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KanagakuCom
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小学生の僕、それは自信と見栄、つまり虚勢の塊のようなものだった 僕は自分が選ばれし民であると信じていたし、他の誰か、友人たちとは何か別な力を授けられていると愚かにも確信していた そこには少年ゆえの純粋な思い込みと、無知とがあった
2021-06-06 02:51:31
僕は他の人には解けない算数の問題ができたし、公文式でも進度は高かった たったそれだけで自分が神に愛されていると確信するくらいには子供だったということだ
2021-06-06 02:53:24
小学校四年生くらいまではそれでよかった 僕は概ね模範的な生徒で、授業をよく聞き、忌憚なく発言し、宿題は真面目にこなした 公文式の宿題は面倒だったものの、終わらせずに行くことはほとんどなかった 公文式の進度というのは当時の僕には勲章のようなもので、自らの優位を証明するものだった
2021-06-06 02:56:31
ただ問題は小五の頃である 小五というとちょうど中受組が動き始める頃合いだ 彼らは塾で特別な教育を受けたし、怠惰だった僕の何倍も努力した 当然僕は授業で彼らにはわかったが僕にはわからないというものがあった 僕は敗北することの屈辱を味あわされた 僕はひどく不快になった
2021-06-06 02:59:53
しかしそれでも僕は自身の優位性を信じ続けた 曰く、彼らは塾で特別な教育を受けているからそうなのであって、才能の面では俺が勝っているはずだ、と 毎日毎日そう思い続けた。しかし彼らとの差は一向に埋まらない あれはもうただの暗示でしかなかったろう
2021-06-06 03:02:25
そんな時だが、担任に中学受験を勧められた 僕は彼らに敗北する屈辱を味わい、かつての模範的生徒のかけらも無くなっていたが、成績はよかった 僕は図に乗った 親に中学受験をしたい旨を伝えたが、これには深い理由があったわけでもなく、ただ彼らと同じ教育を受ければ彼らに勝てるに違いないという
2021-06-06 03:06:00
僕は自身の「有り余る才能」を振るう機会を見つけ、大いに喜んだ 親は早速四谷大塚の入塾試験を申し込んだ 僕は当時、中学受験のなんたるか、その塾のなんたるかについて何も知らなかったので、勉強などはしなかった
2021-06-06 03:09:03
来る当日、僕は試験担当者と雑談をしながらテストを受けるだけの余裕を見せていた だが、結果は散々だった 算数では習ってもいない分野から出題され、何を言ってるかもわからないものばかりだった 13/100これが僕の点数だ 絶対的な真理から下された僕への審判、それは不合格だった
2021-06-06 03:13:30
数字というのは絶対的である 嘘はつかないし、ついてくれない。味方もしないし、敵対もしない 僕はそんなものに自身の才能という存在価値を否定されたことでひどく狼狽えた 才能がないとわかることは僕には到底受け入れられなかった そんなこと、選ばれし僕にあってはならなかった
2021-06-06 03:16:27
さて、選ばれし僕はこれ以上の綻びが出ることを恐れた ゆえに国語の成績が良かったために「一旦入塾し、その後のテストで残ることができるかの可否を判定することもできる」という先方の言葉もあっさり断ってしまった そこで落ちたら僕の才能がないことがわかってしまうじゃないか、そう思ったのだろう
2021-06-06 03:20:36
僕がとった選択は、同じ教育を受けてできないのは自身の才能のなさが露呈してしまうゆえに、その教育を受けないようにすることだった そうすれば僕は「彼らとはやってることが違う、俺には才能がある」と主張し続けることができると思った
2021-06-06 03:22:40
ただ現実というものは気が利かない 僕は算数嫌いを発症した 数字を見るのは嫌だったし、計算なんてしたくもなかった 算数はみるみるできなくなっていった しかし尚も、僕は虚勢を張るのをやめなかった
2021-06-06 03:24:50
僕は小学校を卒業した 成績は良かったかもしれないが僕の中には中学受験をした「エリート」たちへのコンプレックスが残った 真の選ばれしものは僕ではなく、彼らだった
2021-06-06 03:27:52
受験生の頃の自分のツイートを見ると、功名心でも、プライドでも、愛国心でも、何もかもにすがって勉強しようとしてたんだな、と
2021-06-06 03:50:59