映画『エデンの東』の「きょうだい」問題
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『字幕屋の気になる日本語』(太田直子、新日本出版社、2016年)では、映画『エデンの東』に関してびっくりするようなことが書いてあります。ジェームズ・ディーンのすねた演技で、今の女子高生の祖母ぐらいの人が、きゃーきゃー言ってた映画(のはず)。
2021-09-28 18:57:02で、この映画の字幕と翻訳では、すべてジェームズ・ディーンが演じるケイレブ (キャル)を弟、そのきょうだいで素直ないい子であるアーロンを兄、として扱っている(扱ってた)んですが、それはちょっとおかしいんじゃないか、というのが太田直子の話。
2021-09-28 18:57:23まず、この物語の元ネタとなっている旧約聖書の、カインとアベルの話では、反抗的で自由奔放な兄がカインで神に愛されず、弟のアベルは父と神に愛された子、ということになっています(それは生まれた順番もそうなってる)。
2021-09-28 18:57:45ところが、『エデンの東』では、実はキャルとアーロンは双子のきょうだい。お互いは名前でしか呼び合わない(兄さん、弟、みたいな呼び方は、英語ではしていない)けど、この名前の由来を考えると、どう考えてもキャル=カイン=兄、アーロン=アベル=弟、なんですよね。
2021-09-28 18:59:01つまり、映画が公開されてから半世紀以上、日本語の文化圏では間違って伝えられてきてた。なんでそうなったかというと、『字幕屋の気になる日本語』の著者は、以下のような見解を述べています。P068
2021-09-28 18:59:30『なぜ日本語の粗筋では「兄アロン」なのか? 戦後一掃されたはずの家父長制度に原因があるのではないだろうか。(中略)アロンが「兄」と目されたのは、父親お気に入りの優等生だからだ。伝統ある格式高いわが家を継ぐのは、素直でまじめな息子に限る、というわけ。』
2021-09-28 18:59:59この見解の是非はともかく、機会があったら映画『エデンの東』を、キャルを兄、アーロン (アロン)を弟、という視点で見直してみることをおすすめします。たしかに、そう思って見たらそう見えるから不思議です。
2021-09-28 19:00:24