央でアグラする狩人を振り返る。「ねえ、ブラックティアーズ=サン、次は誰かな?開始はいつから?気が早いか」「星辰が全てを決める」肩の上の水晶球が光る。 4

2021-08-20 21:35:59
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「その星辰とやらが胡散臭いものだ」アヴァリスは言った。「お前のセトが、この儀式を利用して何をやろうとしているか。空の玉座の摂政?笑わせる。なにか、あるのだろう?」「儀式を愚弄してはならぬ、アヴァリス=サン」ブラックティアーズが静かに威圧した。アヴァリスは空を示す。「あれは何だ」5

2021-08-20 21:42:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「俺も気になってたんだ」サロウが同意し、手を庇にして、アヴァリスの示す方角を見た。そこはニンジャスレイヤーとマークスリーの決着の場所である。ここからでもはっきりと視認できる奇妙な赤黒のアブストラクト・オリガミが、痕跡じみて静止している。「望遠でカメラ撮影してる奴らもいるよ」 6

2021-08-20 21:44:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「粛々と儀式を進行するのみ」ブラックティアーズは目を閉じた。「我らの主を試してはならぬ」「主、か」アヴァリスは目を細めた。「首輪のついたお前らのありさまは滑稽だ。目隠しをされたままついて行くばかりよ」「……」アヴァリスに狩人達の視線が集まった。アヴァリスは挑戦的に見渡した。 7

2021-08-20 21:50:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

その時、頭上の空がささくれた。狩人たちの視界にはオヒガンの片鱗が重なり、黄金の立方体が垣間見えた。「来たァ!クジ引きだ」サロウは鼻血を流しながら喝采した。ブラックティアーズの水晶球がホログラフィじみて、神秘のオミクジ・ボックスを虚空に投射した。 8

2021-08-20 21:53:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

オミクジ・ボックスは冷たく回転する。底部のスリットから、陶片が滑り落ちてくる。陶片に刻まれし名は、メイ0100101001刻まれし名は、サロウであった。「……え?俺か?」半笑いでサロウが唖然とした。メイヘムとアヴァリスがサロウに向き直った。彼らの背にカラテが膨れ上がる。 9

2021-08-20 21:55:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ウーガダルは注意深く狩人達のさまを観察しつつ無言。ブラックティアーズは眉間にしわ寄せ、こめかみに指をあてた。水晶球が光を強め、グルグルと回転した。「……オミクジの結果は神聖不可侵」彼はサロウを指差す。「次の狩人は貴殿だ。サロウ=サン」「俺……俺かよ」サロウは耳たぶに触れた。 10

2021-08-20 21:59:17
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「オミクジが妙な挙動をしたようだぞ」メイヘムが言った。アヴァリスは顎を擦った。「……どちらにせよ……」彼らはサロウに向かって一歩間合いを詰めた。サロウは後ずさった。メイヘムは拳を鳴らした。「いかなる不正が行われたかは知らんが、どのみち貴様では力不足。挑戦権を奪うまでの話だ」 11

2021-08-20 22:03:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「構わんのか?」アヴァリスはブラックティアーズを見た。ブラックティアーズは「推奨しない」とだけ答えた。アヴァリスは笑った。「審議中というやつか。面白い。ならば退屈な答えが返ってくるまでに遊びを終えるとするか。俺も乗るぞ、メイヘム=サン。挑戦権は俺がいただく」 12

2021-08-20 22:07:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「よかろう」と、メイヘム。「ま、待ちなッて!」サロウが引きつった笑顔で下がった。アヴァリスはウーガダルを見た。「貴様はどうだ」「……」ウーガダルは首を振った。「主は横紙破りを命じておらぬ」「そうだよ、やめよう」サロウがさらに後ずさる。だがメイヘムとアヴァリスは突き進んだ。 13

2021-08-20 22:11:30
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「待ってくれ!待って!」シャチホコを背に、サロウは逃げ場がない。「ブラックティアーズ=サン!俺を助けてくれよ!」ブラックティアーズは首を振った。「不正の容疑を勘案すれば、助けるわけにもゆかぬな」「だ、そうだ」メイヘムが踏み込む!「やめなよ!ヤバいって」サロウが反射的に手を翳す。14

2021-08-20 22:15:02
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「イヤーッ!」メイヘムの拳が風を切った。拳はサロウの鼻先0.1インチで静止した。腕が伸び切り、顔面に届いていない。サロウは笑顔を震わせた。「やめよう。俺はノー・カラテのニボシだ」メイヘムの目が血走った。サロウは彼女の背後に立ち、肩を叩いた。「こんなカラテを食らったら、俺は死ぬ」 15

2021-08-20 22:18:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」アヴァリスは人差し指と中指を揃えて立て、眉間に添えた。白いネオンの虎が虚空より飛び出し、サロウに襲いかかった。「GROWL!」「やめな」サロウはこめかみに指を当て、アヴァリスを指差す。アヴァリスがよろめいた。ネオン虎はサロウに食らいつく寸前に霞んで消えた。「アブナイ」 16

2021-08-20 22:22:30
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ほう!」アヴァリスは首を振ってサロウのなにかの影響を振り払った。「もっとやってみろ、そのジツを!」「嫌だよ。俺は平和主義者だ。あンたとも友達になれるって信じてる。ユウジョウの力は素晴らしい」「イヤーッ!」メイヘムがコブラカラテで襲いかかる!サロウは後ろに倒れ込み……落下した。17

2021-08-20 22:25:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

メイヘムは追って飛び降りようとした。だが一瞬前に踏みとどまった。再びオヒガンのノイズが狩人たちのニューロンに等しく走り、狩りの日付が提示されたのである。「狩人サロウ。狩りの開始は今夜だ」ブラックティアーズが言った。「今夜?」メイヘムが振り返る。「二日続きだと……?」「然りだ」 18

2021-08-20 22:31:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

彼の言葉には確固たる響きがあった。「上方世界に於いてオミクジの結果は承認された。これより侵犯は許されぬ」「貴様」メイヘムは目を細めた。「ハッハハハハ!まあいい」アヴァリスは手をひろげて笑った。「奴が獣を上回れば狩りは終わり、奴が俺の個人的な獲物になる。俺はそれでも構わん」 19

2021-08-20 22:35:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

一方、サロウはマルノウチ・スゴイタカイビルからまっすぐに落下してゆく。「アアアアア……!」落ちながら彼はこめかみに指を当てた。「アバーッ!」突如、数メートル下のフロアの窓をブチ割り、市民が飛び出した。「いいぞ!イヤーッ!」サロウは市民の頭を空中で踏み台にし、跳び直した。 20

2021-08-20 22:39:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

手足をばたつかせながら、彼は道路を挟んだビルの屋上に落下した。「グワーッ!」コンクリートに亀裂を生じながら、彼は不格好な受け身をとり、起き上がった。服のホコリを払い、頭上を見あげる。「お……追って来ないな。マジでとんでもない奴らだ。文明国の出身じゃないだろ、きっと……」 21

2021-08-20 22:42:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サロウは屋内へ階段を降りていった。ビル最上階、廊下の赤いカーペットを進む。ドアの前の警備員がサロウを誰何する。サロウは警備員に向かってウインクし、指を弾いた。「アバーッ!」警備員は痙攣し、その場に崩れ落ちた。サロウはドアを開き、重役室らしき部屋にエントリーした。「スミマセン」22

2021-08-20 22:46:19