衰退する本流系鉄道趣味が抱える絶望とリア充化する鉄道趣味の大人の生きづらさが暗示する「日本的車社会の厳しさ」
- naobotaka_magi
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かつてはあらゆる利用者やファンなどで賑わっていた東北上越北陸方面の新幹線の東京駅も変化の季節を迎えた。コロナ期の戦々恐々ぶりはそのままに。 駅のホームの端側に目を向けてみると、今も鉄道ファンが過去の規模程ではないが元気に活動をしていることがわかる。
2021-09-25 13:46:17取材に行った週末の夜間も、都内の鉄道ファンが目当ての列車に出会いにホームを訪れていた。昨今は若者世代による迷惑沙汰だの狼藉沙汰の暗いニュースが流れているからこそ、ここもやがてコロナ期で孤独を感じる若者の避難所になりつつないかと心配になる。
2021-09-25 13:46:17しかしながら、その人気ぶりはSNSやネット掲示板に「街は恐慌でも鉄道は好景気みたい」と書き込まれるほど、殺伐した時代とは思えぬ見事な活発ぶりである。 そんな鉄道ファンに静かに注目を集める列車が来ていることを御存知だろうか?
2021-09-25 13:46:182021年10月1日に退役予定のE4系列車である。デビュー当初は航空機に匹敵する輸送力でファンからの注目を集めていたが、インフラの多様化と速達化という時代の流れには逆らえずにダイヤ改正を機に運行終了する、その列車のことだ。本日も乗車の機会があったので乗ることにした。
2021-09-25 13:46:18乗車してまず驚いたのは、売店コーナーが普通に営業しているということ。その売店のラインナップも往年の車内販売のラインナップと同一なのである。 しかしそれに同乗する鉄道ファンからは、切ない雰囲気が漂っていた。
2021-09-25 13:46:19車内で最も多く見かけたファンの客層は大学生・大学院生世代とプレッシャー世代・バブル世代。日本でも特に鉄道ファン層が多いと言われる世代である。
2021-09-25 13:46:19今では中流の上部や上流系(金持ちの底辺から政治家の世界の人まで)もいるが、大半は中の中かそれ以下の人間である。冴えない大学生や冴えない社会人が鉄道ファンの中心であることも文化の中流性のその象徴であろう。
2021-09-25 14:41:49彼らを圧倒する魅力ある文化はまだこの世にないのか。好きな乗り物に没頭する日本人(あるいは日本在住の外国人)たちを見ていると、なんだか特別な情がわいてくる。私も売店で飲み物を買う序でに車内のナンバープレートと新幹線の階段を記念撮影した。
2021-09-25 14:41:50駅を降りた後でもそう。都会に戻るバスや便利なカーシェアもいくつかあるものの、結局彼らは帰路に鉄道を選んだ。一瞬空いた絶妙な間に生まれる哀愁。揶揄するつもりはないのだが、彼らの中には免許はおろか車やバイクの動かし方も知らない人がいるのだろう。
2021-09-25 14:41:51そんなこんなで週末の夜の東京埼玉の新幹線沿線での取材を続けてみてしまったわけだが、個人的に悲しいのはコロナ不況の影響からか富裕層向け観光列車が無期限運休となり、日本人の車社会回帰で若者や中間層を中心に鉄道ファンや利用者が数を減らしている事実だ。
2021-09-25 14:41:51実際駅前の駐車場には初心者マークの付いたカーリース車と思われる安価な車がずらりと並び、車社会の若返りが進んでいることが窺える。そして、道路の若者が運転するの車バイクの大群はまるで現代離れしているようで──。
2021-09-25 14:41:52かつては国民的サブカルチャーとして親しまれた鉄道ファン文化だが、衰退の方向に進んでいるのは大人になったファンが大人な価値観で貧乏な鉄道業界の運営するコンテンツから離れて行っているからだろうか。それとも、鉄道ファン文化そのものが時代錯誤化しているからなのだろうか。
2021-09-25 14:41:52子供たちはたまたま一定の家族や社会に住み、偶然その生き方をしていったためにある属性を持って生きるだが、鉄道を文化のコンテンツとして生産消費する人間は、そんな縛りのなかから自然とできていくものなのかもしれない。
2021-09-25 14:41:53直近はカップルで有料特急列車に乗り込んでSNSでは並走する渋滞中の道路の車やバイクからジロジロと見られているとドヤ顔をみせていた。ジロジロと見られているのはそりゃ、コロナ期の空気を読んで嫌々であっても道路の自家用の乗り物を使っているからだろう。
2021-09-25 14:41:53属性がオタクからリア充へ。これを負け組や日陰者の階段を登る姿と重ねてしまうのは、親米国の先進国社会でのみ通用するあるあるだろうか。 駅や車内で鉄道を趣味的に謳歌してきた彼らの共同体は、数を減らし形を変えつつも世代を超えて今日も日本の片隅で生き続けている。
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