映画よもやまばなし 1回目 ピーター・ボグダノヴィッチの『殺人者はライフルを持っている』から、無理難題を克服するガッツを学ぼう
0.さて、「殺人者はライフルを持っている」について、つぶやきます。今日、佐々木浩久監督とつぶやきあってるうちに、思い出したんだよね。これは若い人や低予算でエンタテインメント映画を撮ろうとしている人にはものすごく参考になる映画だよ。
2010-04-27 22:59:481.監督のピーター・ボグダノヴィッチは今では大監督だが、昔はみんながそうであるように単なる映画おたくだった。その後映画評論家になったが、やはり映画を撮りたくてしかたがなかった。
2010-04-27 23:01:122.しかし1960代後半はハリウッドの門戸は固く閉ざされていて、なかなか潜り込めない。そんな中で超低予算のゲテモノ映画を量産している映画会社APIというのがあった。ここのプロデューサー(監督も)があの有名なロジャー・コーマンだ。
2010-04-27 23:05:453.この人はハリウッドに入れない若手監督を安く使って低予算で映画を撮らせていた。亡命するかのように東欧から来たラズロ・コバックスというカメラマンも、撮影監督協会に入れないことをいいことに、安く使っていた。そう、コバックスがこの映画の撮影担当。「イージー・ライダー」も彼の仕事だよ。
2010-04-27 23:10:234.さて、ある日、ロジャー・コーマンはビーター・ボグダノヴィッチに言った。「ピーター、そろそろお前も監督するか」「え、はい、や、やりますぅ!」「けどなあ、80分の映画一本撮るだけの予算がねえよ」「え、どうしたら?」
2010-04-27 23:13:465.「俺が撮った『古城の亡霊』って映画があるから、そこから好きなシーンを20分抜いて使いな。それにお前が撮ったフィルムを撮ってくっつけて一本にしろ」「な、なんですって」
2010-04-27 23:16:206.「あ、それから、ボリス・カーエフ(俳優)を使うように。でもスケジュールは2日しか押さえてないから、よろしくねー」「ぐあー!」
2010-04-27 23:18:217.しかし、この無茶な要求にもめげず(ホントはめげた)ピーター・ボグダノヴィッチはシナリオをねりにねって書き上げ、素晴らしいエンタテインメント映画のシナリオに仕上げた。ロジャー・コーマンは感心した。サミュエル・フラーも褒めてくれ、改稿のアイディアをくれた。
2010-04-27 23:19:008.そして撮った映画は傑作になった。あまり傑作なんでピーター・ボクダノヴィッチは、いつもエログロ映画や暴走族映画を配給しているAPIじゃなくてメジャー会社で配給したいといい出した。これは本当ならロジャー・コーマンに恩を仇で返すようなもんだ。
2010-04-27 23:21:249.「あ、いいんじゃね」とロジャー・コーマンは言った。「でも大手でやれんの?」「掛け合ってみます」「大手でやるならまともなタイトル(「ターゲット」)にし方がいいな。けれど俺がやるなら『血みどろキャンディ、ペロペロりん』みたいなタイトルにしちゃうよ」「そんなのやだー!」
2010-04-27 23:22:5510.ピーターは必死で自作を売り込み、本作品はパラマウントで公開されることになった。
2010-04-27 23:24:1211.そしてここからが、ちょっといい話だ。映画の完成直前にロジャー・コーマンはこう言った。「なあ、ピーター、プロデューサーのクレジットから俺の名前外した方がよくね?」「え、どーしてですか」
2010-04-27 23:26:5712.「パラマウントが配給するのに、エログロ・暴走族・ドラッグ・金星人映画を一杯作っている俺みたいなプロデューサーの名前なんか入ってない方がいいだろ、お前の名前入れとけよ」「し、師匠!……うう」「泣くんじゃねー、ピーター」
2010-04-27 23:28:2014.A.ちょっとぐらい無茶言われてもめげないで引き受けよう。頑張れば道は開けたりもする、かも。B.困難を打開するにはアイディアのストックは一杯あった方がいい。
2010-04-27 23:30:4015.C.シナリオはやっぱり大事。D.いま手がけている映画が超低予算のゲテモノ映画でも、ロジャー・コーマンのような教養ある映画人との仕事ならやりがいはある。 さあ、正解はどれでしょう。
2010-04-27 23:33:08