ストレイトロード:ルート140(58周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」をベースに、毎日1作ずつ投稿している掌編という名の習作。 今回は2851~2900+おまけ。終盤のリクエスト回数以外の共通テーマは「関係性」。なお各話の内容は特に連続していません。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

会見は一見順調だった。だが主導権は随伴した家庭教師が握り、当主である少年はただ縮こまっていた。「あなた先生だって言ってたけど」「ええ。こういった場にはまだ慣れておりませんので」「だからお手本を見せてるのね、偉そうな態度がどんな印象を与えるかっていう」当主が怯えた目で藍を見上げた。

2021-07-23 22:09:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2863。随伴。

2021-07-23 22:09:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

ある青年が藍を羨んだ。有名な魔女として一目置かれる立場ではなく、親の支援を得て旅に出られる背景を。「どうして今どき世襲なんだ」集落の伝統行事を支える舞いを彼は嫌っていた。「あんなものは興味持ってる人がやればいいのに、探そうともしない」「誰もいなかったら?」藍の言葉に青年が震えた。

2021-07-24 18:53:38
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2864。世襲。 確実に絶やさないためのひとつの方法ではある。

2021-07-24 18:53:39
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

先日訪ねた工場の作業員からメールが来た。経営者が藍を口止めすべく側近を送ったという。見覚えがある人物との再会は数時間後に現実となった。「見学自体をなかったことにできませんか」作業員の待遇を暴露される恐れより、魔女と関わった事実の方が不都合なのか。藍は意地悪な返答を考え始めた顔だ。

2021-07-25 19:41:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2865。側近。

2021-07-25 19:41:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

あの怪物が最初に騒ぎを起こしたとき、風はどこから吹いていたか。藍がようやく理解できた論文を頼りにその著者を訪ねたが、子供に話すことはないと門前払いされた。「何したら対等な立場になれる?」藍に問われ、まず浮かんだのは飛び級による進学。だが勉強嫌いが挑むとは思えないので提案は控えた。

2021-07-26 19:51:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2866。対等。

2021-07-26 19:51:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

バリケードを作る子供達の言い分も分かる。大人が遊び場を解体したい理由も納得できる。「で、どっちに味方するの」藍までが私をじっと見た。中立など許さないと言いたそうだが、心変わりの経緯は読めない。「その前に一応確認したいことが」「説得なんかされないからな!」声は親にも聞こえただろう。

2021-07-27 18:51:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2867。中立。

2021-07-27 18:51:37
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

燃料不足でやむなく立ち寄った町は噂通り荒れていた。藍は鞄を奪った人物を捕らえた後、一緒に笑っていた若者達も糾弾した。「どうしてあんな人に手を貸すの」「別に」彼らは気だるげに藍を見下ろした。悪事に加担した自覚はないようだ。「やることないからつるんでるだけで」「何かあればいいのね?」

2021-07-28 19:42:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2868。つるむ。

2021-07-28 19:42:45
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

長年の敵対関係で知られた企業が突然手を組んだ。町に近づいたとき最初に着信したメールは、通過し遠ざかる間に別のメールによって否定された。「どっちが正しいの?」読み上げた藍は首を傾げているようだが、私は別の疑問が浮かんだ。「何について協力したかったのでしょう」動機の多くは共通の敵だ。

2021-07-29 19:16:16
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2869。敵対。

2021-07-29 19:16:16
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

近くで遊んでいた子が見当たらないと聞いて捜索を手伝った。結論だけ言えば無事だった。私達の車に乗り込む幼児を藍が見つけ、荷物の間に潜る寸前に捕まえていた。「ぼくもとおくのこになる」親が最近遠縁の子供を引き取り世話していたことが気に入らないようだ。事情を聞いた両親は実子以上に泣いた。

2021-07-30 18:53:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2870。遠縁。

2021-07-30 18:53:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

少年は遠くを見つめて棒立ちになっていたかと思えば、突然その場に座り込んだ。側に寄った藍が小声で語りかけ、短い会話の後にうなずいた。「呼ばれたみたいね」それが能力者の仲間入りを示すと知る私でも、目の前で起きたことを体の不調か何かと疑った。多くの大人は彼らの覚醒を理解できないだろう。

2021-07-31 19:08:07
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2871。仲間入り。 風を操る藍のように、何らかの特殊能力を持つ子が時折現れる、という世界。 何に「呼ばれた」のかは未解明とも、当事者だけが知るともいう。

2021-07-31 19:08:07
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

風の声が居場所を知らせても、私達の足が追いつかない。ようやく発見した男は半壊した建物の前に跪いていた。「逃げたのは間違いだったのか」継いだばかりの店を残して避難した判断を責める二代目に、そっと声をかけた。両親が探していると。顔を上げた彼の口からこぼれたのは怪物への強い恨みだった。

2021-08-01 18:43:38
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2872。二代目。

2021-08-01 18:43:38
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

一方的に連絡を絶って逃げた教授の居所を訪ねた。カメラ越しに応対した男は同居人らしい。虫の居所が悪いのか、こちらの名前さえ聞かずに通話を切られた。「本人は家にいないみたい」私の陰に隠れていた藍がささやいた。風を起こして窓を見に行っていたらしい。「一旦退却。さっきの人が銃を探してる」

2021-08-02 18:57:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2873。居所(きょしょ/いどころ)。

2021-08-02 18:57:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

水と食料の補給目的で立ち寄った街だが、店員は泊まるものと思っていたらしい。「ここに来てあれを見ないなんて!」説明を受けて納得したのは藍だけだった。今週はゲームの大会のために人が集まり、連日連夜の熱闘に沸いているという。「どうです、今からでも」よく聞けば彼自身が今夜出場するらしい。

2021-08-03 20:05:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2874。熱闘。 配信を楽しむ人も多いのかもしれないし、半壊した世界ではそんなの見てる場合じゃないのかもしれない。

2021-08-03 20:05:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

地元の青年に運転を代わった途端、検問にも渋滞にも出会わなくなった。「飲み友達にこの辺の道路詳しい奴がいてさ」まさしく酒の席を思わせる笑いが今は頼もしい。「今度一緒にどう、紹介するよ」「酔い潰れさせる気?」後部座席から冷たい声がした。毛布を被って潜む藍は青年の言動に罠を疑っている。

2021-08-04 18:57:55
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