茂木健一郎氏 @kenichiromogi 「個人の歴史」についての連続ツイート

2011年8月21日 茂木健一郎氏による連続ツイート 小さなものと、大きなもののかかわり 「個人の歴史」について
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茂木健一郎 @kenichiromogi

そうだ、今朝の連続ツイートはあれにしよう。

2011-08-21 06:56:15
茂木健一郎 @kenichiromogi

「連続ツイート」をお届けします。文章は、その場で組み立てながら即興的に書いています! 今朝は、小さなものと、大きなもののかかわりについて。

2011-08-21 06:57:38
茂木健一郎 @kenichiromogi

これ(1)佐藤賢一さんと、『小説フランス革命』について対談させていただいた時に受けたインスピレーションについて、今日はお話したい。歴史というと、個人が大きな渦に巻き込まれる印象がある。一人の力は無力。大きな力が、押し流していくという諦念。

2011-08-21 06:59:02
茂木健一郎 @kenichiromogi

これ(2)ヘーゲル的に、「精神」が自己実現すると考えても、あるいはマルクス的に、形而下の冷徹な法則で決まると考えても、いずれにせよ歴史に個人が登場する余地はなさそうだ。しかし、佐藤賢一さんとフランス革命についてお話していて感じたのは、むしろ、個人の大きな力だった。

2011-08-21 07:00:22
茂木健一郎 @kenichiromogi

これ(3)一人ひとりの性格が大きな意味合いを持つ。もし、ルイ16世があのように優柔不断でなかったら。もし、ロベスピエールが女性を寄せ付けないような潔癖症でなかったら。多くの人がギロチンの露と消えたフランス革命の暗部の展開は、違ったものになっていたかもしれない。

2011-08-21 07:01:37
茂木健一郎 @kenichiromogi

これ(4)歴史は複雑系であり、中国で蝶が羽ばたくとメキシコ湾でハリケーンが発生する「バタフライ効果」に満ちている。誰もが、起点のバラフライとなり得る。歴史は統計的な法則で動くのではない。一人ひとりの性格が、関与し、左右し、そしてフィードバックされるのだ。

2011-08-21 07:02:51
茂木健一郎 @kenichiromogi

これ(5)いきなり国や世界を考えると、難しいかもしれない。自分ひとりの歴史を考えたらどうだろう。あるいは家族の、友人との歴史。確かに、自分の性格、資質が、その大河ドラマの行く末に大いなる影響を与えていることを見いだすだろう。歴史は、自分が作るのだ。

2011-08-21 07:03:58
茂木健一郎 @kenichiromogi

これ(6)科学が歴史の前に立ち止まるのは、科学が、畢竟、統計的真理に過ぎないからである。一人ひとりの歴史は、N=1である点において、統計の侵入を拒む。統計の俯瞰的視点は、一人ひとりの歴史の一回性の前に、無力である。引き受ける覚悟は、統計の冷徹を砕く。

2011-08-21 07:05:15
茂木健一郎 @kenichiromogi

これ(7)あたかも、歴史に統計的法則があるかのような態度は、一人ひとりの熱き血潮を冷ます。学問は、自然科学へと収束するから、統計性を誤って用いる。歴史の一回性に迫ろうとしたら、結局は文学的アプローチしかない。自分の歴史を、文学として眺めてみるしかないのだ。

2011-08-21 07:06:39
茂木健一郎 @kenichiromogi

これ(8)自分の人生を振り返ってみる。分岐点となる場面において、どのように決断し、何を選択したのか。そこには、自分の性格が確かに表れてはいないか。自分というちっぽけな存在の、しかし波瀾万丈の大河ドラマ。そのように自分の歴史を考えると、香ばしい愉しさがある。

2011-08-21 07:08:11
茂木健一郎 @kenichiromogi

これ(9)フランス革命は、経済社会法則の歴史的必然でもたらされたのではない。ルイ16世、ロベスピエール、マリーアントワネットの個性の煌めき、よどみがあの進行を生んだ。私たち一人ひとりの人生の中に、フランス革命がある。個人の歴史こそが、私たちの生きた証しである。

2011-08-21 07:10:07
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、「個人の歴史」についての連続ツイートでした。

2011-08-21 07:10:22