2021年9月26日

1870年フランスの馬車の運転手が着ていたオーバーコートは驚くべき生地と製法で仕立てられていた、というお話

なんかグッとくるお話
863
衣服標本家:長谷川 @rrr00129

100年前の「感動」を100年後に伝えるために、ガラスのない美術館【 半・分解展 】を主宰。 フランス革命から第一次世界大戦ごろの衣服を分解し、標本にしています

rrr129annex.blogspot.com/p/r3.html

衣服標本家:長谷川 @rrr00129

1870年フランス 馬車の運転手が着た「コーチマンズ・オーバーコート」を紹介します 未使用の状態で150年間眠っていたものを買い取りました 私はこれまで「男性使用人」のさまざまな衣服を紹介してきました 花形使用人であるフットマンと比べながら、その差異を見ていきましょう pic.twitter.com/HxXuUUxzuc

2021-09-26 12:14:41
拡大
拡大
拡大
リンク Wikipedia 御者 御者(ぎょしゃ、馭者)とは、馬などの使役動物を動力とする馬車やキャリッジなどを乗り物の専用座席から操作する作業者(運転手)である。英語では、Coachman、coachee、coachy、whip などの呼び名がある。アイルランドでは、 jarvey もしくは jarvie と呼ばれる。荷車(カート)の場合は、カーター、複数の馬やラバなどを扱う御者はチームスターと呼ばれる。 ハンガリーのコチ(Kocs)という町の名が、後にヨーロッパ中に広まった馬車の名前に付けられ、英語だけでなくドイツ語やスペイン語でもコ
リンク Wikipedia フットマン フットマン(英: footman)とは、イギリスの男性家事使用人(召使)をいう。従僕とも。 フットマンという名称は、貴族の馬車の横、または後を随走する役割を持っていたことに由来し、多くはその身体的能力によって選ばれた。彼らは主人の馬車が溝や木の根によって転覆することがないよう、その横を伴走し、また、主人の目的地への到着の準備をするために、前を走ることもあった。こういった役割は「ランニング・フットマン」と呼ばれ、歩兵などの非乗馬の兵士を任命したものを指してそう呼ばれた。 後に、動員を解かれた将校が気に入った 2 users 1
衣服標本家:長谷川 @rrr00129

雨風に晒される御者(コーチマン)は使用人のなかでも重労働の仕事でした 彼らは馬の管理も任されており、他の使用人と違って馬小屋に寝室がありました また昇進を期待できるポジションでもありません そんなコーチマンの身体を守るコートは、驚くべき生地と製法で仕立てられています pic.twitter.com/i3iskjUQRW

2021-09-26 12:21:01
拡大
拡大
拡大
衣服標本家:長谷川 @rrr00129

写真では絶対に伝わらないのが心苦しいです 私がこれまで触れてきた生地とは明らかに一線画す手触りです まるで、古びたダムのコンクリートに触れているような無機質で圧倒的な質量が、指先から伝わってくるのです 重さも半端じゃありません 抱きかかえるように持たないと支えられない重量です pic.twitter.com/B8pQoHTjfb

2021-09-26 12:30:12
拡大
拡大
同じ使用人でもこの違い
衣服標本家:長谷川 @rrr00129

フットマンの派手なコートと比べれば、同じ使用人でも求められるものが如何に異なるか一目瞭然です 装飾は一切なく、ただ背景に徹し、馬を操る 上司にあたるフットマンと共に黙々と主に仕えました 雨風から身を守るために、コーチマンの服だけには「裏地」に大きな特徴がありました pic.twitter.com/djZhkFT5Yj

2021-09-26 12:36:55
拡大
拡大
拡大
衣服標本家:長谷川 @rrr00129

裏地には「ウールのボア」が縫い付けられています コンクリートのようなメルトンウールの表地では雨をはじくことは出来ても、寒さから身を守ることができなかったのでしょう 腰から膝下、そして背中全面をボアで覆い尽くし防寒性を高めています pic.twitter.com/U8PzH7Gfo1

2021-09-26 12:41:42
拡大
拡大
拡大
衣服標本家:長谷川 @rrr00129

衿の仕立てに、心から感動しました 技術者は生で見てください 大量生産社会では想像すらつかない仕立てです この重厚な生地を、いかに人体で最も丸みを帯びている「首」に沿わすか と同時に、衿をロールさせて身頃に馴染ませる技術、耐久性を考えた細部の始末 これは、最も激しい静寂です pic.twitter.com/R0Uf2EvsJz

2021-09-26 12:47:35
拡大
拡大
拡大
Pz @Pz27

詰襟の上から更に折襟を着けた様な構造なのか……

2021-09-26 14:11:19
🐺 @karenprismix

いや襟のパターンエッグい、、、すご、、、かわよ、、、。

2021-09-26 13:26:50
KEIKO(いぬちよ)🧚‍♀️ @jyuurant_IBZ

「最も激しい静寂です」 よい表現だなあRT

2021-09-26 13:43:49
衣服標本家:長谷川 @rrr00129

裏地には増し芯を留める芯押さえステッチが確認でき、アームホールにはゆとりを解放するクンニョが2つあります 袖口のステッチワークも秀逸で、当時の製図書を読んでみるとコーチマンズコートには連続するステッチ規則が示されています では、19世紀の本にどのように書かれていたか紹介します pic.twitter.com/hQc0Jiiz94

2021-09-26 12:53:01
拡大
拡大
拡大
衣服標本家:長谷川 @rrr00129

1890年イギリス「使用人の案内書」には、現代にも通じる悲しい現実が書かれています ”自動車の急速な普及により、コーチマンズはシーファー(お抱え運転手)に代替えされる コーチマンズコートは仕立てるよりも既製品で良い、シーファーの短い上着(3枚目)を仕立てましょう” 時代は繰り返します pic.twitter.com/jr9qyJQwzb

2021-09-26 13:01:50
拡大
拡大
拡大
衣服標本家:長谷川 @rrr00129

馬車は1910年ごろまでは生き延びます 鉄道も充分に発達した時代に、馬車文化を盛り上げた「女性コーチマンズ」がいました 自由な働き方をする女性たちの姿は、当時のマスコミの恰好の的となり多くの写真が残されています むしろ目立たなかった男性コーチマンより写真が見つかります pic.twitter.com/7sTwQvaOtn

2021-09-26 13:12:42
拡大
拡大
🏴󠁧󠁢󠁷󠁬󠁳󠁿yukikaze🏴󠁧󠁢󠁷󠁬󠁳󠁿 @yuki_bateauivre

めちゃくちゃ勉強になる。服の向こうから当時の人の生活の息吹が伝わってくる。 twitter.com/rrr00129/statu…

2021-09-26 12:44:56
マモ@靴活日記(革靴活動) @FittingDiary

先日、ご縁があって着せて頂いた1870年フランス デッドストックの馭者のコート。両手で抱えなければならないほど重いこのコートを着た感想は「鎧」。屈強な人が雨風の中馬車を走らせ、乗客の重い荷物を積み下ろす。それに耐える服。そんなイメージでした。 twitter.com/rrr00129/statu… pic.twitter.com/0fCWLyBE3f

2021-09-26 13:46:09
拡大
グリルドブリーム東 @w_east

重労働と専門的な技術を強いられるのに、決して日の目は当たることなく車に取って代わられていった悲しい役どころなのだなぁ…>RT

2021-09-26 13:14:21
isii marico @min_underthesun

衣服研究というジャンル。映画の中の背景の一つをクローズアップしてみると驚きの世界が。このコートを作った仕立て屋さん、150年後に遠い国でこんな風に感動されていることを知ったらうれしいだろう。 twitter.com/rrr00129/statu…

2021-09-26 14:06:58
akira @akira39_

プロフェッショナルのための衣装、格好良いなぁ。

2021-09-26 12:47:02

実際に触れてみたいという方はこちらへぜひ↓

衣服標本家:長谷川 @rrr00129

【半・分解展】では、貴族・使用人・軍人・労働者それぞれの文化を「衣服」を介して体験できます 実際に触れて袖を通すことで、より鮮明に当時の人々の生き様が感じとれるでしょう 半・分解展 大阪展(10.24~11.1)にぜひお越しください ↓ sites.google.com/view/demi-deco…

2021-09-26 13:18:45
リンク sites.google.com DEMI DECONSTRUCTION そこはまるで、 ガラスのない美術館 1 user 69

関連まとめ

残りを読む(1)

コメント

フ一口 @fu_hitokuchi 2021年9月26日
背景に徹するための使用人のための専用衣装……すごいですね
85
キウイ @cin2142 2021年9月26日
抱えるように持たないと持てないって何キロくらいあるんだろう
70
ゆゆ @yuyu_news 2021年9月26日
「古びたダムのコンクリート」と評される質感の布、触ってみたい
85
浅川@戦車兵 @militarybbo 2021年9月26日
労働者の為の甲冑。積み下ろしにしても少しでも軽く動きやすいモノが良い筈なんだが、当時の人の苦労が偲ばれる。
12
みゃけ @_myake 2021年9月26日
絶対に外気は通さないという気概を感じる美しい縫製…!
76
緣藏 @jinsei_febreze 2021年9月26日
この時代ならボアじゃなくてムートンじゃないのかな。 メルトンの打ち込みも今とは比にならないし、この面積の裏地に使われてたら余裕で10kgオーバーしそう。
29
しめじちゃん @simiej01722872 2021年9月26日
とても興味をひかれる文章。襟の仕立てを「もっとも激しい静寂です」なんて言われたら実物を見たくなってしまう
60
94式北海黒竜王V、 @DoomDrakeV 2021年9月26日
150年も眠らせてた事情にも興味が
8
ゴリラマン @qVpcsoO5l52YpZ6 2021年9月26日
服というより鎧と言った表現の方が正しそうな…
10
じゅん @jun101034201501 2021年9月26日
こうして、時代の中で、いっとき必要とされても、なくなっていった技術は多いんだろうなぁ。
37
春咲き球根を植えるみどり @verdi_horimoto 2021年9月26日
ここまで執念籠った仕立てだと槍が降っても通さなそう、槍は無理でも矢は止まりそう(※あくまでイメージです)
4
I-zy @digitaleazy 2021年9月26日
すごい上品で趣のある表現をする人だな。服飾の事はわからんけど読んでるだけで丁寧さと愛情を感じるわ
78
がいちゅう @gai_tyu 2021年9月26日
背景の人にそこまでコストかけた服を用意するって金あるなぁと。 みすぼらしい格好をさせれないからコスパに見合った服なんだろうけど。
13
八頭身派 颯仁|創造神🌄VTuber @komad333 2021年9月26日
gai_tyu 使用人の服のランクがそのまま主人のランクに対応してるだろうしね。 生半可な服着せて病気にでもなったら服一枚よりかかるかもしれないし……
60
ゴマすりクソバード@自由人 @animefigure3d 2021年9月26日
こういう奇特な人が保存しないと消えていく何気ない日常の風俗は本当に貴重だ。
60
aka @Aka3213Aka 2021年9月26日
良く残ってたし、良く手に入ったもんです
18
生き残った墺太利伊太利帝国さん @NotAustralia01 2021年9月27日
いやすごい。当ったり前だけどこれ全部手縫いだもんなぁ。これだけ重厚なものを型紙作って裁断して手で縫製してだもんなぁ。「コートの注文は夏頃に出すものだ」って本当なんだなと。
27
lD_B @frswfmhs 2021年9月27日
学生服やビジネススーツは大嫌いなのにこういう昔の仕事や制服の話にはときめいちゃう
13
犬連結マン @nekokoala1 2021年9月27日
教養が無いと言葉が理解できないのを実感する
3
aioi_au @aioi_au 2021年9月27日
現代だと今日は雨だから(暑いから、寒いから)車で出かけようって時の車と同じ事を求められる人間だと思うとその大変さがわかる。逆に言うと技能職だから良い服が買えたんだろうな。
8
サディア・ラボン(ヒエロサロメ、アスカローナ、プクヒルデ) @taddy_frog 2021年9月27日
今の日本で、バスやタクシーの運転手が女性だったら、珍しいと驚きますけど、 イギリスの女性進出はどれだけ進んでたんだろう。
2
鍛冶屋 @00kajiya00 2021年9月27日
ソーイングビーで防水加工された布の登場まで人々は重く分厚いコートで雨風を凌いでいた話があって、へぇー位に思ってたけどこれは辛いな
35
minori19780 @minori19780 2021年9月27日
写真がモノクロなのかと思ったらカラーだった 本当に見た目からして、背景に徹する役目の服なのですね…
9
うの @uniquis 2021年9月27日
こんなんもうレザーアーマーじゃん
6
タイラー・ダーテン @NoisyDog11 2021年9月27日
すげえ読ませる文章だ。そして当時の御者のなかなか辛い待遇に涙が。
11
転倒小心 @tentousho 2021年9月27日
ボタンの見かけの印象が石ノ森章太郎先生とか横山光輝先生の描かれるものに近くて、逆算して「ああこういうしっかりしたボタンを使ってる服は頑丈な布や造りをきっとしていたんだ」と想像できて今楽しいです
9
ボルフォッグ @kigantetu11 2021年9月27日
高級品は勝手に残る。こういった浪費されて終わりの物ほど残らない。
9
柴犬 @egmvd 2021年9月27日
大量生産品にこの迫力は出せないけど、軽くて安くてあったかい服がいっぱい売ってる現代ありがてえ…って思った
23
七七四未満六四以上 @zy773 2021年9月27日
いうて、このオーバーコートを使用できるコーチマンは重用されている方だったろうね……。
11
pintu_darurat @langsung_ke 2021年9月27日
お抱え運転手はシーファーではなくショーファー(chauffeur)では?
0
メタボ社長 @50risa 2021年9月27日
現代の素材や技術で作ったら、どういうものができるのかな。
1
M☆E☆T☆A @Metaborough 2021年9月27日
これはトレンチコートの原型になるのだろうか。
0
龍ex @ryu_ex222 2021年9月27日
興味深い内容だったけど、「大量生産社会では想像すらつかない仕立て」と首に沿わせる仕掛けを紹介する枕詞としては持ち上げすぎて違和感。 現代でも仕立て服では基本のきで必須の技術。失敗すると襟抜けと呼ばれて腕がないと言われます
13
上野 良樹@土曜日 東地区 "ミ" 39a @letssaga3 2021年9月27日
https://www.webcg.net/articles/-/42365?page=3 http://jiko-higaisya.info/road-environment/redflag/ 自動車(まだ蒸気機関の時代)が出始めた頃、イギリスでは自動車通行に極端な交通規制を敷く「赤旗法」があり、市街地では制限速度が3㎞/hに制限されていたという(1896年廃止)。
3
上野 良樹@土曜日 東地区 "ミ" 39a @letssaga3 2021年9月27日
letssaga3 馬車業界の保護目的として悪名高い法律だったとの事ですが、馭者が運転免許を取って運転手に転身する猶予を与える目的もあったのかも知れないと、まとめの発言を見て思いました。
4
上野 良樹@土曜日 東地区 "ミ" 39a @letssaga3 2021年9月27日
馬車の座席は、馭者の席は雨ざらしだったので耐久性重視の革張りで、客席は布張りだった。なので、車内で濡れる心配の無くなった自動車でも、敢えて運転席を革張り、客席を布張りにしている高級車があります。実用上の理由で材質を区別していたのが、「高級な送迎車」の象徴になっていったのが面白いです。https://car-me.jp/articles/2569
11
麻樹・あるいはまお @maki_miquette 2021年9月27日
この布地と仕立ての技術もそうなんだけどこれを着ていた人間は職務環境としてそれだけ寒くて雨曝しの環境に置かれてたんだなぁと思えるのも感慨深いな。
12
五月雨山茶花蝉しぐれ @taken1234challe 2021年9月27日
これの現代版はワークマンに売ってるな。
4
サいコろ@人生獣道 @Psycho69z 2021年9月28日
なんかいずれ「王様の仕立て屋」で出て来そうだ。 そういう歴史があった的なヤツで
0
転倒小心 @tentousho 2021年9月28日
襟の話については、ぶ厚く頑丈な生地(現在はそう扱いの無いような物)でよくこんな事をと言う驚きがあったんでしょうね。伸縮性や柔軟性がさほど無いでしょうし、通常の布でも難易度は非常に高いと聞きますし、刺子(柔道着なんかに使われるあのぶあつい布)で襟を沿わせるようなことなのかなと想像したらそらあ難しいというか、現代だと割に合わないからやらねえんじゃねえかと思いました。
10
pintu_darurat @langsung_ke 2021年9月29日
taken1234challe 折よく(?)ワークマンでこんなまとめが 撥水のレベルを超えるワークマンのプリーツスカートが子育て世代に刺さりまくる「字面だけで最強」「雨の日の通勤にも」 - Togetter https://togetter.com/li/1781051
1
Mr.赤青黄 @Mr_AkaAoKi 2021年9月29日
どんな業界でも機能性に極振りした服はなんとも言えない凄みみたいなものを感じる
3
A.Ichiro@世を忍ぶカエルの姿🐸 @Asobuyer 2021年9月30日
ファンタジーゲームに出てくる一番安い防具「ぬののふく」って、もしかしてこういうものなのでは。
2
nekosencho @Neko_Sencho 2021年10月2日
自動車もかなり長い間、運転手だけは吹きさらし、飛行機も偉い人は操縦しないので有名な赤男爵ことリヒトホーフェンも最初は操縦ではなく後ろの席に座っていたという。 なんでまた運転する人に過酷な環境を強いる文化になったのか、そのへん調べるとおもしろいのかもな
1