『ウマ娘 プリティーダービー』新シナリオ「アオハル杯」、「視点の物語」の面白さ + ライスシャワー新SSRサポカの連続イベントは秀逸な短編!

スマホゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』の新シナリオ「アオハル杯」のストーリー面を解説してみました。 同時実装されたライスシャワー新SSRサポートカードの連続イベントについても語っています。
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狂猫病 @kyobyobyo2

『ウマ娘』の新育成シナリオ「アオハル杯」、製作に時間をかけただけあってなかなか高品質なストーリーだったと思います 厳格な管理主義に対し、自由で個性尊重主義のプレイヤーチームが戦いを挑んでいくというのはスポ根ものの定番だと思うのですが、物語の展開とその見せ方に大きな工夫がありました pic.twitter.com/7EqJuE5weQ

2021-08-30 22:17:56
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狂猫病 @kyobyobyo2

ジュニア期はプレイヤーチーム中心視点で、当初ちぐはぐなチームワークだったのが互いの個性によって補完され成長していく、というここまではテッパンというか、悪く言えばありきたりな感じなのですが、シニア期に入って視点をライバルチーム中心に変えてからグッと面白くなっていきます

2021-08-30 22:28:26
狂猫病 @kyobyobyo2

ライバルである「チーム<ファースト>」の葛藤は、他ならぬ自分たちこそが、「管理」されるだけの限界を自分たちで踏み越えていかなければならない、という主体性に基づくものです 通常は主人公側に蹂躙されて終わるだけの存在に、核心となる物語の焦点を当てているのが目新しい pic.twitter.com/a7JwZ7Os2x

2021-08-30 22:49:05
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狂猫病 @kyobyobyo2

「管理」の元凶である樫本理子を単純な悪役にせず、行動原理となる過去を与え、ビターグラッセやリトルココンたちとの間に分かち難い絆を作り上げているのにも好感が持てます チーム<ファースト>の面々は樫本を屈服させるためでなく、彼女の信頼と指導に応えるために「反乱」を決意しているわけです pic.twitter.com/d9uupjLQXv

2021-08-30 23:02:11
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狂猫病 @kyobyobyo2

そしてこの「反乱」が、プレイヤーチームのような和気藹々としたあり方を目指すといったものではなく、よりひたむきでストイックなあり方であるというのも素晴らしい プレイヤーチームの「思想」に染まってしまうのでは、ファシズムの打破が逆にファシズムを呼び起こしているようで、反テーマ的です

2021-08-30 23:14:18
狂猫病 @kyobyobyo2

リトルココンが目指すのは「3分6秒2」という、自身に設定された上限タイムの打破です プレイヤーチームとの勝敗は重要ですが、あくまでもそれは「3分6秒2」を突破した先にあるもの この相手側のスタンスが、幾度もシナリオを周回することになるプレイヤー側を不快にさせない配慮にもなっています

2021-08-30 23:23:11
狂猫病 @kyobyobyo2

そしてレース後のライブ『WINnin'5』でも、二つのチームは「勝者が上、敗者が下」という構図ではなく、同じ高さの舞台で「背中合わせ」です 「異なる個性の他者を許容する」というシナリオテーマにしっかり合致して、リトルココンたちは実に気持ちのいい「敵役」として成立しています pic.twitter.com/vzEIcXBCcC

2021-08-30 23:34:01
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「野良レース、勃発!」とシナリオの主題

狂猫病 @kyobyobyo2

アオハル杯のストーリー展開において地味に巧いと思ったのは、「野良レース、勃発!」というイベントですね ライスの過失によってドリンクをこぼされてしまったリトルココンが「うちは憎まれっこチームだから」という何気ない台詞を呟くのですが、これ、悪役自身の視点としてはちょっと面白いなと pic.twitter.com/875EVbyqgO

2021-09-02 01:49:30
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狂猫病 @kyobyobyo2

このイベント自体は物語前半、まだプレイヤーチームを視点の中心としている時点に配置されています シンプルに考えれば、「実力差のあるライバル」「重圧と自責によるライスの失敗」「チームワークの(一時的な)瓦解」などを描くためのイベントです

2021-09-02 01:55:30
狂猫病 @kyobyobyo2

よくある展開なら、ライバルたちはここでライスの失敗をよってたかって責め立て、試合ではプレイヤー側を蹂躙することでしっかりとヘイトを買う、というシンプルな流れになるでしょう しかしリトルココンの「自分たちは憎まれている」という意味の台詞が、この単純な場面に大きな奥深さを加えています

2021-09-02 02:02:01
狂猫病 @kyobyobyo2

樫本代行は子飼いのウマ娘を外部から引き連れて来たわけではないので、このライバルチーム<ファースト>はもともと学園内にいたウマ娘で構成されています つまり強権的で横暴であるようにタイキたちからは見えた樫本体制でしたが、実際にはその方針に賛同するウマ娘たちもいるわけです

2021-09-02 02:07:27
狂猫病 @kyobyobyo2

<ファースト>に加入したリトルココンたちは、自分たちが学園内の少数派であることを自覚しています 夜中にアイスが食べられなかったり、練習中の私語を禁じられたとしても、よりアスリート的なアプローチである樫本代行の練習方針に彼女たちは賛同し、チームに加入したということでしょう

2021-09-02 02:13:13
狂猫病 @kyobyobyo2

学園の多数派は「自由主義」であり、その中でもやたらと目立つであろうタイキシャトルのチームの一員が自分のドリンクをこぼした──これは、学園内での孤立を感じていたリトルココンの目から視て、どのような事象に映るでしょうか

2021-09-02 02:20:50
狂猫病 @kyobyobyo2

プレイヤーはライスシャワーがそのような陰湿な嫌がらせから最も遠いところにいるキャラクターであること、自身を不幸体質であると自責しがちであることを熟知しています しかしリトルココンはそうした視点を共有していない つまり、ここには互いに対する認識のギャップがあります

2021-09-02 02:26:35
狂猫病 @kyobyobyo2

この「互いに対する認識のギャップ」が、「アオハル杯」のストーリーにおけるトラブルの種です リトルココンから見たライスシャワー、プレイヤーやタイキたちから見たリトルココン、その両者が微妙にすれ違っている プレイヤーから見た樫本理子と、その「管理主義」についても同様の構図です

2021-09-02 02:36:08
狂猫病 @kyobyobyo2

物語後半で駿川たづなは「秋川理事長には違ったものが見えているのかも」とプレイヤーに告げますが、このシナリオはそうした「視点のギャップ」にかなり自覚的に作られています だからこそ物語後半では<ファースト>中心の視点でストーリーが進行し、樫本理子に対する認識の齟齬が解消されるわけです

2021-09-02 02:43:46
狂猫病 @kyobyobyo2

シナリオの前半はそうしたテーマの大部分を隠蔽しているので、話は比較的ありきたりなものに見えます しかしリトルココンの自己言及的な一言によって物語が一気に広がりを見せるという、これは地味ながら非常に巧い台詞として設計されています

2021-09-02 02:49:19

※訂正

狂猫病 @kyobyobyo2

確認してみたらたづなさんがこのように告げるのは「物語後半」ではなく「物語序盤」でした つまりテーマ的なものはかなり初期から暗示されているわけですね twitter.com/kyobyobyo2/sta…

2021-09-02 03:49:55

補足

以下は、「アオハル杯」決勝でプレイヤーチームが負けたほうがストーリーの流れとしてしっくりくるのでは、という趣旨のご意見に対する私見です。

狂猫病 @kyobyobyo2

「アオハル杯」のストーリーは最終戦でプレイヤーチームが勝っても負けても綺麗な流れになるように作られていると感じました というのも、<ファースト>の面々の第一の目標が「プレイヤーチームとの勝敗」から少し外れたところにストーリーの途中で移行しているからです

2021-09-08 03:34:23
狂猫病 @kyobyobyo2

これはまとめた一連のツイートの中でも述べましたが、リトルココンに代表される<ファースト>のメンバーたちが目指すのは「自分に設定された上限タイムの打破」です 彼女たちがそれに目覚めたのは、練習試合でプレイヤーチームに敗北一歩手前まで追い込まれたことがきっかけです

2021-09-08 03:40:12